おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ、秘密の部屋編。
R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできています。

シリアス成分が混合されていますが、ご安心ください。
シリアスな話ではありません。
真面目な方向にもいきません。
ラブ成分が欠乏中ですが、どこかに愛はあるはずです。
たぶん……


AVB、或いは静かなる丘と秘密の部屋 ③

移動手段は普通にマグルのバスだよ。

ハリー君は、考え込んでる。それでも不安そうではない、かな。

ワイ、少しは役に立ってるかな?

 

「私よりは」

 

貴方も十分頑張ってるよ。

大人の介入は、子どもにとっては安心材料だもの。

 

「嫌いな相手でもか?」

 

彼を飢えさせる大人じゃないでしょ?

それともまさか、そんな屑じゃないよね。

 

「クズかもしれんぞ」

 

冗談よしてよ。

 

私達はハリー君の後ろ座席に座っている。

時間帯のお陰か車内は空いていた。

相変わらず私だけは隠蔽が効きすぎてて、空気だけどねー(料金は払ってるよ〜)

話題のハリー君は、後ろから見てもサイズの合わない服の中で身体が泳いでるのがわかる。

 

と、そんな私の考えを読んで、皮肉げにダーリンが笑った。

 

「比べてしまうんだ」

 

自分とかな?

何となく意味はわかる。

彼は昔に引き戻されている。

似てるし、似てない。

 

前に言ったこと、覚えてる?

 

「何だ?」

 

私と貴方、同じ年齢だったら、良かったのになー。

 

「君は幸せな家庭の子供で、私のような、小汚い粗暴な子供を避けただろうさ」

 

この、私が?

 

私は少しムッとする。

このワイが?

 

プライマリーの記録、見たのならわかるよねー

ちょっと覚えてるんだよねー。

ワイ、コース別になってたの。

 

「賢かったからだ。それも天才型の子供のクラスであろう?」

 

一部の成績がね。

それもあるんだけどね。

素行評価は壊滅してなかった?

 

「……」

 

うむ、やっぱりねぇ

 

残念ながら、葵ちゃんは怖がりの攻撃型。

コントロールできずに漏れ出してた微量の魔力のお陰か、トラブル三昧だったようだ。

本人からの働きかけじゃない。

周りが、だよ。

 

マーガレットは苦労したと思うよ。

 

だからね、ハリー君のおばさんの気持ちはミリわかる。

もちろん、虐待は駄目だけどね。

 

だから切実に、同じ魔法族の友達がいたらって今は思ってる。

マーガレットが慰めてくれたけど、友達はできなかったみたいだよ。

 

「君がか?」

 

忘れてしまったけどね〜不義理にはなってなくて良かったよ。

それを考えるとさ、ありえるんじゃないかな〜

理由がさーほら魔力じゃん。

だからさ〜同じ歳なら、マジで友達だったと思うよ。

同じ魔法族なら、ある程度、漏れ出す魔力の圧力も平気だったろうからね。

 

「そうか」

 

以前さぁ、魔法族とスクイブ、マグルの家庭の事を教えてくれたじゃない?

 

「ペチュニアの私への言い分は、ほぼ真実だ。

あの頃の私は、歪みきった子供だった。

相手の幸せなぞ、欠片も斟酌できる余裕がない、貧しい子供であった」

 

違うよ、子供だった。

 

だから許していいんだよ。

 

でも、今回の事は、ヒゲもダーリンも許さんがな!!

 

「そうか」

 

カーラー用意しとこう。

 

「校長を弄るな」

 

お仕置きだもーん。

リボンは校長のだし。

きっと寝る時はきちんとおヒゲのお手入れしてるんだよ。

サラサラのふわふわだもの。

 

「知りたくない知識を投げてくるな」

 

それにしても、ハリー君、ちっちゃいねぇ。

家系的には、背も伸びるんじゃない?

 

「そうだな」

 

なるほど。

それにしても服を見ると扱いがわかるね。

あのまん丸な子のお下がりかな。

でも素材はマシかな。

サイズは合ってないけど。

癖毛が顔を取り巻いて色白で可愛いのに。

彼はママ似かな?

