R15は、残酷描写予防処置と寮監先生の苦行成分でできております。
寮監先生のお部屋は真っ暗。
背後が見えず、アニマルは侵入したくてウズウズしている!
筆記試験は、まぁまぁできた。
ワイの記憶力、謎ファンタジー学問だと、ゲームブックのようでスルスル記憶できた。
呪文も面白い。
魔法陣も興味あるし、ワイ、魔女子さんとは違った、爽やか魔女を目指したいかもしれない。
あと、カンニング防止の羽ペンとか使うんだよ。
なんだろう、妙に現実的。
いや、現実、現実ね。
実技試験もいつも通り、楽しかった。
テストは楽しくない?
パイナップルのタップダンスだよ!
呼ばれて、ラ・ラ・ランドのカップルダンスをハミングしながら踊らせたよ。
ついでに一緒に踊ったら、先生が喜んでくれた。
あと難問だったのは、マクゴナガル先生。
嗅ぎタバコ入れを知らん私。
かわりに美しき小箱というお題をもらう。
思い浮かぶのは、漆塗りで、蓋に金箔を施した小箱。
とかカッコつけて言いつつ、お花柄の楊枝入れ。
ルマルシャンの箱なんぞを創造しそうになるが、そんな闇の物体を出現させたら落第確実だ。
と、いうより、マクゴナガル先生がお倒れになる。
可愛らしいファンシー小物入れを出して事なきを得る。
脳に瞳を作るような物体はいけない。
と、こんな具合で、テストは楽しかった。
魔法薬学?
いつも通りだよ。
料理は正確な計量と、正しい手順、そして適切な材料を選び、清潔を心がけるのさ。
うーん、今日もうましうまし!
もちろん、飲まずに提出したよ。
忘れ薬だもの。
これ以上忘れてどうするんだである。
因みに、皆大好きビンズ先生のテストは…
テスト対策というか授業がね…
催眠術師のような先生の授業だけど、私がいるとどうなるか?
ワイが質問する。
先生、私の名前に反応し、答えてくれる。
ワイが質問する。
先生、私の一族の話を始める。
ワイが質問する。
先生、歴史の分岐点に多くの跡を残している魔女子さん達のお話もしてくれる。
結果、眠くならない。
そしてスリザリンの魔法史の成績があがる。
今回のテストも異例の好成績の予感。
なのに、好評のようで不評。
なぜなら…
「アンタのご先祖、何で皆、とんでもない死に様なの?
ドラコが、泣きそうになるから、質問するのやめてくれない?」
だって、ワイ、魔法史苦手なんだもん。
わからんところを質問しないと落第しゅる。
「間違ってないんだけど、間違ってないんだけどさー、何で最後に、アンタのご先祖の鬱話になるわけ?
何で、騙された挙げ句に、生き埋めとか。
領土戦争の時に人質になった挙げ句に、公開処刑、三日かけて火炙り?
当時の指導者の息子に誘拐されて行方不明。
後年、発掘作業で、鎖が巻かれた状態の白骨発見。
生き埋めの可能性?
ありえないわー、夢に出るわー。
訳わからないぐらい、末路が惨死なのは何?
眠い授業でいいわー、本当に、なんなのー!
テストに直接関係無いのに、その鬱話と一緒に覚えるからテストはいい線いくのも、いやーっ!
