おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生と人外生徒の明日はどっちだ、賢者の石編です。
R15は、予防処置と寮監先生の苦行でできています。

因みに、猫先生は、イケイケ時代の寮監先生を知っているので、欠片も彼の下半身には信頼を寄せていません。
猫先生の胃がとけないといいね。


グレイブス氏からの手紙と賢者の石 ②

 一年生の最近の話題は、箒の飛行訓練だ。

 

 私?

 ワクワクどころか魔眼暴走中につき、眼鏡ではなく包帯の着用となった。

 金曜日だったから、まだよかった。

 

 寮に戻って、あらためて目を確認。

 眼鏡を着用するまでもなく、寮監先生が異常に気がつく。

 ワイのお目々、瞳孔が縦割れに。

 

 寮監先生は、マダム・ポンフリー&マクゴナガル先生に、しこたま怒られた。

 校長先生に見てもらったら、しばらく授業はお休みで、先生のところで自習してね、だって。

 

 寮監先生、どんより。

 彼を曇らせてもおいしくない。

 

 私もどんより。

 マクゴナガル先生、校長を睨む。

 

「見えず、喋れずでは、どうにもならぬじゃろう。」

 

 んで、ワイ、介護生活に突入。

 まぁ何となく動けるし大丈夫だよ。

 って伝えたら、全員にお説教された。

 おトイレだってシャワーだって、一人きりなら自分でできるもん。

 

「事故がおこるのが目に見えている。」

 

 大丈夫だもん、たまたま視界に入っちゃってもイケるよぅ。

 ちょっとチュキチュキになっても、記憶改竄を校長先生にパスするし。

 

「何か勘違いしてるようだが、魔法界とマグル界での慣習は違えど倫理は隔絶していない。

 そうそう不始末をごみ箱に捨てるわけにはいかぬ。

 そして魔眼の能力だが、魅了に近いが性質は違う。

 魔力の質があえば、相手を衰弱させる事ができるだろう。

 

 吾輩に死体処理をしろと?

 今回は吾輩の不始末だが、敢えて言おう。

 貴様の危うさには厳格な保護者が常に控えておらねば不安だ。

 

 このお調子者の粗忽者が!

 よく今まで無事に生きてこれたものだ。

 君の叔母には敬意を覚える、いや、同情するぞ!

 叔母に感謝し祈れ、馬鹿者がっ!」

 

 あぇ?

 なんか、それ...

 

 寮監先生が唸りながら教えてくれる。

 

「吸精の能力だ。貴様、不都合な事は全て忘れるのか?」

 

 やべ、忘れてた。

 ワイ、お目々と魅了が揃うとチュウチュウ発動だった。

 また、先生の事、チュウチュウしちゃった?

 

「確認時だけだ。それも一瞬だ。下品な物言いをするな」

 

「セブルス」

 

「たいした話はしておりません。」

 

「とても、とても私は心配です。頓(とみ)に最近、私が何を心配しているかわかりますか?」

 

「自寮の英雄殿だけを気にかけるとよろしいかと思いますぞ」

 

「皮肉では誤魔化されませんよ。あと数年先を思うと、胃が」

 

「まぁまぁ、封印用の魔道具を取り寄せておる。一時的じゃが拘束の魔道具を使う事になろう。」

 

 で、介護生活、教授室で自習して、夜になったら自室に送ってもらう生活になる。

 そいで三日目に拘束の魔道具到着。

 

 ワイ、自粛期間終了。

 でもワイの、人権と外聞が終了。

 

 首輪だった。

 

「ぎりぎり女の子でも大丈夫なデザインにしたぞぃ」

 

 前も同じ事言われたけど、こいつぁ格が違う。

 赤い首輪である。

 赤い首輪に銀色のルーン文字が取り巻いている。

 

 どんなルーン?

 

「栄光と繁栄のルーンを主体に強固な囲いとしておる。

 つまり封じるより留める。

 楽しき祝祭の輪じゃ。

 遊べや遊べと誘っておる。

 閉じた輪に踊らせるものじゃ。」

 

 裏地は黒のベルベット。

 良く見れば縫い目は黒と銀の糸だ。

 

 これ絶対、普通の糸じゃないよね〜。

 あー、ワイ、討伐対象?

