R15は、予防処置と寮監先生の苦行成分でできています。
もうすぐ夏休みだね、楽しい旅だといいね。でも、たぶん、ラブでもロマンスでもないんだよ…
学年末パーティーは、ちゃんと開かれたよ。
どこが寮杯を掻っ攫っていったかって?
レイブンクローだよ。
あれ?
スリザリンとかグリフィンドールだと思った?
考えてみてよ、クィディッチで稼ごうと、勉強の鬼が得点を叩き出そうが、それを上回るマイナスの嵐だよ?
誰が稼いでるかって?
まぁ皆だよ。
そして私だけ、加点も減点も無し。
どうもね、私を加えるとバグるからだって。
なにしろ、スリザリンの寮監が初めて減点を校長に願い出た生徒だしね。
先生方のお話も当たり障りもなくしめられた。
当たり障りのある事ばかりなんで、寮杯の話題が霞んでいるとも言う。
双子は帰ってきてたし、ハリー君も友達もちゃんと揃っていた。
双子は多少おとなしい感じだったけど、体の方は大丈夫。
カウンセリングはあるんだろうか?
ハー子さんもウィーズリー弟も、ケガも軽くて、あの晩の事は何も口にしていない。
うん、元通りではないけれど、無事に一年が過ぎた。
レイブンクローカラーで大広間は飾られ、優秀な生徒を褒め称え、楽しく過ごした。
ヒゲにお願いされて、歌も歌った。
妖精さん音楽隊も伴奏してくれたんで、Scarborough Fairを歌った。
ヒゲのリクエストは、Annie Laurie だ。
なんつーか2曲ともしんみりしちゃった。
そして成績発表ね。
一年のトップは、ハー子さんとノット君が争ってる。
ワイ?
その間をチョロチョロだよ。
彼らの努力に、私のバグった記憶力でなんとかついて行ってるだけだよ。
興味のある事には集中できるんだけどね、これがまた偏ってるからなぁ。
それでも朝活の努力は確実に出てる。
りっぱな魔女になるぞー!
さぁ今学期も終了だ、夏休みだー!って雰囲気の中。
久しぶりに、怪しい気配も無く、寮監先生の監視もなく、私はいつもの場所にいた。
いつもの、薬草群生地の石のベンチだ。
今年の夏は、予定がいっぱいだ。
お手紙のご招待で、旅行だぞ!
なんて、浮かれる気持ちは無い。
人生は相変わらず霧の中だし、トラブルだらけだ。
魔力コントロールはうまくいっていない。
感情で波が出ちゃうんだよね。
それにどこかで、コントロールされたくないって、ケダモノが言うんだよ。
ワッチは自由でありんすってね。
妖魔め、最近遠慮が無くなってるんだよ。
それに魔女子さんは、どうも主導権をこっちに投げてる。
たぶん、もう嫌な終わり方をしたくないって考えてるんだよ。
誰だってそうだ。
恋人に絞め殺されて死にたくない。
夫や彼氏に、酷い事をさせたくない。
だれだって、ハッピーエンドのお姫様になりたいんだ。
カワイイお婆ちゃんになってさ、猫と日向ぼっこして、愛する人と同じお墓にはいりたいんだよ。
まぁ、これ十二歳の女の子の考えるこっちゃない。
やめよう。
まぁ成績はそこそこ出せたし、ホグワーツから一応、変な生き物は消えた。
叔母さんは探してもらってるし、考えてもどうにもならない事なら、目を閉じてしまうのもありだ。
もう初夏だ。
ここに来て、一年はとっくに過ぎた。
ぼんやりとしていると、背後の茂みがガサガサした。
誰だろう?
セウェルスはガサガサしないので、違う。
振り返ると、三人がいた。
ハリー君とハー子さんと、ウィーズリー弟君だ。
何?
「あの、僕達、そろそろ帰るから。少し話したくて」
おぉぅ、どうぞどうぞ。
ベンチにハー子さんを座らせると、少年二人は草地に腰を下ろした。
「フレッドとジョージに聞いたんだけど、こんな場所があるんだね」
やっぱり双子は知ってるかぁ。
彼らの知らない場所ってあるのかな?
「静かで、景色が綺麗ね。あれ、池の小島も見える」
「薬草が生えてるね、やっぱりスネイプ、先生も来るの?」
ここは彼の行き倒れスポット。
「ふふっ、相変わらずよね」
私のメモ書きを見て、ハー子さんは笑った。
それを少年たちに飛ばす。
受け取ったウィーズリー弟が舌をだした。
で、お別れの挨拶に?
