R15と残酷描写は、予防処置と寮監先生の苦行成分でできております。
わーい、寝台列車だー!
本文中の90年代の描写は捏造でござる。許してくだされ(゚∀゚)アヒャ
一等寝台が手配されていた。
もちろん2つ。
けど、一つだけ利用することにした。
「不本意ながら、夜襲その他を考えるに、一部屋で過ごす」
そんな絶望顔で言わんでもいいんじゃね、ダーリン様よ。
何があったかは、個室に落ち着いてから聞くけど。
んで、一等寝台はといえば、個室洗面台付、座席を倒してベッドにするタイプ。
でもワイとダーリンの間には、氷河ほどの壁があるので、2つ分の簡易ベッドにするのであった。
くっつけないよ。
くっつけようとしたら、二発連続で拳骨が振り下ろされる未来が見える。
まして潜り込もうとしたら、床に魔法で固めたまま転がされるだろう。
ダーリンは相変わらずヒンヤリだ。ケチ。
そいで厚手のマットレスのベッドが壁にそって2つ向かい合わせとなる。
毛布と、ミネラルウォーター、朝食サービス付き。
んで、夕食も食堂車でとれる。
木目調の壁に、落ち着いたクラシックな内装、カーテン。
古きよき時代の名残があった。
んで、闇祓い達は、使わない方のコンパートメントに入った。
本来はそんな目立つ行動はしないが、既にワイが暴れて隠密性はゼロ。
まぁよろしくぅーと、トンクス姉さんはダーリンをビクビクしながら拝みつつお隣へ。
コンパートメントを二人で一つという部分は、とうとう見なかった事にされるようだ。
ワイがどんな人間かわかると、皆、根本を見ないように目隠しをするようだね。
まぁいーんだけどさ。
そいでダーリン、すかさず音を遮断する魔法を使用。
こういうところが、闇の輩め!ってなるんだろうなぁ。
「聞いた。彼らと争う必要はない。
君が、私の仲間と目される事のないように振る舞え」
どうして?
「現役の死喰い人は、未だにいる。
そしてアズカバンに囚われている者は生きている。
被害者も生きている。
立ち位置を間違えるな」
座席に座り、カーテンを閉める。
まだ、出発までには時間があった。
青白い顔を見やる。
血を流した?
「いいや」
誰にやられたの?
「誰も」
不死鳥の騎士団にいた人物と面会したって聞いた。
「着替えろ。ディナータイムの間に食堂車両に行く。
揺れには強いか?」
わかった。
どの程度の服装?
「向こうに着くまでは気楽でいい。
それから面会した相手については、話す。
それまでは、今日の出来事をお前の方が話すんだ。」
だいじょうぶだよー、よいこだったよー
…
…
…
そいで拳骨をもらう。
「早計であり短慮。最適解を述べよ」
ダーリン、ゴンっていったよ、ゴンって。
たんこぶ、頭にでけたよー
「上手に相手を巻き込むのが、君のやり口だろう」
だって、ダーリン。
血が出てたでしょ?
「…」
なんかねー受信したー
攻撃受けてるーってね。
「だから?」
だからね、馬鹿にすんなよ?って事。
貴方が私の付き添いだ。
ホグワーツに帰る時、一緒にいるのは、貴方だ。
それ以外は認めない。
私は認めない。
この私が認めない。
増長している?
違う。
私は、間違っているだろうか?
優しい人間なんていらないんだよ。
私より確実に強い人がいて欲しいんだよ。
私を人間にしてくれる貴方がね。
「買いかぶりだ。私は強くはない」
私の魔力に潰されるような奴に従うのは、よい選択?
それにダーリンは、唇の端をあげた。
納得できる部分があったのだろう。
魔力に負けたとしてもだ。
歩み寄る姿勢があればね。
そうしたら、
「従うか?」
守ってあげるよ。
犬にしてね。
これには更に笑える要素があったらしい。
彼は口元を手で隠した。
闇祓いが攻撃してなくとも、私に知らせるべきじゃない?
