おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ、ハンガリーへの旅番外編。
R15と残酷描写は、予防処置と寮監先生の苦行成分でできています。

お話が長くなってきましたので、改めましての注意書き。(繰り返しになりますが)

物語内での団体や宗教、その他はフィクションです。
倫理観など不快な表現が若干増量中。
と、いいつつ、今回も全年齢程度です。

また、90年代としつつも、現実の90年代とは歴史分岐している為、今後のマグル側の政治国際状況は反映されていません。

賢者の石編で、主人公がダイスを振った時点で、原作軸からは乖離しています。
こんなの寮監先生じゃないよ!
たぶん、皆様が考える先生よりも、ヒトデナシ成分が120%です。
騎士団員、死喰い人、の成分よりも、個人としての部分が多めです。
つまり、女神の子が無事ならいいや、後はシネ理論です。

逆を言えば、過去の出来事は消化済みの大人です。
優しさはティースプーン一匙ですので、思うよりヒトデナシです。ごめんち。
という感じを許していただける方向けです。
原作キャラクターの解釈違い等発生するかと思いますが、そのへんもお許しください。
因みに、腐はありません。スキダケド...


閑話 拷問牢獄城塞都市見学ツアー ④

 テステステス...

 寮監先生、婚約者(仮)殿、マイダーリン、スゥイートハニー(笑)...

 テステステス...

 聞こえてますかー

 起きてますかー

 ワイ、シャワーも済んじゃったし、お腹が空いて困ったでござるよー

 扉がね、内側の鍵を開けても開かないなりよ〜

 たぶん、セウェルス、封印してるでしょ?

 ねぇ、これ、間違ったら死んじゃうレベルの封印じゃね?

 怖いんだけど、ちょっとぉ、開けてほしいのですよぅ。

 そりゃ、パリの治安に期待はしてないけどさぁ。

 うん、もう七時過ぎてる。

 歌っちゃおっかなぁ〜

 パリで定番の歌ってなんだろう?

 それともダーリン愛してるぅ〜とか叫んで

 

「Stop it!」

 

 濡れた犬みたいなダーリンがいた。

 扉が開かれ、半裸というかシャツを引っ掛けた状態ですね。

 あらあら、ダミアーノ・ダヴィドの初期ぐらいの入れ墨様が、胸からお腹に...。

 

「恥じらいをもて、男の半裸を凝視するな」

 

 いや、そっちが見せてるのであってだ。

 教育者にあるまじきタトゥーがね、背中もあるのん?

 つーか、魔法的な奴?

 それともオシャレさんか、彼女が

 

「呼ばれたからだろうが、黙れ、この猿が」

 

 ダーリン、今日も辛口ぃ〜

 お風呂だったのね、めんごめんご(オヤジ死語うぇい)。

 ねぇ、髪の毛、ちゃんと洗おうよ。

 ここのアメニティ、最高じゃない?

 ほら、戻って戻って、宿屋の奥様が笑ってるし。

 ほら、部屋に、おはようございます〜

 昨日、寝たままチェックインしたみたいで、プンプンなのね。

 ちょっとプンプンとか古い、いや、この時代だと最先端?

 何かジャパンのふっるいオジサン構文が、今朝は浮かぶのである。

 わからん、謎。

 はい、チップは渡してある。

 そっかぁ、朝ごはん、こっち?

 ダーリン、バスルームどこ?

 まだ途中でしょ、はいってはいって、きちんと洗わなかったら、突入して私が洗髪しちゃうぞ?

 なに、その顔?

 洗って欲しいの?

 拳骨はヤメレ、ワイ、ダーリンの婚約者なりよ〜

 

「先に朝食をとっていろ」

 

 待ってるぅ。

 でもシャワーを節約したら、本気で一緒にお風呂に入るよ?

 なに、そのスンゴイ嫌そうな顔。

 ワレ、婚約者、イチャイチャ?

