おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ、オーストリア旅行編。
R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできております。

今回は夏季特別講習。
啓蒙が高いと寮監先生が何のお薬の話をしているかわかります。
まぁハリポタに出てくるあのお薬ですね。(ラブポーションじゃないよ)
あのお薬が市販されていない事や、貴重で高価で庶民では手に入らなかったかの理由です。
そしてスタンスとして、寮監先生は治療できる人たちを差別する事はありません。
恨みはあっても、患者の病態に対する嫌悪は無いって話です。
ちなみに、お薬は病態の抑制だけでなく、進行も押さえます。
政治的思想的理由でも、このコストダウン研究は進んでいません。

主人公よ、これがチャンスだ、研究費をダーリンに浴びせかけるのだ!!ここがお布施や投げ銭のチャンスだぞー!!


閑話 拷問牢獄城塞都市見学ツアー ⑬

質問はしないようにと思っても、目についちゃうわけで。

そうすると脊髄反射的に、考えちゃうのである。

 

あれは、魔力吸い取る椅子かな〜

あっちのは、頭部につける奴っぽいよね〜

ヘルバウンドハートどころじゃないね〜

 

お片付けしてないと、どんどん、ホラー演出的な何かがチラホラ視界の隅で存在感アピール?

 

そいで古い水盆みたいなのあるけど、あれ、何だろうなぁ。

 

「記憶を強制的に見る為のものにございますね」

「彼女の疑問には答えずともよい。教育上悪い」

「失礼いたしました」

 

そいでどんどん薄暗い感じの区画に入っていく。

 

「ここは危険人物を収容していた魔術封印の部屋が並んでおります。

封印のルーンは、当時既に回収しておりますので、ご安心を。

今年に入りましてからは、定期清掃も入れております。

腐りやすいものだけは回収済みにございます。」

 

そりゃぁね、昔の話だしぃ〜

考えてみれば、そんな怖い事無いよねぇ〜

...

腐るような

ナマモノ、あるんだ。

最近も…

 

あ〜思うに、魔力の流れが詳細に見えなくてよかったわ〜

アストラル体とかナチュラルに見えてたら、残留してる何かも見えちゃうわけで

そんな啓蒙高い世界って、私には早いというかぁ〜

なんかね、最近思うんだよね。

 

啓蒙ポイント貯まる世界だったらどうしようって。

どこかでポイント交換するのかな。

見たくないんだけど、ワイ。

 

「君の啓蒙と私の啓蒙の意味の差がよくわからぬ…

腐ると言っても、想像しているような事ではない。安心しろ。

合理主義者でもあるグリンデルバルドは、豊富な検体を手に入れる機会を得て、アカデミックな研究、探求を行っていた。

だが、それも昔だ。

魔法族にとっては最近だとしてもだ。

つまり薬剤、生産物など時間経過を止めていたとしても限度がある品は処分済みである。と、いう意味だ。

そうそうお前の考えるナマモノがここにたどり着ける訳でもない。

言っておくが、ヌルメンガードは歩いてたどり着ける場所には存在しない。

人避け魔法や隠蔽で隠している訳では無い。ここまでの施設をマグル避けだけでは隠しきれないだろう。」

 

聞き逃しそうになるけど、人体実験してたんじゃん!

ばり啓蒙高いじゃん。

それ、何か頭に被ってない?

 

「処刑して塵にするだけでは、無駄であろう」

 

マッドめ!

やっぱ金属の檻を頭にかぶるがよい!!

 

「ここでの基礎研究が現在の非常にマイナーな治療薬となって人命を救っているのも事実だ。」

 

魔法薬学教授に言われたら、そうですねとしか言えぬ。

合理主義を突き詰めると、ディストピアに突き進んじゃうんだよねぇ。

 

「実際、現代癒療で使われる魔法薬が劇的な進化をしたのは、グリンデルバルドの時代だ。開明的であるともいえるしマグル医療の進化と同じ道筋を辿っていると思われる。

簡単に言えば、本来は平和な時代に多くの資金を投入することで技術が進化するのが当然だ。

だが、残念な事に人命が多く失われる時ほど、人の求めに応じ、より癒療は進歩するものなのだ。」

 

えっと、つまり戦争とか疫病、人間に辛い場面で技術革新がおきる?