それか、勝手に事を進めるのはオカシクない?
誤魔化しや嘘でも、私に言うべきじゃない?
それをしないのは、私が子供だからの配慮じゃない。
子供への配慮?
『だったら最初から旅などさせない』
パートナーを攻撃されて黙ってるなんて、舐めてくれって話じゃない?
違う?
「発語がうまくいってるな」
ありがとう、セウェルス。
で、扉に寄りかかるダーリンの貧血気味の顔色を見る。
「まずいと思ったら逃げるんだ。私が生きている限り、見つける事ができる」
そう言われて、何故か悲しみを感じた。
不思議だ。
彼は、悲しい。
私の死を見ている。
私が死ぬ姿を想像している?
不思議だ。
悲しいと、思ってくれているのかな。
何があった?
教えてよ。
「通路に出ている、着替えろ。」
と、クールにシメるとダーリンは出て行った。
ため息。
ややこしい事が始まってる。
彼は隠さない。
なら、そうとうややこしいんだろう。
楽しんだ者が勝ちだ。
と、ヒゲも言っていたしな。
少なくとも、今を楽しもう。
私は生きている。
彼は死んでいなかった。
そう、死んでしまうのかと、一瞬でも思った。
同じだった。
怖かったのだ。
私が艀だと感じた相手が、また、消えてしまう。
きっとね。
わかってるんだ。
生きている間に、艀だと思える人は、中々いないんじゃないかなって。
私は目元を手で隠した。
彼の悲しみとは違うけど、私も悲しいと思った。
そうだ。
私の、この今回の人生で、艀は彼だけだ。
きっと失えば、私は自由だ。
化け物になっていくだろう。
火炙りになるまで。
きっとね。
マーガレットを不幸にしたくない。
だから、彼が死んだら、きっと私も、あっという間に。
『喜び勇んでね』
人生にオカワリは無い。
ほら、笑え。
滑稽な自分を笑え。
私は小さな旅行鞄に手を入れた。
便利機能、こんな時は何を着たらいいですかーマクゴナガル先生ー!
で、鞄さん、マクゴナガル先生が準備した白いコットンサマーワンピースを吐き出す。
ぺぺっ!
如何にもなお嬢さま上品仕様ワンピ、ロング。
リネンの薄手のカーディガン。
ストラップ付きフラットシューズ。
コーディネートがね、マクゴナガル先生が選ぶ、純血のお嬢さまって感じ。
まぁええか。
ちゃちゃっと着替える。
着てたのは清潔の魔法かけて鞄にぽいっ。
髪の毛は小さな洗面台が出てくるところの鏡であみあみ。
ハーフアップにする。
今日もワイ、麗しい魔物だ。
壁に叩きつけられたデコも無事だよ。
あれ、一瞬、魔道具がバリアしてた。
すげぇよね。
流血してたら、犬をしばき倒してたけどな。
できたよーダーリン!
「その呼びかけをどうにかしろ」
らぶりー?
はにー?
べいびぃ?
すうぃーとはーと?
まいらぶ?
「名で」
ダーリンなら、恋人以外にもつかうじゃん。
「名で」
セウェルスのー我儘さんめー!
繋いだ手をブラブラしながら、食堂車両に向かう。
すでに駅からは出発していた。
揺れてるよー
「酔う方か?」
わからんちん。
でも、アニマル成分でできてるので、きっと酔わない。
「だろうな」
ひでぇ。
まぁそうなんだけどね。
でもフィジカル、自分で想定しているより、弱いっぽい。
たぶん、記憶の中の自分と混同してるかな。
通路は少しレトロ薄暗いけど、一等車両側だと殆ど人がいない。
たぶん、食堂車両も別のようだ。
「Bonsoir, messieurs-dames こんばんは、お二方・意訳ね」
スタッフに案内されて席につく。
ミニマムだけど、内装は素敵だ。
暮れきった外の景色が流れていく。
車両全体は静かで、人のザワメキも思ったより小さい。
飲み物を聞かれたので、ミネラルウォーターを頼んだ。
「私はスコッチを」
大丈夫?