 

「教育的指導を夏休み中、望むようだな。特別に夏期講習をしてもよいのだぞ?」

 

 マジでキレなくてもいいと思うんじゃが。

 はいはい、先に食べてるよ。

 本当にきちんと温まってきてよ。

 

 バスルームへと消える背中を見送る。

 今日も寝不足が極まっているようだ。

 何で旅先まで寝ないんだよ。

 

「お嬢様、食べられない物はございますか?」

 

 ありがとう、大丈夫。

 パンもチーズも最高。

 カフェオレが大きなカップだ。

 フルーツも美味しい。

 茹でた野菜もある。

 フランスの家庭の朝食って感じ。

 素材が美味しいぞぃ。

 やっぱりね、辛かったり脂っこいのは食べたくないのである。

 フレッシュチーズ、コーヒーが美味しい。

 うむうむ。

 

 食べていると、バスルームから出てきたダーリンは、今日も朝から真っ黒である。

 ただ、マグルの服装と同じで、シャツにズボンで特に魔法族らしい感じではない。

 狩人様ではない。

 まぁきっとあっちにいったら、また十九世紀ファッションになるんだろうけどねー。

 頭髪をじっと見つめる。

 

「Give over!」

 

 ワイも少し乾かしてほしい。

 魔法使えないんだもん。

 

 で、ふわっと全体が暖かくなる。

 少し湿っていた髪の毛が軽くなった。

 ドライヤー借りたくても軟禁状態だったので、そのままだったのだ。

 ワイの魔物成分は、いつでも美容系には容赦ないのか、それでもツヤッツヤのキューティクルじゃがのぅ。

 きっと石鹸でゴシゴシしても、ツヤッツヤなんだと思うよ。

 

 窓側のテーブルに朝食が用意されていたが、彼は対面に座ると徐ろに、何処かから取り出したポーションを呷った。

 おい!

 

「何だ?」

 

 初手からドーピングかよ!

 

「a hair of the dog」

 

 犬の毛?

 

「…風呂でアルコールが抜けなかったのでな、a hair of the dog(迎え酒)みたいなものだ」

 

 もうさー、それ風呂で死ぬよ、いつか!

 

「Thanks a bunch!」

 

 最高だ?

 本当にやめてよ。

 寝不足で酒はやばいんだよ。

 本当にシャワー中に死んじゃうから。

 せめて、水分糖分口に入れてから、風呂ね。

 モソモソと朝食を攻略している相手を見る。

 

 うん、本当にこの人は生活面がアカンなぁ。

 ドーピングで何とかなっちゃってたんだろうなぁ。

 先程の裸の感じから、痩せているけど筋肉はある。

 鍛えていない痩せたタイプと思ったが、極限まで体脂肪のないアスリートタイプだ。

 骨も太いから、多分、素地が強いんだろう。

 ひ弱そうに見えて、実は頑健。

 そうだった、この人、ダウンタウン・ボーイ。

 如何にも頭でっかちのモヤシ成分でできてそうに見えるけど、逃げ足と喧嘩っ早さはストリート・キッズ印。

 そして自己申告では、学生時代もきっとひ弱そうに見えて、喧嘩上等の黒歴史。

 校長情報からするに、拗れまくった学生生活だったようだしねー。

 執念深くて根性強いってか。

 何で学校の先生してんだよ。

 研究者やってフィールドワークでもしてたほうが平和だろうに。

 あぁ、そういや、この人、魔法族としては犯罪者だった。

 身元保証人が校長?

 あの校長だもんなぁ。

 

「何だ?」

 

 フルーツも食べろ!

 

 で、オレンジをカットして渡す。

 駄目な大人め!

 

 見た目を裏切る丈夫なマイダーリン。

 病気になりそうで、一年中病気知らずだったりするんだろーなー。

 だから、何もしなくても何とかなってきて、中年になったら突然死するタイプである。

 それも魔法族、究極のお薬つくれちゃう最強のポーションマスターだ。

 カクテルみたいに、致死量のお薬を毎日飲んでいそうだ。

 そんな薬中並に飲んでても、死なないラインを見極めちゃってるから、更にマズイ。

 つーか、死んでもいいやってスタンスだから、これでもまともな方なんだろう。

 喫煙はしないタイプなだけ、まだ、突然死ラインギリなんだろうか。

 

 セウェルス。

 マジな話。

 怒らないで、ちょっとだけ聞いてほしいんよ。

 

「何だ?」

 

 カフェオレを遠ざけるとブラックコーヒーをカップに注いでいる。

 日頃は紅茶党なのに、コーヒー文化圏内だと、カフェイン大好き人間になるのね。

 もう、身体に悪い事だけをチョイスしてるなぁ。

 