 

「特に薬学の場合は、大きな時代の変革時期に新薬や薬効機序の発見が多い。

そしてこのヌルメンガード発の毒薬研究は、現代魔法薬の新たな部分を切り開いた。

これもわかりやすく言えばだ、大凡が数種類のポーションですべての問題に対処していたのを、マグルで言う科学的根拠によって情報を蓄積し多様化する基礎を作ったのだ。

感覚から理論。

主観から客観へと成長したのだ。

同じく大鍋で魔法薬を煮込み、分銅秤で材料を計っていてもだ。

そこに基準統一されたフィードバック、エビデンスの蓄積など、個人個人の感覚だけの方法からの脱却。近代、最近の癒しと薬学の基礎ができあがったのが、悪名高きこの場所なのだよ。

現在ホグワーツで使用されている教科書との差異も、現代魔法薬が今まさに進化しているからでもある。

それが、ここから始まっているのだ。」

 

だから、皆、ここを壊さない?

 

「禁忌の知恵を誰もが欲しがるわけではない。

 だが、捨ててしまうには貴重というわけだ。

 若い世代に問題を押し付けたというのは、冗談ではない。

 口に出せる話題でこれだ。

人の命を救う薬だから許されているが、人体実験や拷問の記録が元である。

それも負の側面をあげれば、きりがない。」

 

何か、わかってきたよ。

ゴアな研究というか、もっとぶっ飛んでる事が転がってるんだね。

 

「君へ向けての特別講義程度。

一般的には甚だ問題のある話題となるが。

だが、現場で言えば不謹慎とはならぬ。

魔法薬を扱う者、研究者としては常識の範囲内だ。

君も薬学へと熱心に取り組んでいるが、これから先の調薬時に目に触れるデータの元を確認するようにしなさい。統計などは、存外、間違っている事も、計算テクニックで誤魔化されている場合もある。」

 

あぁ、なるほど。

ホグワーツの生徒向けツアーガイドだね。

 

「薬学の基礎研究としたが、ここで一番の進化を遂げたのが毒物からの派生薬だ。

囚人の無力化をはかるために、魔力と意識を切り離せはしないか。

理性を奪う状態とは何かという研究にもなっていた。

逆を言えば、理性を奪われてしまうような状態の病、魔法族の呪などに対処できる方法を探している事にもなる。

他には鎮静化を促す薬だ。

これも囚人向けの考案研究がはじまりだ。

だが、これも激痛など苦しみの中にある患者に投与するのも有効だ。

その限界量や、体質などの研究となれば被験体を探す事も一苦労だが、ここでは簡単だった。

昏睡、依存、廃人のプロセス。また、感情、衝動、その他の研究も行われた。

一見すると必要のない非道な実験に思えるが、実は現代の治療としての基礎研究資料になっている。

苦しみを減らす為の物であったり、今まで治療できなかった病へのアプローチ手段として、ここから始まった実験などのデータは利用されているのだ。

実際、80年代に発表された革新的な魔法薬の殆どが、ここが元だと調薬開発者達も認めている。」

 

実際のマグルの歴史でも、確かに戦争中に多用された薬類や開発された治療薬は、あったかぁ。

でも多くは武器としてだったり、兵士の理性のタガを外すような毒だったよ。

 

「秘匿されたのも、同じ理由だ。

選民思想と世界革命とやらが混じらなければ、もっと魔法薬学に貢献できただろうことは確かだ。」

 

ここに来るから調べたの?

 

「いや、85年の魔法薬学学会で発表された新薬が、ここの拘束用実験薬を元にしていた。

君の言う通り、人間の攻撃性や理性に対する人体実験が元という訳だ。

文献は魔法省にて、開示請求できる資料だ。

一般研究者でも、許可が必要な部類だが、癒療薬研究者には特別開示が許されている。」

 

ホグワーツの薬学教授にも?

 

「そうだ。

私が閲覧したのは、その基礎データを元に作られた新薬のレポートの方だがね。

毒物の意図しない作用を題材とした発表物だ。

主眼は、毒を使った治療薬の研究、であるな。

承認がおりた薬の中では、理性を取り戻す薬が一番の話題となった。」

 

そんな薬、誰が使うの?