「スコッチぐらいなら、軽い」
かるくないからー、日頃の生活が知りたいー、多分、強いの飲んでるね?
視線をそらしたー
んで、前菜とメインとデザートまであった。
メニューにバリエーションは少ないけど選べる。
今回はお魚でお願いした。
お食事中は無言。
ともかく食べなよと、スコッチをやめさせる。
前菜もメインも野菜と魚中心。
火力が食堂車だと弱いから、煮込みや簡単な焼き物になるんだってさ。
スタッフさんがサーブしながら、ちょこちょこ話してくれる。
デザートはチーズプレートにしてもらった。
彼の飲み物はスパークリングワインにしてもらう。
まぁ食べたのとアルコールで血色が少し戻ったしね。
二人で食事が続くと、わかるのが。
この人は、他人とご飯が苦痛な人だってこと。
食べてる姿を見られたくないっていう。
わかる気もする。
自分の作法とかも気になるし、自分の本性ってのが食べる行為ってのにでるからね。
この人の作法は、実際、完璧なんだよ。
きっと厳しい寮生活で仕込まれたタイプ。
だって、貴族的なんだもの。
お育ちは、たぶん、ジャンクフードでも何でもいけるはずだからね。
んで、痩せてるのは、食べる行為ってのが、嫌な思い出に繋がってるって感じかな。
こうして私に分析されてるのを知ったら、嫌がるだろうなってのもわかる。
食べることが苦行。
つまり拒食気味なんだよ。
だから時間をかける。
回数を増やす。
見張られてる感じを受けない。
吐かない程度にカロリーを増やしていくって方向かな。
あとは、慣れる。
私にね。
そうホグワーツではある程度なれたんだろうね。
なにしろ、皆でご飯だ。
彼の脇にはマクゴナガル先生だ。
食べないとお仕置きされる。
不眠で拒食症ぎみ?
あー、うん。
頑張ってる方だよ。
大切な人が死んじゃって、いろんな片付かない心のまま生きてる。
そりゃぁね。
元からややこしい人なんだろうし、そこになぁ、心を削られるようなイベントばっかりじゃね。
頑張ってる方だよ。
まぁ、そんなダーリンの血を流させた相手は、苦しめないとね。
ワイの心の日記帳に書いちゃうもんね。
犬日記な。
今日も一匹つくったなりよー!
食後のお茶を嗜みながら、またも音を遮断し隠蔽を施すダーリン。
「結論だけを。
すべてが繋がっているかもしれない。」
すべて?
「君、グリンデルバルド、面会した男、遠因で繋がっている可能性だ。
君は事件として。
グリンデルバルドは、予言として。
そして面会した男は、体験者としてだ。
裏付ける証拠がない為、推論だが。
今回面会した男は、イギリスに戻る。
校長や魔法省あたりが分析するだろう。」
それで、何で戦闘になったの?
「血をくれと言われたんだ」
サイコパスキタコレ!
「面会した男が、私を見るなり血をくれと。
吸血鬼化しているのかと、監視人と立会人も総出の戦闘だ。
化け物のように強かった。」
化け物レベル。
校長ぐらい?
「騎士団、ダンブルドアの私設騎士団の創設メンバーだ。
実力はあろうが、それにしても異常だった。」
そんなに?
「何とか拘束して、特別室に入れるまで、支部で戦闘状態だ。
勘違いした輩と、その勘違いを口実にして私を殺しに来る輩で、混戦した。」
あー
「だが、君が不機嫌になったと連絡が入ってな。
沈静化した。
早くお前を宥めてくれと、な。
馬鹿らしい事、この上ない。
何故か、面会相手も武器をおろした。
今は特別室で拘禁中だ。」
なんだそれ、でも、ワイの蛮族プレイも無駄ではなかったな。
「詫びを伝えてくれと、泣かれた」
私に?