 よほどじゃないと魔力切れしたことも、窮地に陥ったこともないんだろうってのは想像がつくんだけどさ。

 絶対、これからフィジカルの底上げが必要になる事だけは言っておくね。

 

「何の話だ?」

 

 隙を少なくするには、寝る事。

 ともかくドーピングは最低限で、なるべく自然な感覚を残しておいたほうがいい。

 

「理由を述べよ」

 

 敵は人間じゃないんだよ。

 そしてね、寝不足は人間の動物としての感覚を鈍らせるし、判断力にも影響がでる。

 ポーションで補うのは、追い詰められた時だけのほうがいい。

 教授にいう事じゃないのはわかってる。

 けどね、相手は人間じゃないんだよ。

 

 私の言葉に、彼は椅子に深く腰掛けると、じっと見返してきた。

 

「わかった」

 

 やだ、素直。

 

「正直に言えば」

 

 うん。

 朝陽がまぶしーなーって感じで視線をそらすなや。

 

「眠れないのもある」

 

 うーん、睡眠薬的な処方は?

 

「耐性ができて、これ以上は死ぬ。」

 

 んで、結論、寝ない?

 

「そういう事だ。」

 

 あー癒者は〜

 

「君が言う生活を正せねば、治療は無駄と言われている」

 

 ほらー!

 もー寝ないとドレインして昏倒させるからね。

 って、それだっ!って顔しない。

 

 心のメモに、この男の健康管理の項目を記入。

 学生生活の残り六年間を無事に乗り切るには、仲間が倒れたら話にならん。

 じゃぁ他に仲間をって?

 冗談でしょ。

 ここまで事情を理解してくれる相手は、いない。

 校長?

 彼はある意味、信用できるし信用できない。

 まぁこの世に、私が本心で信用できるのは、叔母だけなのかもしれないけれどね。

 

 ともかく、どうにかしてこの人を最低ラインまで引っ張り上げないと駄目だ。

 寝てるうちに冷たくなってたなんて、ありそうで冗談にもできない。

 

「午前中、雑事を片付ける。外出は」

 

 んじゃぁ、買い物行ってくるよ。

 

「冗談は無しだ。

 ここを昼食後に引き払って、適当に休憩後、夕方には駅に向かう。いいな?」

 

 じゃぁダーリンの許容範囲の、小物か女性向けのお店に私を置いていってよ。

 そっちの用事の間、ホテルに残されるの嫌だし、買い物して時間潰すから。

 

 で、反対されるかな?

 って思ったら、スンゴイ眉間にシワを寄せてから、頷かれる。

 どうやら心当たりとやらがあるようだ。

 

 食事を終えてから、身支度を整える。

 一度帰ってきて、ここで昼食を取るから、お財布と杖だけでいいかな。

 紺と白の花がらのサンドレスにケープを羽織る。

 髪の毛はゆるく編んで、足元もサンダルだ。

 フロスをつかって口をすすぐと、準備が整う。

 女の子としては素早い身支度だと思うんだ。

 

 実は、ちょっと嫌な事に気がついちゃってね。

 自分はやっぱり人間の遺伝子だけじゃないっていう、うん、嫌な話。

 体も成長してきて、生理もきたんだけど。

 ムダ毛とニオイの話。

 ムダ毛が生えない。

 うらやましい?

 頭髪、眉毛、睫毛以外の毛が薄いのが、健康だったらいいんだけどね。

 これは人間成分が少ないからなのか、遺伝子的にマズイのかが問題。

 手足がツルツルでね。

 紫外線とか皮膚が弱いんじゃないかってちょっと心配。

 アルビノとまでは言わないけど、やっぱり色素異常がありそうだなってね。

 まぁそれはしょうが無いんだけど。

 ただね、ニオイだよ。

 デオドラント商品って海外にも沢山の種類があるんだけどね。

 私、ニオイがね、すでに人間じゃないの。

 汚れれば匂うよ、そりゃ生きてるからね。

 でもね、体臭がね、本気で薄いの。

 それとも本当は臭くて、自分だけ感じてないっていうことだったらどうしようかなって。

 今のところ、ベビーパウダーぐらいで、特にデオドラント商品を使ってないんだよね。

 超強力なイスラエル製の奴とか、食生活がヨーロッパ人だから必要になるのかなぁと思ってたんだけど。

 日頃は忘れちゃう話。

 でも数日、緊密に接触する相手がいるとなると、ちょっち不快感を与えてないかが心配。

 これでも乙女!

