おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ、賢者の石編。
R15は、グロ表現増加の為と、寮監先生の苦行成分でできています。

ラブとロマンスよりも、得体のしれない物体が出没。
誤解が誤解を呼ぶスタイル、ハリー君は困惑しているぞ。
広い心と薄目でご覧ください。(闇の帝王?はて...)


グレイブス氏からの手紙と賢者の石 ⑨

 平均睡眠時間ってどのくらいですか?

 ちなみに慢性的な睡眠不足は、脳にダメージがいきますからね。

 寿命も下がるし、昼間の活動にも影響がでてパフォーマンスも低下。

 眠らずともイケるのは、遅くとも三十代前ですからね。

 ドーピングと魔力で補ってても、禿げますよ。(ストレスでね)

 

 沈黙が返る。

 校内に戻ると、そのまま巡回するらしい。

 時間は深夜ちょい前。

 寮監先生の懐中時計情報ね。

 

 雪を落とし、体を乾かしてもらうと、そのまま城内を静かに回る。

 ついでに切れかけていた保温の魔法をかけてくれる。

 と、寮監先生は先に歩き出した。

 

 まぁ静かについて歩く分には、いいって事だよね。

 

 玄関ホールの照明は、さすがに夜だと絞られて少ない。

 大理石の階段はそのままに、大広間のチェックだ。

 仄かな灯りの魔法で照らすと、異常が無いかを見る。

 と、いってもフィルチさん達が巡回しているので、変化が無いかをさっと見回すだけだ。

 

 大広間の奥の小部屋の肖像画も、特に問題ないようで静かである。

 なかなかにお喋りな魔女の肖像画だけど、今は私を見て頷くだけだ。

 

 大広間から引き返し反対方向の空き教室をチェック。

 物が置かれているが、ここも教室で特別な授業などで開けられるそうだ。

 そこも問題なし。

 

 三階部分へと続く回転する階段、肖像画、大きな地図、これらの反対側に位置するのが医務室だけど、ホグワーツは位置関係が時々変わる。

 まぁスリザリンの寮側から反対側に医務室って所。

 

 奥まで行ってグリフィンドール塔へと続く階段に差し掛かった時、上からフィルチさんが降りてきた。

 フィルチさんはランタンの灯りを掲げていたが、私達を認めると、おっという表情をしたのち、安堵したように息を吐いた。

 

「スネイプ先生でしたか」

 

「異常は無いか?」

 

「一度、図書室で物音がしたんで、確認するはめに。

 たぶん、悪戯で誰かが侵入したんでしょう。

 明らかな紛失や破損した様子はわからなかったんですが。

 マダム・ピンスに言って、本に異常がないか後日確かめてもらうようになるかと。」

 

「了解した。」

 

「そっちは大事無いでしょうか、ハグリッドも気にしていましたんで」

 

「ダンブルドア校長が一切の差配をしている。

 ここは沈黙をし、不審な人、モノを見かけたならば、深追いせずに報告するように」

 

「はい」

 

 そいでシリアスから一転。

 

「お嬢さん、スネイプ先生を困らせるんじゃないぞ。

 あと、猫の集会に混じるのはいいが、ミセス・ノリスにオヤツをやりすぎないでくれ。

 そうそうオヤツのメーカーは後で教えてくれ。

 食べ過ぎはいけないが、美味しかったそうだ」

 

 らじゃー

 という、猫好きの会話をしてからわかれた。

 従うミセス・ノリスを見送る。

 うむうむ、美しい後ろ姿である。

 

「猫の、集会?」

 

 と、呟く吾輩氏。

 まぁいつも通り、言動も思考も乖離しているので、本心は見えない。

 

 溜息。

 何かあるのだろうか?

 そのまま上階に向かわずに、職員が使う棟へと方向を変えた。

 

 図書室周辺を確認しないのですか、寮監先生?

 

 実際、魔法的サーチしちゃえば、一発なのである。

 そして、子供たちは、気がついていない。

 

 先生、実は手加減もりもりしてるんだよーっていうか、子供が危ない場所だと気にするけどね。

 そいでここで、先生の悪役ロールだと、気配を消した風なのに、何か悪役的発言しつつバレバレで登場してみたりするんだお、そーなんだお。

 おやくそくーで、そこで因縁の対決ならぬ、事件がおきそげ。

 

 悪戯と言えば、グリフィンドールの息子さんたちだろーしね。

 ロールとしては、そこですかさず、潜んでいそうな場所をね、こう、荒らす?