 

「悪しき力には、遊びに誘う術等効かぬよ。

 君の力の元は、幸せになりたいという願いが元じゃ」

 

 と、優しい慰めの言葉をくれる校長先生。

 でも、拘束具を睨む黒い人は地獄の使者みたいな空気になっていた。

 

「髪を上げて、首を出せ」

 

 ハードで鬼畜な寮監先生の目が座っている。

 それでも粛々と魔道具を取り出し、私につけるために、嫌そうに手に持った。

 

 自分でつけるよー?

 

「同じ事を言わせるな、髪を上げていろ」

 

 たぶん、これを嵌めたワイと一緒にいるだけで、二次被害だ。

 どんなSMプレイや。

 やっぱり乗馬鞭も用意せんとアカンやんねー。

 とか、考えたけど伝えるとマジギレされそうなんで、何とか聞こえないように考えを散らす。

 

 先生、相変わらず貧乏くじやんね。

 

「鍵の代わりにセブルスの魔力を通すんじゃ」

 

「まさか、私の勘違いでなければ、その魔道具は所有者を指定するものですか?

 そのような物を人にするとは」

 

「言いたいことは分かる。じゃが彼女の場合は守りになるんじゃ」

 

「これではまるで、中世の」

 

「ミネルバ」

 

「なぜ、吾輩がと問うてもよろしいですかな?」

 

「今後の予定もある」

 

 ピリッとなるマクゴナガル先生。

 

「どういう事です?」

 

「例の手紙の事もある。」

 

「私の心配は取り越し苦労だと?」

 

「同行者は女性をつける。それに今は何もできぬし、なによりも暴走した時に馴染んだ相手なら、抑えられよう」

 

 あー、やっぱり、私、魔物成分が増えてるんですね?

 

「着けるぞ」

 

 んで、首輪装着後、目の前の顔を見上げる。

 寝不足は少しマシですか?

 

「目を見ろ」

 

 魔力が通る。

 首輪が、暖かい。

 知ってる暖かさだ。

 なるほど、魔力に馴染みがないと、これは違和感だ。

 すっと魔力が通った途端、首の違和感は失せた。

 これ、きっとお風呂でもこのままだ。

 自動で汚れが落ちるのかな。

 体の成長に合わせサイズもかわるのかな。

 

 だとしたら、相当、お高い拘束具。

 そう、所詮、拘束具だ。

 

 大丈夫よ、いつでも外せるわ。

 いつでも、支配はできるもの。

 ただ、壊してしまうのは、つまらないもの。

 自分から、捧げてくるなら受け取ってあげる。

 私、支配のゲームでは、負け無しよ。

 

 …

 …

 …

 

 おぇっ、何だか目が回るぞ。

 

「目を見ろ」

 

 合わせてみる。

 黒い瞳。

 黒い髪。

 顔色は悪い。

 髪は相変わらず。

 黒い瞳だけど、やっぱり東洋人の瞳とは違う。

 虹彩は少し薄い灰色が入っている。

 じっと見つめる。

 

 ふふっ

 赤い何かが見えるかしら?

 彼の虹彩の奥。

 血に混じる何か。

 何かしら、とても不愉快。

 赤い、赤い、あかい、糸、いいえ、穢れた何か、この人を捉える、なにか

 

 ふふっわかった?

 今の私、わかった?

 この人を選んだ理由よ。

 

 ふふっ、ゲームよ。

 私は強いの。

 産まれた時から知っているわ。

 

 遊戯盤のテーブルについた相手が、男だったら負けないわ。

 私は人間の男になんて負けないの。

 そして、ほしいと思った獲物は、絶対に逃さないの。

 私は強いのよ。

 昔から、火炙りになるまで、私は負けたことがないわ。

 

 …

 …

 …

 

 おい、結局、薪を積まれて焼かれてんだろうがっ!!

 

「聞こえているか?」

 

 うん、なんだろう。

 すごく大事な事を見た気がする。

 けど、思い出せない。

 

「おい、どうした?抑制が効きすぎたか」

 

 大丈夫、オーケーオーケー。

 見えている。

 ここに私はいる。

 先生こそ、何か吸われてませんか?