 猿だけどなっ!!

 

 そういえば、セウェルスも臭くない。

 ウィーズリー弟よ、彼はね、臭くないんだよ。

 あれ、薬草とか薬効成分の素材のニオイとね、薬剤の匂いとね、羊皮紙のニオイがね、ブレンドされるだけなのよ。

 えっ?つまり臭いだろ?

 幻のウィーズリー弟君よ、まぁそうなんだけどね。

 本体は臭くないんだよ、ちょっと独特のいい匂いだと思うんだ。

 とか、変態な脳内会話をしつつ彼の部屋に戻る。

 どうやら雑事の書類を纏めていたようだ。

 

 ねぇ、聞きたいんだけど。

 

「何だ?」

 

 私ってさ、こう、体のニオイとかしてる?

 

 ***

 

 めっちゃ怒られた。

 何でだろう、普通に臭いかどうか聞いただけなのに。

 

「解説しろと?」

 

 はい閣下!

 

「これだけは言っておこう。お前のその手のふざけた話題は、決して他の男には言うなよ。特に今回の旅で、その手のトラブルだけは避けたい。その魔道具に仕置をされる事になると忠告はしておこう」

 

 なに、首飾り、多機能呪い付き、だとっ...

 じゃなくてさ、臭くないか聞いただけじゃん!

 

 うわっ、すんごい馬鹿にしくさった視線で睨み下ろされた。

 んで、指をクイって、来い?

 はいはい。

 ...

 ...

 ...

 

「で、どう思った?」

 

 降参しました。

 まぁ、あれだ。

 引き寄せられて、首筋からニオイを嗅がれて、さらに、こう胸元からなにやら嗅がれて、うん。

 壁際に追い詰められた後、下にある頭を見て悟る。

 

 これは駄目だ。

 あー、なるほど、ワードチョイスをしくじった。

 

 ごめんなさい。

 

「よろしい。同性相手なら気安い質問になろうが、男相手には付け入らせる誘い文句になる。

 今、不要に触れずに行ったが、相手の男が手を出してくる事は確実だ。

 衣服を剥かれてもいいと言っている事になる。」

 

 ちなみに臭う?

 

 ゴインって音がする程の拳骨を再び食らった。

 さすがに痛みでしゃがみ込む。

 いつもは手加減してるのに、今回は本気だ。

 

「学ばぬ馬鹿は救いようがない。

 過去の記憶を探れ、如何に信頼できる男でも、下半身は別だ。

 くだらない言葉を吐くんじゃない。

 切っ掛けがあれば、男は馬鹿になるものだ。」

 

 でもさ、貴方はちがうでしょ?

 

「試し行為は、本当にヤメロ。

 仕置がわりに、わからせるぐらいはするぞ」

 

 うっそ楽しみ!わーウソウソウソウソ!

 

 で、本気の三発目を食らうと馬鹿が更に馬鹿になるので、謝った。

 暴力反対、まぁこっちがセクハラのモラハラしてるので、反省した。

 仲直りのハグを要求したら、何故か怒りが消えて、眉をさげている。

 それでもハグをしてくれて、許してくれるダーリンだった。

 

 ちなみに、匂わないらしい。

 ニオイが気になるようなら、魔法薬的デオドラントをくれるそうだ。

 お花の香りとか、いろいろ作れるって。

 買うよーって言ったら、ホグワーツに戻ったらくれるってさ。

 何か優しいから、きっと何かこの後、すんごいお仕置きあるんかいな?と不安になった朝である。

 

 ***

 

 出かける用意ができたので、宿屋の御夫婦に挨拶をして出発。

 フランスの魔法族の人たちで、あってるよね?

 

「フランスに住んでいる、イギリス出身の魔法族だ。

 それから主人の方が魔法医だ。

 旅程の途中で体調が悪くなった場合は、ここまで撤退する。

 信頼できる拠点がハンガリー国内に無いのが痛い」

 

 朝の爽やかな街並みをみつつ、人の流れに混じる。

 ただし、完全な隠蔽状態。

 周りには認識されていない。

 当然、左手は握られている。

 

「長距離、連続の姿現しをする場面もあるだろう。」

 

 逃亡、撤退?

