学園アイドルマスター~バイオレット・スパイダー~ 作:否ビティ
この小説の世界線は様々な要素(特にマーベル)がごちゃごちゃになっていますが気になさらず読んでほしいです。
あの日、憧れた白い無垢の花
あの日、私をまっすぐ見つめ求めた、ガラスの奥の綺麗な瞳
けれどそれはあまりにもまぶしくて
☆
初星学園
某県の天川市にある私立校で、そこには世にも珍しい『アイドル科』なるものが存在している。ここで少女たちは夢をかなえるために日々切磋琢磨し己を磨いている。
ある者は『無敵のアイドル』になるために
ある者はあの日見た憧れと後悔を超えるために
ある者は家族のために
様々な者が各々の夢を持つ中、高等部のアイドル科1年、紫雲清夏は
秘密のスポットで絶賛さぼりまくっていた
「見つけましたよ清夏さん!!」
そう息を切らして彼女の前に現れたのはこの初星学園の、これまた珍しい『プロデューサー科』に所属する大学1年生の新人プロデューサー(清夏は彼のことを『Pっち』と呼んでいいる)である。
「今日もまたダンストレーニングをさぼりましたね?」
「いやぁごめんねPっち。やっぱり今日も気分乗らなくてさ~だからさ、またデートいかない?」
清夏がそう提案するとプロデューサーは「はぁ」とため息をつきながら走るときにズレたであろう眼鏡をクイッと上げる。
「そういうのは程々に、一応これでもお互いアイドルとプロデューサーという関係なのですから」
「じゃあもう幻滅した?」
「いいえ全く」
「……そう」
そういうと彼女は下を向いて俯く。彼女が本当は夢を諦められないのと同じくらい、彼は彼女をプロデュースすることを諦めない、諦めてくれないのだ
(本当、あたしにはもったいないよなぁ……)
「どうかしましたか?」
「ううん、何も」
「そうですか。それでは俺は今日大学の課題があるのでこのぐらいで。何か相談したいことがあればいつでも連絡を。例えばやっぱり夢を諦めきれないけどどうすればいいか、とか」
「ちょっとーさすがに怒るんですケド?」
「ははは、それでは」
そういってプロデューサーはそそくさとその場を後にした。サボりスポットにはもう清夏しかいない。
「本当、何やってんだろう、あたし」
かつて紫雲清夏はバレェの世界で神童ともてはやされた。しかし右膝の怪我でその道を断念、幼いながらにして夢を理不尽にも奪われた。そんな失意の中、親友の葛城リーリヤと見た初星学園でのライブ。そこでまた『アイドル』という夢を見つけた清夏は今度は自分がそうなるべく初星学園へと入学した
ここまではよかった
ところがある日のダンストレーニング中、右膝に幻痛が走り、そして過去のトラウマが脳裏をよぎった
【もう、誰の期待も裏切りたくない。だったら裏切る前に失望されれば……最初から期待されてなければ】
そんなことを考え、彼女は現実から逃げることとなったのだった。
「いつまでもこんなこと続けられる、続けるわけにはいかないもんね」
そういってベンチに座ったその時
「痛っ!?」
手に鋭い痛みが走る。よく見ると手には赤と青色のクモがくっついていた。どうやらクモに嚙まれたらしい。
「うわぁ!?色気持ち悪!?キッショ!?」
そういって清夏は手のクモを振り落とす。その勢いのままクモは壁に激突、ピクリとも動かなくなってしまった
「……部屋戻ろう」
清夏はそのまま部屋に戻ることにした。
この一件が人生を大きく変えることも知らずに……
☆
『本日、天川市内にあるオズコープ社の動植物研究室で事故が発生しました。この事故で施設内での放射線による遺伝子操作実験が行われていることが明らかとなりました。近隣住民には一時的に避難勧告が出されましたが、放射能漏れはなかったとのこと。政府はオズコープ社に対し……』
☆
熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い熱い痛い
