自称幼女は銀魂世界でぷりちー天使あいどるにレベルアップする。   作:松魚

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「すてジルと指名手配男」

この日、屯所内はとても緊張感に包まれていた。

今日のジルの服装は右横に髪を一か所にまとめて黒のシュシュでくくり淡い水色の睡蓮が描かれた和服を身に着け灰色の膝上までのプリーツスカートをはいた下に黒のスパッツを穿いていた。

ジルは朝起きた時から張り詰めた空気を敏感に感じ取り、何かある!と睨んでいた。

しかし、この屯所の男どもはジルに悟られまいと必死に押し隠そうとしていた。

 

「ジル、今日はお外でめいいっぱい遊んでおいで!ぱぱ今日は怒ったりしないから!今日だけ大盤振る舞いだから、ね?お小遣いだって奮発しちゃうから!だからお願いしますっ!お外で遊んできて下さいっ!」(土下座)

「養娘に土下座してまで外で遊んできて欲しいのかっ!?」

「そうだぜ、ジル!マヨネーズやるから外で遊んで来い。何ならマヨネーズもう1本追加してやってもいいぜ?これで憧れのマヨラーに変身できるんだっ!良かったな、ジル」

「それはテメーだけだ」

「俺と愛の逃避行にでも出かけようぜぃ?夕日の彼方でイチャラブしようじゃねーか。永遠に俺だけを見つめろ」

「私幼児なんですけど口説かないでくれません?」

「「総悟ぉぉおおおおおお!」」

 

近藤と土方が止めてくれたので総悟と愛の逃避行せずにすんだジル。

結局、一番地味な存在が安心できるだろうとの意見で山崎くん事やっちんに決定。

山崎は泣きながら喜ぶという器用なことをしていた。

 

「どうせ地味ですよ、ジミーなんですよ俺は。でも俺はジルちゃんがつけてくれた『やっちん』という素晴らしいあだ名を胸に強く生きていくよぅ!」

 

隊士の皆に横断歩道とか車に気をつけるんだよ、とか知らない人に着いて行っちゃいけないからね、とかお菓子食べ過ぎちゃいけないよ、とかまぁとにかく過保護すぎるほど注意を受けた。

 

山崎と仲良く手を繋いで門を出た時なんか

 

「「「行ってらしゃーい!」」」

 

と盛大に隊士達で送り出してくれた。

屯所を出てからジルは山崎と長椅子に座って茶屋のお団子を食べた。そしてラムネをごきゅごきゅっと一気に飲み干しぷはっと息を吐いた。

 

「うめぇぇえ!……まったく!皆して隠すんだから」

「親父っぽいっ!?まぁまぁジルちゃん。今日は一日俺と一緒に遊ぼうよ?ね」

 

別に山崎と遊ぶのは嫌ではないのだ。だがあのあからさまな態度が腹に据えかねるのだ。

 

「ぶーぶー」

「可愛いっ!」

 

山崎が身悶えしながら叫んだがジルは気にしないことにした。ずいっと山崎の膝に手を乗っけて顔を近づける。

 

「やっちん、教えてよ?なんで皆は私を追い出そうとするの?」

「…ゴメン、それは絶対言えないんだ…」

 

ぷりちー天使ジルを前にして山崎はものすごい葛藤をしていた。

 

ああ、ここで薄情しちゃえばジルちゃんの俺の好感度はグン!と一気に急上昇するけどもしここで屯所に引き返しちゃったら俺が、局長とか副長とか沖田隊長に締め上げられるっ!どうする、俺!究極の選択!

 

と悩んでいた。そこですかさずアタック仕掛けたジル。一向に人の話を聞く構えをみせない山崎にしびれをきらし

 

「シロ、襲え」

 

と冷酷に命令を下した。どこからともなく巨体のシロが出現し山崎に突っ込む。

 

「ぎゃぁぁああああああああああ」

「ぐるぅぅうううううううぅぅうううううぅぅ!」(構ってくれ)

 

山崎とシロはそれはそれは楽しそうに?戯れていてその光景を目の当たりにしたジルは唇をぎゅっと噛んだ。なんだか自分だけ置いてけぼりにされた気持ちになったのだ。

小さな手がスカートをぎゅっと握る。我慢するようにでも我慢しきれなくてジルはキッと精一杯睨み付けた。整い過ぎた小さな紫色の瞳には涙が溜まっていた。

 

「……なんだよなんだよ!皆して仲間外れにして!自分ばっかり楽しんでればいいんだっ!シロにマルカジリされちゃえばいいんだ……やっちんなんか大っ嫌い!」

 

