おとぎ話の末裔   作:C&Y

2 / 13
ハリー・ポッター本編前。
寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ。
残酷描写とR15は、予防処置と寮監先生の苦行成分でできています。




うろ覚え転生でデッド・オア・アライブ ②

 寮監先生の身長は、多分185ぐらいだと思う。

 私は十一歳にしては高身長158cmだからね。入院時測定、体重は内緒だがガリガリである。

 ひょろひょろっとして薄い痩せ型。

 ちょっと宇宙人ぽいと密かに思っている。

 治った足の具合いも良いので、早足の寮監先生の後を跳ねて歩く。

 社畜の頃とは違い身軽だ。

 なんだろう、ジャンプ力があがっているかもしれない。

 

 ホップすてっぷぅ〜

 がっ! 

 

 これは跳ねていた私の頭部が掴まれた擬音である。

 

「通路は走らず跳ねず」

 

 追いつけねぇっす、寮監先生。

 十一歳女子に合わせてほしいのですよ。

 そしてワシ、無口でいるべきなので、自己主張できないっす。

 

「言葉の乱れも気をつけなさい。自寮から減点するような事態は避けたい」

 

 で、ゆっくり歩き出す寮監先生。

 しおしおと続く私。

 

「校長から説明後、スリザリンのテーブルに付くように。監督生がフォローするので心配するな」

 

 はい。

 食事の後は? 

 

「寮でのタイムテーブルも女子の監督生に従うように。

 不安な事、不明な事がある場合もだ。

 また、危急の要件がある場合も、ひとまず監督生を通すように。

 ただし、監督生に言えぬことは、吾輩に直接でもよい。

 また、吾輩に言いにくい場合は、マクゴナガル教授などに申し出ること。

 今のうちは筆談でやり過ごすが、文字を中空で光らせる魔法を使うことになるだろう。

 他には何かあるか?」

 

 ありがとうございます。

 何かあるかな。

 えっと、杖かな。

 今、与えられてる杖って、仮らしくて。

 

「休日に購入の為、外出する事になるか。

 魔道具の事もあるが、基本、お前は入学前である。

 能力の査定や、どの程度の学習能力かも調べねばならない。

 今週中には日程とカリキュラムを組んでおこう」

 

 寮監先生、自分が言うのもアレだけど。

 休んでくださいね。

 

「休めるならな」

 

 あかん。せめてご飯はしっかりと……食欲が無い? 

 

「……魔法界には、魔法薬というものがあってだな」

 

 それはあかんですよ、寮監先生。

 マグルで言う、ドーピングは寿命を削りますよ! 

 労働基準局とか法律はないんですか! 

 

「魔法界にはな、過去に戻れる魔法具があってな一日は二十四時間ではないのだよ」

 

 ホグワーツって七年制で、4つの寮にわかれてて、一学年何人ぐらいいるんでしょうか? 

 

「全校生徒は300人前後だ。

 一学年約40人、学年によって増減。寮ごとで70人と考えればいい。

 寮内一学年10人として男女比も年度によって変わるが同学年女子で同じ寮生は5人、スリザリンは現在、男子生徒が比率として多いか」

 

 教師と補助教員の数は大丈夫ですか? 

 オーバーワークっぽいじゃないですか。

 

「大きなお世話だ。補助教員はいるが、科目によっては夜間の授業になる。

 日没後の授業と、年度によっては習得科目が違うために、教員はそれぞれに網の目のような授業を組まねばならない。

 と、お前に説明する事ではないな」

 

 他にも夜回りとか言ってませんでした? 