 

 それに寮監先生は横目で見下ろしてきた。

 最近、こちらから投げる念は、言葉を読むというより、考えが伝わるようだ。

 なに、二人は仲良し?

 そんなわけねーか。

 

 流し目と言うより、この猿うるせぇんだよ、の視線をもらう。

 あざっす、蔑みの視線。

 

 んで、ちょっと考える。

 何か、行かない理由がある。

 ほぅほぅ。

 

「先にこちらを検分してからだ。身綺麗にする魔法を覚えたか?」

 

 おぼえましたー。

 梟小屋、わんわん、猫集会、そいで舎弟と遊んだ後は、綺麗にしてるー。

 基本、お薬をつくる人は清潔第一、異物を排除だからね。

 吾輩に近寄るでない、このアニマルめっ!

 まぁワイ、動物の羽とか毛にまみれているので、吾輩氏からすると大きな人より獣くさくなっているようだ。

 女子力ぇ〜。

 んで、空気は読まずに、聞く。

 

 図書室は?

 忍び込んだ生徒の確認はしないのー?

 

「しない」

 

 なるほど、いたずらに心当たりがある。

 そして犯人を捕まえてはならない。

 なんつーか、また、面倒くさい事をしてそうだ。

 

「補助教員がいる職員棟を簡単に調査する。

 クィレル本人が使っていた部屋は、既に闇祓いが中身を全て持ち出している。

 教授室に出入りしていた人員の方を調べるのが順当だ。

 不穏な物が仕込まれているなら、そちらだろうからな、何だ?」

 

 校長先生とかの、考えはいいんですか?

 

「考えとは?」

 

 クィレル氏も、何か利用する予定があった様子だったんで、ヒゲの人。

 

「余計なファクターを取り除く、シンプルにしておいた方が無難だ」

 

 寮監先生の目的としてはですか?

 

「目的?はっ」

 

 笑いやがりましたよ、この人。

 

「冷静になっただけだ」

 

 そう言ってから寮監先生は、孤島からではなく、再び、現実の私を見て言った。

 

「冷静になった。

 教えられたともいう。

 見えていなかったものが見えた。

 

 こうして、くだらない事をいう相手を得て、気がつく事もある。

 馬鹿げている事。

 己が愚かである事。

 

 くだらない事を抱えて、本質を見失っていた事をだ。

 

 過大評価し、己が立ち位置さえ見失う。

 歳をとれば大人になったつもりになるが、己がどれほど幼稚であるか、見た気分だ。」

 

 それは、お役にたてて重畳?

 

「この世の殆どがくだらない事でできている。

 それをバカにしている己も、そのくだらなさの一部だ。

 バカを見て、己のバカを顧みたところだ」

 

 と、私をバカにしているが、寮監先生は、きちんと目の前にいた。

 孤島でもなく、余所事を企んでもいずにだ。

 

 それは私、先生のいうところの、バカにしている相手によって、今まで考えもしなかった事に気がついた。

 そう言っている訳だ。

 

 死んでもいいやって思ってる人に、私の声が届いたって事だろうか?

 

「葵・ドヴワティーヌ」

 

 ん?

 

「アレは、人を殺すモノか?」

 

 あぁ、そうだね、アレはマズイ。

 クィレル氏だけじゃなかったってのが、マジ、マズイよ。

 根絶やしにしないと、朝日を拝みたきゃね。

 

「アレは、何だ?」

 

 抽象的な言葉になるよ。

 私にも概念としての知識が、何となく浮かぶだけだから。

 

「それでいい」

 

 アレは神様の子になるのかな。

 

「神の子とは?」

 

 神に、人間以上にしてくださいってお願いする。

 神は、捧げ物だね、って食べる。

 神は、食べたもので、産む。

 神が作った?