 

「抑制が強いようですが」

 

「出ているものを抑えただけじゃ。

 傷つけているわけではない。

 出てはならぬ領分を教えている。慣れていくだろう」

 

 手を伸ばす。

 貴方は私の艀(はしけ)だ。

 そっと握り返される。

 冷たい手。

 硬い骨を感じる指。

 

 あぁ苦しい。

 あぁなぜ、苦しい事を我慢するのか?

 

 だって、誰も傷つけたくないの。

 私がいる事で、誰も苦しんでほしくないの。

 幸せでいてほしいの。

 私がいることで、死んでほしくないの。

 怖い。

 

 大丈夫よ。

 笑って。

 大丈夫よ。

 いつも私達の愛を殺しに来るけれど、私は勝ってきたわ。

 この遊びは、私が得意な遊びよ。

 ほら、この勝ち目を手放しては駄目よ。

 

「馬鹿が、意識をしっかりもて」

 

 指を絡ませて、己の輪郭を捉える。

 握って。

 

 命を感じるでしょ?

 この世界にある、命。

 失われやすく、あっという間に消えていく。

 相手のルールで勝たなくてもいいのよ。

 負けなければいいの。

 私のルールで勝つのよ。

 奢った者から掠め取るのよ。

 

 私は略奪者。

 誰かを守るゲームは得意よ。

 敵が男なら、勝てる。

 

 酩酊した視界が戻る。

 ぶれた世界が落ち着いてくる。

 

 私は、葵だ。

 

 この世界に生きている。

 そう生きている。

 前世の私が、産まれない世界。

 この世界の未来に、私はいない。

 知ってる作家も、知ってる歌手も、知ってる俳優も映画も、ちょっとずつ違う。

 そう、ここは知らない場所。

 この世界。

 私の知らない、私がいない世界。

 葵の世界。

 怖い。

 私は葵になった。

 

 そう産まれたのは、この世界。

 マーガレットだけが、私の家族。

 突然放りだされた、知らない世界。

 

 怖いの。

 私は産まれた時から、知っている。

 大人で明るい貴女と、臆病で攻撃的な私。

 そして産まれた時からいる、私。

 葵は、ここで生きている。

 

 それでも、怖いの。

 そう、生きてる。

 イタズラをしよう。

 ゲームをしよう。

 私は負けた事が無いわ。

 愛で焼き殺されなければ。

 そう、誰も死んでほしくないの。

 

 怖かった。

 それが11歳の私が願ったこと。

 そしてそれは変わらないの。

 昔も、今も、これからも、知らぬ世界でも。

 輪郭が揃う。

 目の前の人を眺める。

 とても新鮮だ。

 

 

 寮監先生、しっとりタイプで敏感な人用のシャンプーだと、髪の毛がぺったりしないと思うよ。

 

 そう伝えたら、唸った。

 唸って、私の手を振りほどくと、頭頂部を拳骨でぐりぐりされた。

 淑女への扱いとちがうー!!

 

 ***

 

 楽しげに少女が出ていく。

 彼女はいつも楽しげだ。

 何か見えぬおとぎ話の世界に暮らしているかのようだ。

 

 だが、知らぬ訳では無い。

 己がどんな場所にいるのか。

 欲望の世界に、汚泥の中にいる事も。

 

 護衛は寮付きゴーストの血みどろ男爵だ。

 彼も彼女の血筋であろう貴婦人を当時の宮廷で見知っているそうだ。

 詳細は語らぬが、心根が美しく麗しく、悲劇の末に亡くなった為に、皆記憶に残っているそうだ。

 身代わりとなり、自ら命を捧げたと。

 勿論、それに値する相手ではなかったのか、騒乱の種となったらしい。

 

 今世の末裔には幸せになってほしいと、ゴースト達からも願われている。

 それを見送ってから、マクゴナガルは言った。

 

「私は不祥事で、同僚を処分したくないのですが?」

 

「何の事ですかな?」

 

 しらっと答えるが、男の振る舞いは度を越している。

 勿論、校長の指示だろう。

 あの魔道具を用意したのも校長だ。

 

 彼女を依存させようとしているのは明白だ。

 

 手の内に置いておく、厄介な輩に取り込まれないように、だろうか。

 守ろうとしているのは分かる。

 