やだ、ゆるさないもん!
で、誰?
「支部のトップの、名前は知らん」
まぁ強火担が勝手に色々するから、いいかな?
「味方を増やせ、敵を減らせ、私の罪に巻き込まれるな」
『手をはなさないでよ、暴れちゃうぞ!』
チーズを皿に戻し、私はナプキンで手を拭いた。
ふざけて言うが、やはり彼から悲しみを感じた。
きっと、思い出しているんだね。
死なせてしまった時の気持ち。
「演技しろ、頭をつかえ」
大丈夫、私は違う。
テーブルに置かれた冷たい手を探す。
仲直りに私の指は握りしめられた。
彼はいつもより少しだけトゲが尖っていなかった。
まぁ、つまり少しは信じてくれたんだろうか?
「時が流れた。
同時に時流も変わった。
去年の今頃、ここにある事を誰が想像できただろうか。
何も変わらず、死ぬ定めも変わらぬだろうが、ひとつ確かな事がある。
この世に、何かがおきている。
とても冒涜的な何かが、な。
もう、終わったのだろう。
停滞の時が。
愚かであるが、思うより」
思うより?
車窓に映る顔が笑った。
楽しいと感じたようだ。
今日、戦って血を流して、大変、楽しかったようだ。
ウチのダーリンは、ちょっとばかりヤンデル。
そのくらいじゃないと、生きてる実感が感じられない模様。
心配だが、まぁ、いいんじゃねってなるワイ。
部屋に戻ろう。
話し合おう。
楽しかったんだろ?
あーそうそう、手に入れたおみやげがあるんだ。
「頼む、馬鹿な事はしていないよな?」
珍しく懇願。
わい、よいこだったよー
追加のチップをスタッフに渡しながら、ダーリンの眉間にシワが寄る。
まぁコンパートメントに入ってからのお楽しみでござるよぅ。
にゃははは!!
***
まずは賄賂をば。
お互いのベッドを引き出して、ここの境界線からぜったいに侵略してくるなよと、魔法的ラインを引く吾輩氏。
もうねー、コントじゃないのよね。
わかってるからーって言って、例の本を渡す。
渡した途端釘付け。
猫まっしぐら。
「…借りておく」
よろちぃ。
ワイが生きてる限り借りておくがいい。
んで、他にも購入して魔法省経由で学校に送っておいた事を話す。
書籍関連は、魔法省で許可が下りるかで決まると思うから、楽しみにしておいてね。
「うむ」
予想通り、倫理規定とか特定の方向になるとガバになるんだね。
普通だったら怒るレベルの冒涜書籍おみやげなのさ。
この様子なら、ジャバジャバ投資しても大丈夫そうだ。
興味分野一択だけど、そっちへの投資なら抵抗なさそげ。
むしろ素直。ダーリン可愛い。
...
まぁ聞いてなさそげである。
精神汚染系の書物も、きっと楽しんでもらえる事だろう。
魔女子さんおすすめの焚書禁書のオンパレードだ。
本に顔を突っ込んでるダーリンはそのままに、洗面を終える。
簡易のカーテンまで魔法的に吊るされているので、パジャマに着替えた。
その間、無言でダーリンは本に顔を突っ込んだままだ。
あー、もっと早くマタタビを購入しておくんだった。
ミネラルウォーターを開けながら、私は本に夢中のダーリンに話を振った。
きこえてるかなー?
「あぁ」
そもそも何で、行方不明だった騎士団員を尋問する流れになったの?
当然みたいな感じだけど、仲間が生きて帰ってきたんだから、よかったーって話じゃないの?
「当時の時代背景を考慮しろ。
イギリス魔法界を二分する内戦状態だ。
ダンブルドアの騎士団員と闇の帝王の死喰い人は、日々、殺し合っていた。
相手の家族や友人などを巻き込んでの、死闘だ。
そこで行方不明になっていたとしたら当然、殺されたとなる。
それが十数年後、現れた。
考えられる事は何だ?」
裏切っていた。
囚われていた。
どちらかになるかな?