 先生、一番年下で、肉体労働全振りされてたら、死にますよ。

 ブラックあるあるですね。

 マグルでいう労働問題事案ですよ。

 

「後でタイムスケジュールを渡す。

 食事は三回、余程のことがない限り大広間で集まる事になる。

 そこで連絡事項なども伝達される。

 集団行動を心がけるように、と、お前はまだ入学前であるので、自習となる。

 それに能力コントロールの訓練が先だったな。

 また、ホグワーツ全体で入り込んではならない場所も多数ある。

 新入生に渡す注意事項の書面も後で渡そう」

 

 聞こえないふりをされた。

 まぁ思い当たることばかりなんだろうねぇ。

 

 で、大広間に到着。

 教員が入る扉と生徒が入る扉が違うそうで、そんなハードルの高い事をさせるんかい。

 お一人様で入場かい! まぁいいけど。

 

「今回だけ案内する」

 

 ありがとう先生。

 いっぱい話しかけてごめんなさい。

 会話が無いってストレスなんですよね。

 それに先生は、何も言わずに先に進んだ。

 

 ***

 

 入ってすぐ、室内全体を見渡せる高い位置で立ち止まると、気がついた校長先生が注目を寄せ説明を始めた。

 もうお食事が始まってるようだ。

 

 昼食は一時間、朝食と夕食は二時間の幅が設けられているんだって。

 

 んで、説明としてはこんな感じ。

 

 今年9月入学予定の生徒である事。

 マグルの世界で事故にあって大怪我をした事。

 家庭の事情と治療の為に、早期に入寮だけした事。

 怪我のおかげで発語に問題があって喋れないこと。

 また、一部、聞きとれない事もあり、非常にコミュニケーションがとりづらい事などなど。

 ちょろちょろ寮監先生の隣にいる事が多いが、訓練と療養の為であるため、気にしないように、だって。

 

 あと発語訓練や治療のお薬の担当も、寮監先生ヨロって言い切った。

 ギリッと歯ぎしりが隣からする。

 それをたまたま目にした生徒達がビビリ散らす。

 あと一押しの瀬戸際。

 

 寮監先生、クール、クールに受け流せ! 

 無言なのに、寮監先生のストレスレベルと怒りゲージが溜まったのがわかる。

 校長、寮監先生に相談無しでいい加減な事をいいやがったな。

 すると恐れげもなく、赤い差し色の制服の群れから校長先生に質問が飛んだ。

 

「新入生に見えないでーす、せんせー彼女幾つですか?」

 

 で、何故か静まり返る大広間。

 それに重々しい表情で頷く校長。

 

「彼女は正真正銘十一歳じゃ。

 ワシもちょっと不安になって確認したが、戸籍も正しく十一歳じゃった。

 彼女の家系は背が高いようでの。

 皆、気になるようだが、まだ、入学前で言葉も不自由じゃ。

 同じスリザリン寮の生徒が一緒に行動するはずじゃから、何か用がある時は、彼女の周りにいるスリザリンの者を介すように。

 あぁどうしても直接、話がしたい時は、寮監のスネイプ先生を通すように。

 許可はおりないじゃろうが、挑んでみるのもまた面白かろう」

 

「それ絶対近づけない奴じゃん! 

 なんでスリザリン? 

 組分け間違ってない? 

 比率、偏りすぎでしょ。美人総取りとか、ぐわっ!」

 

 言って近場の女子生徒に殴られてる。

 笑いとともに、それでもめげずに少年が力説。

 同じテーブルの男の子達が囃し立てて楽しそうだ。

 

「皆正直になれよぅ、思ってるだろー! 

 何でスネイプ先生と勝負しなきゃ話しかけられないんですか、つーか話しかけるハードル高すぎ! 

 話しかけるなって意味ですかー!」

 

「黙れウィーズリー、失敬な物言いにグリフィンドールから」

 

「減点は保留でお願いします。

 むしろ校長に、文句を言ってください。

 皆さん、スネイプ先生に挑む必要はありません。気軽に、声をかけてあげてください。

 それから、妙なちょっかいを害虫にかけられているのを見かけたら、躊躇わず制裁を加える事を許可します。

 皆さん、わかってますね。

 スネイプ先生は虫よけです」

 

 あっ、まだ紹介されてない先生が吹き出してる。

 少し背が低い男の先生だね。

 

「虫……そういえば、大きな虫がいましたな」

 

 マクゴナガル先生のお顔がいつになく厳しい。

 