 だがやり口が最低だ。

 特に今回は度を越している。

 あの拘束具は中世で使われていた奴隷の首輪と同じ原理だ。

 所有者を表す焼き印も同じである。

 それは守りであると同時に、誰の持ち物であるかを示す物だ。

 例え事実は違えども、彼女を彼のものにしたとなる。

 

 つまり男二人は、彼女の処女性を否定するような物品を使ったのだ。

 多分、大方の貴族は彼女の複雑な立場を理解し、首輪を許容するだろう。

 建前を理解し、これで彼女の血を継子に望まれても拒絶する理由ができる。

 だが、そうしたレッテルを本人の同意なく、意味を全て知らしめることなく使うことは、あってはならない。

 

 例え、本人は了承するだろうともだ。

 それは庇護者のすることではない。

 そんな無情な行いをするとは、実母が生きてここにいれば、この男どもを殺すだろう。

 

 何より憐れだった。

 強力な魔導具の反動の衝撃を受けた時、頼ったのは目の前の男だ。

 彼女は苦しみを訴えもせずに、男へと手を伸ばしその手に指を絡めた。

 

 信頼だ。

 

 貴方だけは信じているという姿に見えた。

 だがどうだ。

 彼の男の瞳の冷ややかさは。

 教育者として真っ当な部類ではある。

 癇性で気難しく、それでいて見えぬ気配りをし、厳格に事を運ぶ。

 守れぬ約束はしない、と、信を置ける人間だ。

 どれもが男の姿であるが、マクゴナガルは知っている。

 それは教育者という表層の顔、学内の立場内の話だ。

 

 手管をしらぬ、うぶな男では無い。

 むしろ、女には無情なタイプだ。

 愛した女以外は、石ころの扱いをするだろうという、確信を持っている。

 

 嫌な信頼感だ。

 実際、この男のプライベート、女関係は最低だろうと考えている。

 学生時代の諍いを、知ってはいる。

 彼の想いの相手も、経緯や結末も知ったうえでの実感だ。

 それは美しい話でまとめられぬし、なかなかに生臭い。

 その視点で見れば、隠しきれていない。

 

 彼は十分に、ろくでなしだ。

 長年の付き合いだからこそ、知りたくない部分でもあり、仕方ないとも許せてはいた。

 その矛先が生徒に向かなければ。

 学生の頃から知っているが、彼は、非常に厄介な部類の男だ。

 派手な女遊びをする輩のほうがわかりやすいが、この手の、実に中身を見せない男こそ、遊びも嘘も巧いのだ。

 遊びに不慣れで女の影が見えない、などというのは、子供の頃の話だ。

 

 線が細く、生活力がない、繊細な男という皮を好む女はいる。

 影がある男、少しだらしない部分のある男、完璧ではない男のほうが、実は女が切れないのだ。

 歳を重ねた今ならわかるが、所謂、色男と大方に評される輩は、女への奉仕の努力をしない者が多い。

 女に与える餌が少ないのだ。

 それがそもそも無愛想でろくでない男が、ちょっと見せる優しさを振る舞えば、それは色男の流し目が霞む餌になるのだ。

 

 勿論、裏付けとして、そうした一般論だけでなく、一時期、非常に荒れた生活をしていた頃の事も覚えていた。

 ほぼほぼ、女の家を渡り歩いていたというのも知っている。長続きどころか、正常な関係を築いている様子さえない荒れっぷりだった事もだ。

 原因も改悛への過程も知っている。

 故にマクゴナガルは、彼の知性は信頼しているし、学内では、そうそう倫理に反した行いはしないと理解はしている。

 だが、どうしても女に関しては、不安だった。

 娘の心を預けたいなどと、進んで考える相手ではない。

 

「校長、何をお考えですか?

 彼女に身内がいないなら、適切な家庭での生活をさせる事も可能です。

 わざわざ、独身の教諭にあらゆる保護の権利を与えるのは、非常に不適切です。

 

 言わせてもらいますよ。

 わざと貴方方は、彼女に不名誉な扱いを敷いています。

 理由があるのでしょうが、私としては納得ができません。

 セブルスがあの下劣な輩と同じと言っているのではありません。

 そして彼女の血の力を不穏と断じているのでもない。

 

 わかっておりますでしょう?