ジルは叫んでやっちんを背に走り出した。

 

「ちょっ!?ジルちゃん!君が命令したんだろうが!?助けてぇぇえええええええええええ」

「ぐるぅぅうううううううぅぅうううううぅぅ!」(遊ぶぞコラ)

 

ジルは一生懸命に走った。

なんで、なんで私だけ?私は邪魔なの?あんなあからさまな態度を出されれば疑うなと言う方がおかしい。せっかく仲良くなれたのに、ようやく信じられると思ったのに。それはこんな形で裏切られるなんて…。

 

無我夢中で走っている間にジルはいつの間にか裏路地にたどり着いていた。

薄暗い場所でそこは以前魚人に襲われた場所に酷似していた。まるで振り出しに戻ってきたかのように。誰も信用できない誰も信じられない孤独の状態に。

 

「……みんなの馬鹿たれ……」

 

じわりと浮かんで下に落ちてはまた浮かぶ涙にジルは辟易しそうになる。

裏切られることに対して敏感なジルは何度その行為に傷ついたか、何度こうして一人涙を流したか数えきれない。

その辛さを人一倍わかっている彼女だからこそ、この現状はとても信じたくないものだった。

 

なんで、なんで?ナンデ、なんで?どうして何も教えてくれないの?

独りは嫌だ怖い裏切らないで傍からいなくならないで置いていかないで必要として名前を呼んで独りは、いやだ!だって、ワタシは弱いから。あの日を思い出すの。ハジメテひとヲ葬ッタ時ヲオモイダシテシマウ。

 

【どうしよもないトラウマは彼女を追い詰める】

 

◇◇◇

 

ジルは独りだった。

 

ぽっかりと穴が広がったような空虚感が胸の内にあった。それはあの親が関係していること。彼女の中に焼き付けられた記憶は永遠に消えることがないことをジルは知っている。知っているからこそ、絶対に裏切らない『人』を無意識に求めるのだ。

絶対に自分を裏切らない、絶対に自分から離れない。

そんなおとぎ話のような人物をジルは求めた。

求めすぎるからこそ、現実はそんな『人』がいないという事を理解させられてきた。

他の世界でもそんなことをしてきたジル。

無意識に思い出せるのは、自分を温かく真正面から受け止めてくれた他の世界の仲間たちのこと。そして、この『ジル』を最初に慈しんでくれた義兄の太陽のような笑顔。

 

「ディーノ、帰りたい…帰りたいよぅ…」

 

抱き締めて欲しい、その腕に。落ち着けるあったかい場所に帰りたい。まるで幼子のようだと思いながらその場頭を抱えてにしゃがみこんだ。

零れる嗚咽を必死に隠そうとして。

すると、ひたり、ひたりと何かの足音が近づいてた。ジルはまだしゃがみこでいた。

ひたり ひたり、と音はすぐ近くで止んだ。

 

「おいおい上等なちきゅう人のメスじゃネーか?」

「オウヨ、これは高く売れるゾ」

 

薄暗い路地を根城にしている服をきた魚人が姿をみせた。

二匹はゲヒゲヒと下卑た喜びの鳴き声を上げ、うずくまるジルに近づく。

 

「下種が失せろ」

 

だが、抑揚のない声が薄汚い魚人共の足を止める。

 

「あ?」「餓鬼ガ生意気なコトを」

 

魚人たちは目玉をぎょろっとさせて訝しんだ。ジルはまったく動こうともしない。

ただ声だけを威嚇をしたのだ。

 

「もう一歩でも踏み出してみろ、刺身にしてやる」

 

冷たい、ほの暗い水のように全てのものを拒絶するかのようにジルは再度警告をした。

だが魚人二匹は聞く耳を持たずに愚かにも笑い飛ばした。。

 

「ギャヒヒヒヒイ!」

「この小童が嗤える冗談を言いやがル!!」

 

笑いながらジルを捕まえようと足を再び動かそうとした。一歩目を踏んで。

 

「高く売ってや」

ザシュ!