 産んだ子。

 化物誕生だね。

 成功すれば、人間の世界に蔓延る事請け合い。

 増え方としては冬虫夏草みたいな感じ?コワ

 

「殺す方法は?」

 

 害獣と同じ。

 増える速度が問題なだけだよ。

 あれで物体Xみたいに、攻撃力が増したら、困るけど。

 あと、魔法族で成功されちゃうと、厄介。

 ベースの人間が強いとマズイでしょ。

 あと、男に入り込まれると、たぶん、女で増える。グロだわー。

 それにそこからは未知だよ。

 だから、気配がしたら、そう欠片でも見つけたら燃やす。

 知識的には、いつも火炙りとか、戦争の時代で壊滅してきたっぽい。

 やっぱりこっちの歴史書に記述があるんじゃない?

 それにしても、なんだろう。わくわくファンタジーじゃなくね?

 

「お前は何故、わかった?」

 

 私の血の記憶らしいよ。

 私は幾度も火炙りとか、惨殺とかされて来たみたいだけど、どうも、アレに遭遇する回数が多かったみたい。

 だから、アレを見かけたら殲滅するって感じ。

 子供とか精神的に問題のある系の人に寄生するっぽくて、育つ前に、殺せってモードになるのかな?

 さっきのは死骸だったから、殺せ殺せってならなかった。

 けど、何だか、増えてそうだし、ちょっと、焼却しなきゃなーって。

 マッチは最近持ち歩いてる。

 魔法が咄嗟にでないとまずいからー。

 こんな感じ?

 

 私の言葉に、寮監先生は、無表情で頷いた。

 頷いて、何か魔法を使った。

 寮監先生の杖は、黒檀のように黒く艷やかだ。

 それが空を切って、何かを描いた。

 たぶん、音を遮断する魔法かな?

 

「この事に関して、そう先程の事に関して、私は君と協定を結ぼう。

 アレの撲滅では手を組むとな。

 私と君は、アレの事に関してだけは、お互いを信頼し、嘘をつかない。

 情報をお互いに共有する。

 そして、利用しない。」

 

 利用?

 

「金を積まれても、命を人質にとられても、自分を殺す事になっても、アレは、この世に残さない。

 これを誓えるなら、私と君は仲間だ。」

 

 どうして、と聞いても?

 

「アレは、私が望む世界に必要がないからだ。」

 

 いえ、何故、私に話を持ちかけたのでしょうか?

 情報は、渡していますし、変ですよ?

 

「君が見せた価値がわからないかね?

 君は、アレを見て、殺すべきだと言う。

 他の誰も、言わないだろう。

 特に、私の知る人間は、アレを殺せという前に、調べよというだろう。」

 

 まぁ、それが妥当な反応かもですよ。

 私が知っているだけですからね。

 

「違う。

 私が知る者達だ。

 大方が、己の正しさを示し、理想の終わりを望むような、自己愛ばかりの人間だ。

 未知なるモノならば、調べ手に取り、確保しようとするだろう」

 

 それは、まぁ、そうでしょうけど。

 正体を知れば、そこまでは。

 

「君は、金を積まれたら、アレを売るか?」

 

 それはない。

 

「君は、誰かを人質に取られたら、アレを渡すかね?」

 

 そもそも人質にとろうとした奴を終わらせる。

 そうだね、友達を誘拐とかしたら、破滅させてやる。

 男だったら、まんま頭の中身を腐らせてやる。

 それから裸でバッキンガム宮殿の前で踊るように指示する。

 きっと人生を殺せるね。

 

「自分の命をとられそうになったら?」

 

 そもそも、アレが蔓延ったら、死ぬんだよねー。

 脅されたら、そうだね、どうしようーかなー。

 助けてもらおうかな、うん、誰か、たすけてーってなるかな。

 手近な人間の男だったら、きっとイケるかな。

 

「アレに関しては取引はしないと感じた。」

 

 うん、流石に、アレは別ゲーだよ。

 私は幸せになりたいんだよ、真っ当な世界でね、先生。

 

「選んだのは、この繋がりがあれば、疑わずにすむからだ」

 

 騙されるかもよー。

 

「少なくとも、お互いに、アレが身体に入り込んだら、わかるんじゃないか?」

 