部屋に戻ってからというもの体の調子がおかしい。体が溶けるように熱いし、内側がまるでハンマーで思いっきり殴られているかのように痛い。まるで蛹か繭の中で幼虫が成虫になるために体を溶かしている工程を体験しているかのようだ。
「まぁ、噛まれたのはクモになんだけど……」
あのクモだ。あのクモに噛まれてから体の調子がおかしいのだ。熱と痛みに耐える中、清夏はプロデューサーの言葉をふと思い出す
「いつでも相談してくださいだっけ……?」
リーリヤは現在自主レッスン中で、そんな彼女の邪魔はしたくない。そう思い、清夏はプロデューサーにスマホでメッセージを送る。そうしてメールを送った途端清夏の意識は途切れるのであった
☆
『何、クモが一匹逃げだしていたって?』
『あぁ。それもただのクモじゃない。S.H.I.L.D.からの情報によると『彼』が噛まれたものと同様のクモを再現したものらしい』
『今手が空いているのは?』
『残念ながら全員別の任務で日本に至急向かうことは厳しいらしい。『彼』は……本来なら適任なのだが、最近【スーペリア】を名乗ってから様子がおかしい。依頼しにくいな。仕方がない、ここは私が行こう』
『トニー、いいのか?君にも別の任務が……』
『安心しろハッピー。若者の未来を守ることが私たちの一番の任務なのだから。任務に関しては、ちょうど近くにいるローディについでに任せてもらおう。何、アツモリでもおごってやれば何とでもなるさ』
『君ってやつは……』
☆
「清夏さん!!」
「Pっち……?」
清夏が目を覚ますと、目の前でプロデューサーが心配そうに彼女の顔を覗き込んでいた。
「何とか有村さんに許可をもらって部屋には入れてよかったですが……体調は大丈夫ですか?」
「う、うん。ちゃんと寝て、汗をかいたからなのか大分マシ……ってスケベ!!」
大量の汗のせいか清夏の来ている服は透けて中の下着が若干見えてしまっていた。
「……っつ!?す、すいません!!あなたが心配で……」
「わ、ちょ!?近づくなし!!」
そういって清夏が軽くトンっとプロデューサーを押し
プロデューサーは部屋の反対方向まで勢いよく吹っ飛んでいった
「グハッ!?」
「……え?ぴ、Pっち!?ご、ごめん、私そんなつもりじゃ……」
清夏は状況を理解できないまま慌てて立ち上がりプロデューサーの方へと駆け寄ったが、次の瞬間彼女の体はまるで鞠のように勢いよく、同じく部屋の反対方向へと突っ込んだ
「痛っ!?体が軽いっていうか軽すぎっていうか……はぇ……?」
「大丈夫ですか清夏さ……ん……?」
2人は互いに言葉を失う。清夏の視界は天地が逆転していた。そして体には浮遊感、というよりかは『壁に体がくっついている』という感覚が。
言葉の通り、清夏の体は壁にくっついていたのだ
「な、何これ?何これ?何これ?何これ?何これ?何これ?何これ?何これ?何これ?何これ?何k」
「落ち着いてください清夏さん!!」
そういってプロデューサーは何とか彼女の体を壁からはがす。はがれた衝撃で2人の体が重なるが、清夏には今はそれどころじゃなかった
「はぁはぁ……はぁはぁ……ねぇどうなってるの、コレ……?こんな体じゃ、あたし……もう……ッ」
「清夏さん!?」
清夏は訳も分からないまま自室を飛び出した。その速さは先ほどまで高熱を出していたとは思えないほどのスピードで寮からも飛び出していく。途中で帰宅途中の月村手毬とすれ違ったが清夏のあまりの剣幕に「ヒッ!?」とおびえて尻もちをついていた。
夜の街を橙の光が走る。
☆
「清夏さん!!」
プロデューサーはあれから清夏を探し夜の街を走り回っていた。門限はとっくに過ぎていた。彼は流れる汗をぬぐうのも忘れ必死に彼女の名前を呼び続ける。彼の頭の中にはもう彼女のことしかなかった。
(彼女のいそうな場所は……?まさか……!!)
