R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできております。
幕間
ハリー君はね、きっと女の子にモテるタイプだよ。
パパよりもママに似たんだね。
(え〜俺に似てるからモテモテ……痛たっリリー、耳をそれ以上捻ると取れちゃ、はい、黙りますぅ)
それから……
おばさんも、きっと心のどこかでは間違ってる事には気がついているよ。
(ママ、アイツ、帰ってこないの?うん、知らない、うん、わかった、もう、聞かないよ)
***
イギリスの食事ってどうよ?
ってよく言われるでしょ。
実際、毎日食べる分には結構いいんだよ。
味付けは薄めだし消化が悪い感じもない。
まずいなんていうのは、あんまり知らないからでもある。
レストランでだって、塩とか胡椒をつかってもいいんだよ。
うなぎのゼリー寄せだって柑橘類しぼって、胡椒でたべるとひんやりしてて美味しい。
いや、子供の頃から色々食べてるから?
まぁそうだけどね。
肉料理だって美味しいし、グレイビーソースなんて、芋にかけるとうまい。
もちろん、ホグワーツの油と砂糖は別だよ。
極端なんだよね。
ただ、後から味付けをするんだっていう感覚があれば、なかなか体にも悪くない。
素材重視で量がある。
豆料理多めでいい感じだし、魚も程よく食べてる。
カロリー重視のアメリカほど、どどーんと重くはない。
ただ、日本人視点からすれば、出汁文化とは違うし、そもそも人種もお腹の中の酵素まで違う。
混血の私の腸内は、どんな具合か未知だけど、海藻食べない地域に適応してるって話。
何の話かって?
親族の話ばかりをハリー君とするわけにもいかないでしょ。
お題として無難な、食べ物をふったわけよ。
彼は基本、貧しい食生活を強いられたけど、最低限の外聞を気にした食事は与えられていた。
もちろん基本、お仕置きは食事抜きって奴。
殴られ蹴られと従兄弟のサンドバッグになっていたとしても、ある程度のラインは守られていた。
食事作法も言動も、普通から外れる事を恐れている正しい人達らしく、そこそこ綺麗だ。
あのまん丸の子より、たぶん、礼儀も作法も整っている。
んで、食べ物ね。
何が好きー?って聞いたら、甘いものだった。
そりゃそうだ。
甘いものを与えられる環境じゃなかった。
歯が綺麗だし虫歯一つないのはよいけれど、さすがに彼は同年齢より小柄である。
骨格は骨太だから、セウェルスと同じくニョッキリ伸びるタイプだ。
牛乳に肉に野菜。
本当に栄養が必要だ。
胃腸は丈夫だし、風邪も引いたことがないっていう。
成績だって言うほど悪くないし運動神経抜群だ。
モテ要素いっぱいだね!
ちなみに、筆談に切り替えてる。
時々、喋ってるけど、セウェルスが近くにいないからね。ちょっと用心。
「なんか、君に言われて喜べない自分が不思議だよ。ロンだったら喜ぶんだろうなぁ」
この後、時間あるなら身の回りの物を買おう。
どこに落ち着くにしても、持ち出せたのは持ち出せたけど、まだまだたりないよ。
「じゃぁグリンゴッツに寄ろうかな」
新学期用の学用品を買うのにとっときなよ。
なんかちらっと聞いたけど、必須科目の教科書が多いみたいなんだ。
君の両親のお金だ。
もりもり勉強するためにも、学用品はきちんと揃えて、無駄遣いしないようにね。
その他は、ワイが色々揃えるよ。
なにしろ、ちょっとばかり、やっちゃったしねぇ。
「いや、買ってもらうなんて、駄目だ……よ…ん?
何、したの?
えっ……何か、したんだね、ねぇ、えっ?
先生、知ってる、ねぇ、その笑い何?
すごい不安、なんか、わかってきたかも……」
えへへ、ちょっとばかり溶接をしちゃっただけだよ〜
「ようせつぅ?」
な〜いすツッコミ、せんきゅぅう!!