「それもあるけど、それぞれに貴女と話したかったから」
ふむ。
「いろいろ教えてくれてありがとう、これからも話を聞いて欲しいの。
魔法界とのギャップとか、自分が変に舞い上がってないかとか。
いいかしら?」
友達じゃん。
「ありがとう、へへっ。私はそれだけ」
で、少年二人は顔を見合わせると、ウィーズリー弟君が口を開いた。
「あの、その」
何だい、ウィーズリー弟よー
「僕、ロンだよ」
わかってるよ、私の血の呪いは、男の名前を呼ばないほうがいいんだよ。
「えっ?」
魔力コントロールができていない。
だから、スネイプ先生が魔道具で何とかしてくれている。
君の名前を知らないわけじゃない。
影響を少なくするために、認識のレベルを下げているんだ。
「そうなのね。女の子だと名前を書いてくれるから、やっぱり。」
「あの、それじゃ」
ハリー君は、抗魔力、魔力抵抗が高いから、呼べてる。
慣れもあるんだ。
だから、男でも名前を呼んでいる子がいるのは、それが理由ね。
私が歌えるのは聞いてるから知ってるよね?
「うん」
正確には、発語、カタコトなら喋れるんだ。
けれど、魔力コントロールができていないから、君たちに悪影響を及ぼさないように、喋らない。
笑ったり、不意打ちで声を上げてしまわないようにもしてるんだ。
だから、本当はいっぱい喋りたいんだ。
で、ウィーズリー弟君、何かな?
「その、スネイプの事」
先生ね。
「おぉぅ、うん、先生。
本当に、その、ハリーの事を、その」
さぁね。
「えー」
だって、私は先生じゃないから。
「確かに」
他には?
「その、今年の夏はどうするの、かな?って」
あぁ、今年は、国外に出るよ。
招待されててね。
「へぇ、何処に行くの?僕は、きっと家族で近場にキャンプとかかなぁ」
さぁ、行き先は聞いてないんだ。
招待状が来たらしくて、先生ならわかるかな?
「え…」
「ロン、この話題は止めましょう。
ハリー、ほら、ハリーの番よ!」
「えっちょっと、待って。それ重大発言な感じがするって、聞いとかないと、ねぇハーマイオニー」
「ダメよ、聞いたら最後、夏中、嫌な想像しちゃうでしょ」
「うわぁ」
「あの、僕も、同じ質問になる、かも。
スネイプ、先生の事」
どうぞ。
「あの、僕の両親と先生は」
私が知ってる限りの話だけ。
彼は君のママと幼馴染だった。
君は、その幼馴染の子供だ。
これだけだよ。
本人に聞いてみればいい。
「えっ」
「そんな、スネイプに聞いたら、殺されちゃうよ!」
ウィーズリー弟よ、彼は先生だ。
どんなに嫌味で意地悪でもね。
無理そうかい、ハリー君?
「う、うん」
じゃぁ慣れるところからかな。
彼の嫌味や辛辣な言葉を置き換えてみるんだ。
「えっと、どういう意味?」
嫌味な部分を切り取って捨てる。
彼は何を言おうとしているのか?ってね。
ムカッときたり、しょんぼりしちゃう事を言われたとする。
覚えているかな?
スリザリン生は贔屓をされているって、思うだろ?
それでも彼らも、きちんと先生への対策はしてるんだよ。
「うっそだー」
ウィーズリー、減点だっ!
「ごめんごめん」
例えばだ、彼は散々嫌味を並べているけど、その要点を抜き出すと、こんな感じ。
魔法薬学の授業の、大方の注意だとこんな感じかな。
予習復習をしましょう。
教科書と、先生の授業の違いは、必ずノートに書きましょう。
材料や道具は危険だから注意をしましょう。
手順を必ず確認しましょう。
危険な材料や完成品もあるから、手袋をして、作業が終わったら手も洗いましょう。
道具は元の場所に順番にしまおうね。
妥当でしょ?
スリザリン生は、おおよそ、これを守って、授業が始まる前に着席している。
君たちは、お喋りして騒いでないかい?