 

「そうだ。慣れていない場合、どれだけ自分を想起できるかで成功率が上がる。

 咄嗟の場合は、私との繋がりだけに集中しろ。私の方で術をコントロールする。」

 

 旅程としては、ウィーンの手前のインスブルックから山岳地帯に入ればいいんじゃないの?

 

「ウィーンに国際魔法連盟の支部がある。介入は避けたいところだが、無視するわけにもいかない。」

 

 なるほど、懐古趣味の衣装は、やっぱりその手の場所に立ち寄るからか。

 

「観光ならばオーストリアを二週間程周遊する所だが、ウィーン入り、再びポートキーにてインスブルックに戻り、そこからシュトゥバイタールへ向かう。

 この時点で連盟の馬車を仕立てる事になる。

 明後日にはヌルメンガード城入りだ。」

 

 観光名所ガン無視なんだよね。

 

「楽しめるのか?」

 

 逆に聞きたいんだけど、人生つまんないより、楽しんだほうがよくね?

 

「どうしてそう思える?」

 

 馬鹿だから?

 

「違う。恐ろしいだろう?」

 

 朝のマーケットに向かう人。

 観光客。

 地元の人。

 色々なマグルの人たち。

 移民もいるし、人種も多彩。

 傍らの、魔法族を見やる。

 

 繋いだ手を揺らしながら、私は考える。

 

 怖い?

 

 そりゃぁ未知なる世界は怖い。

 けど、知らんお爺ちゃんが私を呼んだから?

 恐ろしいヒトゴロシが名指しで私を呼んでいる。

 怖い?

 本当に怖いことって何?

 

 見上げる生きた人。

 そう、私が怖いと思うこと。

 

 あのね、人って簡単に死んじゃうんだよ。

 この後、突然、死んじゃう事だってあるんだよ。

 明日が来るのは絶対じゃないし。

 今日と同じ明日は無い。

 ここに私の目の前にいる貴方が、明日もそばにいるとは限らない。

 貴方も知ってるでしょ?

 

 子供の私も、大人の私も、化物のワタシも知っている。

 

 だから、楽しい事を今するの。

 命は大切にしなきゃだし、楽しいことも先送りしないの。

 あっという間に消えちゃうんだもの。

 貴方も、知っているでしょ?

 

「..無事、戻れたら、ウィーンのカフェハウスで食事だ。

 テイクアウトして魔法便で校長達への土産を送ってもいい。

 菓子でも何でもだ。 

 魔法具の店もあったか、宝飾系の店が多かったはずだ。

 それくらいの余裕はあるだろう」

 

 うん。

 

 そのまま人混みの中を抜け、ショーウィンドウが並ぶ路地に出た。

 古い外観に趣のある店が並んでいる。

 石畳の反対側には、準備をしているカフェ。

 細々とした店が商品を並べ、開店し始めていた。

 見たところ、統一感は無いが観光客相手か、小物や化粧品の店もある。

 と、小さなパン屋の隣り、細長い建物の階段から明るい髪色の女性が現れた。

 彼女はこちらに気がつくと、片手をあげた。

 人好きのする笑顔が中々に可愛らしい、若い女性だ。

 マグルファッションでグリーンのサマーニットに短いパンツ、そしてロングブーツ。

 頭髪は短くツンツンと立っていた。

 中々に、マグルっぽいファッションであるが、こちらを認識できるということは、そうとうの抗魔力の持ち主である。

 

「あー、えっと、スネイプ教授。おひさしぶりでーす。

 本日は、アタシが担当でっす。

 えーっと、カバーもついてますんで大丈夫でっす。」

「研修中ではないのか?」

「女の闇祓いで、威圧感がない。そいで曲がりなりにも、親があれですから」

 

 それに頷くダーリン。

 紹介紹介!

 

 ちらっと横目で見下ろす顔は、いつもの無表情。

 

「こちらの雑事に時間がとられた場合を見越して、護衛を頼んだ。

 戻りが遅いようなら、連絡をする。

 ウィーン行きの予定自体は変更しない。」

 

 あぁなるほど。

 トラブルがありそう?

 

「未処理の仕事が溜まっているようでな。時間の許す限り拘束されかねない。」

 

 気をつけてね。

 うふふ、存分に買い物しちゃうぞー!

 何か欲しい物ある?

 買ってあげちゃうぞぅ、ワイ、おっかねもちぃ〜!!

 って、なんでまた呻くんだよ。

 元々、買い物するって言ってたでしょ?