「不本意ながら前年度の虫の発生は、記憶に新しいかと思います。

 そのような不快な事案を再び繰り返さぬよう、皆さんも注意するように」

 

 何があったんだろう。

 奥の席の女性教諭がヘラヘラ笑いながら頭を振ってる。

 周知のことらしい。

 そんな様子を睨みながら、マクゴナガル先生が続けた。

 

「何が虫かはわかっていますね。

 寮関係なく、そのような虫を見かけたら、躊躇わず制裁を加えるように。

 あぁ大きな虫も小さな虫も、関係なく叩き潰してよいとします。教師に報告でも構いません。

 制裁には加点を。

 虫の方は当然減点です」

 

「いや、俺達も虫なの、虫あつかいなの? 

 俺達、あんなゴミ野郎とは違いますから。

 新入生に親切なだけだし。

 つーか虫よけの方が不穏じゃん。ファントムとクリスティーヌにしか見えねぇし」

 

 その発言に、急に校長が納得したとばかりに手を叩いた。

 

「おぉ、しっくりきたの。そう、二人を並べると、何か見たことがある雰囲気じゃと思っておったんじゃ」

 

 なんの話ですか? と、マクゴナガル先生が首をかしげる。

 

「マグルの小説が原作の歌劇じゃよ」

 

「校長先生もマグルの舞台観ました? 

 この前の休暇、チケット当たったって、母と妹の付き添いで行ってきたんですよ。なぁジョージ」

 

「良くわからなかったけど、マグルでいっぱいだった。

 仮面被った黒衣の不審者がさ、歌手志望の女の子を、変な術にかけて地下に誘拐する話だったかな。

 途中から抜け出して、外の立ち売のホットスナック食ってたし」

 

「でも、地下から出てきて婚約者がいる女の子にちょっかいかける話は聴いてただろ」

 

「よくわかんねー、母さんはファントム推しだった。美声でイケてるって」

 

「仮面被ってる黒尽くめの不審者だぞ、キモ」

 

 黒衣の不審者というワードに、4つのテーブルから、漣のように反応が広がる。

 そして隣の黒衣の吾輩氏に視線が。

 

「ちぃっと話の筋が違うようだが。

 しかし原作は奇しくもドヴワティーヌ嬢の父君の祖国、フランスの小説であった。

 美しく怪奇な話、愛の物語であったのぅ。

 歌姫、確かにのう。……声が聞こえぬのは残念じゃ」

 

「校長!」

 

 マクゴナガル先生のたしなめる声と生徒のツッコミが漫才のようだ。

 いや、隣りにいる寮監先生の怒りゲージの方が気になる。

 黒衣の不審者、まんまじゃん。

 と言う、ひどいつぶやきが各テーブルで囁かれている。

 

 寮監先生の相変わらずの安定の悪評っぷりだ。

 まだお会いしたばかりだと言うのに、何でこんなに親しみやすいヒールポジションなんだろう。

 隣でクソガキどもが!! と、いう呪いのつぶやきが聞こえる。

 笑かしにきてるの? 

 そんな寮監先生はスリザリンのテーブルに私を座らせると教員のテーブルへとついた。

 

 先輩方に目礼。

 視線がイタイ。

 そして他の席からの視線もイタイ。

 

 が、料理がすっと目の前にならべられる。

 そしたら隣の席と向かいの席に座っていた先輩方が、よろしくね、困る事があったら合図してねって、優しく話しかけてくれた。

 さすが上品な貴族のお子様方だ。

 静かに食事を続けながら、さりげなく気遣いしてくれる。

 

 名前を名乗られたが、メモ書きで応対。

 ワイ、名前が記憶できない状況。

 過去の記憶も頭部損傷にて朧げ。

 事故後にホグワーツに保護されるも、両親は既に鬼籍。

 父上、ボーバトンの魔法使い。

 母上、マホウトコロの魔法使い、よろしく。

 で、皆様、マグルでの事故を知りたがるも、食事を優先してくれた。

 

