途中、拷問とのワードが出てきますが、グロくないので安心してください。
「敵は1人だぞ!囲い込め!」
「近接戦に持ち込ませるな!投げ飛ばされるぞ!」
気取った軍帽をかぶった強硬派の生徒が、戦車の上で叫ぶ。おそらく、リーダー的な生徒だろう。敵を分析して、自分たちの数的有利を活かす王道の選択だと思う。まぁ、部下達はそんな指示に関係なく宙を舞っているけれど。私は、彼女達の間を縫う様に立ち回り、1人ずつ壁か、他の生徒に向けて投げ飛ばす。リーダーの指示を盲目的に守るせいで、攻撃手段が銃に限定される中でこのように敵陣の中で立ち回ると、誤射を恐れてか全然撃ってこない。
「何をしている!早く攻撃しろ!」
「無理です!当たりません!」
「それに、仲間に当たったら…、ウギャ」
誤射をおそれる生徒に、他の生徒が激突した。生徒は、そのまま地面に倒れる。
「全く!どいつもこいつも!」
リーダーは、急いで戦車に乗り込む。その戦車は、近代的に改修され、移動、装填、弾道計算、発射まで1人でこなすことができるものだった。
「最近、幹部達もなんでかピリピリしてるし、ここで何としてでも戦果を!」
戦車が動き出し、その砲身がサオリ達の拠点に向けられる。リーダーは、私の制圧を断念し、反抗勢力の拠点だけでも破壊しようとしたのだ。私は、他生徒を無視して一直線に戦車へ。
「くらえ!発射!」
戦車が揺れ、砲弾が発射された。戦車内は、火薬の香りが充満し、内部では次弾装填の作業が始まっている。しかし、一向に着弾音は響かない。しかも、照準用のモニターには空しか写っていなかった。
「なんだ!どうなっている!」
リーダーが、半身だけ外に出て確認すると、戦車は傾いて上を向いていた。私は、砲弾が発射される直前に戦車の前方に移動し、力いっぱい両手で持ち上げた。その結果、戦車は傾き、砲弾は的を外し、どこかに飛んでいってしまった。
「化け物かよ!何で1人で戦車持ち上げてんだよ!」
リーダーが私に叫び、ホルスターから拳銃を抜いた。
「妹が見てるんでね。まだまだかっこつけさせてもらうよー?」
「お、お前何を…、待て、降りる、今降りるからぁ!」
私は、全身に力を込めて、戦車をひっくり返した。リーダーは挟まれる前に、何とか脱出した。
「サオリー!戦車は確保したから、始めてー!」
私が合図すると、両脇の建物の屋上からサオリ達が顔を出した。サオリ達は、下の生徒達めがけて、グレネードを投げ始める。あちこちで、次々と爆発が起こり、強硬派の生徒達は大混乱に陥った。
「もう無理だ!撤退しろ!拾えるやつだけ拾ってけ!」
「急げー!リーダーの犠牲を無駄にするな!」
一方的な攻撃に耐えかねて、生徒たちは我先にと撤退していく。リーダーは捨てられてしまったようだ。可哀想に。
「ま、待て!私を置いていくな!」
リーダーは、軍帽も拾わずに、おぼつかない足取りで逃げていく。私はそんな彼女達を見送りながら、その軍帽を拾い上げる。それを指先でくるくる回しながら、サオリ達と合流するべく、その場を後にするのだった。
今日は、サオリ達と生活し始めて10日目。その間、強硬派の生徒達は2日に1回のペースで襲撃してきていた。毎度、私が出ていって撃退できているが、流石に鬱陶しい。しかも、回数を重ねるごとに装備が豪華になっているのだ。初日は武装した生徒5人だったのに、人数が増え、武器が増え、今日に至ってはとうとう戦車まで持ち出してきた。
「姉さん。特に壊れたところはなさそうだから、そのまま使えそうだ。」
「そうなの?ひっくり返したのに。さすが戦車頑丈だね。」
「じゃあ、私は姫達を手伝ってくる。姉さんは、まだ休んでいてくれ。」