 

「残念ながら」

 

おい、魔法族。

 

「瞳だけ」

 

なるほど、なるほど。

その他がアレで素直になれない、なんておこちゃまな理由とか無いよね?

 

返事がない。

しょーもねーなー

 

ちなみにそんなオトナ気のないダーリンは、ブラックシャツにブラックなズボンに革靴である。

それもおじさんくさくない、オシャレなシルエットのだ。

シャツがインしてなくて、絞られてて少し短いやつだ。メーカーは忘れたけど、ズボンもデザイナーズブランド。チラッと見えるベルトもオサレポイント高め。

手足が長いのをわかってるだろうチョイスだ。絶妙な丈とラインである。

超進化である。

絶対に自分じゃ選ばんコーデだ。

 

浮気、浮気なのー!

メンヘラヤンデレしないと駄目?

と、疑うレベルにかすりもしないダーリンクオリティなので、予想はついた。

自分スタイルに口出しされるのを極端に嫌う男の行動基準は、メリットがあるかないか。

たぶん、マルフォイさん家には、オシャレチェックする人がいる模様。

髪の毛はねっとりゴワゴワもしていない。

そこも指導が入ったようだ。

素晴らしい、現代人らしくなってきたぞ。

そいで隣りに座るダーリンの頭部を凝視。

これならチャラいピアスとかすれば、怪しい売人に見えなくもない。薬作ってる製造元だけどな。

 

「考えを垂れ流してくるな、馬鹿者が。」

 

いや~かっこいいよダーリンって話。

最近はポニテである。

暑いかららしいけど、シッポにリボンをばつけたい所存。

そうだ、マイルーン入りが良かろう。

今度、ブラックリボンをばしばらく使用しよう。

あと、変えただろうシャンプーは何処のかな~いい匂い。

やっぱ浮気?

やだ、ダーリンに火をつけなきゃ。

ワタチモシヌー!

 

「君のリクエストだろう。

空き時間に調合しているから、香りが移っただけだ。

ポッター、そろそろ降りるぞ」

「はい、先生」

「降りたら、コレを掴んでついてこい。コレのペースに巻き込まれるな。」

「わかりました」

「馬鹿な事を言ってくるが、私の事に関しては嘘かデマだ。

からかう事に全力を尽くしている。

減点対象外だと校長に言われて調子づいているのだ。」

「……」

 

だって浮気ー

今日は髪の毛サラサラ~

 

「何か言ってますよ?」

「気にせずともよい」

 

程なくロンドン中心部、繁華な場所で下車する。

ちなみ『コレ』とは、猿扱いである我一匹である。

なかいーねーちみたち

と、言うと後でお仕置きされるのでおとなしくする。

何気なく歩道を歩き、何気なくマグルの街から漏れ鍋へ。

パブ風の宿にはウィーズリー家の迎えはまだ来てないようで、カウンターにいる主人に伝言を残した。

ガハハな雑い感じの良い店である。

ハリー君曰く、大きな人と来たことがあるって話。

漏れ鍋の裏庭の壁をぬけてのダイアゴン横丁。

んで、グリンゴッツに寄る。

ハリー君がトロッコに乗るのを見送り、ワイは小鬼店長さんに招かれ別室へ。

 

おサイフありがと〜、役に立ってるよ〜。

今度財産管理人も含めて、投資相談をしたいんだ。

投資の概念が、魔法界に浸透してない?

あ~、投資になるとマグルの資産運用になる、両替レートはーとか、話してるついでに、ポッター家の財産管理は誰が?

えっ、他は封印中でご両親の財産の一部だけハリー君が自由にできると。

子供の管理できる資産でないための処置。

あーポッター家、資産家なんだね。

 

セウェルス、そんな資産家の子供が栄養失調なんだけど、どうよ?