 

「ニッチな代物だが、実は需要がある。

問題はコストと技術力だ。

大量の毒物を利用し、寸分違わぬ緻密な調合によって、薬にする。

高度な調薬技術。

高価な材料。

それを存分に使う。

時間と金を湯水のごとく使う事となる。

そうしてやっと毒が薬に変化するのだ。

芸術であり、調薬技術の結晶であろう。

技術に自信があろう者でも、中々に成功するかは不明。

元が毒だ。

誤差で患者が死ぬ。

それも患者に呑ませる時間に合わせて調合せねば無意味になる。」

 

よくわからんけど、激ムズなお薬なんだね。

理性が無くなる病気なんてあるんだ。

 

「呪いのようなものだ。伝染性で魔法族のみが罹る不治の病だ。」

 

おぉ、じゃぁ本当に、ミラクルなお薬なんだね。

ここでの争いも全部が無駄じゃなかったって事かぁ。

 

「残念ながら、その毒薬研究も外交問題になるのであまり公にはできない。

グリンデルバルドの罪は広く知られているが、功績になると極端に隠される。

ただ、癒療や魔法薬学の基礎研究という部分では、彼の実績を否定することはできない。

それは被験体となった命を否定する事にもなる。

新薬発明者本人である魔法薬学者のベルビーも、もともとは意識抑制毒というヌルメンガードの資料をたまたま発掘したのが元だ。

正直に学会で添付資料を開示したが、薬学者の間では好評でも、魔法省では厳重注意となった。

ただ、反面、この薬が高価で希少、調薬者の飛び抜けた技量がなければ作れない事を知ると許された。」

 

ん、何で?

 

「政治的な話だ」

 

あぁ子供は知らんでいいと?

 

「魔法族のコミュニティは狭い。魔法族の人口は一握りだ。

黒い羊で固まっていると、己達が異物である事、白い羊との違いがわからなくなるのだろう。

故に、異物であり脅威でもある狼は死ねと考える。

元は黒い羊であったとしてもだ。」

 

にがにがな表情。

何か、スイッチがそこにもあるようなので、再び、お口はバッテンなのである。

と、私達の会話が途切れると、お人形ちゃんが床と天井を交互に指差した。

 

「床面にございますのも、起動のルーンを取り除いた魔封じの一つとなっております。

また、天井にございます魔法陣が逆になっているのは、時の流れを変える作用を見込んでの物にございます。」

「ほぅ」

 

感心するダーリン。

まぁ聞いてもワイでは理解不能だったりする。

 

「間違って描いたのではなく、その間違いによる作用を利用しているという事だ。本来は魔法陣として成立しないはずが、そこを成立するように層をつくって描かれている。つまり、天才的馬鹿が作った。

少なくともここの主ではないだろう。この厭らしいやり口は、誰だろうか..」

 

猿でも理解できるレベルでプリーズ。

 

「主な作用は、囚人は過ごした時間がわからなくなる、だけ、だろうな。

まぁ考えるに精神的苦痛を与え続ける魔法陣と言えよう。

思うより凶悪な作用になる。

無害、手違いに見えるのが中々に、厭らしい。

悪趣味であるし、これで正常な尋問や自白が得られるとは思えぬ。

どちらかと言えば、拷問用魔法陣になるか。

長時間の拘束を前提として、政敵を発狂させて廃人にできる、か。

それも魔法陣の構築時の手違いだと言い抜ける事もできる。

長時間拘束されねば、この作用で死ぬことは無いだろうし、時間経過が歪んだ所で、出入り自由の者には無害。

天才的馬鹿の考える、ちょっとした嫌がらせが、結果、廃人を製造できるレベルの拷問魔法陣とは。この巨大な魔法陣規模ならば、十分凶悪だ。どれだけ恨みがあれば、こんな大きさになるんだ?」

 

超こえぇー!!

やっぱり頭に檻かぶってる人、当時、いたんじゃね?

 

口には出さんし、思考的に乗って通じないように気をつけて考えるに。

 

ダーリンはね、きっとグリンデルバルド氏が現役の頃の人だったら、いそいそと陣営に加わってた気がする。

きっとねヒゲや帝王より、こっちにいたと思うよ。

合理主義、能力主義で、天辺が部下に優しくて湯水のごとくマッド研究にお金を注ぐ上司だもの。

ワイもがんばって、湯水のごとく資金を投入しゅるぞー!