 うん、馴染めそうというか、優しい。

 んで、食事をしていると何故か、先程、校長に質問した少年とその連れが興味津々でこちらを見てくる。

 そりゃもう見てくる。

 同じ顔が2つあるところを見るに、双子である。

 ニコニコしながら見てくるが、同じ寮の女子生徒に張り飛ばされていた。

 

「グリフィンドールの双子よ。

 何かいたずらされそうになったら知らせなさい。

 そうね喋れないんじゃ心配よね。後で先生に笛でも用意してもらおうかしら」

 

 ありがとう先輩、つーか貴族の子女は美人しかいない。

 目の保養だなぁ。

 確かにスリザリン、美人が多い。

 でも他の寮の子も美人だよ。

 系統が違う感じなだけだし。

 

 食事? 

 普通かな、イギリス的普通。

 食べられる量で配膳してくれてる。

 そして見えない。

 見えない何かが用意してくれているようだ。

 不思議だなぁ。

 

 ***

 

 黒衣の寮監先生、確かにオペラ座の怪人を当てはめる事もできるよね。

 思いもよらなかったけど、あの少年たちは良く見てるよ。

 だって、先生、歌わせたい美声だもの。

 行き倒れみたいな顔色なのに、声だけ美声。

 それにスリザリンは地下だし、ファントムっぽい。

 

 1909年のガストン・ルルーのゴシック小説が原作で、86年にウェバーがミュージカルにしたんだよね。

 映画もあったけど、ブリテンの舞台が素晴らしかった。

 というか、ルルーやミュージカルはマグルの世界に存在しているんだね。

 そこは同じらしい。

 

 ハリー・ポッターの世界観にも、あったのだろうか? 

 それともまったく違う並行世界として考えれば良いのか。無駄な事だとはわかっていても、前世の現実と比べずにはいられない。

 ちなみに、私をクリスティーヌに当てはめてくれるなんて、皆優しいな。

 まぁ誘拐犯と被害者に見えるって話だろうけどね。

 

 食事が終わり、一旦、各寮の談話室へと解散となる。

 あの双子が手を振ってくれたので、私も振り返しておいた。

 陽気で楽しそう。

 グリフィンドールは全体的に活発、騒がしい感じだ。

 私はスリザリン寮の監督生の女の子に手をひかれている。

 名前は、今のところ敢えてフルネームを思考に残さないようにしてる。

 

 多分、自分で考えるより、不味い能力かもしれない。

 ずっと茶化していたけど、良くない能力なのは、わかる。

 強い能力は、利用されやすいって事でしょ? 

 

 ハリー・ポッターのお話は、確か、戦いの話になっていくんだよね。

 ワクワク魔法学校が、蓋をあけてみると案外ハードモードって奴。

 そこにまったく関わりのない、モブの私が投入されたとして、何を目指すかと言えば、無事に卒業する事。

 まぁ原作知らないから、ハリー・ポッター少年の時代なのかも不明だ。

 

 ならどうするか? 

 魔女っ子になる事、だろうか。

 私の魅了? のコントロールができるかどうかが、今後の人生の波風の大きさがきまるだろうね。

 校長先生が都合の良い、魔道具を見つけてくれるといいなぁとは思ってるよ。

 でも、能力なら、それを利用できるようになるのが理想。

 自由自在にね。

 

 そこで重要なのが、アクティブなのかパッシブなのか? だ。

 声はアクティブ。

 魔眼(笑)は、パッシブ? 

 存在的には、自動発動よりの任意攻撃型だろうか。

 魔力依存なので、パッシブは余剰魔力を魔石に吸収させておけば、魅了の力、声以外のスキル自動発動が押さえられる? 

 アクティブな筈の声以外にも何かある? 

 保護者の制限魔法か何かで、影響がありそうな人間の名前はカット。

 しかし、抵抗ができそうだとわかると戻る。

 私が無意識、違うか、どこかで自分より下だとわかると解除? 

 抵抗できる人間も名前が戻る? 