アンタの一族の話で、泣きたくないぃー!!」
相変わらずのパンジーちゃんだけど、大方のクラスメイトのご意見はそれ。
ビンズ先生は、どうしてもお年寄りらしく、自分の興味のある事についてだけは饒舌。
そしてどうやら、私の一族の歴史が今、一番の胸熱な話題のようだ。
まぁテストが無事に終わってよかったよ。
何だかよくわからない全自動鍋の発明者の話も皆、書けてたしね。
そいで結果発表は1週間後。
で、ワイも一週間、思う存分、好きなことをするわけだ。
***
この間、セウェルスと一緒に座っていたベンチに腰掛ける。
私、葵は、12歳になった日から、ジャパンの記憶の私と完全に一致したと思う。
だから、すこし落ち着いて考えられそうなんだ。
おふざけは、一旦、無しでね。
それに丁度いいんだよね。
彼は今、テストの採点やら、様々な雑事、そして裏仕事で忙しいだろう。
だから、今日は私一人だ。
彼の死喰い人発言と、私という謎な生き物について、ね。
***
葵の成分分析をしてみる。
まずは、魔女子さん。
魔女子さんは、一族の記憶と知識、白い魔女ドヴワティーヌ家の特殊な身代わりの魔法を持っている。
この魔女子さん、成分は半分もないかなぁ。
危険な時とか、命運を選ぶ時に現れる。まぁ最近はお喋りに出てくるけどね。
次に、12歳になった葵ちゃん。
魔女子さんとは、殆ど同化してて、ヴィーラの力、魅了能力は彼女に出てる。
純正葵ちゃんは、殆どフレーバー。
そして最後、前世のワイ。
こうしてマーガレットに向けてお喋りしてる私ね。
実は本体がコレみたいだね。
葵の記憶とか重要な部分は、叔母さんを逃す時に支払ってしまって失ってしまったから。
このお喋りな彼女、実はママから受け継いだモノなの。
人格は、借り物だけど、中身は妖魔の質なのよ。
この間の12歳の誕生日に理解したんだけどね。
つまり葵・ドヴワティーヌの殆どを埋めているのは、魔眼を持った妖魔の血なの。
ヴィーラ由来の魅了の能力があるから、この妖魔の血が隠れてる感じね。
だから、殆どの人は、血の力が強いんだろうって誤魔化されちゃう。
血の力、白い魔女の力と魅了の力ね。
言葉、声、私の能力は、一族の知識と魅了の力だろうってね。
でも本質は、殆どを埋めている、妖魔の質だ。
魅了ではなく、支配の能力。
これが、動物達との会話だったり、魔法生物への威圧だったりする。
吸精も妖魔の本性だ。
そう、パパの血筋だけなら、きっと不幸体質の可憐なお姫様だったんじゃない?
そんなのはゾッとするけどね。
早死しそう。
おまけに超ネガティブのペシミスト。
ジメッとした泣き虫なのよ。
だから、私が何か?と問われたら、本当はこうなのよね。
妖魔の血をひく、魔眼持ちの子。
ほら、まったく印象が違うでしょ?
純血魔法族特有の血の魔法を持つ、ヴィーラの魅了持ちの子。
じゃないの。
妖魔の血をひく、魔眼持ちで吸精体質、魅了まで使える魔女の子。
ほら、どんどん、おどろおどろしくなってきた。
これに校長先生は気がついている。
だから、首輪、なのだ。
魔眼の能力を押さえれば、他の厄介な部分もなんとかなる。
だって、私の芯は、妖魔だから。
強ち、セウェルスが私を猿と呼ぶのは、間違いではない。
かなちぃ……ふふっ。
そう、妖魔の血をひく私は、まったくもってふてぶてしい。
蛮族で超陽気、そして獣の質だから、縄張り意識は人一倍ある。
獰猛で男は従えるモノで、自由。
だから、葵ちゃんも魔女の血も、ワイ…私を軸にする事に異論は無い。
奪われて死にたくないし、もう私は、私達は十分に支払ったんじゃないかなぁ。
パパもママも知らない。
マーガレットの顔さえ覚えていない。
もう、私の船は暗い波間で揺れるだけ。
もう嫌なんだ。
悲劇のお姫様になんてなりたくない。
強くて明るくて、前向き。
なりたい自分になる。
誰かを傷つけなくたって、好きに生きる道はあるはずだ。
あの誕生日の日、何だかね、私って私だったんだって。
変だよね。
私の輪郭がわかった。
着ぐるみを着た私じゃなくて、これが私なんだなぁ、だよ。
自分が生きている事。
孤独である事。
この冷たい世界に立っている事をやっと実感できた。
失った分を取り戻したかのような、覚醒感。
そのうえで、セウェルスの言葉を考える。
するとしっくり来たのだ。
彼を艀にした理由。
シリアスな話ではない。
マーガレット、ごめん。
姪っ子は、アニマルだった。
つまり着ぐるみの中身から本物がでてきた。
私、葵・ドヴワティーヌの殆どを占めているのは、妖魔の血、獣だ。
妖魔とヴィーラの二つの力がもたらす影響が似ていて、獣の血が目立たなかっただけである。
記憶がないのも、自覚ができなかった理由だと思う。
発語の能力、魔眼の支配と吸精能力、魅了の血の力ではなく、この妖魔の質が問題なのだ。
ダンブルドア校長は見抜いていた。
だからルーンの首輪を使った。
私は獣で、遊ぶのが大好きだ。
残酷で自由で、気まぐれ。
遊ばせておけば、悪い事はしない。
他をコントロールしてるのは、その獣の部分だから。
そして、この獣は子供が好きで、陽気で、とてもとても理不尽。
幼年者や弱者を、自分の群れを守るアルファ個体なわけ。
だから、邪悪で理不尽でも、討伐されずにすんだ。
家族を命がけで守る知能はあるってね。
ただ、獣は獣だ。
自分のテリトリーに、敵対個体や集団の侵入を許さない。
さらに同位を認めず、己の支配を脅かす者に攻撃を加える。
野生動物、ワイルドライフである。
本当に、猿だった。
で、この獣、アニマルの自覚とセウェルスの死喰い人発言の何が結びつくのか?