「あ〜、スネイプ、に言わなきゃ……あぁ、ハーマイオニー、君がいつも妙な表情になるの、これなんだね……」
中々に君は頭もキレるね。
そう、ワイの中身をきちんと把握し始めると、大体がこんな感じに分かれるんだ。
のーせんきゅー
うぇるかむー
おーしっと
たすけてぇマーリン!
「なにそれ」
実はね、抗魔力が重要。
ハリー君には教えてあげよう。
「皆には内緒って事?」
いやいや、これは公然の秘密だ。
スリザリンの純血は知っているし、先生方も薄々気がついている。
校長とマクゴナガル先生、それにセウェルスは事情を把握しているね。
「うわぁ聞きたくないような気がする」
わかってるね。
さっき言った反応は抗魔力値の違いでもあるんだ。
「他所からの魔力への抵抗力って意味だよね」
そうそう。
今後、防衛術で習うはずだよ。
実は、この抗魔力、抗う力ってのが、魔法使い同士の力関係では重要になるんだ。
力関係。
わかるかな?
闇祓いなら、攻撃力であり、相手からの攻撃に抵抗する力って訳。
抗魔力は先天的な魔力量、大人になると定量で成長が止まる基礎的な魔力量と、訓練でカバーできる成長部分の魔力量も含まれる。
けれど、抗魔力というのは魔力量だけじゃないんだ。
魔力コントロール、体内の魔力と外部の魔力を動かす事、自覚して管理できる能力も含められている。
あと、学術的には、他にもいろいろな要素を総称して、抗魔力値としているんだ。
学校で習うから、まぁ今は細かく覚える必要はないよ。
つまり、保有する魔力量と内部外部を含めての魔素を動かす力って事だ。
例をあげると、アルバス・ダンブルドアとゲラート・グリンデルバルドの保有魔力量は、グリンデルバルドが少しだけ上だ。
けれど、勝敗はアルバス・ダンブルドアだ。
基礎ステータスは、グリンデルバルドが若干上回っていたとしてもね。
違いは総合力で少しだけ、校長が勝っていたからだ。
総合力、抗魔力だ。
同じ魔力をぶつけ合っても、校長は技巧と管理能力で同じ魔力でも強度が上になる。
残りは心理戦や経験での戦いだ。
だが、この抗魔力は無意識内でも働くからいい仕事をしてくれるわけだ。
これにより、戦いが長引けばどうしても校長が有利になっていく。
そして結果は、アルバス・ダンブルドアは賢者と呼ばれ、グリンデルバルドは囚人となった。
紙一重でね。
けっしてグリンデルバルドを全てで圧倒していたわけではない。
えっと、グリンデルバルドの事は、まだ習ってないかな?
「ダンブルドア校長の話は知ってる」
まぁ魔法族少年少女の尊敬を一心に集めるヒゲだもんね〜
「まさか、本人に、そんな呼びかけ……してるんだね。だからスネイプにゲンコツ貰うんだよ」
スネイプ先生だぞ、ハリー君。
つまり抗魔力というのは魔法族の総合的な力ってわけ。
心を読まれないようにするとか、同じ魔力攻撃でも、反撃できたり、威力を弱めたりできる。
それじゃぁ私の、この能力、男に好かれる能力は、魔法族的には何になるかな?
「美人も魔法能力なの?」
違う違う。
勘違いしてるけど、好感度の内訳で外見は五割、半分ぐらいだと自分では思ってる。
残り五割の好感度のほうさ。
「僕にはわからないよ。君は美人だ。だから男に好かれる。」
そうだね。
皆、そう思うだろうね。
でもね、これ、顔を布で隠していても同じなんだよ。
「そんな〜」
上からシーツをかぶっていても、フィルチ氏は、私が誰か判別できたら、減点はしないのさ。
「それは君だからさ」
初対面の知らない魔法族の好感度もだよ。
はぁはぁオジサンにされるんだよ。
ちなみに年齢は、ヒゲと同じくらいだった。
「それ、犯罪じゃない?」
魔法的に考えてみて。
「呪いかな?」
魔法族的な考え方がやっとでてきてうれしいよ。
この私の能力は、一種の攻撃なんだ。
抗魔力が高ければ、セウェルスのような大人で魔力量が高くて魔力抵抗も高い人なら、のーせんきゅうー。
影響ゼロだ。
「影響あると思うよ」
はぁはぁはしてないでしょ?