 どっちなんだろ。

 

 名前、支配できるから読める。

 支配できないから読める。

 影響を与えそうだから読めない。

 

 たぶん、

 相手が抵抗に成功してもしなくても、読めるし呼べるのが普通。

 名前がわからないのは、私への制限。

 制限が消えるのは、相手とは関係なく私の力が上回っただけ。

 だから読める読めないは、実は結果とは関係がない。

 これでしょ。

 

 保護者の制限なのか、単に、事故と前世に覚醒したからかはわからない。

 ともかく、読める読めないを先生方は重要視してるけど、話せない制限だけで、読める読めないは重要じゃないとする。

 そして特攻効果で、利用できそうな相手と念話ができる。

 

 これも違う。

 

 寮監先生は、利用できそうにないよ。

 癖強いし、先生としての義務感で色々面倒見てるだけだろうし。

 

 では、何で念話ができたか? 

 

 私、ではない。

 相手に原因がある? 

 

 つまり、他の人間と、寮監先生は、何か違うのだろう。

 私にばかり問題があるとは限らないんじゃないかな? 

 

 で、スリザリンの談話室、豪華な室内の説明を先輩方が語ってくれている。

 調度品は代々の卒業生が寄付してくれたり残していった品らしい。

 貴族のお金持ちのオーダーメイド家具ね。

 そして壁にかかる肖像画は、歴代スリザリン卒業生で優秀で実績を残した名家の方々。

 サラザール・スリザリンという偉大な人の概要。

 

 うんうん、ファンタジーロープレみたいなお話を浴びる。

 これから夜の部の授業、天文学とか色々を学びに行く人達など、一通り説明、自己紹介が済むと散っていく。

 そいで監督生の女子ファーレイさんが、個室に入る私に内装の説明、先生から渡された色々。

 そして何かあったら、自分の部屋に来るか、誰でも良いのでスリザリンの者に遠慮なく頼るようにと言ってくれた。

 

 ぎゅっとハグして、出ていくファーレイさん。

 スリザリンは、結束が強いの、だから遠慮なく何でもいいなさいね、だって。

 ありがたいなぁ。

 

 そいで、私は個室である。

 窓は一応あるけど、はめ殺しで水中が景色。

 室内の色具合は緑でも新緑の緑で飾られている。

 寝台も天蓋付きで、清潔なシーツで整えられている。

 クローゼットも作り付けの立派なもので、開くと制服が下がっている。

 

 とんがり帽子はいつ被るんだろう? 

 予備の靴も用意してあるし、普段着も片付けられている。

 私物も荷がほどかれており、誰かが整えてくれたようだ。

 きっと家付きゴースト、シルキーみたいなのがいるのかな? 

 

 ありがとう、見えない人。荷解きに感謝します。

 と心の中で呼び掛ける。が、まぁ伝わらないよね。

 

 勉強道具は机に置かれ、羊皮紙の束も箱に用意されていた。

 羊皮紙、取扱がね、面倒。

 書き損じもね、水拭きして乾かさないと書き直せない。

 つまり、誤字脱字に本当に気をつけないと。

 

 そこで準備したるマグル製品〜! 

 消灯時間まで、教科書読みつつ、綴りの練習ーだー! 

 

 そいで練習用に羊皮紙を一枚、羽根ペンとインク。

 ランプの灯りだ。

 室内の照明の点灯消灯は自動だって。

 手元のとか机は自分で。

 そいで初めての羽ペンである。

 これは中々、なかなか思ったより硬い。

 そしてすぐにインクが切れる。

 インクの消費量がけっこう心配かも。

 

 自分の名前をカキカキ。

 葵・ドヴワティーヌ

 

 お父さんの名前。

 レオ(レオン)・ドヴワティーヌ

 

 お母さんの名前。

 雪那・ドヴワティーヌ

 旧姓、玉妃・藤原(たまき ふじわら)

 

 叔母さんの名前。

 マーガレット(マルグリット)・モンパシエ・ドヴワティーヌ。

 

 身元調査のメモ。

 すこし疲れて、ぼんやりする。

 覚醒してから怒涛の日々であった。

 ホグワーツにきて、一応の、安全は得られた。

 ご飯も食べられるし、不思議魔法授業とか受けることに。

 

 人間、非魔法族のマグル界の勉強、どうしようかな。

 結局、最後はマグルの生活に戻るなら、普通に大学まで出たほうが良い気もする。

 通信教育で履修する? 