 あー、そういうことかー。

 確かに。

 偽装はできない。

 この念が通じていると、実は肉体の体温や何か、微妙な感覚も時々、奔るのだ。

 あまりよろしくない近さであるが、首輪のおかげで程々パーソナルな部分は混じっていない。

 でも、流石に物体Xが寄生したら、お互いに気づくだろう。

 確かに、安心要素である。

 

 そんな事を考えていると、寮監先生は、薄暗い通路、それぞれの寮に続く階段と通路を見やりながら言った。

 実はここには、絵画も無いし魔法的な置物もない。

 人が来れば目に入る場所で、通路からは柱によって見えないんだよね。

 さすが、寮監先生である。

 

「今更急に、そう思うのは当然だ。

 そうだな。

 口約束ではあるが、血の誓いなぞ、お互いに結びたくもないだろう。

 だから、私自身の言葉で、告白をしよう」

 

 寮監先生は、悪い笑みを浮かべた。

 決して善人ではない。

 皆が求めるだろう良い人の笑顔ではなかった。

 

「私という人間の話だ。

 

 私の人生は、貧困地区から始まった。

 人生に希望は無く、綺麗な景色を見上げるばかりだ。

 

 それでもすくい上げてくれる人はいた。

 

 だが私自身は、ろくでもない選択を続ける愚かな子供であった。

 このホグワーツに身を置いても、そう君と同じく学生となっても、私は不味い選択をし続けた。

 

 後悔した時には、すべて失っていた。

 すくい上げてくれた相手も、希望も、愛も、そして相手の命もだ。

 

 それは過去にはならない。

 死んで償う事を選ばなかった。

 選べなかった。

 

 私は永遠に罪人のままだ。

 私は人を死に追い詰め、ろくでもない人生を生きている。

 

 簡単に言えば、犯罪者だ。

 

 校長は軽蔑した上で許容したが、事実は変わらない。

 ここで告白し、言葉に残すのは、君が笑ったのを見た時に、なんら脈絡もなく理解したからだ。

 

 君は、あの醜悪な代物を見、死を眺めて笑った。

 その諦めと甘受、寛容の笑いを見て、何故だろうか、悟った。

 

 死者に許しを求めても無駄だ。

 私は許されず、例え死んでも償えないだろう。

 

 愛する人は死んだ。

 何故か、当時より心に深く落ち、理解した。

 

 あたりまえの事だ。

 そして己が愚かなのは、私の償いは、すべて己が為であり、誰かを愛した為ではない。

 

 贖罪は己が為であった。

 死を見、お前は怯えもせずにいた。

 遥かに見識も高い大人たちが、心底怯えていたのにだ。

 

 あぁ、彼は怯えていた。

 彼の許しや指し示す贖罪の道は、自己満足の見せかけだ。

 

 すっと頭が冷える思いだった。

 果たして、私が行うべき事は何か?

 

 許される事ではない。

 そして許される事は無い。

 

 そうシンプルだ。

 

 己が為の、くだらない自己満足ではない。

 私は愛する人に、私の何を捧げられるかと。

 

 詫びを送る?

 

 違う、それは許しを乞うのと同じ、欺瞞である。

 答えもシンプルだ。

 生きていた時も、失った今も変わらない。

 私の罪が変わらないようにだ。

 私は、私が愛している人に対して、私ができることをする、だ。」

 

 私は、圧倒されるような愛の告白に、ゆっくりと頷いた。

 寮監先生の孤島には、その愛する人だけがいて、その人の為に生きている。

 

 今も愛しているから。

 

 だから、いつだって死んでもいいやって思ってきた訳だ。

 でも、何故か、アホでくだらない俗物の私を見ていたら、その孤島にいるのは、ちょっと違うんじゃないかって思った。

 

 孤島にいる事は、自分を守る事で、愛する人の為ではない。

 まぁもっとエゲツナイ言い方をすれば、死んでしまった愛する人の為にアクションを再び起こしちゃうぞ、かな?