「ごめん、オエッってなりそうだ」
酷いなぁ。
で、考えてみてよ。
君の親友、ウィーズリー弟君は、うぇるかむだ。
「..そういう考え方か」
おっ、さすがハリー君だね。
わかってきたね。
美人は世界を明るくするさ。
でも、美人だけじゃぁ好感度なんて維持できない。
はぁはぁも、初対面のオジサンがするようなら、本物の変態か、呪われてるんだよ。
こんな面の皮、後、二十年もしないうちに、おばさんになるっていうのに。
「君、多分、あと五十年経っても美人だと思うよ。」
それなーいい意味じゃないよねー
「ごめん」
ウソウソ。
少しわかってきたかな?
オーシット!
女性だと気がつくんだ、自分たちの中に異物がいるぞ!
そして君のように魔力抵抗が高めの資質を備えていると、私と普通の会話をしてくれる。
会話をしているうちに、こいつ、やべぇんじゃね?
これ、まずいよなぁ、助けてマーリン!!
「えっと君自身も、面白くていいと思うよ」
ありがとう、ジェントルマン。
さて、そんなイギリス紳士に忠告だ。
少し真面目な話をしよう、マグル育ちのハリー・ポッターにね。
そうだね、マグル育ちが知らないことを、魔法界の人間は気づかない。そんな微妙なすれ違いの話だよ。
私は美人で男に好かれる。
これはどちらの世界でも。気がつく話だよね。
こんな風に言うと、女の子に総スカンだ。
でも魔法界の女の子や純血の親たちは、常識として私を違う生き物だと分類している。
これは差別に見えるけど、事実としてきちんと把握していないと危険だからだ。
君も気がついているように、マルフォイ君は私を尊重してくれるけど、なるべく距離を置いている。
何故なら、私個人のパーソナリティ以前に、私の血が厄介であることを理解しているからだ。
彼の親がね。
差別じゃなく、区別だ。
これは種族が違うという意味だ。
まってね、もう少し話すよ。
私は人間に近いけど、近似種であって同じではないんだ。
大凡のイギリス純血達の古い血筋は、私を貴種としているが、同じとは扱わない。
これは当然の事なんだよ。
「そんな、酷いよ!」
差別のように、マグル社会だと人種の問題になるけど、それじゃないんだ。
私はね、魔法生物と妖魔という魔物の血筋なんだ。
人間の男を獲物にするタイプのね。
わかるかな?
成り立ちが違うんだ。
それを理解していないと危険だ。
理解した上で、同じ人として付き合ってくれるのなら私も安心だ。
君は酷いといったけれど、私は捕食者で、彼らは獲物なんだ。
「えっ?」
段々と自分のことを思い出してきたんだよ。
事故で失われていた私をね。
蓋を開けたら、私は人間として疑問符を覚える感じだったんだ。
つまり自分でもびっくり。
そしてね、古い血筋の魔法族の気持ちが理解できた。
彼らは私を差別して下に見ているんじゃない。
脅威として、恐れているんだ。
だからね、怖いのは、その基礎知識なしに、私と付き合う事なんだよ。
ネビル・ロングボトム君とハリー・ポッター君なら、私は名前を呼べる。
多分、ネビル君も抗魔力に優れてるし、彼の家族は私に対しての忠告をしているだろうし基礎知識ができてる。
個人的な付き合いをしても私もある程度安心だ。
まぁ危険度は低いから、そんな深刻な顔をしなくていいよ。
校長が入学を許してくれる程度さ。
大人になったら、どんな化け物になるのかは、未定だけどね。
「君は、自分をそう思っているの?」
優しい彼は、あえて嫌な単語を口にしなかった。
まぁ深刻な話じゃない。
魔法界にはね、目に見える厄介事以外にも、マグルの世界には無いやべぇお約束があるって話だよ。
地元の人間はお約束で理解してる、だから他所から来た奴も当然知ってるつもりって訳さ。
「うーん、つまりマグル育ちだと気が付かない?」
君の親友のように魔法界にいても見落としがちの、オトナになってから気がつくホットスポット、大問題ってやつ。
それが私みたいな血の呪いや、闇の魔法、危ないお薬なのさ。
マグルの世界でもお約束ってあるでしょ?