 窓際の机に並べられた教科書を手に取る。

 分厚い。

 

 そして開くと見たこともないような不思議異次元謎理論。

 本腰で学ばないと、基礎的な事がわかってないから、マグルの勉強を片手間でできる気がしない。

 ともかく、魔法の世界の勉強を頑張ってからかな。

 

 叔母さんの事は気になる。

 私の能力と同じものを叔母さんももっていた? 

 叔母さんはスクイブで、影響範囲は小さかった? 

 

 私は子供だからと、誰か、親かな、力を抑え込んでいた。

 でも、叔母さんが何か不味い事になって、私は事故に巻き込まれた。

 能力が漏れ出てるのは、危機回避のためかも知れない。

 たぶん、危険だから能力が出てる。

 こう考えることもできる。

 

 そして寮監先生にパスを繋いでいるのは、彼が言う通り、計算だとする。

 もうちょっと想像をしてみると、案外、簡単な答えになる。

 若い男で、大人の男で、能力的に、他より強いから、寄生している。

 

 うわぁ嫌な想像。

 そりゃそうだ。

 男の子、学生さんではなくて、成人している男で、若い。

 多分、寮監先生は、私を寄生型の虫みたいに考えた。

 そりゃぁ不快だよね。

 

 私だって、怖いよ。

 まぁこれは、私が雌カマキリみたいな生態だったらの、嫌な想像だ。

 先に考えた、寮監先生自身に、何かあると考えていたい。

 せめて雌カマキリじゃなくて、こう、もっとロマンある感じに.ならんわな。

 男を魅了して利用する能力(笑)

 中身、干物で、男なんかいらんのだが、というか、男は信用ならんという価値観が?

 

 はっとする。

 だからじゃん。

 覚醒した私の性格は、男なんて信用ならんである。

 雌カマキリ的、男なんて養分だよ! に直結。

 

 怖い、コワすぎるぞ。

 つまり寮監先生は、ご飯...

 

 馬鹿な事を考えすぎた。

 疲れたんだよね。

 まぁ怪我も治ったし、新学期始まるまで、予習してホグワーツの施設に慣れるように頑張ろう。

 叔母さんの事も、記憶の事もどうにもならんしな。

 

 さて、風呂に入って寝ようかな。

 ちなみに寮は男女に完全に分かれてて、ちゃんとシャワールーム完備。

 使える時間が決まってて、共同だけどね。

 備品は備え付けのもあるけど、お貴族様のお嬢様達は、個別に持ち込んでるんだってさ。

 備え付けも良い品だと思うけどね。

 お小遣いに余裕があったら、学校に隣接する村にお店があるから、そこでも購入できる。

 年齢制限があるらしいけど、誰かに購入を頼むこともできるし、魔法界にも通販があるらしい。

 

 なら、携帯電話?

いや、まだそれほど普及してなかったな。固定電話がメジャーだし、スマホもデビュー前だ。

 そして魔法族は、ふくろう便である。

 

 うむ、91年といえば、洋楽ヒットがMCハマーだったような? 古い。

 ホイットニーとかスティング、思い出してきた。

 マイケルも現役だ! 

 やだ、90年代洋楽ヒットが生で聴けるチャンス! 

 

 いや、ハリー・ポッター世界のマグル界が、同じ洋楽ヒットになっているかは不明だ。

 次の休暇、クリスマスに調査をせねばならぬな。

 気分が上がってきた。

 

 日本だと、誰だ? 

 尾崎.まてまて、思い出せ、やばい、興奮してきた! 愛が勝つ!! 