 ついでにダーリンの欲しそうな書籍も注文しとくよぅ?

 

「..いいか、妙な男にはついていくな。

 それから店員だろうが、魔法族だろうが、親切な男にはついていくな。

 笑顔で近寄ってきたら、叫べ」

 

 大丈夫だよー。

 つーか、それだと買い物できないじゃん。

 

「非常に不安だ。ベールをさせておけばよかった」

 

 いや、あの格好はきつい。

 ご飯食べるのも面倒。

 

「あー、大丈夫っすよ。カバーも、心得ていますんで」

「なら、影にいる必要はない。これの周りを埋めていてくれ。

 そして見た目に騙されるな。

 これの中身は悪ガキだ。

 目を離すと、気になる方向へ駆け出して見失うぞ。」

 

 ひでぇ。

 言われたお姉さんの口が、ぱっかりあいた。

 

「あー、はい。わかったっす。教授」

「冗談でもなんでもない。

 この猿は、自分がどういう見た目をしているかを熟知している。

 だが、中身はホグワーツのクソガキどもと同類だ。

 騙されるなよ」

 

 ひでぇよ、ダーリン。

 まぁそーなんだけどねーぎゃはは!

 

 んで、お別れのハグをする。

 

「トンクスは、ホグワーツ卒業生だ。..恐ろしいことはない。」

 

 ありがとう。

 いってらっさーい!

 

「いや、スネイプ先生とどーいう関係なんだよ。聞いてた話と違うし」

 

 ***

 

 男の闇祓いなら、状態異常耐性持ち以外は近寄らせるな。

 

「支配能力を持った相手だ。

 それも人間の男の場合、小娘より抗魔力が劣れば、特攻で傀儡にされるだろう。

 ダンブルドアが魔道具で封じているが、小娘が本気を出せば、その程度の縛りは無意味だ。

 護衛すると同時に警戒は怠るな」

 

 指示を受けたトンクスは、師匠の顔を2度見した。

 冗談を言わない相手だから、たちの悪い嘘ではない。

 ホグワーツに通う十二歳の少女の護衛のはずだ。

 

「えーっとぉ、十二の女の子ですよね」

 

 卒業して幾ばくもない身だが、在校生の記憶が曖昧だ。

 最終年度は、ほぼ登校していなかったこともある。

 手渡されたプロフィールには、魅了持ちで犯罪被害者とある。

 背景の情報が無い。

 

「他に注意事項は?」

「スリザリンの裏切り者が付き添いだ。」

「あー、スネイプ教授ですね」

「詳細情報を出す事を禁じられている。

 儂の方から言える確定情報は少ない。

 だが、今後、頻回で関わっていくことになりそうだ。

 そもそもホグワーツでの騒ぎは知っているだろう」

「やべぇ魔法生物っぽい何かが出たそうですね」

「呪術による召喚物という見方だが、これも詳細不明だ。

 ただ、娘の事件と無関係ともいえん。

 娘の行方不明の叔母の事件も、その一つという見解だ。」

「じゃぁその子は」

「娘自身は、叔母を逃がすために転移を使った。

 当時の記憶は消えている。

 頭を覗いたが、犯人の姿は見えなかった。

 それが十一、大人一人を遠隔地、多分、国外まで転移させ、自己の記憶を改竄した。

 記憶の通りなら、自分自身にも何らかの魔術を行使している。

 時間の歪みが見えたところを見るに、相当高度な呪術であろう。」

「呪術、ですか」

「本来なら信じられる話ではない。

 だが、彼女の血筋は、古い純血で血の呪い持ちだ。

 天才とよんでもよかろう。

 スカンディナヴィア系の魔女、呪術であろう。だから、危険なのだ。」

「十二の子供の話ですよね?」

「会えばわかる。

 化物だ。

 厄介な事にヌルメンガードの虜囚が名指しで招待状を送って寄越した。

 ホグワーツ周辺での事件がなければ、馬鹿げた介入を許さんのだが。」

「パリとウィーンまでですか?」

「あぁグリンデルバルドが付き添いは一名までと指定している。

 忌々しいかぎりだ。

 闇祓いを仕込むことができん。

 せめてもウィーンまでは、監視する。

 連盟の監視はあってないようなものだ。

 グリンデルバルドが外に出なければいいとだけ考えているのだろう。

 むしろ、帰りが問題だ。

 イギリス国内へ早期に戻らせたい。

 是非にも奴が何を語ったのか、その情報を得たいのだ。」

「なら、教授以外の選択肢は」

 