口には出さないけど、皆、なんとなく知ってるってこと。
これはやめとこうぜって暗黙の了解。
「……今年になってから、子ども同士の、暴力事件がニュースになって。
大人がぴりぴりしてる。
乱暴な奴らも、今のところおとなしくしてる。
血が出るような喧嘩もしてないね。
そんな感じの話?
おかげでダドリーは、僕を殴らなくなったよ。悪口だけになったんだ」
かわりに鉄のフライパンじゃ意味ないよ。
でさ、魔法界だって、同じ人間の世界さ、夢の国じゃないってのだけは忘れちゃ駄目だよって話。
特に、まずい事ってのは、楽しかったり心地よかったり、怖くて痛い姿をしてないのがね、魔法界のトラブルなんだよ。
私みたいなね。
「あー、うん。でも君は、その」
君はスリザリン所属の私に、警戒心ゼロのウィーズリー弟君のオカシサを見逃してるのわかる?
「君が優しくしてくれるからだよ」
私の優しさなんて、普通だよ。
この顔で好感度を稼いでるなら、ほかのスリザリンの女の子も美人だよ。
もちろん、好かれるのは私も嫌じゃない。
けど、彼が普通ならもっと好意的な態度になるまでには、実績や会話が必要でしょ。
さらに言えば、スリザリンの寮監先生の側にいる私は、もっともっと辛辣な言葉で表現されてるはずなんだ。
「君が優しいからさ。喧嘩を止めようとしてくれるし、本気の諍いになる前に気をそらしてくれる。困ってたら、大丈夫かって、どこの子にも聞いてくれるじゃないか」
ありがとう。
私を引き合いに出したのは、身近な話が中々ないからだ。
まぁ例題として聞いてよ。
私は男の好感度をあげる能力がある。
これは外見や態度以外の、対人型の抗魔力攻撃になる。
「抗魔力攻撃」
これがセウェルスのような苦手な先生の、ピリピリしたオーラが実は抗魔力攻撃なんだぜ、アレ。って言ったらグリフィンドールなら信じるでしょ。
もちろん、あのストレスオーラは単なる性格。
「うん」
この話の要点は、マグルで言う犯罪にもある通り、悪い事は、楽だったり気持ち良かったり、苦しくも怖くもない姿で人間を堕落させるってことなのさ。
わかるかな?
魔法界にも危ない薬はあるし、マグル育ちでは埒外の危険な生き物がいる。
古い純血の家庭なら気がつく危険だ。
君には血縁として、それを忠告できる人間が今までいなかった。
こんなシリアスな話を、オフザケばかりしてる私が、ワイじゃないぞー、私が言うのは、この後、君が出会う人達が、君がマグル育ちであることの意味を忘れてる可能性があるからだ。
「君も、でしょ?」
これもセウェルスと校長達だけは知ってるけど、魔女の、知識は残ってるんだ。
こうして喋ってるのは古い魔女の知識なんだ。
マグル育ちではあるけど、確かに私は純血の流れなんだ。
だからある程度の常識や空気感はつかめるつもりだよ。
君やグレンジャーさんよりもね。
その中でも、特に身近に迫る脅威を挙げておくよ。
人間不信になれとは言わないけど、たぶん、親御さん、ママなら子供のうちに言っておくかもな話。
ドラゴンなら怖がるけど、君は怖がらないだろうカワイイ女の子の話さ。
「ん?」
君がこれから習う世界の魔法生物や妖魔の中には、様々な魅了を扱う生き物がいる。
「魅了」
そうそう。
つまり君がこれから相対する人物の中に、妙に気になって好感度ばかりがあがる相手がいたら、それは要注意だ。
たぶん、君はこれから、可愛い女の子や、好きになっちゃう相手が出てくるわけさ。
その時にさ、私みたいな異物や、とんでもねー女が混じっているかもしれない。
「僕には早い話かな、きっとそんな子、でてこないよ」
でてくるよー
君はいい子だ。
素直で前向きで、頑張ってるぞぃ。
きっと君が好きになって、相手も好意を持ってくれて、ラブラブな青春になるのさ!