 

 その人の為に、どんどこ、アクティブにナニカする。

 生きているからこそ、できる何かを。

 

 死ぬのを楽しみに。

 

 つまり死者への愛のせんげんだー、やべぇ、すげぇ激重。

 茶化したいけど、これは駄目だ。

 

『恋人、じゃないわね、ちょっとすごく、興味あるけど、聞くと泥沼の予感がするわ』

 

 いや、魔女子さん、こいつぁー11歳9ヵ月の少女に語られてもーである。

 寮監先生に対する謎の安心感ってこれかぁ〜。

 つまり激重執着してる女神がいるんで、魅了持ちでも、あんぽんたんのガキンチョに誘惑される事は、ゼロどころかマイナス。

 

 えーっとぉ、寮監先生の女神様のお話を聞かせてくれるぐらいの、信頼を得たという解釈でオケ?

 何か、ワイのサイコパス行動を見て、開眼したと?

 

「まぁそうだ。森番の犬の毛にまみれているような、猿を見てな」

 

 これが信用の担保かー、寮監先生、いや、スネイプ氏よ。

 この協定で得られる私の利点とは、なんぞ?と、そこはかとなく疑問?

 

「利点はあろう。

 お互いに、面倒事を避けられる。

 そしてお互いに、あのような穢れた生き物は、死滅すべきと考えている。

 行動の範囲が広がるだろう。

 それにお前の問題にも助力を惜しまない。

 アレに寄生されていないと確信でき、さらに情報共有ができるのは、お互いだけだ。

 それだけ異常な事象だと私は考えている。

 もちろん、このような狂った犯罪者を許容できるならだが?」

 

 きっと、のーせんきゅーと言っても、セブルス・スネイプという人はかまわない。

 彼の何かを私が語る相手はこの世にはいないのだ。

 私がどれほど、孤独であるのか、孤独でなければならないかを理解している。

 

 人類の半分は男だ。

 

 その男を信用できないのだから、その中でたった一人でも、信じられるというのは、私にとって十分に利点だ。

 それにこの事情を理解しているのは、校長かこの目の前の人だけだ。

 おまけにだ、敵に回す利点はゼロだ。

 

 許容できるか?

 できるよ。

 この人は、私を食い荒らして地面に埋める程の興味をもたないだろう。

 利用し売り渡すとしても、この人自身が私を埋める事は無い。

 そういう提案だ。

 

 いいんですか、寮監先生。

 

「どうせ聞こえないのだ、名を呼ぶことを許そう」

 

 はぁ、じゃぁ私もシンプルに。

 色々な思惑があっても、死滅すべきだ。

 あれを殺す事は、貴方の女神の為になる?

 

「あぁ、なるほど。

 それから女神とはいい得て妙、我が女神の子供に、アレを近寄らせたくない」

 

 なるほど、女神の...。

 ん?

 

 ...

 ...

 ...

 ...

 ...

 ...

 ...

 

 見つめ合う事暫し。

 聞いていいのか悪いのか。

 本音は怖いけど、聞いちゃおっかなー?

 お互いに嘘はやめよーぜーって話だしね。

 

 そいで、一人、彼が初日から、こだわりまくりの少年が、我の脳みそに浮かぶ。

 当選確実?

 いや~ましゃかね〜、そんな大人げないぃ〜

 

 ...

 ...

 ...

 ...

 ...

 ...

 ...

 

 ハリー君のママ、女神様説?

 

 ...

 ...

 

 真剣なお顔に、微かに羞恥が…

 

 ...

 ...

 ...

 ...

 

 愛がね、何だかね...

 

 もうね、君の瞳に深淵が見えちゃった。

 ヤンデルー、思わず涙が出そうだよ。

 

 もう、笑かしてくるなよー

 もう、何だか、泣けてくるじゃんー

 

 衝動的に、無言の相手をハグする。

 

 もうねー、こいつバカだろう。

 そこまで晒さんと、信じるよー、バカだなー。

 黙ってハグを受けいれてるのも異常だけど、たぶん、いろいろありすぎて、お互い、もう疲れてたんだよ。

 

 こじらせてんなー

 

「殴るぞ」

 

 それでも何故かお互いに、ぎゅっとハグをしあって、冷静になる。

 あーあったけぇ。

 あぁ、なんて、バカなひとだろう。

 これが嘘でも、私はこの瞬間は、信じた。

 

 あぁこいつ、バカだ。

 バカで可愛い男だなぁ。

 そんなに、死にたいのかー。

 愛を捧げた人の為に。

 

 うん、あったかいやー。

 傍から見たらアカンが、お互いに、これは理解したのハグだ。

 

 ワイもアホやが、アンタ、ホンマモンのアホや。

 泣ける。

 ハリー君のママとは、ホグワーツから?