「その騎士団員を発見し、保護したのはマグルの警察だ。
フランス海岸沿いの砂浜に、ひとり立ち尽くしていたらしい。
リゾート客が発見し、様子と言動の異常さから警察に引き渡されたそうだ。
ニュースで顔が流れて、気がついた魔法省員が回収した。
簡単に気がついたのは、男が十数年前と同じだったからだ」
同じ?
「若いままだったんだ。
騎士団の集合写真、創立メンバーの写真が支部には飾られている。
行方不明者のうちの一人だと、毎日目にしている写真を団員は無意識に見ている。
誰かに似ているとマグルのニュースで見て、一応問い合わせた結果だな。」
私みたいな特殊な種族の血だったとか?
「マグル出身の魔法使いで、マグルの紛争では兵隊として参加していた。
そのマグルの紛争が下火になった頃、ヴォルデモート卿との戦争が始まり、魔法界へと活動を移した。
魔法界の荒れた時代には、ダンブルドアの騎士団員になり、すぐに行方不明となったのが公式記録だ。」
戦い慣れしてる?
「そうだ。戦い慣れした男のはずだが、身内に裏切り者がいれば殺されもする。
闇の帝王は、そうした家族親族を人質にしたり、反目させる事で邪魔者を葬り去るのが巧みであった」
でも、生きていた?
「そうだ。
つまり、死んだことにして、帝王の下僕として戦っていたのではないか?という意見が出たのだ。
なにしろ、彼は若いままだ。
何某かの闇の魔術が関わっているのではと疑念をもたれたのだ。」
ダーリンは普通より老けてるけど?
「ほっとけ」
どんな人?
「外見は金髪、身長は私と同じぐらいで身体に厚みがある。
失踪時が30になるか。
キャラドック・ディアボーンが生きていたとして45前後だろう。」
けれど、若いままだった?
「失踪当時と同じ、今の私より年下に見える」
お手入れがよかったから?
「若作り過ぎる。別人の可能性も考えられたが、中身を知っている人間がいて、当人だと証言している。」
本人は何と?
本を抱えたまま、彼は横になった。
文字を目で追いながらも、彼は思い出すように言った。
「外見はいくらでも加工ができる。
薬もあろう、癒術、その他魔法的な技巧で、死ぬまで若い姿で過ごす事に注力する魔女もいる。
不可能ではない。中身は老いるがな。
故に、外見の若さに違和感を覚えた訳では無い。」
セウェルスから見て、何がおかしかった?
つまり、危険だって思ったんでしょ。
その血を云々を抜いてもね。
「相手の語る話からすると、血が必要な道具があるそうだ。
私のような人間でないと意味がないという。
血液型の問題かもしれない。
ともかく、私の血を欲しがった。」
あれ?
つまり、セウェルスが異常を感じたのは、そこじゃない?
「そうだ」
こちらを向くと、彼は薄く笑った。
実に楽しそうだ。
「奴は研究者タイプだ。
つまり血をくれと言ったが、たまたま良さそうな材料を目にした為の求めだった。
吸血鬼に堕ちたわけではない。
衣服や荷物、持ち込んでいた道具や武器は、取り上げられていた。」
けれど、戦闘になった。
「そうだ」
付き添いの人も、同じく戦った?
セウェルスが杖を抜いたから?
貴方に杖を向けた?
彼は私の言葉に、ニヤニヤと笑った。
「古株の闇祓い、彼女もディアボーン、元の男を知っていた。
だから、異常に気がついて、男に杖を向けた。
私に杖を向けたのは、先走って魔法を使った他の闇祓い達だ。」
どんな違和感が?
「影だ」
影?