つまり死喰い人である事が私のアニマル成分の根拠にもなるのだ。
嬉しくない。
そのセウェルスの告白の意味は何だと思う?
過去自慢でもなければ、気を許したからでもない。
そんな抜けのある大人ではない。
予想では、踏み絵。
懺悔ではない、小出しの真実、過去に対する私の反応を見ていた。
女神の話を別とするなら、最大の暴露だ。
経緯を考えれば、校長が許可したのだろう。
そうでなければ、致命的な過去を生徒に漏らすわけがない。
死喰い人で、元がつくかは曖昧。
彼の立ち回り、ヒールプレイの理由も校長は把握しているのだろうか。
死喰い人は、魔法界では重罪犯の汚名だろう。
恐怖の代名詞で、社会的には悪だ。
アンダーグラウンドでは、フリーパスの通行手形。
まぁアニマルにはどうでもいい話である。
それでいいのか?
ここでも記憶が無い事、知識が魔女狩りの世紀末、感覚は獣の私では、全く当てにならない。
だって弱肉強食、ワイルドライフ、妖魔は獲物を弄び、下位の輩を甚振る。
闇の帝王と似ている価値観に、なけなしの女子供は除外する外付け良心があるだけだ。
つまり非常に、人間性が終わっている。
人間じゃなくてアニマルだもんね。
校長は何を試したいのだろう?
私がどの方向に向かいたがるか?
闇の帝王みたいに?
いやぁそんなバイタリティがあるなら、マーガレットを訪ねて三千里を旅するよ。
駆除すべきか否か?
残念だが、マイアニマルは、享楽家でもある。
アニマルにマグルも魔法族も無い。
男と女の区別だけだ。しかもターゲットは、男である。
弄ぶのも、甚振るのも、どちらかといえば、楽しくて気持ちいいのを好んでいる。
残念だが、拷問でも、痛みではなく快楽方向の外道だろう。
そしてヴィーラの魅了が、それなー。
やだなぁもう。
シリアスはないのである。
無駄に悲劇のヒロインムーブは、笑っちゃうのである。
アニマルだからねー。
そして死喰い人な。
死喰い人は、闇の帝王の配下で、闇の魔法使いの集団だ。
目的は、帝王の悲願である民族浄化だ。
マグル、シねである。
そして死喰い人には、飼い主がいる。
わかる?
ここでアニマルが何を考えるか?
自分のテリトリーにいる、この男は、誰かの支配を受けている。
普通(蛮族版)はどうかな?
ひゃっはー、敵の犬がこんなところにいやがったぜー!おもしろくねぇなぁ、殺せ!
アニマルだと?
ひゃっはー、敵の犬がこんなところにいやがったぜー!おもしれぇ、こいつで遊んだれ!
