感想に性癖暴露が溢れてて笑ってしまった。
皆、どうやら俺達は、“親友”のようだな…!
「おう! 先生さん。うちのコロッケも食っていってくれよ」
「おー、おっちゃん。なら一つ貰ってこうか」
そう言うと、待ってましたとでも言うように熱々のコロッケがす、と差し出される。値段を聞くと、店頭に貼ってあるそれよりも明らかに安い物が口にされた。
「安すぎない? ちゃんと払うよ」
「いやぁ、これはお礼だから! ……次からはちゃんと取るぜ?」
ショーケース越しに身を乗り出して、こちらの背中をばん、と叩く。手の中の熱いコロッケを頬張ると、ホクホクとした旨味が口に広がった。
「商売上手だねぇ」
「それほどでもないさぁ」
ウララちゃんとネイちゃんによろしくなぁ、と手を振る肉屋のおっちゃんに手を振り返して。ついでに、最後に「なにか変わった事があったらまた教えてな」と言って背を向けた。
「あら? 先生さん。うちも見てってよ。割引してあげるから」
そう言いながら、おまけだから、と無理やり手渡された店頭に置いてあった売り物であろう花が一輪。
だれか渡す人いないの? とおせっかいを言う花屋のおばちゃんに、まだ店から出てもいないのにこちらに声を投げてくる声がある。
少し前にこの商店街で偶然居合わせたひったくりをその場でひっ捕まえてから、今日までこんな感じだ。気が良すぎるなぁ、と思いつつ、あの子達の傍にいる人達なら当然か、と納得している自分もいた。
「学校でのネイちゃんの様子も、出来たら聞かせてねぇ」
「ネイちゃん?」
「あれ? 会ったこと無かったかい? ほら、これ」
花屋のおばちゃんが指差す先には、“頑張れ! ナイスネイチャ! ”と書かれた大きなポスターが。
ただ、一つ気になるのは使われている写真は、どうにも恥ずかしがって顔を赤くしながら顔を隠そうとしている写真にしか見えないのだが。
「……これ、本人の許可取ってます?」
「やだなぁ、取ってるよ。眠そうな様子の時に、ちょいと」
「うーん、強かぁ……」
貼ってある店によって写真が違うよ、と笑うその様子に少し呆れながら改めてそのポスターを見る。
両耳に赤と緑のメンコを着けて、赤毛をふんわりとしたツインテールにしたその少女のことは、確かに見たことがあった。
「しかし、先生さんみたいなのがトレーナーさんとしてネイちゃんに付いてくれたら安心なんだけどねぇ」
「んー。俺はトレーナーってわけじゃないからなぁ」
「分かってるさ。でも、あの子前になにに影響されたのか「イケメン彼氏が欲しい」だなんて言ってた時期があってねぇ」
それはあまり言いふらして欲しくない類の話では? と思ったところで、背後から「う゛にゃあぁぁっ!」という奇声が聞こえてきた。
振り返ってみると、丁度今話題に出されていたナイスネイチャその人が買い物袋を片手に提げてそこに立っていた。
「お、おばちゃん! 何言ってんの! 私そんなこと言ったこと無いし!」
「えぇ? そうだったかしら。でもこの人はどうなの? 若いし、かっこいいじゃない」
「う゛にゃあぁっ! やめ、やめろぉーっ!」
手に下げていた買い物袋を放り出して相手の口を塞ぎにかかる。
仲の良さが透けて見えるその様子を見て微笑みながら、放り出された買い物袋を空中で受け止める。ちらりと見ると、卵が入ってるのが見える。危ない危ない。
「いい? 私、そんなこと、言ってない」
「はいはい、そうだったねぇ」
もう、と両手を腰に当てて溜め息をついてから、そこでようやく自分の手に買い物袋が無いことに気がついて焦ったようにきょろきょろしだした彼女に、これか? と手の内の袋を持ち上げて声をかけた。
「あ、ありがとうございます……。あれ、虎杖先生じゃないですか」
「お、分かるんだな」
「そりゃいつも校門にいますし」
いつも一応スーツだが、今は私服だ。分からなくなる人はそれだけで分からなくなるものだが。この少女にとってそんなことは無いらしい。
「料理か? 休日なのに偉いなぁ」
「はい。……あ、おばちゃん。食材ちょっと預かっててくれない? 帰りに取りに来るからー」
先生も言われたこと、忘れてくださいね。とそう言い残してジャージ姿の彼女はぱたぱたと忙しなく何処かに走っていってしまった。
「ね? ネイちゃん可愛いでしょ。どうだい、先生」
「反省しましょう? 怒られてたよね?」
そうだったかねぇ、ととぼけた顔をするその様子に思わず笑ってしまう。今の様子だけでも、ナイスネイチャがこの商店街の人たちに愛されていることはとても伝わってきた。
「あの子のこと、気にかけてあげてねぇ」
店を出る際、そんな事を言われた。振り返ると、もう店の中に戻っていってしまった彼女の表情を窺うことは出来なかったけど。ちゃんと頭の中に留めておこう、と決意をした。
ちなみに、先程の肉屋にも確認したらナイスネイチャのポスターがひっそりと貼られており、使われている写真はニマニマしながら猫と戯れている場面のものだった。
ポスターならもっと目立つところに貼らないと、と言うと、目立たしたらネイちゃんに怒られちまう、と返ってきた。やっぱり許可取ってないじゃないか。
◯
最近、何処からか視線を感じることが増えた。
正直に言うと何処から見られているのかは分かっているのだが、そちらに視線を向けるとすぐに隠れられてしまうのでどうにも事態が進行しない。