 

「何か良からぬことを考えていそうだな。…まぁさっさと進め」

 

「ここから段差が続きます。建物から外になります、本日は少し雪混じりですが、頭上は障壁がございますれば、濡れることはございません。」

 

んで、半壊というか崩落した建物と頭上は曇り空が見えた。

見渡す限り灰色の建物の残骸と黒く焼け焦げた跡ばかりだ。

 

「廃区となります。ヌルメンガードを閉じる時に、この辺りはあらかたの片付けは終わっております。

ここは特に破壊が激しく、放置出来ぬ物も多くございましたので。

今残っているのは、ここにあった建築物の石材など建物の残骸のみになっております。

段差もございますので、お嬢様の足元だけは注意をお願いします。

また、あちらのスペースは、ヘル・プリンスがご想像なさっている通りの施設です。」

 

どこ?

 

「興味を持つな」

 

いや、気になるじゃーん、焼け焦げた石材アスレチックとか、オシャレドレスだときついだけだし。

 

「浮かせた」

 

そうじゃねー

砂糖がすくねぇつーかブラックコーヒー!!

 

浮遊の魔法でこっちを浮かせてから、押し出すなっての。

ふぃ〜っと漂いながら、瓦礫を避ける。

楽だけど、違う。

扱いが雑い。

 

「捕縛、尋問、拷問、裁判、判決、収監、瓦礫の中になにがあると思う?夢見が悪くなるぞ」

 

瓦礫に埋もれてるけど、見えるのは…お立ち台?

コンサートホールだったり?

 

「はぁ…処刑台であろう。

つまり、この廃区は、処刑場跡だ。

国際魔法連盟が居を構えている場所は、何だと思う?」

 

フルコースの最後だよね。

中世スタイルなら、街の外にゴミ捨て場かな?

 

「ほぼ、正解だ。人間が最終的に埋められる場所、墓場だ」

 

うわ〜夏の思い出がそれ?

十二歳の少女の夏休みがそれ?

ワイ、暴れても許されるような気がするんだけど。

 

「聞いたのは君だろう。私だって帰りたいんだ」

 

この後はチロルの山岳鉄道?

 

「さぁどうなるか。」

 

ん?

ミッション終了じゃないの?

 

「君の荷物に書類と手紙をいれているが、それは検閲無しでダンブルドアに渡してほしい。

君が言わなければ、君の荷物を検査する愚か者はいない。」

 

あぁ、うん。

これが私のご指名の理由の殆ど、なのかなぁ。

 

「君もうすうす理解しているだろうが、差し入れは調べられるが、手紙はそのまま直接手渡されただろう。

君に校長が頼んだ意図のとおりにだ。

今回、受け取った書類も同じだ。

開示すべきではない事柄も多かろう。巻き込まれない為にも、何も受け取ってない風で校長に丸投げだ。」

 

そうもいかなくね?

 

「君の荷物には誰も手を出さない。

 君のその小さな鞄は、小さなままだ。

 調べられるのは、私だ。

 迎えが誰かによるが、君に渡された品々を私が持っている。

 あれだけの品だ。

 君のカバンに手を出す余裕はなくなるだろう。

 調べの間は、今度はおとなしくしていろよ。」

 

ことさら大きな瓦礫の上に出る。

コロッセウムばりの残骸の景色に、私はため息を吐いた。

 

『はなれない、こんどは、はなれないから、だいじょうぶ。イヌはシツケがたいせつ』

 

隣に並ぶと、ダーリンが真面目に頷いた。

 

「君は、残りの休みはレポートだ」

 

それワイへのシツケだな。

薬草採取するん?

 

「高山特有の、この山々の薬草を手土産として用意してございます。ヘル・プリンスへの礼とのお話です」

 

いや、そんな嫌そうな顔せんでも。

実地採取するつもりだった?

まぁ姿現しできるから、ワイをホテルにぶっこんで、その後、ウキウキ採取時間?