 

「幼馴染だ。

 プライマリーも同じ区画で一緒だった」

 

 そっかー。

 

「彼女を、...殺してしまった」

 

 手を下したわけじゃないんでしょ?

 

「同じようなものだ」

 

 それを裁くのは彼の女神だけだ。

 そして死んでしまったのだから、自分の中にいるだろう、幻想だけが彼を責め立てる。

 

 背中を叩いて、ハグを終了する。

 うん、私とセブルス氏は、アレに関しては仲間である。

 よし、わかったよー、謎の冬虫夏草については協力する。

 女神の子を支援する。

 余計な事は外には漏らさない、というより漏らす相手がいないんだよね。

 そいでセブルス氏の悪役ロールを支援し、オモロイ小芝居にヤジを飛ばす。

 暗躍してる諸々は見ないふりねー。

 お疲れ様ー

 

「ヤジはいらん」

 

 認識的には、セブルス氏をすべて通る感じでいいのかな。

 校長その他の人に情報を渡す時にさ。

 

「そういう事だ。それに合わせて、こちらからも情報を伝える。

 ただ、お前に開心術をかけるとリスクがある事はわかっているだろうが、つねに相手は覗いている想定しろ。

 常に私の側にて他人と接触するのが無難だ。」

 

 読みにくくする事は可能かも。

 首輪の時に統制がとれなくなったのは、私の血の力に淀む私が主導権を握っていたから。

 ちなみに血の誓いとは?

 

「魔法契約のひとつだ。お互いの血を使い契約を交わし、魔道具に込める。」

 

 なんつーか、ヤンデレ、メンヘラなのが標準なの魔法界。

 

「そっちの言葉のほうが、よくわからない。

 時々変な用語が出てくるが、それはジャパンの呪文なのか?」

 

 概念を伝えると怒られるので、無難に黙る。

 ちなみに、クィレル氏の担当職員さんは、冬休みで?

 

「ホグズミードからの通いだ」

 

 セブルス氏は、杖を一振りし、静音の魔法を解除した。

 薄暗い職員用の部屋へとはいる。

 灯りの魔法を先に浮かべると、並ぶ机の真ん中当たりに向かった。

 

「このあたりだったか、あぁ、この二人だ。」

 

 きちんと片付いている机を指差す。

 じゃぁさっそく。

 

「そもそも触るな」

 

 えー調べたいんですがー。

 寮監先生は、さっと杖を振った。

 机上に並んでいた書類がサラサラと捲られ、戻される。

 そして下から引き出しがバシッと開く、そいで中身を触らずに適当に机の上に並べてはしまう。

 全部、手を使ってない。

 ま、魔法使いがここにっ!

 

「特に気になるモノは無い。隠蔽の魔力も感じない」

 

 無言呪文で、中々に凄い技を使っているだろうに、私には欠片もわからない。

 だって、一年生なんだもの。

 それはさておき、流石に、学校には怪しげなモノは置かないかー。

 

「私物入れはこっちだ」

 

 ナチュラルに慣れた様子で、職員のロッカーの鍵を解除する。

 アンダーグラウンドな感じ。

 ちなみに、セブルス氏は、どこら出身?

 

「今は開発されて残っていない。」

 

 何となくわかった。

 じゃぁ女神様は、その隣のアップタウンだった?

 

「そうだ、よくわかるな」

 

 そりゃぁ女神って言って、真顔で肯定されたらね。

 ちょっと背筋が凍るレベルの質量を感じる。

 予想では、美人で明るくて、賢い、育ちのいいアップタウン・ガールだね。

 ビリー・ジョエルの歌ならいいけれど、そういう出会いじゃないんだろう。

 頭の中だけで、歌うだけにしよう。

 それもナイショ。

 

 ロッカーの中身。

 着替え、食べかけのキャンディーの袋。

 室内履き。

 

「何も無い、か。部屋全体を少し見るか」

 

 雑誌。

 魔法界の雑誌、まぁ手にはとらない。

 女性誌みたいなのかな?