「でもさ、こんな言い方じゃないよ?」
じゃぁもう一つね。
そもそも彼が言う必要は無いんだ。
予習復習は当たり前だ。
後片付けも当たり前だ。
授業中に危険な実験をする時はフォローするけど、そもそもいい加減に授業に取り組むほうがおかしい。
当たり前の事を毎回守れないんじゃぁ、授業にならない。
だって、彼の授業は実践だ。
必ず成果物を提出するか、観察レポートを出さなくてはならない。
彼が用意している材料は、誰がどうやって用意していると思うんだい?
「気がついちゃうと、もうね」
ハー子さんが肩をすくめた。
魔法の世界でも、現実なんだよねー。
そういう事。
さて、話がそれたね。
つまり、彼の言い回しのほとんどが、少し前のイギリスの古風な、上流階級の言葉遣いなんだ。
古い言い回しなんだよ。
嫌味はあるけど、君たちが考えるほど辛辣ではない。
スリザリンは、そうした言い回しの階級の父母を相手にしている、そう、子供たちもね。
だから、お高くとまっているように見えてしまう。
マルフォイ君の言い回しも、実は、彼の父母がよく言う言い回しを使ってると思っていいよ。
嫌味、じゃなくて、そういう言葉を使う家庭なんだ。
はいはい、反対意見はわかっているよ。
今は、攻略方法を伝えているんだ。
さて、彼の言い回しをいったん分解して受け取ると、結構、まっとうな事を言っているんだ。
大人げない言葉を抜いて、嫌味を言い換えて、口調を変えてみるんだ。
ポッター、さすが英雄殿は一味違うようだ、暇つぶしにこんな場所までご足労とは。
何かお探しかな、英雄殿?
英雄とは違い暇な吾輩に言ってみるがいい。
はい、翻訳。
「うぇっ?」
「あっ、何かわかる」
放課後だね。
ここに彼が来て、こんな台詞を言ったら?
「消え失せろ?」
「うん、そんな感じ?」
グレンジャーさんは?
「こんな人けの無い場所まで来て、どうしたんだね?
何か探しているのか、ちょうど手が空いているから、言ってみなさい」
素晴らしい!That's great!その通り。
この言い方も、嫌味にもとれるし、そのままの意味にもとれる。つまり、彼の言葉は、ウエハースなんだよ。
「冗談だよね?」
「うっうん」
ほぼ、翻訳は成功。
ただし、これをそのまま、本人に、こんな感じですよねって伝えるとキレる。
確実に減点される。
恥ずかしがり屋だから。
「絶対に違うと思うなー」
「うっうん」
もちろん、正解じゃないけど、翻訳をずっと脳内で続けて補完するとだ、ある一定ラインを越えた途端、翻訳しなくても理解できるんだよ。
「僕は、理解できなくてもーいーかなー」
「うっうん」
はい、グレンジャーさん笑わない。
じゃぁもうちょっと違うアプローチをしてみよう。
ハリー君、校長先生の言葉を思い出してね。
彼は誰の幼馴染だった?
「えっと」
君は両親の事を知りたいだろうけど、聞き方を少し変えてみるといいのかもね。
「それって」
そう、校長先生の情報をよく考えてみるんだ。
拒絶している相手から、話を聞き出すなら、相手が話したい事を聞くんだよ。
「話したいこと」
誰の幼馴染だった?
じゃぁその幼馴染は、どんな子だった?
そしてね、質問する場所と時間を考えるんだよ。
彼が何かを語っても大丈夫な場所と、余裕のある時間だ。
大広間で質問するかな?
教室で質問するかな?
彼の教授室で質問するかな?
薬草を採取したりしている時がいいかな?
「あ、うん」
そこまでして聞くのが面倒なら、他の人に聞くといいよ。
例えば、君は今、誰と暮らしてるの?
「伯母さんのところ」
聞けそう?
「悪口ばかりだよ」
じゃぁその悪口ばかりの伯母さんに、彼の事を聞いてみるんだ。
「えっ?」
だって知らない訳ないだろ?
そして先にも書いたけど、時と場所を選ぶんだ。
伯母さんが話しやすい時にね。
セブルス・スネイプってどんな人?
悪口が出たら、それを覚えてて、これを彼に又、聞けばいい。
伯母さんがこんな事を言っていたんですってね。
ほら、会話の糸口ができた。
頭を抱えるように考え込むハリー君。
ウィーズリー弟もハー子さんも心配そうに見ている。
「ハリーのところってさ、魔法使いを毛嫌いしているんだ」
そうなの?
彼のママのお姉さんでしょ?
