1話
雨の音が、窓を絶え間なく叩いていた。
大学受験まで、あと一ヶ月を切っている。机の上に広げた参考書とノートは、夜が更けても片付く気配がない。
「……もう少しだけ、やるか」
肩をほぐしながら小さく呟き、鳴上悠は再びペンを握った。
そのときだった。
背後で、ぱち、と乾いた音がした。
振り返ると、消えていたはずのテレビが勝手に点いている。砂嵐ではない。画面いっぱいに映っているのは、どこまでも続く砂漠だった。
「……なんだ、これ」
嫌な予感がして、壁の時計に目をやる。針は、ちょうど午前0時を指していた。
雨。午前0時。そして、テレビ。
八十稲羽で過ごした一年間、あの事件の記憶が一気に脳裏をよぎる。
「まさか……」
ゆっくりとテレビに近づき、画面へ手を伸ばす。指先が触れた瞬間、ガラスの硬さは消え、手がずぶりと沈んだ。
あの時と同じ感覚だった。
「……間違いない」
慌てて手を引き抜きながら、机の上のスマホに視線を向ける。
「みんなに知らせないと。陽介と、それから……」
言い終わらないうちに、まだテレビから引き抜き切れてなかった手首が動かない。
「――っ!?」
見えない力が、強引に体を引き寄せる。
「しまっ……!」
抗う間もなく、悠の体は画面の中へと吸い込まれていった。
*
熱い砂の感触が、頬に触れた。
「……ここは」
体を起こすと、視界の果てまで砂の海が広がっていた。頭上には、雲ひとつない空。さっきまで降っていた雨の音は、どこにもない。
立ち上がろうとして、悠はふと自分の服装に気づいた。
「制服……?」
寝間着だったはずが、身につけているのは八十神高校の制服だった。今通っている高校のものではない。稲羽で過ごしたあの一年間、毎日袖を通していたものだ。
「どうして、この制服なんだ」
答えの出ない疑問を抱えたまま、何気なく左のポケットに手を入れる。指先に、硬い感触が触れた。
「スマホ……?」
取り出してみると、確かに自分のスマホだった。机の上に置いてきたはずなのに。
続けて右のポケットにも手を入れる。すると、指先がポケットの底に届かない。奥へ奥へと、空間が続いているような感覚があった。
「これは……」
意識を向けると、手のひらに慣れ親しんだ感触が収まる。戦いの中で何度も握った武器。そして、道具の数々。
「あの時と、同じだ」
驚きはあった。だがそれ以上に、体の芯から湧き上がる確かな手応えが、悠の本能にある事実を告げていた。
「……使える。ペルソナも」
胸の内側で、もう一人の自分が静かに目を覚ましている。八十稲羽で、そしてあの戦いを経て手にした、全ての力が。
「状況を整理しよう。まず、ここはどこで……」
悠が周囲を見渡そうとした、その瞬間だった。
――ドォォォン!
前方から、腹に響くような轟音が砂漠に響き渡った。
「……っ!」
音のした方へ目を向ける。砂煙の向こうに、巨大な影がうごめいていた。蛇を思わせる長大な体。人の何倍もの大きさを持つ、化け物だった。
「あれは……シャドウ、なのか?」
いや、違う。そう直感しながらも、悠は目を凝らす。
その化け物の足元に、小さな人影が見えた。
「誰か、いる……」
もし、あの人影が襲われているのだとしたら。
考えるよりも先に、体が動いていた。
「間に合ってくれ……!」
砂を蹴り、悠は化け物と人影のいる方向へ走り出した。
正直適当に思いついた設定を書き起こしただけで続くかわからない
何なら自分が続きを読みたい