ヒゲのヒゲにコテ当てて、巻き巻きしてもいいと思うんじゃが。

ついでにダーリン、そろそろハリー君に意地悪するのやめなよー

 

ツーン

 

まぁいいか、素直になれないお年頃。

ヒゲのヒゲをコテで巻き巻きする事は決定だ。

 

「理由がある。それに校長はわざとではない」

 

投資の資料をとりに小鬼店長さんが消えると、私はため息をついた。

 

ハリー君の命をながらえさせる為の緊急処置とかなんだろうけど、限度があるよ。

彼は栄養失調だ。

私怨とは別の話だよ、セウェルス。

あの校長だ、監視はしていたはずだ。

何のための試練か知らんが、彼のママが許すレベルだと思うかい?

私の考えを言って良いかな?

 

「あぁ」

 

嫌な言葉を使うよ。

 

私が考えるに、思想教育の下準備だ。

ある程度のコースを作って子供を教育する。

アフリカ諸国周辺とか共産圏の、戦闘員教育に似てるんだよ。

 

本人には孤児としながら、誘拐した子供に善意の教育を施すやり方だ。

教えるのは、都合のいい正義と忠誠心だ。

 

わかってる、違うんだろ?

 

でもね、貧しい状況からすくい上げるやり方がさ。

そんな風に見えちゃうんだよ。

善意や理想はあるんだろうけどね。

 

真っ当な親から見て、孤児院、養子、この選択肢が取れないなら、定期的なフォローをせずに見ているだけなのは、非常に不穏なんだ。

 

つい最近まで、このイギリスの近辺、マグル界でも同じようなシナリオがそこら中にあったよね。

辛うじてあの家庭は、常識とか礼儀を叩き込んでくれたようだし、外に放り出しはしなかったようだけどね。

ギリギリのラインで、彼のおばさんは踏みとどまっていたって訳だ。

 

路上に屯する不満を抱えた青少年を、戦闘員にする。

主要産業の切り替えで失業者が増え、その貧しさを抱えた人間を地域紛争に投入する。

煽りを食らったのは貴方の世代だ。

貴方は魔法使いになったけどね?

だから魔法界が不穏でも、マグルの世界には戻らなかった。

今やっと紛争が終結に向かって、政治の転換も図られている。

合意は、まだ先だけど。

貴方の暮らしていた地域も、再開発になったのは、それでしょ?

魔法族だから知らんとするには、貴方のプロフィールからしても無理があるよ。

 

わかってる、正しい理由があるんだね。

でもね、現実として彼の体は骨と皮だ。

 

問題を押し付けて放置したのは校長だ。

事実は変わらん。

馬鹿めが。

 

「そうだな」

 

校長が考えていた路線は破綻したんだろ?

 

「あぁ、何も知らぬ魔法族の家庭に預けるには情勢はまだまだ不穏だ。

君と同じくホグワーツ預かりで、安全が保たれる家庭に時々短期のステイを考えている。それもミネルバが考えるだろう。」

 

つまり今後は、きちんとご飯が食べられて、フライパンが宙を飛ぶ事は無い。

 

「あぁ」

 

正直なところ、少し、家庭環境を予想してたでしょ?

 

「あぁ」

 

あそこまで酷い想定はしてなかった?

 

「考える事を止めていた」

 

わかってる。

ヒゲだって理由がある。

ダーリンだって理由がある。

一方的な事を言ったけど、無力な立場の子供の権利は、あらゆる柵とは別次元だって事は覚えておいてよ。

大切なんでしょ?

 

「大切だ。彼女が」

 

あぁ拗れてんのね。

私は彼の腕を軽く叩いた。

まぁセウェルスにしても、今日はダメージがあった。

強い大人だって、ダメージは入る。

あからさまな攻撃なら平気だけど、情緒部分、それも過去にからんだ方向だと防御もできない。

 

まぁ待遇改善が見込まれるなら、今後は口出さないよ。

あぁさっきも言ったけど、多少の詫びに、彼に鞄を買いたいんだ。

この後、彼、日用品買うでしょ。

鞄を私からプレゼントしたい。

 

「私が購入する」

 

超高級な鞄を私が買う。

それに貴方が、超絶技巧の拡張軽量魔法をぶっこむんだよ。

貴方からより、私達の方が、彼の気持ち的に受け取りやすい。

それも私からの詫びだ。

どうよ?