そう思い彼はとある場所へと全力で走る
ついた場所は彼女が良くサボりに使っている秘密のスポットであった。そこにはプロデューサの予想通り清夏がベンチに座り込んでいた。
「清夏……さん……!!」
「Pっち……?」
彼女が顔をあげる。その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていった
「大丈夫……な訳ないですよね……けど落ち着いてください、今」
「来ないで!!」
「……」
清夏の口から出たのは明確な拒絶であった
「Pっちも見たでしょ!?わ、私もう普通の体じゃないんだよ!?ひ、人を簡単に吹っ飛ばせて、訳わかんないくらい早く走れて、壁とかにくっついて、こ、こんなんでどうやってアイドルになれるっていうの?ふ、普通の、普通の生活すら遅れるのかどうかも分からないのに!?ぴ、Pっちだって怖いでしょ?こんな奴がと、と、隣にいたら怖いでしょ!?だけどあたし、も、もう、どうすればいいのかわからなくて」
違う、清夏が本当に拒絶しているのは自分自身だ。もう自分が普通じゃないと分かってしまったのだ。彼女の頭の中には絶望しかない。確かにそうだ。たった一夜にして自分が自分じゃなくなってしまったのだ。だが、だからこそ、
「俺が一緒にいます!!」
「……え?」
彼は彼女と一緒にいるべきであるとそう結論付けた。
「言いましたよね清夏さん。俺はあなたのプロデューサーです。そんな俺が、担当が少し変になっただけでプロデュースを辞める!?冗談じゃない!?俺の覚悟を舐めないでください。俺はあなたの才能と、未来のビジョンに惚れたんです、一目惚れしたんです、夢中になってしまったんです!!絶対に諦めません、俺はあなたを『一番星』にするまで絶対に諦めません!!俺はあなたを絶対にプロデュースします!!だから清夏さん俺はそんなことで絶対にあなたを見捨てません!!」
もうめちゃくちゃであった。とにかく一緒にいたい、そんなことしか清夏にはわからなかった。だが今の彼女にはもうそれで十分だった。
「ほ、本当?」
「本当です」
「う、嘘じゃない?」
「嘘じゃありません」
「う、裏切ったら?」
「恨んでくれてかまいませんよ」
清夏の目からポロポロと大粒の涙が零れ落ちる。だがそれは悲しみからくる涙ではない。こんなになった自分を受け入れてくれたことに対しての涙であった
プロデューサーが彼女に向かって手を伸ばす
「帰りましょう、清夏さん。門限はもうとっくに過ぎてますから」
「も、もう、急にいつも通りに戻ちゃって」
そういって彼女が彼に手を伸ばそうとして
プロデューサーの体を銃弾が貫き、赤い鮮血が辺り一帯に飛び散る
「……………………え?」
どさり、とプロデューサーの体が倒れる。それと同時に清夏の顔に飛んできた彼の血潮が付着する
「ぴ、ぴ、ぴ、Pっち!!」
急いでプロデューサーの体に近寄ろうとする。が、そこを黒い軍隊のような服を着た集団が、彼女を囲う。
「だ、誰?誰なのねぇ!?」
「君が知る必要はない」
彼らの内1人がそう答える
「なぜならもう死ぬのだからね」
そういうと、プロデューサーを打ち抜いた銃が清夏の頭へと向けられる
「どうやらスパイダーセンスはまだ発動できないらしいな、運が良かった。まぁ、あっても結果は変わらんがな」
(あぁ、あたし、死ぬんだ)
清夏の頭の中はまたもや絶望で覆いつくされた
(せっかく、せっかく夢を今度こそかなえようとしたのに。こんなこんなところで)
そうして銃弾が無慈悲にも彼女の頭を貫こうとした瞬間
鈍い金属音が辺り一帯に響き渡った
先ほどまで彼女に銃を向けていた男ははるか先で横たわっており、代わりにそこには1人の人影が存在していた。その人影が彼女に話しかける
『お嬢さん、大丈夫かい?そんな顔、あそこで倒れている彼氏に見せられないだろう?安心しろ、あとは私が何とかするさ、こんな子悪党ども』
「あ……」
それは赤い男であった。先ほど清夏に代わって銃弾を受けたのであろうにそこに傷は一切なくまるで芸術品のように光輝いている。胸の部分からは青い光が輝いており、そこからとてつもないエネルギーが流れ出ていることがわかる。そう、目の前にいる彼は
「アイアン……マン?」
そういって、清夏の意識は再び闇へと沈んだ
☆
目覚めて初めて見たのは知らない天井であった
「目覚めたか」