 まぁ、生きてるなら、何でも楽しめるよね。

 

 ちょっとばかり、魔女っ子になっちゃったけど、

 あのアパルトマンに休暇中は帰る事になる、のかな。

 いや、それも先生方に相談しないとな。

 一人で動き回って良いのだろうか? 

 きっと駄目だよね。

 

 歯磨きして、鏡を見る。

 やっぱりホラーの世界の住人だよ。

 背が高くて首も長くて、白っぽい顔に白っぽい髪の毛。

 眉毛も色が薄くて、瞳の色もブランにブルーが散ってて、仄暗い灯りだと何だかくすんでる。

 良く言えば、神秘的。

 悪く言えば、幽霊。

 血の気のない死体みたい。

 子供らしい丸みが無いから老けてみえるのかな? 

 

 東洋人的な切れ長の目は、本来ならツリ目になるところを、やけに気の抜けた感じで下がっている。

 やはり色素の異常なのか、そうしてまじまじと見ていると、瞳の色が霞んで薄い紫がかってくる。

 

 魔眼。

 魔眼ねぇ。

 そう言われると、耳が少し尖っているし、全体的に人間の子供には見えない。

 悪霊とか、悪いものじゃなければいいけどね。

 

 これでこの世界で、悪い物認定されたら、簡単に殺されそうだもの。

 ちょっと溜息。

 ハリー・ポッター、誰か読んだ人がいないかな。

 教えてほしいよ。

 何が地雷で、何が駄目なの? 

 モブでも居合わせたら駄目だとか、関わるのは駄目ってポイントあるよね。

 これもまた、悩んでも無駄な話だった。

 

 ***

 

 素晴らしき朝が来た。

 起きて着替える。

 暑くもなく寒くもなく。

 制服を着込む。

 

 ちなみに、下着は古風で、なんというかマクゴナガル先生が選んでくれたのは、こう、白のレースで可愛らしい。

 ストッキングはガーター式。

 痩せているが背が高くて、お胸があるので、きちんとした下着じゃないと逆に駄目ですよって事だった。

 

 うむ、雌カマキリの単語が浮かぶが、私的には無害なスカンクでいたい。

 

 大きめの制服を着て、体の線は出ないように気を配る。

 それから髪の毛もきちんとキチキチに編み込んだ。

 部屋の小さな鏡にうつしてみれば、いちおう真面目な感じに仕上がっている。

 

 本日は、またも寮監先生の空き時間に、ホグワーツの施設案内となる。

 空き時間は、どのくらい基礎能力があるのか、また、教科書の予習なんかで過ごす。

 

 ちなみにお部屋の備え付けの時計は、可愛らしいお家型で、時間になると鶏とヒヨコが列をなして出てくる。

 ピヨピヨ。

 夜時間は、羽ばたきだけ。

 シュババサ。

 

 身支度ができたら、監督生や他の生徒にご挨拶。

 ちゃんと眠れた? 

 寒くなかった? 

 とか、声をかけてくれる。

 優しい。

 朝から優しい。

 

 んで、隊列を組んで、大広間へ。

 やっぱりファーレイさんが手を繋いでくれる。

 

「迷子にならないように、寮から出る時は、誰かと一緒の時だけね。

 それから、誰かが呼んでるとか呼び出しがあっても、監督生やスリザリンの生徒以外は、出る必要はないわ」

 

 それで大丈夫なの? 

 って、他の人を見ると、真面目な顔をして歩いていた先輩方が、うんうん頷いた。

 

「喋れないというのは、危険だ。

 昨年度、補助教員で入り込んだ男が、非常にやっかいな輩でな、弱い立場の子供を標的に不埒な事をしかけたのだ。

 すでに処分し、理事会からも追訴し刑事責任をとらせる形にしている。

 いくら力のある氏族でも、許される事ではない。

 故に、ドヴワティーヌ嬢のように言葉に問題がある、そして慣れていない立場の女子はひとりで行動する、または呼び出される事は避けるようにしなければならない。

 ホグワーツは安全だが、人間全てが安全とは限らないからだ」

 