まぁ聞いてよ。
そんな青春に突入する前に、注意しておきたかったんだ。
魔法界の人間には当たり前の注意事項だ。
見分けるのが難しいけれど、君の友だち、女の子の意見は良く聞いてね。
例えば、マグル育ちだけどグレンジャーさんは、違和感に気がつくかもしれない、君より先にね。
あとは、周りの魔法族の女の子の意見かな。
君がメロメロになっていたとしても、忠告を頭に残しておくんだよ。
「そういう話?」
案外、君のネームバリューに恐れをなして、魔法界のお約束なんて知ってるだろー疑惑だよ。
「……なんとなく、わかった。そっかーそういう事かぁ。確かに何も知らないんだよなぁ」
かわえぇ女の子が、君に恋してる、だけならいいんだよ。
ちょっとぐらい、周りの女の子を蹴散らしたり、ぶりぶり嘘ついたって、いいのさ。
楽しいじゃん。
でも、でもだ。
総じて女の子にウケの悪い女は地雷ってのはよくある話だけど、その程度、加減が問題。
魔法界の危険行為のレベルはね、パーティーで友達のコップに薬を入れるようなヤツなんだよ。
「魔法界も?」
マグルだと、危ない地域も何となくわかるし、付き合っちゃならんグループも理解できる。
非合法の薬以外だって、パーティーだって何となく友達同士で情報を持ってるし、大人も言い聞かせてくる。
よくよく考えてよ。
魔法界での授業で、君はお薬を作れるんだよ。
薬だけじゃないよ。
呪いとか普通にあって、髪の毛や血液とか人体の素材さえ手に入れば、けっこうドギツイ魔法が使えるの、想像できない?
「あ、えっ、そうか」
魔法界には愛の妙薬とか、惚れ薬なんてものまで作れちゃうんだぜ。
子供の君でもお薬が作れるんだ。
魔法薬学の教授が、アホみたいに厳しい理由が想像できない?
死人の出るレベルの薬を管理してるんだ。
「できた、うん、そうかーそうだよなぁ」
そして周囲の女の子が感じてる、あなたの彼女、ちょっとヤバいっていう意見は、意識に残すべきだよって事も言っとく。
「君が何を言いたいかわかってきた。普通に知ってる話が僕には欠けてるんだね。
そしてロン達は、僕をちょっと過大評価してるし、先生達も忘れてると」
君の嫌うスリザリンの態度ってね、大凡の魔法界の魔法族の常識をなぞってる可能性があるんだ。
なんて酷い、そんなスリザリンあるある信じないもんね〜
これも間違いじゃないけどね。グリフィンドールの意見も悪くない。
結構結構。
噂も十中八九くだらない事ばかりだ、信じる必要はない。
ただ、吟味する必要はある。
十人中九人が言葉を濁して、君の彼女とは距離を置くようならね。
「う〜ん?」
難しかったかな。
そうだな〜
誰かと意見の食い違いが出たら、ちょっとだけどうしてだろうって立ち止まってね、かな。
これが私から君への、無駄な忠告。
「全部は理解できないけど、何となく僕は何も知らないんだって改めてわかった。ありがとう」
こちらこそ、変な話に付き合ってくれてありがとう。
妙な好感度の上昇は、闇の力が作用している場合がある。
これは君の周りの人間にも注意するべき兆候だ。
それは普通の恋愛とか親愛には、間違っても見えないはずなんだ。
当事者だけがわからないのが、本当に困る。
私も魔力コントロールを鍛錬するよ。
話として迷走してきたね。
ここで一旦整理。
ハリー君は、魔法界のお約束を知らんことだけは覚えておく。
私のような、魅了の能力は闇の力に属している。
「闇の魔法なの?」
皆、言葉を濁すけどね。
危険にはかわりがない。
私が誘拐されたらまずいのがわかるでしょ?