「奴は無手だった。
装備を取り上げられ、シャツにズボン。
取り調べ用の部屋には机と椅子だけだ。
私とバンス、騎士団員の魔女だ。
二人で相対していた。
だから、攻撃を受けたとしても、杖無しの呪文だ。
対処は十分にできる。
見張りもいたからな」
影。
影がおかしかった。
そして攻撃された。
セウェルスは、片手をあげた。
室内灯に照らされて、壁に影ができる。
規則正しい揺れの中、影も一緒に揺れている。
「やつの影は、後追いしていた。」
後追い?
「私が動けば影も動く。当たり前だ。
だが、やつの影は、微妙にズレていた。
誰も気がついていなかったようでな。
私とバンスで会話を始めてすぐ、背後の影がズレる。
何がおきているのか、わからなかった。
ただ、普通ではないと感じた。」
魔法的な解析は?
「そこだ」
彼は本の表紙を撫でながら続けた。
「魔法とは何か?という話になる」
おぉっと、馬鹿でもわかる程度でお願い。
それにセウェルスは、こちらを見やると一旦唇を噛み締めた。
そういや、こいつ今度、二年生だったなーって感じ?
「魔法界の魔力とは、現実の固定力だ。
世界の物理を一定に保つ側の力。
簡単に言えば、現実を形作る意思だ。
こうあれかしという考えを、現実に結びつける。
物理的な現象を、現実に実現し固定するのが、魔法、魔術である。
この世界、領域に影響を及ぼす力、つまり領域、現実が安定している事が前提の力になる。」
なんとなく、大枠でいいたい事はわかるよーな、わからんよーなー
「現実があるからこそ、魔法が成り立っているという事だ。
火は燃える。
だから、魔法で出した火は燃える。
水は蒸発する。
だから、魔法で出した火で、魔法で出した水を沸かしても沸騰し蒸発する。
現実の物理現象と結びついている。
遠くの者に音を伝えるとして、魔法魔術的な理論や力によって現象が引き起こされても、耳に届く時に人間が理解できる周波数になるという訳だ。
つまり、現実とかけ離れた現象を引き起こせるが、完全に分かたれた力ではない。
この世界の力だ。」
うん、何となくわかった。
つまり物理法則無視してそうで、でも実際は現実の法則に従っている力って事かな?
「まぁ、正解ではないが、そんな具合だ。
不自然で不可思議な事に出くわすと、マグルは、魔法みたいだ。と言う。
だが、我々魔法族が行使する力も、彼らの現実とかけ離れた奇跡ではない。
魔力や空気中のマナ、自己魔力を消費し、現実を固定する方法という訳だ。
何が言いたいのか。
つまり、我々魔法族は、固定された現実によって魔法を使う。
では、現実が可塑性を帯びた場合はどうなるか?だ。」
猿にもわかる程度でヨロ
「固定現実を拠り所とするのが魔法だ。
その固定部分が、可塑性をおびた場合はどうなるか?
可塑性とは、溶ける、曖昧になる、歪むだ。
現実が溶ける。
現実との境界が曖昧になる。
物理法則が歪む。
と、どうなると思う?」
うーんと、つまり現実の法則に従ってるのが魔法だって話だよね。
その現実がおかしくなったら、つまり魔法が...
あれ、まさか?
「そうだ。
魔法は現実を拠り所とする力だ。
マグルの言う夢のお話ではない。
現実の法則に従った、実現力だ。
ならば、その現実を構築している土台が崩れれば、どうなる?」
魔法が、使えない?
「影の不自然さに、まずは、魔法的な解析をかけた。
闇祓い達は、魔法薬などの影響を考え、武装解除をした後、勾留して様子を見るつもりだったのだろう。
余計な術干渉が無いかだけ、調べていたのかもしれない。
私は、眼の前の人間が、寄生されていないかを知りたかった。
あれ以来、人間の中身を調べるクセがついていたのでな」
わかるー
って言うか、ヤバい話だよね、これ。
「そうだ。
そして結果、私がかけたサーチは表層は解析できるが、勝手に動く影に到達すると崩壊した。」
崩壊?