「相当酷いみたい」
了解。
ちょっと先生に言っとく。
「えっと、大丈夫なの?」
ハー子さんだけに、メモ書きをして渡す。
実際、ハリー君の保護者を、彼に変えても大丈夫だと私は考えているよ。
どんな生活か、知らせてよ。
具体例があれば、マグルの福祉とか魔法界の福祉とか、連絡するから。
「うん、そうよね。そういう手段があるのよね。何だか、私達だけでどうにかしようって、考えてた」
ヒゲが何か考えてそうだから、後で襲撃だな。
で、間が良いのか悪いのか、お約束の様にセウェルスがくる。
薬草の方向から、少年たちの背後だね。
彼は気を使ってか、戻ろうとしたんで、来なよと合図。
すごい嫌そうな顔。
ハー子さんは、気がついて、正気なの?って感じで私を見る。
まぁいつも通りだ。
「一度、聞いてみたかったんだよねー」
背後には気が付かず、ウィーズリー弟君がヘラッと笑う。
「ドヴワティーヌさんてさー、スネイプの事好きなの?」
相変わらずのピンポイントでの失言だ。
何いってんだよっていうハリー君の表情が笑える。
さて、好きは好きだけど。
ウィーズリー弟君の好きは、どの好きだろうねぇ。
十二歳ぐらいの好きってのは、やっぱりドキドキする好きかなぁ。
そんなキラキラはどこにあるのだろうか?
それよりも、後ろ後ろー!
「ずいぶんと賑やかな夏休み前の寄り合いだな…ミスター・ウィーズリー、教師を呼び捨てとはいい御身分だ。」
少年二人の顔がオモロイ。
「さすがはグリフィンドールだ。
口から言葉を吐き出す前に考える事をしないようだ。
優れた者は黙って動くが、さて、英雄殿とそのお仲間は、相も変わらずのようだな。
このような場所まで顔を出すとは、よほど暇とみえる。」
翻訳、翻訳。
「嘘でしょ、止めてよ。えぇっと。
言葉には気をつけなさい。
賢く黙って行動する事。
こんな場所まで来るなんて、どうかしたのか?
やだ、だんだん、わかってきちゃう」
こそこそとやり取りするワイとハー子さん。
その目の前では、減点すべきかどうか吟味中の寮監先生と生贄二人だ。
「真実というものは、言葉にした瞬間、嘘の衣を纏うものだ。」
翻訳、翻訳。
「むずかしぃ」
じゃぁ、超訳。
(陰口は聞こえちゃうから、教師のは控えめにな)
「うわぁ〜」
「それでも話したいなら、ポッター、どうぞ続けたまえ」
翻訳、翻訳!
「怒ってる?」
いやいや、どっちかって言うと、どうしたんだポッター?
「うわぁ」
因みに、翻訳アシストとしてはだ、彼はダウンタウン育ちだから、口調がもとからキツめ。
そこにスリザリン的ハイソな口調を教え込まれるプラス、職業柄や彼の付き合う相手が高年齢だったからってのも加味される。
つまり、ダウンタウン口調ってさ、まずは、キツイ投げから入るじゃない?
と、これはハー子さんには言っていない。
彼がいかにもな強面のダウンタウン暮らしの大人で、キツめの口調だと、違和感が無いんだよ。
それが神経質そうで、陰気で如何にも口数が少なそうに見える大人だと予想外。
けれどダウンタウン育ちに変わりなし。
チョッカイ出すと、流れるように嫌味と攻撃的な言葉が溢れ出すわけだ。
つまり喧嘩上等。
ほら、前にフザケて、追い剥ぎカツアゲコミュニケーションを冗談と言ったけど、スラム近くのダウンタウンは、最初に舐められないように、いっぱつかます。
そうすると相手も、おうそうかって感じで、そこから話が始まるという。
冗談じゃないのがリアルだったり、野蛮である。
んで、そこでしっかりと育ったガキンチョが大人になるとだ。
如何に教授であっても、非常に攻撃的な部分から入る訳だ。
勘違いするよね。
内向的で学者気質。
そんな訳無いのである。
内向的で学者気質でも、負けず嫌いの超攻撃型。
陰気だろうが何だろうが、性格気質と行動が同じとは限らないんよ。
陽キャでスポーツ大好きでも、迎合型で平和主義の男もいるでしょ。
人って、カテゴライズすると安心するからね。
でも、彼は違う。
実に、ダウンタウン気質だ。
本人は嫌だろうけどね。
まずは動物的マウントから始まるコミュニケーションを無意識にとってる。
自分にも相手にも知的な会話を求めてるけどね。
いちおう、女性や礼儀正しい相手には、丁寧で慇懃な態度である。
慇懃無礼になるのは、だいたいが相手が舐め腐ってる場合と、個人的に嫌いな場合。
大人げないんだよね。利益がなければ、我慢しねぇってのがスタンス。
で、マジに嫌いな場合は、無視である。
ハリー君もグリフィンドールの生徒も、彼にとっては嫌いだけど、生徒なんだよね。
だから、無視はしない。
慇懃で、とっても失礼で陰険。
やだ、カワイイ。
んで、そこに婉曲な言い回しと、ハイソ口調がはいると、まぁこう香ばしい大人になるわけだ。
下品な言い回しが似合う大人?だったら、そういうオッチャンだよね〜になるんだけどね。
おう、お前ら、何やってんだ?こんな所で油売ってねぇで、帰省の準備しろやっ。
ぐずぐずしてんじゃねぇや。
ん?