「!!」
そういって声の出た方向を見ると、そこには1人の男がいた。そしてその顔を清夏は、いやこの世界のほとんどが知っていた。
「こ、ここは?って、そんなことよりPっちは?あたしPっちが倒れて、それでそのあと、え、えと」
「いったん落ち着けお嬢さん。安心しろ、ここは病院だ。君のよく知る倉本財閥とうちの会社が共同経営しているな。君だって体調はよろしくないだろう?まずは自分の身だ。それとPっち?ってのはあのボーイフレンドのことか?最近のアイドルの恋愛事情とやらはすごいな、ハリウッドでもここまで熱々なカップルはいない」
「そ、そんなことはいいし!?ていうか別にそんな恋人だなんて……」
「悪かった、さすがに意地悪が過ぎたよ」
閑話休題
「改めて、私の名前はトニー・スターク。アイアンマンといった方がわかりやすいかな?先に言っておくが君のボーイフレンドの命に別状はない。ただ自由に歩けるかどうかは別だがな……」
そう目の前の男は清夏に自己紹介をする
トニー・スターク。アメリカのかの有名企業『スターク・インダストリー』の社長にしてヒーロー集団『アベンジャーズ』のリーダー格。遠く離れた日本でもその名を知らないものはいない。そんな彼が今目の前にいる。だが今の清夏にはそんなことよりももっと重要なことがあった
プロデューサーの、足が、動かない
「え、ど、どうして」
「脊椎が損傷したらしい。わが社のナノテクで治らないことはないがそれで元通りということは難しいし、結局は長いリハビリが必要だ。見積もっても最低2年はなんとか歩けるようになるのに必要か」
「あたしのせいだ……」
自分が変なクモに噛まれて、そのせいでプロデューサーの人生が狂った
清夏は足の怪我の苦しみを誰よりも知っている。そのせいで夢を諦めた
「あたしが、あたしが……」
「あーーっと……すまない。これもサラッというべきことではなかったな。よく同僚にも言われるんだ。自己中心的で自分勝手に話を進めがちだと。私の悪い部分だ」
別に清夏は目の前の人物に対して怒ってはいない。怒っているのは、自分自身だ
「だがあえて厳しいことを言わせてもらう」
そう前置きしたうえで、トニーは清夏に対して言葉をつづけた
「今、君の中にはとあるヒーローと同じ力が流れている」
「同じ力……?」
「なんとなく君にも予想はついているだろうがそのヒーローの名前は『スパイダーマン』、NYの親愛なる隣人だ」
スパイダーマン
NYのビルからビルをクモの糸で飛び回り、無辜の民のために無償で戦う無敵の男。日本でも似たような人物がいたと聞いたことがある。
「そんな彼と同じ力が……?」
「あぁ、そうだ。残念ながらその力を捨て去る技術を我々は発見できていない。それゆえにお嬢さん、君に今から一つの提案をする……紫雲清夏、君もヒーローにならないか?」
☆
清夏はその場で結論を出すことができなかった
あの後トニーは彼女に連絡先を教えてくれた。本来なら一生誰かに自慢できるほどのお宝だが、清夏にはとてもそうとは思えなかった
病院で一夜を過ごし寮に戻ったが彼女の心は未だに答えを出せずにいた
『自分が本当に人を救う資格があるのか?』
それがずっと彼女の頭を駆け巡っていた。アイドルになる夢ですら諦めかけていた自分に、大切な人を傷つけて自由を奪ってしまった自分に、そんな資格はそもそも存在するのか?
そんなことを考えながら自分の寮の部屋に戻ると
「!!清夏ちゃん!!」
「リーリヤ、ただいま……」
同居人にして彼女の唯一無二の親友、葛城リーリヤが彼女を出迎えた
「体のほうは大丈夫?」
「うん、体の方は、あたしは大丈夫……だけど、Pっちが……」
「……ごめん清夏ちゃん、いったん入ろうか、部屋」
部屋の中に戻ってみたが清夏の気分は晴れなかった
そんないたたまれない雰囲気にリーリヤも黙りこくしかなかった
「……アニメでも観る?……なんて、ごめんね。そんな気分じゃ……」
「……観る」
「え?」
「今日は、一緒に観ようよ、リーリヤ」
そんなこんなでつけたアニメの内容は異能力モノ?とかゆうバトルアニメであった
内容自体は面白かったけれど、清夏はどうしても物語の内容に引っかかってしまった
『君もヒーローにならないか?』
その声が、提案がずっと彼女の中で残っていた
この体の中にあるこのクモの力をどのように使うべきなのか?