 校長、貴方はわざと、彼に渡される。

 そしてセブルス、貴方はわざと、彼女を当然のように受け取る。

 私がその嘘を見抜けぬとお思いですか?

 理由を、理由を仰っていただきましょう」

 

 それに校長は、顎を引き息を吐いた。

 

 そして拘束具が入っていた箱を指し示す。

 そこに押されている焼印、贈答者の名を見せた。

 名は純血貴族、古参の名が数名あった。

 古く、今隆盛の貴族家では無い名もあるが、いずれも歴史に名が載るであろう家の者達だった。

 

 あの首輪の出どころを知り、その妄執にマクゴナガルはゾッとした。

 

「彼女の存在が明らかになってから、想像以上の声があがったのじゃよ。

 まず最初に願われたのが、彼女をマグルには絶対に嫁がせぬ事じゃ。

 

 それはもう、恐ろしい数じゃ。

 次に、養育や後ろ盾の申し入れも多数。

 ただし、婚姻に関しては長子ではなく分家となる。

 

 これもまた、選んで揉めるとわかる。

 では、誰もが納得するにはどうしたらよいかと、一番煩い輩に問うた。

 

 すると馬鹿な答えが返ってきた。

 嫁がせず。

 誰のものにもならず。

 彼女自身が選び。

 従える者なら良しとする、とな。

 さらに彼女の子が、娘が生まれたなら、皆、財を与えて養うとまでな。

 

 そんな悍ましい答えが返ってきた。

 それも一人二人ではない。

 真実、それも真剣にじゃ。

 魅了された者は、相手が死んでも解けぬ呪いにかかるようじゃ。

 

 ただ、彼らの心配は妄想ではない。

 血の雨が降るという予想も、冗談ではない。」

 

「その者達は、彼女の亡くなった血縁と縁があったと?」

 

「侍っておったが、愛人でもなんでもない。

 賛美し崇拝していただけじゃよ。

 いずれも儂と大差ない、枯れ木のような年寄りじゃ。

 まっこと己自身を顧みる心持ちになった。

 

 そこで彼女は、大人になるまで、この学びやで、誰を選んでもよくない事になる。

 噂になる事さえな、よくない。

 マグル出身であれば、まこと想像が簡単であろうし、純血貴族であっても横槍が入るであろう。

 

 そう結局、誰を選んでもろくでもない事になる。

 じゃが幸いにも、彼女が今のところ選んでいるのは、セブルスじゃ」

 

 その言葉に当人は、嫌そうに唇を曲げた。

 

「幸いでも何でもありません。彼は教育者であり、彼女は教え子です。

 まして彼女は子供です!

 あの首輪、あんまりじゃありませんか!」

 

「そうじゃな。

 じゃが。あれで大方は黙る。

 この男の血筋であれば許容範囲。

 何よりセブルスは、子供を相手にはしない。

 そして揺るぎはしない。」

 

「利用はするでしょう。貴方と同じく」

 

「耳がいたいのぅ。

 彼女が望む事ならば、誰も否とは言わぬ。

 そして、現状、我々が注力すべきは、この事ではない。

 彼女は大丈夫じゃ。

 むしろ、セブルスを健康にしてくれるかもしれぬ」

 

「バカバカしいですな」

 

「ミネルバの心配を揶揄するわけではない。

 だが、逆を言えば、彼以外の愛に幻想を掲げ描く者では太刀打ちできぬ。

 多くを求め、多くを望み、多くを奪う者では、無理じゃ」

 

「言葉で遊ぶつもりはありません」

 

「では、一つ約束しよう。

 彼女が望まぬことはしないと。

 セブルスもじゃ」

 

 カッとなる。

 酷い嘘が含まれた言葉だとマクゴナガルは思った。

 だが、彼女の怒りをわかっているのか、ダンブルドアは続けた。

 

「嘘もな、ずっとつき続ければ、真実となる。

 そして愛もじゃ。

 愛を演じ続ける事は無意味ではない。

 彼女も含めて、少しだけ信じてほしいのじゃ。

 必ず、善き答えを出せると」

 

 それは懇願の響きが含まれていた。

 沈黙が返る中、ダンブルドアは彼女に手紙を渡した。

 

「鑑定してもらった。

 直筆じゃそうな。

 彼が、彼女を呼んでいる。

 接点が分からぬ。

 じゃが、血の力が原因と考えるなら、招待に応じることも考えねばならぬ。

 嫌な話じゃが、特定の相手を置いておかねば、不安なのじゃ。」

 

「他に人選はないのですか?」

 

「逆に聞くが、実年齢を考慮し、口説かぬ男が騎士団や闇祓い、ミネルバの知己でおるかの?