何か用があるのか?
この女に関わるとろくでもない事になるから、近寄らねぇほうが無難だ。
グダグダ言ってねぇで、おら、向こういきな。
これね。
ダウンタウン暮らしのオッチャンだとよくあるでしょ?
荒いけど、怖くない。
もうね、これがハイソで遠回しになると、嫌味だし、何言ってるのかわからなくなる。
そして当人、嫌味がナチュラルに身についてるし、この程度、お前らわからねぇのかよ?である。
んで、泥沼の会話を続ける彼と少年をニヤニヤと眺めている様を気付かれた。
笑ってんじゃねぇよ、少しは助けろよ、猿。
目つきがヒトゴロシになってるよぅははは〜。
ハリー君は、もうね、いっぱいいっぱい。あうあうしてる。
聞きたいことあるけど、やっぱ無理ー、何か言うと倍以上何か難しい嫌味が返ってくるよー!
ウィーズリー弟君、やゔぇぇ、減点、これ、減点、新学期に持ち越されるの?怒られるー!
減点するつもりもないので、セウェルスは困惑している。
私から視線を戻すと、座り込んでるハリー君たちを見下ろす。
眉間にシワが寄ってるけど、あれは怒ってない。
何を言ってもパニックになる少年たち。
殴っていいかな?って、首を傾げている。
心境?
「あれ、面倒くさいって感じ?」
当たり!
ハー子さん撃沈。
「どうしよう、本当に、翻訳できてる。あっ、面倒になってこっち来た」
んで、いつも通りハー子さんにも何か言おうと思って口を開いてから閉じた。
私の愉快がってる思念が伝わってるからだ。
彼は無言で手を差し出す。
はいはい。
私は手をとりベンチから立ち上がった。
良い夏休みを過ごしてねって伝えて。
「良い夏休みを過ごすように。と、これが言っている。
それからこれの言う事は程々に聞いておけ、馬鹿を見るぞ、グレンジャー。
あと、聞こえているぞ、ロン・ウィーズリー!
他人の忠告を聞かずに生きる様を見せられるとは、実に光栄だ。
故に、減点はしない…今のところはな」
それだけ言うと、セウェルスは私を引きずるようにして、城へと向かった。
ウィーズリー弟よ、君はセンスがあるね。
背中越しならエア悪口も大丈夫だと思ったんだね。
でもね、ワイが見ちゃうとね、そのオモシレーって気持ちが伝わっちゃうのだよ。
これポーカーで相手カード見える位置にワイがいたら、勝ち確やね。
「賭けのテーブルに君一人を立たせる場面を作れると思うか?」
最近なにげに、普通の会話をしてくれるね。ありがとう。
「発語が自由になるよう、呪文構築と魔道具開発を鋭意努力している。黙れと早く命令できるようにな」
絶好調やねー。
***
彼女が消えた後、ハーマイオニーは石のベンチに両手をついた。
「やだ、本当に翻訳できると、いろいろと衝撃が…。
つまり今のところ減点はしない、彼女の相手をしてくれてどうも、って感じ?