ふと清夏はリーリヤに質問を問いかける
「リーリヤってさ、もしこのアニメみたいに、スーパーパワーを得たらどうする?」
「え?」
「What if?もしもの話。で、リーリヤはどうする?」
「私は、そうだなぁ……やっぱり困ってる人のために使いたいかなぁ」
「そう……」
彼女ならそう言うという確信が清夏には存在していた
ではなぜそんな分かりきったことを聞いたのか?それはきっとその答えを聞けば、親友のまっすぐなその言葉を「利用」してしまえば、トニーのあの提案に対する答えが出ると思ったからだ
けれど、そんなことは無かった。結局決心というものはそんな簡単なやり取りで、いや、そもそも他人に判断をゆだねてできるはずがないのだ。
(あたしって本当卑怯だなぁ……)
そう一人心の中で自虐しているとリーリヤがさっきの続きを話してきた
「私ね、実は昔ヒーローに助けられたことがあるの」
「……何それ初耳」
「えへへ……別に隠してたつもりはなかったんだけどね。なんて名前だったかな……X-MENって自分で言ってたんだけど調べてみたけどそんな人の情報はいないってあったし、そもそもとてもそうとは思えなかったんだよねぇ態度が……赤かったことだけは覚えてるんだけど……」
もしかしたら結構ローカルなヒーローなのかもしれない。ご当地ヒーロー的な?もしくはミュータント?とかいう人とか。何でも今ではこの世界の十万人に一人は大きかれ小さかれ特殊能力を有しているらしいし。
「けど、そんな中でもある言葉だけは心に刻まれてるんだ」
「それって?」
「『大いなる力には、大いなる責任が伴う』って。よくよく考えたらヒーローだって一歩間違えたらヴィランだもん。けどそうならない人たちが、しかも沢山いるってことは、自分の力を誰かのために使いたいってゆう当たり前の善性がとても大切だって思ってる人が沢山いるってこととそのままイコールになっているってことでしょ?それってとっても素晴らしいことだと思わない、清夏ちゃん?」
「……」
清夏は何も答えない、いや答えることができなかった。だがそれは決して負の感情からくるものではない
「感動」していたのだ
自分がこんな力を得たのは決して自らの意志ではない。だがだからと言って「自分は不幸だ」と自身を殻に閉じ込め、カクシテ、タメラウ、何てことはダメなのだ
人を助ける力があるなら、自分のように苦しむ人がいるのなら、自身が助けるしかないのではないのか?
それが、それこそが、紫雲清夏が力を授かってしまった運命だというのなら……
「ありがとう、リーリヤ」
「清夏ちゃん?」
「ところでリーリヤって、アイドルのヒーローってどう思う?」
「えぇ!?そうだなぁ……確かに創作の中ならインパクトが強いし、キャラとしても立つと思うけど……」
「あ~ごめんごめん、じゃあシンプルに……カッコいいと思う?」
「うん」
「即答か~」
もちろんまだ迷いはある、けれどもそれ以上にアイドルと同じくらい、「なりたい」という意思がそこにはあった
自分を守ってくれたプロデューサーや、自分を常に元気づけてくれるリーリヤ、そんな人たちの「親愛なる隣人」になりたいと
「あ、そうだ思い出した!!」
「うん?何が?」
「私が会ったヒーローの名前!!そうだよねNYと日本に別々でいたって言われてるしもしかしたら……」
「何々、そのヒーローの名前って、もしかして……?」
「スパイダーマン!!きっとそれ系統の似た人だよ多分!!」
☆
『ヴェックショイ!!』
『どうしたウェイド、お前が風邪なんて?ついにそのヒーリングファクターも役に立たなくなってきたか?』
『安心しろローガン、ちゃんとピンピンしてる。お前の爪〇ンポと違って俺ちゃんのマグナムは朝もちゃんと……』
『また俺に切られたいのか?勘弁してくれ、お前のナニを切るためにこの爪があるわけじゃないんだぞ……』
『悪かったって。ったく、なんだってお前には俺ちゃんの股間に響くジョークが通じないんだか。パソコンやスマホの前のよいこのみんなに好評なのに……』
『で、なんクシャミなんかを?俺たちが今何してるかわかってんのか、TVAのババァのせいでまーた別世界行きだ。ただでさえ参ってんだ、ローラの誕生日プレゼントが……』
『ほんと、子煩悩なことだこと。いやーね、多分読者のみんなはわかってんだと思ってんだけどどうやら俺ちゃん、前にケーブルのタイムマシンでやらかしたって言ったじゃん、あのサノスと顔が似てる』
『……サノスってのもドクシャとかいうやつも知らんが、それがどうした?』
