二重になっていた、第一話ですが、無事削除できました。
確認ボタン押し忘れでした...
今回は少し多いかも知れませんが、よろしくお願いします!
「すごく速いです!見てくださいミサキさん!私たちの家がもうあんなにちっちゃいですよ!これからは徒歩の移動が遅くて耐えられなくなるかも知れません!」
「ヒヨリ、落ち着いて。あんまり暴れると落ちるよ。」
助手席のヒヨリが嬉しそうに窓から身を乗り出し、サオリ達に手を振りながら叫ぶ。後部座席のミサキはそんなヒヨリに注意しつつ、視線はきちんとサオリ達の方を向いていた。
私は、そんな2人を乗せて車を運転している。この車は、ついさっき襲撃して来た強硬派の生徒達が乗っていたものを拝借した。車には詳しくないが、屋根が元々付いていないいかにも軍用って感じの車だ。
「これからお買い物に行くんですよね!私、お買い物って初めてです!」
ヒヨリが席に座り直しながら、満面の笑みで言う。ヒヨリの言う通り、今私たちは最寄りのエンジェル24を目指している。
というのも、強硬派を撃退した後、スクワッドのみんなに今日の夕飯について尋ねた。すると、ヒヨリが大事に持っていた食料を出して来た。サオリが受け取り、包みを剥くと中からカロリーメイトのような保存食が出て来た。
「今日はこれを4等分しよう。私は昨日食べたから大丈夫だ。」
サオリは真剣な顔でそう言った。どう見ても保存食の量は1人用なのだが、周りが何も言わないところをみるとこれが当たり前なんだろう。
確かに、内戦中のアリウスではまともに栄養が取れるだけでありがたいのだろう。しかし、目の前で推しがこんな悲しい食事をするのを黙って見てられるオタクがいるだろうか!しかも、私が増えたことで量も減ってしまっている!
「みんな、これから夕飯を買いに行こう!私が出すから!」
「お買い物ってやつですか?!私行ってみたいです!死ぬまでに1回は行ってみたくて!」
私が買い出し宣言をすると、真っ先にヒヨリが乗って来た。流石に全員で行くわけにもいかないので、サオリと姫には拠点での留守番をお願いし、私、ヒヨリ、ミサキの3人で買い出しに行くことになった。
そんなわけで、私は一応舗装されている程度のひび割れたアリウスの道路で車を走らせている。外で免許とっておいて良かった。今の私はとても外で免許を取れる年齢ではないだろうけど、キヴォトスなら生徒が運転してもいいだろうし、アリウスから尚更だろう。
しばらく進むと、アリウスの廃墟の街を抜け、隣の自治区が見えて来た。こう見ると本当に別世界のようだ。ヒヨリは、窓から身を乗り出すようにしてキョロキョロしているし、ミサキは何を言うでもなく外を眺めている。
ついに、エンジェル24に到着した。私がアリウスに行く前に飴を買いに寄ったのもここだった。サオリ達の家からは大体40分くらいだった。
ヒヨリは車から勢いよく降りると、そのまま店の中に入って行ってしまった。私がヒヨリを追いかけようと車を降りると、降りて来たミサキが私の服の裾を掴んだ。ミサキがデレた!と一瞬舞い上がったが、初めての自治区の外で心細いのだろうと思い直し、お姉さんに徹することにした。でも、かわいいです!