これである。
最低だな、私。
敵としたが、実際は、自分以外の支配を受けた存在がいる事に、惹かれたのだ。
言葉で綺麗にまとめなければ、興奮したのだ。
すげぇ嫌。
で、アニマルはこんな感じ。
あれ?誰かの支配があるぞ、血の契約に近い、すごく苛つくニオイがする、だ。
自覚のない部分で、高慢な妖魔の血が勝手に腹を立て、決めたのだろう。
この雄は、私が支配してやろう。
繰り返すが、最低なアニマル様だ。
私という獣は、素直な獲物は喜ばない。
いつも捧げられ、勝手に自らひれ伏すのが当たり前だからだ。
そしてマイアニマルは、誰かが自分のテリトリーを荒らす事を認めない。
後から来たのは自分なのにね。
理不尽である。
ジャイアンだね。
これが12歳、いや11歳の私の理論だった。
支配をされるような男なら、食い荒らしてもいいよね?
アニマルは本能で、この男は獲物だと認定した。
だから、死喰い人であると言われて、納得。
ここからは推測だが、彼は魔法契約を結んでいる。
死喰い人なら、帝王だろうか。
彼の血に、その契約が混じっているのがわかるのだ。
血に混じるような契約は、よほど繋がりが強い魔法だ。
アニマルの大興奮ポイント、誰かの食いかけの骨っこ発見!
転生人格と言う外付け良心も、このアニマル思考が嫌だなぁって思ってはいるんだよ。
弁解になるけどさぁ、妖魔の血をひく子供なんだよ。
子供なの。
仮初めに蘇った人格も、誰かを支配下に置いたり、意地悪したりする趣味はない。
アニマルだって、男に期待はしないが、仲間は守るものだと知っている。
葵ちゃんだって、家族は守るものだと考えている。
大興奮ではあるけどね。
セウェルスが死喰い人かー、ふーん。
だから?
浮かんだのは相手への嫌悪や恐怖ではなく、己の本性と疑問への答えを得られた満足だ。
彼は仲間だ。
骨っこではない。
今はね。
仲間に対しては行動の制限があるって事。
妖魔、アニマルは、子や血を守る為に、テリトリーを作っているのだ。
そしてそれはドヴワティーヌの身代わり、生贄の血の理由とも重なる。
愛も尊さも理解はしているのだ。
真心の価値だって知っている。
生贄にされてきた魔女には与えられなかったけれど。
ただの犯罪者なら、目も向けなかった。
偽装が上手かったからというのも理由だろうか。
そう、興味深いのだ。
死喰い人はどうやって主と繋がっているのだろう?
血に混じる程の支配だ。
あぁいうのは、死体になっても残るだろう。
彼が、愛する人に償いたいと思っても、彼女の子供に優しくできないのは、その契約が原因だろう。
忌まわしい術、呪いだ。
まぁ本人も呪いを解く事は望んではいないだろう。
彼の愛は、彼の呪い、帝王との繋がりによって愛を失ったのだろう。
ならば、死喰い人である罪は、愛の記憶でもある。
罪は愛と結びついてしまった。
呪いがある限り、彼の愛も永遠だ。
後悔、苦しみとともに、彼の中にあるのだ。
そして妖魔の血をひく私は、俄然、非道な事を思いつくのだ。
血による支配の上書きは、できるのだろうか?
クソな支配をぶった斬り、その愛の形を壊す事はできるだろうか?
さすがアニマルである。
考えがゲスい。
己が罪であり、彼女への愛の記録であり、面倒くさい過去の証。
その血に混じる、あの帝王の呪い。
余計なモノはいらねーんじゃねーのー?
私なら、女神への愛をそのままに飼えるのに。
…
それはない。
その思考はアニマル。
未成年の考えることではない。
やめるんだ。
私が、繋がりを断ちたいと思うのは、
既にその帝王が、あの有り様で、帝王(笑)の、エゲツナイ不幸を逆流されたらたまらないからだ。
うんうん。
飼いたいとか、駄目、ワイ、未成年な。
仮に、闇の帝王(笑)が全く別の魂のカテゴライズができたのなら、彼に及ぶ支配をぶった切るだけの力が私にあるのだろうか?
という方向の疑問。
もちろん、これは彼が今のところ、私の仲間であるからだ。
敵に回るのなら、別のやり口もある。
…
それも駄目な奴ー!