「うん」
私は血筋として有名でね、魔法生物や魔物として討伐は辛うじて免れている。
今は、校長先生とセウェルスが私の魔力、能力を抑え込めると証明し続けているからね。
そしてこの血そのものを利用したいと考える輩がね、問題。
「闇の勢力?」
わからない。
闇の陣営だけではないだろうし、個人的な妄執もあるだろう。
私の血は古いからね。
これは一族の血、女に出る力だ。
だから、私の血、私の子供、私の命で、さまざまな事を試したいんだろうね。
私がホグワーツにいるのは、まぁ財産問題もあるけれど、攫われ殺される事を危ぶんでいるって訳。
「先生、離れてるけど大丈夫なの?」
ごめんごめん。
怖がらせちゃったね。
大丈夫、今、セウェルスの護符をつけてるんだ。
何かあったら、それこそ相手が返り討ちでシヌね。
「……聞き流してたけど、セウェルスって」
ラテン語での発音だね。
どうせ、聞こえないからね。
ダーリンでいいじゃんねぇ。
「君ってさぁ」
彼は食べ終えるとスプーンをテーブルに戻し、がっくりと項垂れた。
ほら、君の抗魔力は十分に仕事をしている。
あぁ、もっと余計な話になるけど、魔法界には愛の妙薬とか言うアホな薬がある。
先にも言ったけど惚れ薬ね。
魅了と同じ方向性の、材料と技術さえあれば雑でも薬として成立しちゃうお薬ね。
これが人生終了させる劇薬なんだよねー
多少の幻惑程度から、ハッピーワールドになれる効能幅があってだな。
とんでも効能の薬になると一部、判断力が欠如して、結果、全然、好きじゃない相手と結婚して子供つくっちゃうような劇薬になるんよ。
「それ、怖い」
ワイの受け取る品関係、寮監先生魔法サーチしてヤバいと校長いき。
食べ物も外だと毒見してる。
「これは大丈夫なの?」
大丈夫だと私は思ってるけど、寮監先生的には飲み物の時点でサーチしてたよ。
「……」
シビアだよね~
恐ろしい薬だから、女の子から何か食べ物もらっても食べないようにね。もちろん飲み物もだよー
「僕は関係ないと思うけど」
君の年で、素直に女の子に、綺麗だとか美人だとか言えるだけでも、モテモテさ。
ダーリンを見てみなよ、猿あつかいだぜ?
「それは仕方がないよ。
君と喋ってると、女の子と話してるの忘れるもの」
それはありがとう。
あぁ遅くなったけど、お誕生日おめでとう、ハリー。
楽しい夏を過ごそう。
きっと楽しくなるよ。
***
きっと楽しくなるよ。
と、テレビの画面越しに見るような美人が笑う。
スネイプが認めるように、彼女は造形だけなら夏の雪だるまだ。
でも、話してみると、年上のお姉さんと話しているような安心感がある。
彼女が自分のことを言うような、悪い感じはまったくしなかった。
耳に残るのは、不穏な単語だけである。
魔物の血、私の命。
笑顔で話す事ではない。
恐ろしい話である。
彼女は雑談をしつつ、外にいる男を常に視界に収めている。
ハリーは、彼女の言葉を聞きつつ、当然だよな。と、思った。
彼女は光り輝き、楽しい世界にいるように見える。
けれど、結局、彼女の境遇は、ダーズリー家で殴られ食事を抜かれている自分とあまり変わらない。
親を失い、頼れる親族を失い、更に命を狙われる。
自分を落とすような話をしつつ、笑顔で乗り切っているから、誰も気がついていない。
世界は不公平で、子供ではどうにもならない事が多すぎる。
あぁそうか。
と、ハリーは思った。
彼は子供を殺すような人ではない。
繰り返し、彼女が言う意味が、やっと理解できたような気がした。
炎天下でクソみたいな状況の自分を見下ろす黒い瞳。
確かに、暴力を振るうような事はしないだろう。
嫌味で意地悪をするだろうが、きっと殴ったりはしない。
弱みに付け込んでいたぶったりはしないだろう。
嫌われていたとしてもだ。
確かに、アイツは、スネイプは、先生だった。
彼女が信頼しているのは、きっと子供から奪う人間じゃないと知っているからだ。
子供の手に持っている物を奪い取って燃やすような人間ではない。
嫌味で、気が合わなくてもだ。
あの家に戻れと言うだろうか?