『そこで好き勝手やらかしてた時にある女の子を助けてね、その時についた嘘のせいで盛大な勘違いをさせちゃった気がしてね……』
『……なんていった?』
『スパイダーマン』
『何もかもお前と逆だろこのキン〇マ野郎』
これはとある時空においての混ぜるな危険な二人のお話
☆
時刻は朝の4時、花海咲季、月村手毬は早朝ランニングをしていた
「あら手毬、大分私についてこれるようになったじゃない?」
「当然、そっちこそボヤボヤしてると勝手に追い抜くから」
「上等よ!!」
そんなこんなで病院の前を通ると
「あら、清夏!」
「わ!?ってなんだ咲季っちに手毬っちじゃん」
「『今日』もプロデューサーに夜まで付き添ってたの」
「まぁね。何でもナノテクとの親和性が常人より良くて、そのおかげで想定よりも何倍も早く歩けるようになるって!トニーさんもびっくりって」
「……すごいよね、そんな人と交流があるだなんて。それに清夏自身も最近アイドル活動調子いいじゃん」
「そうそう、Pっちが張り切っちゃって『この調子でドンドン頑張りましょう!!』ってね。まぁにしたってPっちは頑張りすぎだと思うけど……だから最近はリハビリの手伝いってよりかは寝かしつけかなぁ」
「ふふっ、大変なのね。でもあなたも無理しすぎないように」
「本当、アイドルと看病の両立ができなくて私たちに負けたって言い訳しないでよね?」
「と~ぜん!!それじゃあたしまだ用事あるからまた学校で!!」
そういって清夏と別れ咲季と手毬はランニングを再開した
「プロデューサーが事故にあったって聞いた時には心配だったけど大丈夫そうね」
「……うん」
「さぁって私たちも負けてられないわね!!」
その時、手毬の携帯から着信音が鳴り響いた
「あ、ことねからだ……もしもし?今私達ランニング中……」
『もしもし!?あぁ、よかった、無事なんだな』
「どうかしたの?」
『なんでも今天川市で武装した集団が出てきたんだってよ』
「えぇ!?!?」
「ちょっと手毬!?落ち着きなさい。ことね其処って学園からは?」
『離れてるから安心しろ~。とにかく安全のため今日は戻って来いよナ』
「ええ、そうす」
そう、咲季が言いかけたその時、
「左……じゃなかった上から失礼!」
「え?」
そういっておおよそ人が出せるとは思えないスピードでさっき病院に戻ったはずの清夏……に似た声をした全身スーツの黒と緑、オレンジの人影が飛び出していった
『咲季、どうした?』
「あ、あぁ、いえ、何でもないわ……ただ『噂のあの人』が出ただけだから」
『おいおいそれって!?』
「えぇ……本当誰なのかしらね?」
「『【バイオレット・スパイダー】』」
☆
『しかし今更ですけどまさか自分の『紫雲』という名字から『紫の蜘蛛』で【バイオレット・スパイダー】とは……スーツにはそんな要素どこにもないのに……』
「別にスパイダーマンだってクモに赤と青なんて色珍しいのにスーツは赤と青じゃん」
『まぁそれもそうですね。ところで清夏さん、どうです『清夏ムズムズ』は?』
「だからその名前辞めてよもー、『スパイダーセンス』ってトニーさん言ってたじゃん」
『だってこっちの方が可愛いじゃないですか』
「まぁいいけど……にしたってすごいなーこのスーツ、Pっちの治療に使われてるのと同じナノテクなんでしょ?」
『目の前で装着したところを見た時にはあまりにすごくて動かないのも忘れて立ちそうになりましたよ』
「そうだよね~トニー・スターク様様……てもうそろそろか……Pっち、通信切るね」
『はい、どうか今日も無事で……授業中に寝ないように』
「さっきまでPっちの隣で5時間寝てたからダイジョーブ!!それじゃ!!」
『……そとでは言わないように』
そうして通信を切るとあたしはウェブのスイングのスピードを一気に速くした。だいぶ慣れてきたけどやっぱりちょっと怖い。この前なんか飛んでるドローンにぶつかって痛かった。私有地で飛ばしてほしい
「でもそれは前提だから……なんてね」
そういって紫雲清夏は、【バイオレット・スパイダー】は今日も悪を追って、友を追って、夢を追って空を駆けるのであった。
「そういえばトニーさん」
「なんだいボーイフレンド君?」
「いやボーイフレンドって……いえ、そういえば日本にもスパーダーマンがいるとのことですが……」
「あぁー……あれは確かに『スパイダーマン』だがちょっとちがってな……」
「?」
「そうだなみんなが知ってるのが『親愛なる隣人』なのにたいしてかれは『地獄からの使者』だからな」
「???」
「ちなみに今はこの地球にいないぞ」
「宇宙人だったんですか!?」
「いやそういうわけではないんだが……」