サオリが姫達の方に歩いていく。さっきまで、サオリには強硬派の戦車がまだ動くか確認してもらっていたのだ。私はもちろんのこと、サオリ達も武器や兵器については素人も同然で、鹵獲した武器なんかの使い方は手探りである。そんな中、強硬派が残していった武器を試していたところ、私はいくつか力任せに扱って壊してしまった。それ以来、使い方や状態の確認は、サオリやアツコ、ミサキが担当してくれている。ちなみにヒヨリは私とは違った意味で危ないとして、満場一致でメンバーから外された。
おかしい。私は、スクワッドの頼れるお姉さんを目指していたはずだ。強大な力は手に入れたが、いつのまに脳筋枠になってしまったのか。どこかで軌道修正しなくては。
ちなみにアツコ達は、戦車以外の戦利品の収集や気絶したままの生徒を拘束したりしている。強硬派が毎度戦力を増やしてくるのもあり、最近では、弾薬などの物資が部屋に入り切らないほど貯まっている。さっきサオリ達が使ったグレネードも元々は強硬派の落とし物だ。
拘束した生徒達はその辺に転がしておくと、いつのまにかいなくなっている。回収されているか、自力で帰還しているのだろう。しかし、今回はそうはいかない。彼女達には、強硬派の拠点の情報を吐いてもらう。
というのも、そろそろ拠点を移したいのだ。物資が入らなくなってきたというのもあるが、位置がバレているせいで、定期的に襲撃されるし、これからも襲撃されるとなれば防衛するには少し心許ない。
そこで、奴らの拠点を叩き、そのまま奪ってやろうという作戦だ。なんせ、引っ越そうにもまともに使える建物は強硬派か融和派が占拠しているのだ。その二択なら、強硬派以外にないだろう。今のところ、融和派との交流もないし。
「メイちゃん。連れてきたよ。まだ3人とも気絶してるけどね。」
「重い。」
アツコとミサキが、手足を結束バンドで拘束した3人の生徒を引きずってきた。
「2人ともありがとう!任せちゃってごめんね!拷問は夜やるから、それまではそこら辺に寝かせとこう。」
「え、メイちゃん、拷問って何するの?」
「いい質問だね?楽で、楽しい方法を思いついてるから楽しみにしてて!」
「拷問を楽しみにしちゃダメでしょ..」
私の楽しい拷問発言に、アツコは興味を持ち、ミサキは呆れているようだ。すると、両手で弾薬箱やグレネードを抱えたヒヨリがトボトボと歩いてきた。
「みなさん!弾薬とか集め終わりましたよ!でも、残念ながら雑誌とかは落ちてませんでした..。」
ヒヨリは私たちの顔を見ると、笑顔になって、任務完了を誇らしげに報告したが、お目当ての雑誌が見つからなかったことを思い出し、また俯いてしまった。ここ数日の襲撃でたまに戦利品として雑誌が手に入ったため、ヒヨリは襲撃のたびに楽しみするようになったのだ。買ってもらうのとはまた違った良さがあるらしい。
そんなヒヨリを3人で囲み、慰める。かわいい。ヒヨリのためにも、強硬派には弾薬ではなく、雑誌や図書カードを落としていって欲しいものだ。
そのまま、戦車のお試しや、戦利品の仕分けをしているとあっという間に夜になってしまった。私は、目を覚まして騒いでいる強硬派の生徒3人を引きずって拠点近くまで帰還した。
「離せ!こんなことして許されると思ってるのか!?」
「引きずるのをやめろ!補修したばかりの服が破ける!」
「せめて歩かせてくださいまし!お尻が痛いですわ!」
3人は建物に着くまで騒ぎ続けた。到着後は、3人を別々の建物で拘束し、尋問を始めた。一丁前に派閥への忠誠心を持っているらしく、拠点の場所や警備については何も口を割らない。
「本当はやりたくないんだけど、仕方ないね!」
「メイ、口元が弛んでる…」
ミサキは、下卑た笑みを浮かべながら、彼女たちへの拷問の準備を開始する私を見て、呆れてため息をつくのだった。
[強硬派生徒A視点]
聞いていた話と違う!こいつらは戦力だけの甘ちゃんだから、負けたとしても物資を奪われるだけで、すぐ解放されるって話じゃなかったのか!だから話に乗ったのに!リーダーのやつ、ちゃっかり自分は逃げやがって!