 

「それはない。君を放置すると被害が甚大だ」

 

優しさがほしいです。

 

「吾輩の得意分野ではない」

 

思わず笑う。

ちょっと気取っての返事だ。

久方ぶりの吾輩である。

ダーリンが軽口を返してくれるのは、機嫌が少し良くなったって事。

迷惑ばっかりだったしね。

早く彼を自由にしなきゃね。

まぁ私の言う自由は、お家に帰してあげるってだけだよ。

プライベートを縛り上げるのはよくないのである。

そいでだ。

 

注文した本の検閲ってどのくらいで終わるかなぁ。

 

「物にもよるだろう」

 

書籍が届いたら、貸し出すけど、夜は寝てね。

 

「考慮する」

 

廃墟を通り過ぎ、背後を振り返る。

異様な景観だ。

だまし絵のようにも見える。

街の方は見れなかった。

夏なのに、冬みたいだ。

空は雨混じりの雪みたいだしね。

 

こんなところに一人でいるのは嫌だなぁ。

 

「それが罰なのだろう」

 

そう言いつつも、傍らの人物は、どこか羨んでいる気配。

それは駄目だじょ、ダーリン。

隠居したいとか言い出すのは、枯れた爺様になってからだぞ。

つーか魔法界、爺様の方がアグレッシブ。

そしてこの塔にいる囚人は、どうみてもご機嫌だ。

キャラが違う。

ダーリンだと、ひと月もたずに死んでそうだ。

リアルで餓死とか。

 

そんな事を考えていると崩れた城壁と門の残骸の近くに、お人形ちゃん達が何かを運んできた。

葛籠だ。

書類をみっしり詰めた葛籠と同じタイプである。

いったん、こちらに中身を向ける。

あれ、どう見ても魔法薬学系貴重品類と素材に薬草詰め合わせ、時間停止済みって感じ。

セウェルスに見せると、封印して葛籠を厳重に縛る。

そのうえで私の方へと差し出した。

運べと?うむ、よろしい貢物だな。

 

その間、ダーリンは諦めたのか北の山脈を眺めている。

きっと彼の研究には役立つ、先程のヌルメンガード擁護ともとれる話を聞いてたじーちゃんが、それなら、あげるよーってくれた気がする。

やっぱ、ヒゲよりこっちだよ、ダーリン。とか、言い出したら軽くしばき倒されるのはわかってる。

お口をミッフィーちゃんにするにゃ〜。

 

「お嬢さまには、今後いつでもご来訪いただけるようにいたします。

ヌルメンガード内部の補修作業も我ら一同全力で取り組む所存です。

冬場は非常に厳しい土地柄ではございますが、夏にはぜひ、お越しくださいませ。

次回までに温泉開発や、お嬢様のご希望に添えるよう美しい庭園の整備など、全力で取り組む所存にございます。

ぜひぜひ、我が主様とのご交流をお願い致します。」

 

あ〜、まぁ保護者がよければね〜

 

「二度目はない」

 

それに深々と人形ちゃんたちは頭をさげると下がっていった。

空気読めるけど、読まないスタイル、けっこう好きだよ〜

案内のゲルダも、ちょこんと腰を折るとお見送りの体勢だ。

 

感慨深いものが浮かぶには浮かんだけど、そんな情緒より早く帰りたいダーリンは、私をひっつかむと門の外へ。

おぉ霧の森。

振り返ると、そこも霧だ。

なんにも見えないぞ?

 

「隠蔽、小転移。高度で衝撃も気配も感じなかっただろう。」

 

おぉ。

森の木々の向こうに、雰囲気マシマシのお墓が見える。

首刈り騎士ならぬ、首無し騎士がでそうだ。

 

「山岳地にローエングリンは降臨しないし、そもそも魔女は刈られる側だ」

 

いや、ワーグナーじゃないっす。

そんなドラマティック意識高い系は、グリンデルバルド氏が担当。

俗物担当としては、白鳥の騎士じゃなくて、映画のスリーピー・ホロウだったりする。

ドイツ人傭兵の首無し騎士ね、刈られる方ね。

んで、具体的イメージを流す。

首無しじゃない首ありバージョンで、クリストファー・ウォーケンがかっこいいね。

 

「…格好がいい?」

 

何故か呆れたように、首を振る。

 

「確かに整っているが陰気で尖った歯をした男だぞ?