 既婚者は外せ、万が一の不和の種をまいてはならぬ。

 ちなみに男じゃぞ、現役のな。

 マグル、スクイブではない。

 少なくとも半純血、そして名家の流れだ。

 その上でじゃ、そもそもが多少の厄介事、彼女の能力も含めて処理できる者だ。」

 

「自分としては喜んで役目を譲り渡す所存です」

 

 嘘をつけ。

 どう見ても、他者に権利を渡す気はないだろう。

 理由は一つだ。

 利用するためだろう。

 と、己の知る手札を思い浮かべる。

 

 美しい少女を優しく見守るだろう者が数人浮かんだ。

 むしろ手は出さずとも言いなりの姿が思い浮かぶ。

 恐ろしい、血迷うものを量産する結果になるだろう。

 それも騎士団や闇祓いの男を再起不能にしかねない。

 かと言って乱暴で少女の話を聞かぬ者など論外だ。

 そして彼女が能力を使ったとして、抵抗し更に制裁を与える事ができるとなれば、そんな輩はいない。

 

 この男以外。

 

 彼女の血を貴種として賛美する輩も煩すぎる。

 うまくいかない世の中に絶望したかのように、彼女は手で目を覆った。

 

「...くれぐれも実年齢を忘れずに、慎みを持って、生徒だと言うことを忘れずに対してください」

 

 苦々しい声に、男は鼻を鳴らした。

 失礼なのはお互い様だった。

 

 ***

 

 るんるんで寮付きゴーストと夕飯時に登場したら、悲鳴があがった。

 幽霊氏に驚いたのかと思ったら、パンジーちゃんが、椅子から立ち上がって指をビシッとこちらに向けている。

 

「首輪ーっ!やだー、首輪ー!」

 

 絶叫である。

 まだ、先生方の席も埋まらず、それぞれに会話をしながら集まってきている段階だ。

 それでも彼女の絶叫で、注目が集まった。

 

 なんぞ?

 首輪、オサレ首輪よー!

 って感じでクルリと回転して、カテーシ。

 

「あっ、あんた、それ、どうしたの?」

 

 もらったのー

 で、妙な空気になる。

 

「報告案件になるのか?宝飾品、じゃないよな、俺の目の錯覚?首輪、首輪でいいんだよな」

 

 と、グリフィンドールの真面目な先輩。

 監督生のお兄ちゃんでウィーズリー一族。

 ちなみにウィーズリー兄弟が何人存在するのかは知らん。

 

「さすがに、外しなさいよー。誰にもらったか知らないけれど。」

 

『寮監殿がつけたので、彼ではないと外せないだろう』

 

 血まみれ男爵、お笑いセンスあるよ。

 思わず凍りつく空気に、笑顔が浮かぶ。

 そして間が悪い星回りの下に生まれたかのように、黒衣の不審者が登場。

 悲鳴があがった。

 

 ***

 

「ドヴワティーヌ嬢には怪我が元で魔力のコントロールが不安定になっておる。

 目にも波及し、数日は使えず、スネイプ先生が運んでおったのは、皆も知るところじゃ。

 今回は、儂の方で、強力な魔力の安定化する魔道具を調達し、彼女に試してもらっておる。

 この魔道具は非常に強力で、彼女の体調も時折悪くなる場合がある。

 

 首輪ではない。

 

 巻き付ける形でああなったのじゃ。

 首の血流に集まる魔力に作用し、頭部、視神経へと働きかけておる。

 そこですぐに調節や解除ができるように、スネイプ先生に鍵を渡してあるという事じゃ。

 まぁ、少々誤解を生んだようじゃが、そういう事じゃ」

 

 混乱の中、校長先生が遅れて現れての説明。

 その間、黒衣の不審者は沈黙と無視で、食卓についていた。

 ワイもスリザリンの席に座っていた。

 

 あー、笑かしてもらったわー。

 

「見た目が、恐怖しかないわ」

 

 アクセサリーに見えない?