あぁこれが12歳の純粋な女の子だったら、こんな思考にはならないだろう。
やはりシリアスにはならない。
考えてるのが三十路男の攻略である。
言い方はアレだが、それ以外の表現が浮かばない。
女神の推し活をするのはいいが、若かりし頃の痛々しい悪行を大切にする必要はない。
できれば、そんな過去は売却しておいたほうがいいのは当然だと思ってるが。
だって、帝王(笑)になってるし。
仮に、帝王(笑)からの支配が可能だと困るのである。
それは木の支配とも言える。
彼は、女神の愛に生きているのであって、半端なシニカケにあげるつもりはない。
やだ、結論がジャイアニズム。
これは俺のじゃないけど、俺のものにしとこう。
貴方のものは私のもの、私のものは私のもの、ジャイアニズムである。
長々と自己分析してこれかよ。
石のベンチで、がっくりと項垂れる。
愛とロマンが行方不明だ。
因みに、何の妖魔かは知らない。
ダンブルドア校長は調べていそうだ。
何かの取引をするときにでも聞こう。
うん、考えが整理できたような気がしないでもない。
ワイ、アニマル。
オマエ、アタマ、マルカジリ!
救いはある。
愛を心にとどめているセウェルスは、アニマルの中でもカワイイに分類されている。
アニマルも手加減するはずだ、多分、maybe…
三十路の成人男性をカワイイとカテゴライズする12歳。
将来は不安しか無い。
ある意味、自己解決というか、内面の整理がついた私は、ぼへーっと日向ぼっこを続けていた。
実際、あの寄生を疑っていた二人に動きは無いし、試験は終わったし、気がぬけていた。
まぁいちばん重要な、フワフワちゃんが攻略された事について、アタマからすっぽり抜けていた訳だ。
何が重要なのか、賢者の石とどう結びつくのかイマイチ不明だったのもある。
死喰い人なんだよねっていう、話に、インターバルが必要だったわけで。
つまり結構な、ダメージがあった。
まぁ言い訳ね。
ベンチでぼへーっと気を抜いてたら、聞こえるわけよ。
何でか少年少女の会話がね。
ワザとかよっ!
って言いたいところだけど、自分が座っている場所が死角にある上に、カップル穴場スポット、現、寮監先生の行き倒れスポットである。
校舎の通路、割とスリザリン寮の近くなんだよね。
人けがない通路の端っこからの死角にベンチ。
まぁ密談とか、内緒話に最適スポットでもある。
やっぱりカップル向けなのに、セウェルス出没地点の為、上級生は避けているだろう。
じゃがしかし、一年生は知らないだろう。
たぶん、カップル成立するお年頃だと、ゲゲッってなるけど、ピュアピュアな一年生は知らないトリビア。
最近はケルトバーン先生も出没するという。
そいでワイ、聴力抜群。
たぶん、アニマルのお陰で視力より聴力強化センス。
「ハリー、リラックスしろよ。ハーマイオニーも言うとおりだよ。
ダンブルドアがいるかぎり、石は無事だよ。
それにスネイプは、もともとフラッフィーには噛まれない。
眠らせたのは別の奴らだよ。」
「でも、何か忘れている気がするんだ」
「それって試験のせいよ。まだ明日も試験がありそうな気分だもの」
「ハグリッドに卵を渡したのは、外の人間だった。でも、フラッフィーを眠らせたのは、中の人間だろ?」
「まぁ、そうなるわね。パブで、フラッフィーの事喋ったって言ってたし。」
「だからだよ」
「どういう事だい?」
「外の人間が仕組んだように、眠らせたんだよ。
そうすれば、奴は疑われないだろ!」
…
…
…
うん、少年よ。
君は素直に育っているね。
実に、こう、何だろう、酸っぱいものを食べた気分になった。
今の私はきっと、顔をクシャッとさせていると思う。
「外の人間に化けてたんじゃないかな、きっとヴォルデモートか、スネイプだったと思うんだ。」
「そんな」
「校長先生に言いに行こう!大変じゃないか」
ワイ、そっとベンチから立ち上がり、背後の茂みをかき分けて出ていく。
既に少年たちは走り去っている。
そいで、ワイ、片手を上げて振る。
は〜い!