「カスが」

 

魚人は見えない空気のような鋭利なものによって物言わぬモノへと変えられた。血がブシュゥと辺りに飛び散る。

ジルは魚人の血がべとりと頬にかかっても気にしなかった。

むしろ、綺麗に細切れされた仲間を仲間だったモノをぎょろぎょろと目玉を動かして必死に見た。

 

「はぎはぎぎぃいいぃいいいいいいい」

 

魚人の悲鳴。なんとも面白い鳴き方とジルは愉しそうに一歩を踏み出した。

 

「魚人の解剖ってしたことないんだよな」

 

標本でも作ろうかな、それともホルマリン漬けにしてみようかなと首を傾げて見せる。

 

「貴様が協力してくれるのならその秘密も明らかになるのだろうな。世に貢献できるのだぞ、嬉しいだろう?その身を永遠に保てるのだから」

 

ジルはそれはそれは綺麗な誰もが頭を垂れてしまいそうなほど威圧感と絶対零度の美しさを持ちながら極上の微笑みを浮かべた。紅い瞳を爛々と輝かせてさも愉しそうに笑った。

 

「サぁ、お前はもっと愉しませてくれるのだろう。このワタシを。飽きさせないでね」

 

と小さな手を前にだし、恐怖にひきつった魚人に対して問いかけた。

 

魚人は、小さな蒼の女帝の餌食にされた。そして血まみれになったジルはまた、ひとりしゃがみこみこんだ。血だまりに転がる物体Aとその残骸を放置したまま。

すると、また誰かの気配がやってくる。

 

「餓鬼」

 

男の声だった。ジルは顔を上げぬまま男の言葉を否定した。

 

「餓鬼じゃないもん」

 

男は冷淡な声で斬り捨てた。

 

「テメェの名なんざ知らねぇよ」

 

ジルは名乗った。

 

「ジルだもん」

 

男は一瞬だけ無言になり、ジルに問いかけた。

 

「……餓鬼…これは貴様がやったのか」

 

ジルは再度否定した。

 

「餓鬼じゃないもん」

 

男はまた一瞬だけ黙り、質問をした。

 

「………ジル、これは貴様がやったのか」

 

男の言いたいことはわかってた。この現場はお前がやったことなのかと意味していることを。ジルは応えたらまた面倒くさい事になるとわかってたから黙りこんだ。

 

「………」

そしてまた屯所の皆の事を考えて涙した。男はジルが反応のない様子を見て動いた。

ジルはどうせ消えるだろうと思ったが、予想を大きく上回った行動に男は出た。

ふわり、と自分の体が浮き上がり目の前には見知らぬ男の顔があるのだ。

 

「……なにするの…」

 

きょとん、と目を瞬かせどうやら自分はこの男に抱っこされているのだとようやく気がついた。

 

「別に面白そうだからな。拾ってみるんだよ」

「私、捨て猫じゃないもん」

「こんな血まみれな猫がいるかよ。捨てジルだな」

「変なあだ名つけないで……おにーさん誰?」

「この顔見て知らねーのか?どんな箱入り娘だ」

 

変な餓鬼だと男は思った。妙に堂々としている、と。見た目幼児なくせにいっぱし前に世渡りを済ませた大人のような印象を受けたのだ。

 

「だって、ぱぱは余計な情報教えてくれないもん、危険だからって」

 

へにょりと眉を下げ、ジルはまた泣きそうになった。

男は目を細めお前飯食わされてるのか?と尋ねた。

ジルは異様に軽すぎて生きているのが不思議に思ったからだ。

 

「随分と過保護なダメ親だな。全国指名手配されてる奴すら教えないとはな」

「……で、おにーさんの名前はなに」

 

男は呆れたように名乗った。

 

「高杉だ、高杉晋助」

「全国に指名手配されてるなんて」

「なんだ」

「有名なんだね、高杉さんって。女にモテモテ?」

「………まぁな…」

 

思わぬ質問に面喰った高杉だった。まさかそんな笑顔で言われるとは思ってなかったからだ。

 

「とにかく行くぞ」

 

ジルを抱っこした状態でジルの頭から自分が使っている衣をかぶせた。

 

「自分で歩けるもん!それにこれ邪魔!」

 

うぅ~と可愛い唸り声を上げながら衣と悪戦苦闘する世間知らずな幼児。高杉は観察しながら面白いと思いながら歩き出した。

 

「俺が目立っちまうんだよ、そんな血まみれ状態のお前連れたらな」

 

衣の隙間から顔をのぞかせたジルははっきり言い切った。

 

「十分見た目怪しいもんね。誘拐してるみたい」

「俺はテメーを拾っただけだぜ?」

「だからテメーじゃなくてジルなの!」

「うるせぇな……ジル。これでいいだろうが」

「うん」

 

変な餓鬼拾っちまったぜ…。と高杉は妙な気持ちになっていた。

でも、捨てる気はさらさら彼の中になかった。なんとなく気に入ったから、かもしれない。

 

【捨てジルは全国指名手配男と出会って拾われる】

 

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