 おまけに何だ、これは魔物ではないか」

 

言われて、アレ?ってなる。

じゃが、あえて指摘しない。

ダーリンと同じカテゴリー。

不穏な雰囲気の濁った目つきの男である。うん、分類一緒、ちゅき!

 

そんなアホな雑談をしつつ墓場に向かう。

墓場って言っても既に大昔な感じで、生々しいものは何にも無い。

そりゃそうだ。

山中でマグルも滅多にたどり着けない場所での一応の偽装だろう。

魔法連盟の建物を隠しておけばいいだけだ。

 

んで、お出迎えの人、とってもカジュアルな山岳装備のお兄ちゃんだった。

明るくは〜い!と挨拶されて、こっちですよーって古びた木の方へと促される。

いやぁ、なんつーかもう、さっきまでの雰囲気が消え失せる。

 

どうもどうもーって、スンゴイ陽の気配を振りまきつつ、木の陰にするっと消えた。

んで、出た場所が普通の、本当に普通の山小屋。

そこには暖炉と書類棚、事務机に壁には山岳装備がかけられてて、ミニキッチンとトイレ・バスルーム、多分、泊まり込みのお部屋に続く扉が見えた。

それを一瞬で見て取る。

 

何かひとつだけ違和感が…大きな物体が暖炉の前で、お茶してる。

 

完全装備の魔法族だ。

 

完全装備の中世魔法族法衣っぽい衣装を着た、偉そうな人がニコニコ笑ってお茶してた。

そして山岳装備の人が、すんごいため息つきつつ、こちらに椅子を勧めてくる。

 

「どうぞ、お座りになってください。

簡易な事務手続きと持ち物などの確認などを行います。

お嬢様の方は、あ〜そこの人とお菓子食べながら世間話でもどうぞ。」

 

ワイの持ち物検査は?

 

「いえ、そんな恐ろしいことは無理です。自分は、マグル出身の小役人ですから。そこにいらっしゃる、由緒正しい暇人とは違いますんで。」

 

「おや、私も暇じゃないんだが」

 

「倍率うん十倍の選考を勝ち抜いて来た暇人です。

 ちなみにお触りしたら焼き殺していいと連盟からもお達しが出ていますので、保護者の方も容赦は必要ありません。

 自分、目を閉じてますんで。

 塵も外に捨てればおわります」

 

「少しは敬意を上司に払え、建前でも口にしちゃ駄目じゃないか、左遷するよ」

 

「もう、ここに来てる時点で、試合終了。自分の栄達の道は消え失せてると思うんですが?」

 

「有能だから、じゃないか。

お客人、安心してくれたまえ。彼は連盟屈指の能力の高い魔法使いだ。」

 

「本気で言ってたら、呪いますよ。

さぁ保護者の方、色々心配はあるでしょうが、記録球も動かしています。

お嬢様は大丈夫ですので、囚人から渡された品々をお願いします。

あと、一応ですが、こちらの真偽の玉、いわば嘘発見器での検査も行います。

同意していただけるようでしたら、そちらの宣誓書にサインをお願いします。」

 

「まぁ暇なのもあるけどね、暇なぐらいの人間じゃないと、面倒な事になっていたんでね。

それと私の祖父がお世話になっただけで、私自身は過激派ではないよ。

縁は薄いが繋がりないでもない。縁戚とするにはとおいがね。

それで立候補するように願われて、あげく選別に残ったんだよ。

私の立場と抑止力、それに私自身の抗魔力耐性の高さも要因だね。

選別時の争いが酷い物だったので、興味もあったし立候補させてもらったんだよ。

だから、狂った考えも無いと思ってほしい。まぁ信じられないだろうけどね。

派閥的にも中庸になるかな。

簡単に殺されないというのも、理由の一つだね。

まぁこんな話は言うまでもないかな?