 と、監督生だろう男子生徒が説明してくれた。

 なるほど、害虫の話がそれに繋がるのか。

 スキャンダラスであるから、マクゴナガル先生も虫と表現したんだね。

 ありがとうございますと、笑顔で頷く。

 相手もにっこり。

 ファーレイさんもにっこり。

 

「あれで純血の分家なんですものね。最悪だわ」

 

 と、後ろに続く、先輩が嫌そうに顔を顰めた。

 

「分家と言っても、問題がもともとある家だ。紹介した魔法省の役人が買収されていた事が問題だろう」

 

 そんな仄暗い貴族のお話をお子様たちが当然のように語る。

 庶民にはわからぬ世界よのぅ。

 

「今度理事会役員がマルフォイ氏になるというから、少しは安心できるだろう」

 

「新入生に、御子息がいるからかしら」

 

 うむ、更にわからぬ話になっていくが、私は笑顔をキープして、握った手をふりふりしながらファーレイさんと歩いた。

 朝からファーレイさんは、お花の香りがします。

 

 私? 

 私は無臭です。多分。

 今度、身だしなみグッズを充実させましょう。

 子猿とかスカンクとか、雌カマキリ。

 どうにか可愛いイキモノになりたいね。

 無理か、狡猾でイケイケとかいわれたもんなぁ(遠い目)

 

 朝のざわめきの中、食卓につこうとして今日も黒衣の吾輩氏に手招かれる。

 ファーレイさんに行ってきなさいと促されて、走らぬように近寄ると例の魔石が差し出される。

 鼻の欠けた馬だ。

 もうちょっと可愛いのがいーなーと思いつつ、受け取ってニギニギ。

 するとウニョウニョしだした。

 キモい、生暖かい。

 

 おはようございます、寮監先生。

 今日も、こいつウニョウニョしやがりますですよ。

 

「気色悪いのは、お前の垂れ流す魔力の方だ」

 

 感じられる程ですか? 

 寮生の皆さんに影響あるようなら、ちょっと隔離をしていただけると。

 

「多分、感じられるのは少数だ。お前の特性に叶う獲物だけだろう」

 

 先生方のテーブルは埋まっていないが、その発言はアウト。

 獲物うんぬんは言わないでくださいよ。

 自分でも魔物くさくて嫌なんですから。

 

「自覚が出てきたか?」

 

 少し考えてました。

 寄生型の魅了能力かなと。

 寮監先生以外の、大人で若い男に会えば、確定できるかと。

 未成年と高齢者は規格外として、寮監先生ぐらいの世代から獲物認定かもしれません。

 高学年の先輩方で、念話を試みましたが、誰一人通じていないと確認できています。

 ちょっと、自分でもドン引きです。

 結果、大人で若い男ならオッケーなのか、その他の付帯条件があるのか。

 もしくは私個人の寄生蟲としての好みの問題なのか。

 いやぁ、笑かしてもらってますわ。

 雌カマキリとか女郎蜘蛛みたいですよね。

 

 それに先生は頭痛がするとばかりに、眉間に指を置いた。

 ちなみに、ホグワーツ職員で獲物の規格にあう被検体があれば、実証実験可能かと。

 

「悍ましい事を朝から提案するな。

 それから、普通の十一歳は、そのような思考をする事はない。

 お前は異常だ」

 

 異常認定頂きました。

 だって獲物とか、先に寮監先生が言ったんじゃん。

 

「新学期までに戻ってくる教諭は吾輩より年下だ」

 

 獲物かよ! 

 実験は許可するんだ〜。

 

 じゃぁ楽しみにしてます。

 ちなみに、睡眠時間取れました? 

 四時間以上ですよ。

 

「魔石を確認する」

 

 はいはい。

 馬を渡す。

 

「言葉ではなく、問うように息だけを吐け」

 

 ふっ。(乳製品と野菜も食べるんですよ、先生)

 

「不快な圧は消えた。

 食事に行け」

 

 前途多難ではあるが、まぁ人生って面白いよね。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。