 

「監禁とか、怖い想像しかできない。怖い」

 

 で、不評な層は低学年で、五年生以上だと評価が反転。

 

「そりゃぁね。教授は子供には受けが悪いだろうけど、女性には受けがいいから」

 

 やっぱり?

 

「アイスクリームよりコーヒーの注文をしたくなるものよ」

 

 よかった。

 寮監先生、一定層の支持はちゃんとあるんだね。

 ヒールムーブばっかりしてるのかと心配だったんだよね。

 

「それがわかっていらっしゃるから、教授は女性を近寄らせないわ。

 そういう意味では、ちゃんとした立派な方だもの。

 貴方の保護を担うのが道理だと思うわ。

 そうじゃなかったら、他の方では、貴方に甘くなってしまうもの」

 

 えー、私も砂糖マシマシがいーなー。

 拳骨もらいすぎて、頭がはげるー。

 

「尊敬する、さすがスネイプ教授」

 

 と、スリザリン監督生のお兄ちゃんが呟く。

 何が?

 

「アンタを調教できるの、先生だけって事よ。

 制裁で拳骨を落とすとか、この学校でアンタにできるの、校長と先生だけって話よ」

 

 わりとマクゴナガル先生にも最近、怒られてるけどね。

 

「そーいういみじゃなーいぃ!」

 

 パンジーちゃん、カルシウム足りないと思うの。

 

「違うわよ。葵の事を心配してるのよ。気づいてあげてよ」

 

 あぁ首輪は衝撃すぎだよね。ごめんね。

 

「目が見えない間も、皆、心配してたんだから。」

 

 そう、スリザリンってさ、仲間意識バリ高なんよ。

 先輩方も、当たりがきつい人とか、口調がきつい人も多いけど、基本的にね、思いやってくれるんよ。

 ワイね、この寮になってよかったって思ってる。

 

 ありがとうね、パンジーちゃん。

 

「アンタ、キーラーイーっ!」

 

「ともかく、これで木曜日の飛行訓練は受けられるわね」

 

 ダフネちゃんの言葉に凍りつく。

 そうだった、箒、箒かぁ。

 飛行訓練はナンバーワンの話題である。

 

 それでもお約束の漫才芸の方が私的には面白い。

 今もマルフォイ少年とハリー&親友達が揉め、マクゴナガル先生に鎮圧されている。

 ネビル少年の思い出し玉をとったとらないという子供らしい意地悪のやり取りだ。

 うん、首輪の話題より健全で、マクゴナガル先生も、これが普通の子供が引き起こすレベルの問題よね。とか思ってるだろう。

 

 なんで、ワイの方だけ、エロ方向なんよ。

 まぁ存在が魔物だしなー。

 飛行訓練ってスカート?

 

「スカートでもキュロットでもズボンでもいいはずよ。

 基本の姿勢は跨ぐから、厚手のタイツ・ストッキングでもいいかも。」

 

 因みに、魔法界、下着が中々にレトロ。

 ところどころマグル要素もあるけどね。

 マグル式、厚手のタイツを買っとけばよかった。

 マダムマルキンのお店で送ってもらった中にあるタイツは、レトロスタイルの膝下輪っか型ガータースタイルと、中世乗馬用タイツである。

 つまり太ももガーター仕様の奴。

 たぶん、エロ仕様とも言う。

 

 これで風圧とかでめくれたら被害を及ぼすこと確定だ。

 自分でも、これはアカンと自覚できる逸品。

 しかし、低気圧の吾輩氏に下着の相談をしたら、キレる事確実。

 しかたないので、マクゴナガル先生をとっつかまえて、どーしたらーって聞いたら、胃を押さえて呻く。

 木曜日の授業でアクシデントが起こらない事を祈りつつ、通販でキュロットを取り寄せてくれるという話に落ち着いた。

 

 今度、カタログ見せてくれるって、やったー。

 他の子は、実家から送ってもらったりするから、梟通販は拘束時間の多い教師が利用してるらしい。

 便利だけど、あくまでも梟にこだわる魔法界。

 梟労働組合とかあるんだろうか?

 ありそうである、今度聞いてみようっと。

 

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