ミサキを連れて中に入ると、外のコンビニのような光景が広がる。もっとも、外とは違って銃や弾薬、グレネードなんかが平気で売っている。ヒヨリを探すと、雑誌コーナーの前で袋の隙間から中が見えないか試行錯誤しているようだ。あまり褒められた行為ではないが、小さい時はやっちゃうよね。かわいい。
「ヒヨリ、一冊だけ買ってあげるから選びな。でも、袋破ったり、隙間から中を見たりしたらダメだよ?」
「いいんですか!もしかして、代わりにご飯なしですか!?」
「そんなことしないから、ゆっくり選びな」
「分かりました!ありがとうございます!」
ヒヨリは、元気よく返事をして、また雑誌コーナーに向き直った。今度はちゃんと表紙だけ見て選んでいるようだ。
「ミサキも一緒に何か見ようか?」
「私は、別に。」
「そう?何か欲しいものあったら言うんだよ?」
私はミサキを連れながら、今日の夕飯や明日からの生活で必要そうな物をカゴに入れていく。しばらくすると、ヒヨリが一冊の雑誌を大事そうに抱えて来た。どうやら買う一冊が決まったらしい。
「ミサキはいいの?」
「私は、大丈夫。」
一応、会計の前にミサキにも確認したが、思った通り、何か欲しいとは言わなかった。店員のロボットに代金を支払って、商品の入った袋を受け取った。
「私はまだ用があるから、2人は先に車に戻っていてくれる?」
「分かりました!ミサキさん、行きましょう!」
ヒヨリは私から袋を受け取ると、ミサキの手を取って、店の出口に向かった。私は、2人が店を出たのを確認してから、武器コーナーの物色を始めた。これからアリウスで暮らすのならある程度武装は整えておいたほうがいいだろう。撃退した強硬派から奪った装備だけでは心許ない。
私は、銃をいくつかと、グレネードや弾薬などの消耗品、医薬品なんかをカゴに入れた。それとアレも買っておこう。
「お会計お願いします。これは別会計で。」
レジに持っていくと、外のコンビニではまず見ないであろう額が表示された。私は大人のカードで支払いを済ませる。もちろん、奇跡を起こせる方ではなく、次の月にきちんと請求という形で現実を突き付けてくるタイプの大人のカードだ。もう一つの方は現金で支払う。買った武器類を購入したバックに詰め、店を後にする。
車に戻ると、ヒヨリは雑誌の袋を開け、早速夢中で読んでいるようだ。私は、後部座席のミサキの方に振り返り、買って来た小さなクマのぬいぐるみを手渡した。
「これは?私は頼んでないけど。」
「たくさん買い物したから付いてきたんだ。良かったらミサキが貰ってくれない?」
「別にいいけど。」
まぁ、もちろん買ってきたんだけど、それは言わないお約束だよね。店内でチラチラ見てたからついね。ミサキの性格上自分から欲しいとは絶対言わないだろうし。何より推しに貢ぐのは、オタクのサガだからね。仕方ない。
ぬいぐるみを膝に乗せるミサキを確認してから、エンジェル24を後にする。外はすっかり夕方になっていた。しばらく車を走らせていると、車内にスマホの着信音が鳴り響いた。
さっきまで、雑誌に夢中だったヒヨリも突然の電子音に驚いたようで、雑誌から視線を上げて、音の発信源をキョロキョロと探している。
「メイ、この音何?」
「これはね、携帯の着信音だよ。私の携帯に誰かがかけてきたみたいだね」
ミサキが尋ねてきた。スクワッドのみんなの環境を考えれば携帯自体見たことないのかもしれない。ミサキは納得したのか、視線を車外に戻した。
「出なくていいんですか?」
「ヒヨリいいかい?運転中は携帯をいじっちゃいけないだ。危ないからね。出ないんじゃない、出られないんだよ。」
「な、なるほど?」
私の語気の強さからか、ヒヨリはそれ以上何も言わなかった。そう、出ないのではなく出られないのだ。きっと、カードを使われ、高額の決済通知が届いた黒い誰かがかけてきているのだろうが、こっちは運転中なのだ。仕方ない。しばらくすると、携帯も鳴り止んだ。やっと諦めたか。
その後は、何事もなく拠点に到着した。留守番組にも特にトラブルはなかったようで、今はみんなでディナータイムだ。コンビニのホットスナックや、カップラーメンだけどね。一人暮らし時代に培った料理スキル(笑)を披露しようとも思ったが、設備がないからね、我慢してもらうしかない。それでも、レーションばかり食べていた彼女達にとってはご馳走なようで、出来上がるやいなや4人とも食べ終わるまで黙々と食べ続けた。
食事が終わると、私たちは順番にシャワーを浴びた。どうやら、この建物は奇跡的に水道が生きているようで、シャワー、トイレは使えるようだ。シャワーが浴びられるだけマシだが、もちろんお湯が出るわけもなく非常に冷たかった。