それとは別に、すぐ近くで頻繁に「ミ゛ッ」とか「ヒョエッ」みたいな断末魔が聞こえてくるようになったのは一体何なのか。
その原因を突き止めるべく、俺は楽しそうに妹たちの話をしてツヤツヤした顔で去っていったヴィルシーナに手を振って、そんな声が聞こえてきた草むらを覗いてみた。
なんか、ピンク髪の頭にデカリボンを着けた少女がスヤァみたいな安らかな表情をしてぶっ倒れていた。
(……なんか、いたな)
一度戻って、目を擦ってみて。もう一度覗いてみる。広がる景色は変わらなかった。
「し、死んでる……っ」
彼女は息をしていない上に魂が抜けかけていて。それに焦って反転術式を用意し始めたところで、突如抜けかけていた魂が逆回しの様にぎゅるんっ! と体に戻って息を吹き返した。
「……えぇ?」
「はっ! あまりの尊みにまたっ! ……ゔ、ヴィルシーナさんの弟様っ?」
「違うが??」
違うんですお邪魔をするつもりはなかったんですただと尊みの過剰摂取で倒れちゃっただけなんですっ、と一息に言い切って即座に土下座の体勢に移行しようとする少女。
そんなことよりも数瞬前までほとんど死んでいたことを気にしてほしいんだが、と慌ててそれを止めることとなってしまった。
「あ、アグネスデジタルです……。とんだご迷惑を……」
「いや、そんなことはいいんだよ。本当に体に異常はないんだな?」
「? はい、この通り」
その場でぴょんぴょんと飛び跳ねて見せる。信じられないことに、本当に何の問題も無いらしい。呪力も無いのに摩訶不思議だ。
いつものことだ、と聞いてとりあえず理解することは諦めた。
「あなた様の隣にいると、ヴィルシーナさんが何時もより年相応のお顔をのぞかせたり、デュランダルさんがとっても嬉しそうな笑顔を浮かべられたり……っ。おっと鼻血が」
「落ち着け落ち着け」
ハンカチを差し出すと、恐縮しながらも受け取ってくれた。その鼻血もすぐに止まっているし。どうにも常識が通用しない生態のようだ。考えるのはやめた。
「それでですねッ! 貴方はどのウマ娘ちゃんが最推しなのでッ!?」
「最推し? うーん……」
あまり考えていなかった。親しくしてくれている娘は数人あれど、推しと言われると少し違う。
「俺は、……そうだな、俺は」
少し考えて、口を開く。隣に座ったピンクの少女は、先を促すように身を乗り出してうんうんと頷いている。
どうにも聞き上手な娘だ。こう楽しそうにされると考えていた以上の事を話したくなってしまう。
「君たちが全力で走る姿が好きだよ、俺は」
「ヒョエッ」
「皆に何も考えずに“今”を楽しんでもらうために俺達大人がいるのさ」
レースを直接見たことがあるわけではない。精々彼女たちが練習で鎬を削る姿を見た程度。
でも、本気で走りに取り組んで、勝ち負け一つで涙を感情を爆発させている彼女たちの姿はとても眩しかったから。
「そ、それは──
──箱推しということですねっ! 」
「うん?」
「私もなんですっ! 走ってるウマ娘ちゃんを間近でみたいからこの学園に入学したんですよぉ」
「うん??」
同志、と呼んでこちらの手を握ってくる彼女の言葉に首を傾げる。確かこの学園は、全国から一握りの天才しか入学できないそんな感じのところではなかったか。
「君は走らないのか?」
「え? 私ですか? 私なんかよりずっと魅力的なウマ娘ちゃんが沢山いるんですから! 同志にはぜひそっちの方をですねぇ──」
「君が」
俺は知っている。彼女たちの魂にはそもそも“走りたい”という欲求が大なり小なり本能として刻まれていると。だからきっと、“自分など”というこの少女にもきっとそんな気持ちはあって。
「君が、それでいいならいいけれど」
なにより、何かを誤魔化すような笑顔を見せる彼女にも、もっと楽しそうに笑ってほしかったから。
「俺の言う“皆”には、君も入ってるよ」
「ヒェッ、あ、その……」
いつか君の走りも見たい。そう言うと、途端に今までの勢いが萎んで人差し指を突き合わせながら黙り込んでしまった。
間違えたかな、と少し不安になり始めたところで、顔を背けたまま小さな声で「た、偶になら……」と言ってくれた。
「ほんとーにっ、私の走りなんて大したことないんですから。中途半端なんですからっ。がっかりしないでくださいねっ!」
「しないよ、そんなの」
自分には無い、もう戻らない青春の中でもがく彼女たちを笑うわけがない。少し頬を赤らめて頬を膨らませるデジタルの事を見て、一つ笑った。
「あぁ、そうだ。デジタル。この学園のウマ娘に詳しいんだよな?」
「え? はいっ! 何でもござれですよぉ」
「なら、右耳だけに青いメンコを着けて、茶色っぽい長髪をこう、後ろで一つに纏めてる娘に心当たりはないか?」
そう言うと、数秒考えた後に、デジタルは一つの名前を挙げた。
◯
「君も、そろそろ出てきたらどうだ?」
そう言って後ろを振り返ると、木の陰から右耳だけに青いメンコを着けて、茶色っぽい長髪を後ろで一つにまとめてるウマ娘がそぉっと顔を出した。
「私が、見えてるんですか?」
「? 制服着てるし、生徒だろ? アドマイヤベガさん」
「……いえ、違います。
──ーアドマイヤベガは、私のお姉ちゃんです」
アドマイヤの愛の重い方(の妹)登場!
本人登場まで行かなかった。どうしよ。
ついでにアグネスのヤバい方も登場!あと黒歴史時代のネイチャ
あとマチカネの煩い方も出したいな