 と、そこまで苦々しい顔をしていた師匠が、珍しく唇を引きつらせるように笑った。

 

「娘の血筋は特殊だ。

 娘自身の能力も特殊だ。

 娘がどんなに心根優しく健全であろうともだ。

 人ならざる者が生きるとは、実に実に憐れよ。

 どのように才能溢れ恵まれようと、娘は孤児に等しい。

 儂は、幸せなんぞという浮ついた言葉は口にしたくないが、あれは幸せになれるような力ではない。

 無惨なものよ。

 

 だが、強力過ぎる力だ、誰にも渡せぬ。

 闇の輩にも、純血の何処の家にもだ。

 行き場をなくした娘を庇護したのがダンブルドアだ。

 手駒の一つを得たはいいが、あれではな。

 下手な相手に庇護を任せられない。

 そして孤児の庇護者に選ばれたのが、薄汚い犯罪者とくる。

 とんだ質の悪い冗談か。

 是非にも人ならざる魔物に、アヤツが滅ぼされるよう願うしかあるまい。」

 

 誰の事だ?

 と、問いはしなかった。

 そして寝台特急に乗るまでの時間、娘の護衛と相手をしろと命じられた。

 簡単な護衛任務だ。

 買い物に付き合い、食事を摂らせ、夜には寝台列車に放り込む。

 簡単だ。

 そしてざわめき出した街の景色に見えたのは。

 

「うわぁ、やべぇ〜」

 

 学生時代の記憶にある姿は、陰険で嫌味な教師。

 ただし、成績評価には手抜きがない。

 闇祓いに必須の教科である魔法薬学では世話になった。

 すんごい嫌味を垂れ流され続けたが、努力に対しては評価する教師だった。

 記憶の中の男より、ずっと普通に見える。

 

 師匠から聞き及ぶ教師の過去は、信じられないほど後ろ暗い。

 もちろん、校長お墨付きでアズカバンには入らなかった。

 元死喰い人でホグワーツの教授。

 経歴を聞いてぶっ飛んだのを覚えている。

 生徒への嫌味態度ぐらいなら微笑ましい話だった。

 

 そんな男が爽やかな朝に浮いている。

 まぁそれでも、少しはマシだ。

 マグルの服装なのもあるし、髪をきちんと一つにしているのもある。

 記憶よりも背が高く、記憶よりも姿勢が良かった。

 何より、若い女と手を繋いで歩くような奴ではない。

 しかめっ面は変わらず、不機嫌そうだ。

 どうしてもその繋がれた手に視線がいきそうになるが、そこが癇癪のポイントである事はわかっている。

 

 若い女、多分、護衛相手の少女?考えるより、いや、子供じゃないわー。

 どう見ても美人の、うん、ギリギリ少女が笑顔のまま、握った手を揺らしている。

 うん、子供だ。子供だったらおかしくない。

 サマードレスも上品で、お嬢様風。

 贔屓目に見ても、トンクスよりスタイル抜群である。

 うん、胸が。

 そしてびっくりするぐらいの美貌だ。

 

 あれだ、マグルの王子に嫁いだ女優ばりの美人だ。

 垂れ目が可愛らしい。

 睫毛が頬に影をつくるぐらい長い。

 いやーまいった。

 

 教授が苦々しい口調で、色々注意しているが、どう見ても美人で年下の恋人を心配するオッサンである。

 あまりにも注意が煩いので、呆れた少女がなだめて、ハグして見送る。

 

 ハグして?

 あの陰険野郎と?

 いや、いやいや。

 情報過多すぎて処理できない。

 

「あ〜えっとぉ、まぁよろしくぅ。うーん、じゃぁ教授の用が終わるまで、何処に行こうか?