 今度、ちょっと取り寄せてみようかな。

 ロッカーは、マグルのロッカーと同じ。

 下は棚板が入ってる。

 着替えというかカーディガンがハンガーにかかってる。

 着古した感じ。

 食べかけのキャンディーは、バタースコッチ。

 

 私は甘いから苦手、酸っぱいのとかミントが好き。

 そして魔法界は、トンデモ味のグミとか、動き回るお菓子まである。

 マグルのお菓子のほうが、気安く食べられるんだよ。

 

 しゃがんで、棚下を見る。

 何も、ない、影になってて見えにくい。

 

 ...

 ...

 ...

 

 えっと、あれ?

 セブルス氏ー。

 

「呼び捨てでかまわん」

 

 魔法治療で虫歯ってどういう扱い?

 

「歯科治療は進んでいる。

 癒者による治療によって、ほぼ口腔内の問題は解決する。」

 

 じゃぁマグルのような歯科治療は無い?

 

「いや、流石にある。

 歯や骨を生やす事は可能だが、個人個人で再生限界がある。」

 

 じゃぁ、マグルのような治療もあり?

 

「高齢になれば、やはり魔法金属などを使用した人工義歯などになろう。

 で、どうした?」

 

 私の隣でしゃがむ彼に示す。

 棚の影に、白い物がパラパラと落ちていた。

 抜けたら、とっとくの?

 

 ***

 

 四階の鏡を見た後、彼は呆然と階段に座り込んでいた。

 父と母を見た。

 死んだはずの両親だった。

 

 透明マントを被ったまま、彼は考えていた。

 体が冷えるのも構わず、あれはどういう意味かと考えていた。

 頭の中から、調べるはずの事柄は消えていた。

 

「殺す方法は」

 

 その時、不意に耳に届いた言葉に、さっと目が覚めた。

 

「お前は何故、わかった?」

 

 スネイプの声だ。

 彼は静かに立ち上がり、声がした方へと近寄った。

 耳を澄ませても、それ以上の言葉は聞こえない。

 ただ、雪あかりのお陰で通路はよく見通せた。

 

 誰もいない?

 

 それでも確かにスネイプの声がした。

 と、階段から死角になるだろう、少し傾斜と曲がりがある職員棟通路の方に気配を感じた。

 彼は誰かが出てきて当たる事をおそれて、静かに通路の端へと体をずらした。

 

 すると見えた。

 スネイプの背だ。

 

 彼は少女を抱きしめて項垂れていた。

 少女は、その背を宥めるように軽く叩いている。

 彼女は、少し微笑んでいる。

 

 彼は、どう考えていいのか、迷う。

 嫌そうだったら、助けるけれど。

 嫌そうではない。

 

 ただただ、不穏で不安になる光景。

 物知らずでも、二人の組み合わせは、犯罪を疑う。

 

 先程の発言もそうだが、どう考えてもスネイプは異常者に見える。

 だが、彼女が一緒だと、どう考えていいかわからなくなる。

 彼女は、いつも楽しそうだから。

 

 スネイプの手首に巻かれたリボンもそうだ。

 結局、親愛を示していると皆考えている。

 そう、とても不穏であるのに、二人が揃っていると、滑稽な気分になる。

 すべてがバカバカしい気持ちにだ。

 

 ぼんやりと、二人を眺める。

 彼女は背が高く、すっかり大人に見えた。

 皆、彼女は純血魔法族のお姫様だと噂していた。

 不思議な力があるらしく、力が強すぎて魔道具で抑えているという。

 

 遠い存在だ。

 でも、そもそも魔法の世界だ。

 同じ人間とは思えなかった。

 

 ハリーは、何だか、鏡の中の両親を思い出した。

 こんな風に、許しあっていたのだろうか。

 

 スネイプは乱れた彼女の髪を耳にかけると、彼女の手を引いて奥へと歩いていった。

 マクゴナガル先生に言うべきだ。

 だが、今の自分の事を言えば、鏡のこともいわねばならない。

 

 殺す方法

 背筋がぞわっとする言葉が耳に残った。

 

 

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