シャワーから戻ると、サオリが起きていた。他の3人はもう眠ったようだ。アツコとヒヨリはソファーで肩を寄せ合うようにして眠っていて、ヒヨリは雑誌を大切そうに抱いている。ミサキは部屋の隅っこで壁に寄りかかるようにして、昼間のぬいぐるみを抱き抱えるようにして眠っている。私が部屋に入ると、サオリがドアの施錠を始める。ドアについた鍵に加えて、金属製のチェーンで固定する徹底ぶりだ。昼間のやりとりを見れば、やり過ぎとは言えないだろう。
サオリは施錠を終えると、こちらに歩み寄り、私の隣に座った。
「姉さん、一つ聞いてもいいか。」
「どうしたの?」
問いかけるサオリの声から、少し緊張しているように感じた。
「姉さんは、どうしてアリウスに来たんだ?それにどうして私たちをこんなに助けてくれる?」
咄嗟に答えが出てこなかった。アリウスに来た理由は簡単だ。黒服との取引で、将来のアリウス分校に入るためだ。しかし、サオリになんと伝えたものか。黒服のことを言ってもわからないだろうし、将来のアリウスについて話すことで下手に影響が出るのも困る。
「私がここに来た理由は、色々あって外に居場所がなかったからかな。元々所属してた自治区もなくて、戸籍とかの管理がしっかりした他の自治区で暮らしていくのは厳しくてね。」
嘘ではない。外の自治区のどこにも所属していないし、戸籍を偽造でもしない限り、他の自治区で暮らすのは厳しいだろう。アビドスとかならなんとかなる気がしないでもないが。
「助けた理由としては、助けたくなったからとしか自分でも分からないや。困ってる人なら誰でも助けるってほどお人好しじゃにないんだけどね。」
最初は助けるつもりはなかった。彼女達はアリウスで酷い目に遭うが、先生との出会いを経て少しずつ幸せになっていくはずだ。それが分かっていたからこそ、最初は関わるつもりもなく、ただ生の推しを一目見たいというだけだった。
でも、いざ目にしたらダメだった。外の世界で辛かった時、理不尽に抗い、幸せを掴もうとする彼女達の姿に何度も力をもらった。そんな彼女達が、目の前で苦しみ、私にはそれを覆す力があった。それだけで、私は考えるより先に、屋根から飛び降りていたのだ。
「だから、安心して。私は別にサオリ達を利用したり、壮大な野望があるわけじゃない。ただ、サオリ達には幸せになってほしい。それだけ。」
心からそう思っている。先生が持つ大人としての責任と義務。それが無い生徒の私だからこそ選べる選択があるはずだ。もちろん、生徒の全員を幸せにできるとは思わない。だけど、介入した以上、手の届く限り幸せにしてみせる。黒服との取引はついでだ。
「そうか…」
サオリはそれだけ言うと、下を向いた。顔は見えないが、考え込んでいるようだ。それもそうだろう。今日会ったばかりの人間が突然、君たちを幸せにしたい!だなんて怪しいことこの上ない。これから少しずつ証明していくしかないだろう。そんなふうに思っていると、サオリは考え終わったのか、顔を上げた。
「姉さんの事はわかった。なら、姉さんの事は私たちが幸せにしよう。」
サオリは私を正面から見つめて、真顔でそう言った。脳が停止した。おかしい。情報が完結しない。突然の推しからの供給過多に、私の脳は情報を処理し切れないようだ。
サオリは責任感の強い子だ。生きていくだけでも過酷な環境であるアリウス自治区にあって、他の子供達をまとめ、ベアトリーチェに支配された後も、みんなを支え続けた。サオリでなければ、とてもできることじゃない。
だから、想定内ではあった。先生ではない、同じ生徒である私が何かを与えれば、一方的に受け取るだけではなく、サオリからも何かを返そうとしてくれるのは。予想はできていたものの、生のサオリに、こんなにも直接的に言われてしまうと、フリーズするのは仕方ないだろう。顔が良くて、かっこよくて、可愛くて、サオリ、逆に君は何を持ち得ないのだ!
「ありがとう。期待してるね。」
私は、必死に冷静を装った。かっこいいお姉さんのイメージを崩すわけにはいかないからだ!その後は、30分くらいアリウスのことや外の自治区のことなんかについて話して、2人でそのまま寝落ちした。
翌朝、目を覚ますと、サオリが私の肩に頭を乗せて眠っていた。先に起きたヒヨリ達は、珍しい物をみる目でこちらを見ている。私は肩に幸せな温もりを感じながら、再び目を閉じた。そして、この時間が永遠に続くことを祈ったのだった。なお、断じて死亡フラグではない!
ここまでお読みいただきありがとうございます!
第十話までは毎日投稿していく予定です。
そこまでの状況次第で、続けていくか決めたいと思います!
第十一話から、本編開始予定です。
では、また!