 買い物でも、観光でも何でもいいよぅ、案内するしねぇ。

 荷物はイギリスに送れるし、今回は経費でイケる。どんと来いだよぅ。

 キラキラ小物とかお洋服とか、雑貨のお店に、化粧品のお店とか、どうする?」

 

 彼女は微笑むと頭を少し傾けた。

 確かに少女だ。

 頼りない薄い体。

 儚くて、こりゃぁ一人で街歩きは無理だ。

 ナンパされるどころか、誘拐される。

 

 彼女は小さなメモにサラサラとペンを走らせる。

 事件後、発語に問題が出て喋れない事を思い出す。

 

 受け取り目を通す。

 

(研究者向け古語本、または、薬学、呪術、錬金、毒物、精神操作系学問関係の書籍や古文書を扱う、魔法古書店。

 絶版、高額、古語版を扱う玄人研究者向けの所にお願いします。

 購入予算は、魔法界の法律上限を知りませんが、糸目はつけなくて大丈夫です。

 小切手帳をグリンゴッツから発行してもらっています。)

 

「カバー!

 アタシじゃ、無理ー!

 へるぷぅー!」

 

 教授の忠告が、冗談じゃなかった事に気がつくのに時間はかからなかった。

 

 

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読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ハリー・ポッターと創られし娘(作者:テーラ・クレプスクリー)(原作:ハリー・ポッター)

▼【あらすじ】▼42歳の歴史教師だった私は、病気で寝込んでいたはずだった。――次に目を覚ますと、そこはハリー・ポッターの世界。しかも、あのセブルス・スネイプの娘に生まれ変わったみたい!?▼最推しであるスネイプ先生の悲劇的な死を変えるため、そして原作主人公のハリーや子供たちの危険を少しでも減らすため! ▼元歴史教師の知識と大人の責任感を胸に、セブルス・スネイプ…


総合評価:358/評価:8.58/連載:21話/更新日時:2026年10月16日(金) 00:00 小説情報

スリザリンの継承者と虚飾に満ちた英雄(作者:魔法史編纂委員会)(原作:ハリー・ポッター)

スリザリンの継承者とは私のこと。▼そんな少女が闇の魔術と共に魔法界を突き進む。▼ダンブルドアの正義とやらに違和感を感じる方、▼倫理観が茶匙一杯の悪役主人公が暴れる話が読みたい方、▼あるいは性格の悪いあなた、どうぞこちらへ。▼※原作キャラクターは誰おま状態かもしれません。▼アンチ・ヘイトタグは念の為ではありません、本気と書いてガチです。▼地雷だらけです。合わな…


総合評価:341/評価:7.08/連載:64話/更新日時:2026年07月24日(金) 01:30 小説情報

闇の魔術大好き少女が認められるまで(作者:闇の魔術連盟名誉会員)(原作:ハリー・ポッター)

例のあの人(ヴォルデモート)の影響なのか、不当に貶められている闇の魔術。▼名前を聞くだけで忌み嫌われるその魔術も、本来は魔法族がもっと便利に、もっと幸せに暮らすために使われるべきもの。▼今はまだ、魔法省の目を避け、地下でこっそり研究を続ける日々。▼けれど、いつか闇の魔術が正当に評価され、誰もがその便利さを認める日を夢見て……▼少女は今日も、無遠慮に魂を弄繰り…


総合評価:2673/評価:8.19/連載:31話/更新日時:2026年09月26日(土) 18:28 小説情報

俺のハリポタなんか変(作者:パシフィカ)(原作:ハリー・ポッター)

トムは思わず手元の手紙を二度見した。▼---▼ホグワーツ魔法魔術学校 ▼校長 セブルス・スネイプ ▼マーリン勲章、勲二等、魔法省魔法薬研究顧問、国際魔法薬学連盟会長▼親愛なるブライト殿▼このたび、貴殿のホグワーツ魔法魔術学校への入学がめでたく許可されましたことを、心よりお喜び申し上げます。 ▼教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。▼新学期は九…


総合評価:2322/評価:8.61/連載:23話/更新日時:2026年10月16日(金) 11:14 小説情報

ハリー・ポッターと時を止める少女(作者:メイドと血の魔法学校)(原作:ハリー・ポッター)

十六夜咲夜がホグワーツに入学する話です。▼この題材にはへっくすん165e83様という偉大なる先人がおりますが、本作はその作品の三次創作ではありません。 ▼「咲夜がホグワーツに入学する」という同じコンセプトを持った、独立した別の二次創作です。 ▼設定・展開・キャラクター解釈などは大きく異なります。▼※咲夜は入学時点では紅魔館に所属していません。 ▼※ホグ…


総合評価:229/評価:8.88/連載:5話/更新日時:2026年10月03日(土) 14:47 小説情報


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