それとも……
「校長に許可をとった。ウィーズリー家の家長と奥方にも許可をとった。夏休みは彼らの家ですごせ。
養い家には戻らずとも良いそうだ。今後の事は校長とマクゴナガル先生とで話し合いになるだろう」
戻った男が淡々と言う。
それでも、心に広がるのは安堵と思いもかけぬ感謝だった。
今後、嫌味を言われても、受け流そうとハリーは思った。
『セウェルス、言ってなかったけどさぁ〜お詫びをね、ハリー君にしたいんだなぁ〜これが』
あぁわかる。
これはまずいと彼もわかった。
満面の笑顔を見て、更に確信する。
人生経験の浅い子供にもわかる凶悪さ。
確信犯だ。
男の反応を理解したうえでの試し。
甘えているんじゃない、からかってるぞ、こいつ。
それも許せねぇなんて小さい器を証明しねぇよなぁというガラの悪さだ。
確かに、美醜はどうでもよくなるだろう。
トラブル開始の死刑宣告を受ける気分は、欠片も羨ましくない。
羨ましがるロンがおかしいんだよという彼女の話は、正解のようだ。
当然、男の表情が鬼のように変化する。
「聞きたくない」
絞り出された言葉に、思わず気の毒だと彼は視線を窓の外に向けた。
おしゃれで入ったこともないパーラーから見る景色は、明るい夏色だ。
『彼の物置部屋、開かずの間にしちゃった、へへっ』
あぁ階段下の、お仕置き部屋かぁ。
開かずの間になったのか。よかったなぁ。
でもあそこにゴルフセットもあったよな。
どうするんだろ?
『あのね、あのね、ハリー君を閉じ込めてる場所だって、フクロウちゃんが教えてくれたんだよ。
可愛いよね、白いフクロウ。
えっ?魔法はつかってないよ〜杖のねぇ〜熱でねぇ〜』
きゃらきゃらと笑いながら言ってる事は、相変わらずぶっ飛んでいる。
そのヘドウィグは自由に飛んでいる。
そうかーお喋りしたんだ〜狭い場所に閉じ込められてたから、ストレスだったんだね。
『学校の勉強道具とかは回収したんだけどね、二度と開かないかも。
見た目は違和感無しだし、ワイの仕事は完璧。
まぁ普通のバーナーじゃ無理だし、そもそもね〜ほら、ワイの杖、溶接っていうか、あれ、呪い系?
うんうん、この杖の素材がね呪物らしいよぉ〜
自己申告してくれたよ、夢枕?
だから家を取り壊して更地にしても、ドアだけ自立して残るかもっ!おもろっ!』
最後にそっと渡されたメモを回収してそっとポケットに仕舞う。
彼女の会話メモの最後は、ごめん、蛮族プレイしちゃった。と、書かれていた。
悪びれていないのが、また。
そりゃぁ美人だって猿扱いになる訳だ。
そうして無言の男の困惑が伝わる。
何故か、ハリーにもだ。
わかりあえないキライな相手のはずなのに、だ。
怒るべきなのに、褒めたくなるのは何故だろう?
笑っては示しがつかない。
この猿を調子づかせてしまう。
後始末は、クソッ、どうでもいいか。
私は知らん。
未成年魔法使用の取り締まりをギリギリですりぬける酷い嫌がらせだ。
たぶん、ゴルフセットを取り出す時に、気がついてエライことになるだろう。
ゴルフセットを磨くハリーがいなくなるのだ、気がつくのは必要になる直前だ。
僕も知らない。
「ポッター、日用品だけ先に買うぞ」
「あぁ先生、グリンゴッツにも寄りたいです」
「わかった」
二人は、彼女を無視すると会計に向かった。
もちろん、彼女が何もしないように、彼らは両側から手を繋いだ。
どうして彼女の手を必ず彼が握るのか、本当の意味を理解したハリーだった。