立ち尽くすハー子さん。
うん、わかるよ、わかる。
何か、違うよねって、また、思っちゃったんでしょ。
あの年代の男子ってね、真っ直ぐだよね。
世界は単純化されてて、朝日は眩しくて、大人は悪者なんだよね。
「どうしよう」
現実は残酷だ。
彼女は、現実が見えてしまった。
私の沈黙に、彼女はフラフラと通路の壁に寄りかかった。
「ごめん、私、何だか変なのよ」
うんうん。
「あのね、究極、何で、私達、四階の事で悩んでるのかなって」
そうだね。
「試験が終わって、本当に、気分が良かったのよ」
頑張ったもんね。
「ありがとう。あのね、私達ね、四階の部屋にね」
言わんでいいよ。
「あー、そうか。貴女のリボン、そうね。そうだよね。
スネイプ先生が、本当に守ってる側なら、貴女も知っているものね。
そうよ、貴女、何も隠してないもの、ははは、馬鹿みたい」
なるべく、暴走しないようにしてあげてよ。
賢者の石を狙ってる輩がいるのは、本当なんだしね。
「貴女もそう思うの?」
だとして、君たち、私も含めて防衛に参加する必要があるの?
これが、貴女の疑問。
あたりまえだよね。
だって、武装強盗のいる店に、君たちはノコノコ入っていくの?
「あー、それよね。」
不思議なんだよね。
マグル育ちなら、ある程度の、なんだろう現実のシビアな部分ってわかるよね。
「確かに」
魔法界の人の感覚って、少し、大分、違うでしょ?
「えぇ。でも不思議な事が現実なんですもの、ちょっと違うのはしょうがないわよね」
うん、でもさ。
ハリー君は、ちょっと、オカシイ。
「それね。額の傷の事もあるみたい。何だか最近夢見も悪いって」
あー、それこそ校長に言った?
「いいえ」
そっちのほうが、賢者の石より重要。
マクゴナガル先生に、ちょっと相談してみよう。
大人が考える魔法界のスタンダード、お約束を知るのも大切だよ。
「ありがとう。」
何?
彼女がじっと、こちらを見た。
今までで一番、目があったと思う。
「貴女は、マグル育ちなのね」
そーだよー、スクイブの叔母さんと暮らしてた。
最近、やっと生活周りの記憶が浮かんできたよん。
ふふっ、ちゃんとプライマリーにも通ってたし、キッチンで食事も作ってた。
好きなお菓子とか言う?
流行りの歌でも歌う?
イレブンプラスの勉強もしてたでしょ?
「そうね。」
この姿は、促成栽培。
怖いことがあって、魔女の血が目覚めちゃっただけ。
喋れないのも、制約があるのも、魔女の血、魔力のせいなんだよ。
まぁ魔法生物の血が混じってもいるから、魔法族とも人間とも違ってしまったけどね。
貴女の感覚はわかるつもりだよ。
きっと元から勉強家で、標準評価テストでも上位だったんでしょ?
ランキング常連の学校だった?
「貴女も通ってた?」
私はギフテッドのコースで、できる教科とできない教科が極端で、テストで上位には入れなかったよ。
誰かが、慰めてくれたのも、うっすらと浮かんで、消えた。
きっとマーガレットだね。
セウェルスが慰めてくれたらね、ちょこっとだけ、滲んで消える幻が浮かぶようになったよ。
孤独は消えない。
でも、愛も消えない。
わからなくてもね。
冴えわたる景色にも、きっと静寂以外の音が残っているのかも知れない。
「じゃぁスカラーシップを狙ってたの?」
たぶんね。
記憶が無くなっちゃったし、後はホグワーツに来ちゃったしね。
ねぇ、危ないこと、しないでね。
「うん、わかった。ありがとうドヴワティーヌさん」
葵ね。
「ア・オーイ?」
あおい。
「エーオィ?」
壁は高いねぇ。
好きに呼んでよ、お友達でしょ?