やだ、もう、なにあれ。
優しいとか思っちゃうじゃない…」
「ふぃー、減点されずにすんだー、後ろに黙っているなんて、やっぱアイツ、気持ち悪いんだよー」
「先生も言ってたけど、考えてから言葉にするべきよ」
「えー、何、かばってんだよー」
「…かばいたくないけど、勉強になったわ」
彼女は残されたメモ書きを纏めるとポケットにしまった。
「えー、見せてくれないの?」
「どうせ信じないから。でも、大人の言動って読むのが大変だってわかった。
私の周りの人って、読みやすい人ばっかりだったのね」
「あんな奴、滅多にいないよ。それにどうせスリザリンの寮監だしね。」
「魔法薬学の教授よ。卒業までお世話になるんだから」
「うげー、誰か他の先生に変わらないかなぁ」
「ホグワーツの魔法薬学教授では、最年少の優秀な方よ」
「おっ、ドヴワティーヌさんの意見に染まってるぅ」
「彼女の意見は、私達に無いものよ。それは認めるでしょ?
スリザリン生で、これほど優しく話してくれる人、いる?」
「いない」
それまで黙って考え込んでいた、ハリーが口を開いた。
「グリフィンドールだったら、よかったのにな。同級生だけど、見た目と同じでお姉さんみたいだし」
それにハーマイオニーは少し考えると言った。
「それ、変わらないと思う。
だって、魔道具の調整はスネイプ先生よ。
だから四六時中彼女は、スネイプ先生といるし、彼女と直接会話できるのも彼だけですもの。
むしろグリフィンドールに、彼が毎日来ることになるわよ」
「やめてくれよぅ」
「確かに」
「で、ハリー。彼女の助言は役にたちそう?」
ハリーは、渡されたメモ書きに目を落とした。
「夏休みの間、チャンスがあったら伯母さんに聞いてみるよ」
「そうだ、夏休みに二人とも、家に遊びに来てよ」
ロンが言った。
「ありがとう、僕も何か楽しみがなくちゃ…うん、楽しみができたよ」
「私もいいの?」
「もちろんさ!」
「そうそう、注意書き、夏休みの、読んだ?」
「あぁ、魔法禁止は、いつも通りだよね。フレッドがぼやいてた」
「けど、何か、増えてたよね。保護者にも伝えてって」
「あぁ、あれね」
妙な病気が流行っているから、お年寄り以外の歯の無い魔法族は感染している場合があります。
感染予防のため、見かけたら近づかないようにして、魔法省に連絡をって書いてあったね。
「マグルだと、歯が無い人ってけっこういるんだけどなぁ」
「うちは歯医者だから、ちょっと気になって。パパにも伝えようかなって。
魔法族の歯の治療って再生医療に近いって話だし。
感染するって事は、医者にもリスクがあるはずだから。
後で、マクゴナガル先生にも聞いておかなきゃ」
「マグルって、虫歯を抜くんだろ?こわっ」
「魔法界の歯の治療って、本当にズルいわよね。私も歯列矯正は魔法界の癒者に頼む事にするわ」
三人は、初夏の美しい景色を見ながら、語り合った。
***
四階右下廊下の奥に隠されていた物は、もう無い。
魔法界の危機に立ち向かう子供もいない。
不穏な事はあれど、世は元々、小暗い中にある。
そして賢者の石と不穏な出来事は曖昧なまま遠ざけられた。
白い魔女の賽子により、少し違う歩みが始まった。
それがどこへ続くかは定かではない。
完
…だったら、いいんだけどねー
「三つほど、プランを作ってみた」
相変わらずのジメッと薄暗い教授室での、罰ゲームではない。
初夏なのに肌寒いので暖炉に火を入れると、セウェルスがレポート用紙を渡してくる。
最近はマグルの文房具を堂々と使っている。
そりゃ使いやすいものね。
質問いいかな?
「うむ」
もしかして、二人旅?
「致し方なくだ。」
マクゴナガル先生は、ご存知で?
「…」
ヒゲは?
「了承済みだ」
因みに、旅装や旅行準備は、マクゴナガル先生に一任されていますが?
誰が言うの?
「…」
私的には、セウェルスと同室だろうが、どんと来いなんですが。
「私が嫌だ」
失敬だなー!
「コンパニオンが付くという事に」
嘘かぁ。まぁいいけど。
「更に最悪なのが」
最悪なのが?
「私は君を許嫁にしなければならない。もちろん偽装であるが、不愉快極まりない…」
不愉快って失礼だなぁ!
まぁわかるけど。
誰が言いだした?
ヒゲか?
「…」
最近、ヒゲ呼びを否定しないよねー。
セブルス・スネイプ32歳、12歳ホグワーツの生徒を許嫁にする。
大丈夫?
社会的ダメージ甚大だね。
暫く、返事がなかった。
まぁそういう感じで、一年は終わった。
わーい夏休みだー。