なので、失礼ながら名乗らず、問わずという立場で見届けるだけだ。

旅程はやはりウィーンに立ち寄るつもりかね?」

 

それにダーリンは、奇妙な虫でも見るような視線を相手に投げた。

温度の無い視線で、こういう表情を見ると、この人が薄暗い場所にいたことが実感できる。

まぁ大凡の相手に、内心はどうあれ、心の動きを見せない。

 

過去の魔女子さんが知ってる、特別な職種の人が見せる視線だよ。

吟味してるんだよね〜怖い吟味だよ。

 

少しでも危機感をもっている生き物なら、これが非常に危険な状態だとわかるだろう。

予備動作のない攻撃体勢ってやつね。

どう転んでもいい。

殺し合いでも話し合いでも、逃走でもだ。

 

ニュートラル、居合斬りの鯉口を切った状態だよ。

こういう力みのない状態がとれるってのは、慣れてるって事。

まぁ普通の魔法族には無い感覚だろう。

 

「邪魔が入ると?」

 

「何をやっても不満を垂れ流す馬鹿がいる。

今回は二種類。

老害と無知だ。」

 

それにダーリンは、視線を監視役の男の方へと振り向けた。

対して書類を分けていた相手は、肩をすくめた。

 

「馬鹿が多いんですよ。

お嬢さん、資産家だって嗅ぎつけた新興勢力と、モテナイ男の僻みってやつですかね?」

 

んで、お茶。

ダーリン、お腹すいた。

 

「暫し待て」

 

魔法的サーチ、プラス出された器もチェック。

それからダーリンは、部屋にある水晶球を指さした。

 

「あぁ、きっと視聴するだろうね。」

 

そいでおもむろに、ワイの隣に腰掛ける。

ゆっくりと足を組むとわざとらしくカップを手に取り、一口。

飲んでから渡される。

まぁ毒見かぁ。

と、思いつつ受け取って飲む。

次に菓子を千切って食べたやつを渡してくれる。

おぉサービスいいねー

なんて、思ってたら、何故か書類を整理していた監視役の男が一言。

 

「どうぞ」

 

するとダーリンは、私の肩に手を置くと喋りだした。

腕を肩に回して、悪の首領の如くふんぞり返る。

なにそれ、オモロ演技はじまったの?

久しぶりのヒールプレイや!

おもろおもろ!!

と、いうワイの感想に、見えないため息。

 

食え?

うん、毒見のすんだ小さなマフィンをグイグイされる。

ほんのり、焼き立てミルク味や〜

 

「これに護符を与えている。

Dark Artsをふんだんに使用した、吾輩渾身の力作である。

 

警告を先にしておこう、前代未聞の馬鹿共、いや、賢き聴衆の方々にはおらぬであろうが。

念の為、まぁ念の為だ。

 

この世には賢き犬と、駄犬がいる。

賢き犬は主人を崇め、主人の為にと働くものだ。

 

だが、駄犬は違う。

飼い主の手を噛み、仕置で落命したとしても本望だとほざく。

死を恐れぬとな。

 

だが、吾輩オリジナルのDark Artsの強度はCurseと同じである。

 

吾輩は忠犬では無いが、駄犬ではない。

誰に従うかは理解しているし、護衛対象をバカ犬に食わせる事はしない。

 

そう、吾輩は駄犬ではない。

 

無論、吾輩が真っ当な人間ではないことは、賢き聴衆の皆様方は、賢き犬であろう方々は、ご存知であろう。

 

そして吾輩は弱者であるが故、容赦も慈悲も持ち合わせてはいない事もだ。

あぁ品性はあるとお伝えしておこう。

それ故…

 

即死を一度免れれば助かる。

もしくは死して終われば許される。

 

…けしからん限りの解釈である。

そんな品性の無い術式を使う輩と同じだ等と、虫唾の走る解釈をされてはたまらぬ。」

 

んで、ダーリン、記録球と思しき水晶の飾りに向かって、ニヤッと笑った。

 

「即死を免れた後は、蝕むであろうし解除は不可能。

邪魔な吾輩を狙ったとて同じだ。

すでに自立した呪を仕込んである。

そしてそれでもと挑むなら、当然の報いが下るであろう。

馬鹿な駄犬とその血縁、全部だ。

喜べ、そういう術式だ。

たった一人の愚か者の所業で、一族郎党滅亡だ。

 

実に愉快。

いや、当然の報いでありましょうな。

 

吾輩の品性を問われるのだ、存分に味わうがいい。

おぉ何と非道な輩、であるか?