へへって笑顔をいただきました。
***
まぁフワフワちゃんを少年たちが攻略して、賢者の石なる物を守るクエストに挑むのは、ハッキリ言ってどうでもいい。
どうせ、あれ、ヒゲの罠だし。
見せ餌の賢者の石が、果たして本物かもわからん。
エゲツナイ学びとか、愛と勇気とか正義、何か地に足のついていない理想を掲げちゃっての罠だろう。
そんなぁーことはどうでもいいんだよ。
そう、フワフワちゃんが眠らされちゃった。
試験で忘れていたとは何たるテイタラク。
我の舎弟を弄ぶとは許さんのである。
そして、なにやらガキンチョがワクワク大冒険をしそうなので、ここは一つ、季節外れのガイ・フォークス・ナイトをしたい所存。
んで、その夜。
仮眠していたセウェルスを叩き起こす。
自室に押し入ろうとする一匹と、猿を入れまいとする寝起きの魔法使いの攻防が暫く続く。
「野生に戻るな、この馬鹿が」
寮監先生の私室はきちんと奥にあるのである!
へへへっ、秘密のお部屋だー!
研究室とか、日頃、巣にしているお部屋を自室と考えちゃうけど、プライベートルームはある。
当然だ。
日光から得られる骨を強くする成分を摂取できる部屋かどうかのチェックをしたい。是非に!
「窓は、つけられる。地下だろうと、水中だろうと、日光は入る」
見せて、見せて!
「絶対に入るな!」
ベッドの下に、イケナイ本とかある?
拳骨をもらった。
割と本気の拳骨だった。
ベッドの下に何かあるのは確実だ。
というおふざけはココまでにして。
「本気だったろう」
今夜の見張りに混ぜ混ぜしてちょ!
「なぜ」
ばればれーヒゲ不在、セウェルス、寝不足ー、答えは?
「却下」
じゃぁ勝手に燃やしにいくよん。
「現れると?」
だって、もう攻略しようとしてるのバレてるし、ハリー君をついでに殺すなら、チャンスはテストの結果がでるまでの、この緩んだ時期。
ヒゲは、不在だしね。
どこかにいそうだけど。
「君は、バカだろう」
半眼の男を見上げる。
「この間の私の話の意味は、理解しているのか?」
扉の前で腕を組み、扉に寄りかかる姿。
絶対に入れねぇからな!という態度に笑う。
「死喰い人とは、純血至上主義であり、反マグルを掲げるテロリストである。
野心家であり、ならず者。
決して馴れ合う相手ではない。
私達は協定を結んでいるが、君は私がそうした底辺の人間であると理解すべきなのだ。」
笑う私に向けて、腕を解く。
目の前に差し出された左腕の内側に、めくれたシャツの袖から印が見えた。
実験のために巻いていたリボンは解けかけていた。
あぁそうか。
校長は私を試したい。
どうしてかなぁ。
セウェルスは、私が怯えると思った。
どうしてかなぁ。
ふへっふへへっ。
色が薄くなっている。
支配が弱まっている、消えかけだ。
良いことだ。
「なぜ、笑う?」
腕をとり、ニヤニヤと笑ってしまう。
だって皆、嘘つきばっかりなんだもん。
とは言わないけどね。
印に指を置いても、凹凸はわからない。
見た限り、やはりそれは単なる入れ墨ではない。
なすがままの相手も含めて、実に実に面白い。
こんなくだらない印を刻むなんて、支配の面白さを忘れている。
彼が愛に縛られているのは、自ら望んでいるからだ。
自ら望む者に、このような無粋な契約はいらない。
彼の頑なな愛の意味を、これを刻む相手は理解する事は無い。
まぁ今では、人間以下の、ナニカ、汚物みたいなモノに成り下がっているようだが。
そうだ、この印が気に入らないのだ。
彼は、オマエの獲物ではない。
まぁ帝王(笑)だけどなっ!
と、また、ケダモノが元気になっちゃったね。
はいはい、ステイステイ。
私はリボンを巻き直した。
セウェルスぅーガイ・フォークス・ナイトしようぜぇ!
「…何故だろう、君を見ると学生時代の汚点が浮かぶ」
青春の1ページだねー、ワイもこれから、ワクワク放火魔になるよー!
「着替えるまで、待て。野放しにできん」
で、プライベートルーム侵略の攻防が再燃するのだった。