「魔法としての術式が崩れ去った。打ち消されたというより、崩れた。」
何か、戦ったんだよね。
「あぁ」
魔法、でだよね。
「バンスが拘束魔法を改めてかけようとしたとこで、机を投げられた。
ぎりぎり魔法は通るが、崩されるを繰り返されてな。
奴はどこからとも無くシリンジを出して襲いかかってくるし、闇祓いどもまで、こっちに遠慮なく攻撃をしてくるしで、狭い室内だったのもあって、酷い目に会った。」
つまり肉弾戦?
やめてよー魔法使いー!
「君の言う通りフィジカルが問題のようだ」
そーじゃねーよ!
「見どころはあるそうだ」
何の?
つーか誰が?
「ディアボーンが注射針のついたシリンジで襲いかかってきたんで、押し返した時だ。
隠蔽収納持ちだろう。
術を崩壊させる類の何かをしているなら、何を取り上げたところで無駄な話だ。
今は拘禁服になっているが。
で、もう少し鍛えたら、血を使った何かを作ってくれるそうだ。
闇祓い達が、私に襲いかかる原因がそれだろう。
こっちは被害者なんだがな」
そのイカれた当人は、どんな主張を?
「妙な場所に迷い込んで、1年暮らしたと証言している。ヤツにとっては1年。
この世界が、本当に自分の暮らしていた世界なのかと疑っている。
我々を信用はしていないそうだ。
だが、私の契約者と話したいとも言っている。
契約者とは闇の帝王なのか、聞いてはいないが。」
契約者、ね。
死喰い人だからって事?
「いや、死喰い人だったからかと聞いたら、大笑いされた。
闇の帝王なんぞチンケな輩ではない。なんぞと、喚いていたな。
拘禁服になっていたが、楽しそうだった」
セウェルス。
「何だ?」
どう結びつけた訳?
「君の恐れだ。
あの得体のしれぬ生き物だけではない。
君が叔母を飛ばしたのは、それだけ相手が強いとわかったからだ。
きっと今の君になる前も、力はあった。
マグルなんぞ塵にできる力だ。
子供であってもだ。
では、かなわない。と、恐れるのは、どういう事かとな。
子供で非力だからか?
あの影を見て、直感的に思った。
魔法が効かない相手だとわかったからだとな。」
彼は枕を均すと、頭を預けた。
「実際、ディアボーンの強さは、肉体の強さだった。
反射神経と強靭さだ。
非力な魔法族には、直接的な暴力がよく効いた。
それでも全部無効化された訳では無い。
最後には捕まえたしな。
それも本人は遊びだったんじゃないか。
だが、十分に恐ろしい話だ。
闇祓い達も訓練されているが、初手から暴力で押し通す訳では無い。
魔法に慣れているからな。
寄生もそうだが、魔法でカバーできる範囲を超えられれば、こちらは弱い。」
でも、楽しかったんでしょ?
「ディアボーンは、寄生されてはいない。
おかしくなっているが、それでも十分に有用な情報をもっていそうだ。」
なるほど、期待できると。
「ダンブルドアがきっと、うまい具合に情報がもれない場所を確保するだろう。
奴は私の血で何かを作りたいと言っていたしな」
魔法族の血は、敵に渡ると致命だよ?
「だからだ。きっと我々が知らぬ事が判るだろう」
私の血はどうかな。
「駄目だ」
何で?
「花嫁衣装を送ってくるような輩が山といるのにか?
血をくれと、他の頭のおかしいのがわくぞ?」
あ〜
そんな話をしつつ、いつの間にか眠っていた。
そして、予想通り、ダーリンは読書で徹夜した。
失敗失敗。
寝る前は駄目だったね。
そんなこんなで、列車の旅はスムーズだった。
ラッキースケベとかは無い。
ダーリンに隙はなかった。
むしろ読書に夢中でご機嫌だったよ。ちぇっ