 

ふふっ。

吾輩は、高邁な方々がご存知の、汚い人間だ。

 

それが犬として控える意味を考えるがいい。

貴種の女性の側には、必ず毒を垂れ流す犬がいる事をだ。

 

愚か者へ警告する。

家族が無いならば、その者が気に掛ける縁者、それさえも無いとなれば、助けようとした者を呪う。

 

それはさすがに気の毒故、癒者は解呪可能の範囲だ。

品位は保たねばな。

 

まぁ愚か者の死骸が腐り果て、永劫その魂に痕跡を残し追い回すであろう。

あぁ、断っておくが、これはあくまでも護身である。

 

毒を盛るなど命を狙わねば良い。

そしてこれに触れる、嫌がる娘に手を出す輩は、丁寧におもてなしができるように、複数の護符を与えてある。

その一つが、本人の許可なく触れれば、徐々に触れた場所から腐る代物だ。

 

期待せよ、愚かな駄犬ども。

その一物が先に腐れて落ちる様を想像しろ。

もちろん、態と触れた場合だ。

 

主を助け、主に頭を垂れる事を忘れなければ無害である。

あぁ品性を保たねばならぬな。

 

例え髪の毛一筋触れたからと言って、即座に殺しにはかからぬ。

強度Hexと同じ、それだけならば普通の解呪で間に合うだろう。

体がすべて溶けるまでには時間がかかるであろうからな。

苦しむさまを笑ってやろう」

 

冗談、だよね?

って、わぁたのしそー

 

「もちろん、冗談だ。

君は学生である。

そんな頭の悪い犬は、賢き方々がどうにかしてくださるだろう。

あぁ、付け加えておかねばな。

吾輩は、魔法薬学を専門としている。暗殺したいなら毒殺は無駄だ。他の手段を試みると良い。」

 

「あ〜国際問題になるので、それは記録的に修正するよ。仕事が増えちゃうからね」

「記録修正しまーす、最後の方は失言でーす。他の部分は冗談でーす」

「少し顔色が戻ったな、もう少しお茶を飲んでいろ」

 

うん、ごめん。

 

「謝罪は不要。君に原因はない。」

 

いや、あるでしょー

 

「それでもだ。人間には理性と品性が必要だ」

 

ふざけちゃならんけど、自然と啓蒙が高いんだよね、この人。

それに彼は肩をすくめた。

 

「普通に怖いですんで、仕事はまきで終わらせますね。あーそこの由緒正しい上司の人、邪なこと考えてると普通に天罰効果で死にそうなんで、お嬢様の触ったものを持って帰らんように。

それから笑いすぎて涙ぐまないでくださいよ、暇人。

はい、怖い人、こっちのサイン、誓約書読んでからお願いしますね。」

 

鋼メンタルの人で良かった。

そりゃそうだ。

こんな僻地にお勤めだし、本当に不穏になったら、ここは危ないものね。

有能であることは確かだ。

 

でもさ、ダーリンが矢面に立たなくてもいいのに。

 

「仕方なかろう、お前に何かあれば欧州は火の海だ」

 

御冗談を。

 

「なんと言っているのかね?」

「己の価値をわかっておらぬようで。」

「お嬢さま、彼の発言は妥当だよ。記録は保存し、教育に使うよ。君に資金提供したがる者も増えるだろう」

「援助より、不穏な動きを追っていただきたい。我が身は日頃はホグワーツにありますので」

「それでもだよ。主を失って久しい者ばかりでね。」

「ゾッとしますな」

「まぁ仕方がないね。先程の誠意のお返しに情報をひとつ。

たぶん、君の上司の調査では拾えなかったと思う、血縁の候補がいくつかある。

皆、恐れてしまっていてね。名乗り出たがらないんだ。

まぁ皆善良な部類の人達なんだよ。

財産を欲しがって集まるような人達じゃない。

お嬢さんの血筋とは系統違いになるがね。」

「それが本当なら重畳」

 

そんな感じで、ダーリンと連盟の人は情報交換を続け、荷物の検閲が行われた。

そいでお昼ご飯も山小屋に。

出てきたのは、伝統的なクネーデル(団子料理だよ)や肉料理だった。

それもできたて、魔法デリらしい。

レストラン直送だって、おいしかったよ。

 

 

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