今、私は元は民家であろう薄暗い廃墟で、椅子に縛られている。ついさっきまで、銀髪のちびっこの尋問を受けていた。拠点についていろいろ聞かれたが、捕まっただけでペラペラ喋るほど、私もそこまで落ちぶれちゃいない!
おそらくだが、また2、3日もすれば、私たち以外の強硬派の襲撃があるはずだ。そのゴタゴタに紛れて脱出してやる。派閥で、軽くだが拷問に耐える訓練も積んでいる。数日なら耐えてみせる!私が決意を固めていると、部屋のドアが開き、あのちびっこが入ってきた。
「いやーお待たせしちゃってごめんね?監視の都合上移動してもらうね!」
「ふん!場所を変えても同じだ!私は絶対吐かないぞ!」
「分かってるって。むしろ素晴らしい忠誠心に感動してるんだよ?」
そんなことを言いながら、ちびっこが私の拘束を解く。私は指示されるまま歩き、建物の外に出た。そこには、一緒に捕まった生徒の1人が黒髪の少女と立っていた。
「ミサキお待たせ!準備は終わってるはずだし、行こっか!」
ちびっこは、私たちを連れて移動を始めた。資料にあった奴らの拠点が見えてくると同時に、アリウス自治区内では嗅ぐことのないはずの匂いが漂ってきた。
「あ、メイさん!ミサキさん!お肉とっても美味しいですよ!早く2人も食べてください!」
緑っぽい髪の少女が、口の周りを汚したまま、笑顔で言った。目の前では、アリウスでは、とてもお目にかかれない新鮮な肉や野菜が置かれており、それを大きなグリルの上で焼いているようだ。周囲には食欲をそそる匂いが漂っていて、自然と涎が出る。
こいつら、普段からこんなもの食ってるのか?!こちとら肉なんて、干し肉か、幹部用の焼肉弁当を勝ち取らなきゃ食べれないってのに。隣のやつも、奴らを羨ましそうに見ながらお腹を押さえている。
奴らと自分たちのあまりの境遇の違いに、憤りを感じていると、信じられないものが目に入ってきた。
「おい!お前!そこで何やってんだ!」
奴らに混じって、私たちと同じく捕まったはずの生徒が肉を食べていた。彼女は私たちに気づくと、他の奴の後ろに隠れた。
「こ、これは、違うんですのよ?仕方なくというか、それくらいならいいかなぁとか..」
「彼女かい?彼女は質問に素直に答えてくれたから、ご褒美をあげているんだよ。明日の朝には、解放する予定さ。」
裏切り者の必死の弁明は、わたしの鼓膜まで到達したものの、脳で言葉として処理されなかった。ものすごい虚無感が襲ってきてそれどころじゃなかったのだ。さっきまでの私の覚悟も誇りも、ちっぽけなものに感じてしまう。私たちがこれから強硬派で頑張れば、あんな食事ができるだろうか?もし強硬派が負けたら?はたまた他の学園に乗っ取られたら?このまま、こいつらに負け続けて、強硬派が解散したら?今まで見ないようにしてきた現実が、ことごとく迫ってくる。隣のやつも下を向いて何やらぶつぶつ呟き始めた。
すっかり、大人しくなった私たちを、ちびっこは、また別々の部屋に入れた。そして、私の前に椅子を持ってきて、背もたれを前にして座った。
「じゃあ、もう一回だけ聞くよ?君たちの拠点のこと、教えてくれないかな?まだ1人分くらいなら、余ってるけど?」
そう言って笑った目の前の悪魔の笑顔は、天使のようだった。
ここまで、お読みいただきありがとうございます!
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