 

「何故、と、いつも思う」

 

何が?

 

「君は私に、甘い」

 

そりゃぁ貴方は、私の大切な艀、獲物だからさ、ダーリン。

 

「誤魔化されよう、君が子供のうちは」

 

嘘は無いんだけどなぁ。

貴方が私を人間扱いしてくれるから、私も貴方を大切にする。

きっとそうしないと、私はあっという間に忘れちゃうんだよ。

 

「何を忘れるんだ?」

 

今夜のディナーのメニューとか?

ハリー君と別れたら、頼まれた買い物して、どっかで夕食食べてから帰ろうよ。

ロンドン市内のおしゃれレストランとかでさ。

奢っちゃうぞダーリン。

っていうか、パーラーのお金も払うし。

 

「なんだそれは。

それから勘違いしているようだが、私は無職でもないし、収入が無い訳でもない」

 

しってるー副収入の怪しいお薬売買で稼いでるらしいーねー。

 

「人聞きが悪い。

マンゴからの直接委託だ。」

 

おぉ本格的というか、そうか、そうだよね。

忘れてたけど界隈では、天才とか言われてるんだって聞いたよーヒゲから。

 

「校長と何をしてるんだ、君は」

 

えっ?

そりゃ婚約者の情報収集したり、ヒゲの最近のオシを聞いたりしてるよ?

最近、オキニのファンシー雑貨とかお菓子、なんでか女子的お茶会でさ〜

時々、女の先生達も混じる感じ?

あの占いの先生、ぶっとんでるよね〜アル中じゃね?で、おちゃけやめようよ〜っていったらさぁ、男紹介してだって、旦那になってくれる人紹介してくれたら、おちゃけやめるって。

泣きながらね、マジでさぁ、ちょっとヒゲと一緒にしんみりしちゃった。

でもよくよく考えたらさ〜

子供に何言ってんだろうねぇ〜

でも、魔女の婚活問題、事業にできそうじゃねってヒゲとさぁ話したんだけど〜ねぇ聞いてる?

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毎日、毎秒、時間が過ぎていく。

時間はあると言うけれど、その降り積もる時間が怖かった。

一緒にいる人が、明日も隣にいるかはわからない。

忘れてしまうかもしれない。

私が、だよ。

そんな予感がするんだ。

だから、好きだなって、ちょっとでも思ったら、大切にするんだよ。

そうしないと後悔しちゃう。

後悔したことも忘れちゃうんだろうけどね。

 

あぁほら、ちょっと思い出しちゃったんだよ。

殺される時のパターンね。

大半がロクデモナイ死に方だったんだけどさぁ。

実はね、術を発動させる為に、死んだの、けっこう多いんだ。

 

ほら、旦那と子供、確実に助けたいと思ったら、大掛かりな術になるじゃん。

そういう時、確実性を増すのはさ、生贄を自分に指定する事、なんだよ。

だから、わざと、私、殺されてたくさい。

生贄って言っても、あの生贄じゃないよ。

あんなモノは、焼き潰すだけだよ。

そうじゃなくてさ、普通に生きててさ、まぁ良くないことに巻き込まれて、しょうがない、子供や旦那だけでも〜助けなきゃって。

そんな状況でさ

誰かに、わざと殺されてた。

 

すごいよね、魔女子さん。

あんた、やっぱ魔女だわ。

狂った男をおびき寄せて、確実に地面に穴を掘らせるんだよ。

 

火あぶりになるパターンはね、そんな自爆型の禁術をしかねないって気がついた女たちによってだよ。

そりゃそうだ。

自分の大切な男を骨抜きにして操るとか恐ろしすぎるわ。

それでも火炙りパターンは少ない。

いちおう、うまくいってる時は、あの得体のしれない儀式を潰したりもしたしね。

 

そしてね最悪なのが、運よく生き返っちゃうパターン。

今の私みたいに記憶がぶっ壊れちゃうわけよ。

だから愛する人も思い出せないし、大切な記憶もわからない。

命をかけた相手に、初めましてってね。

そりゃもう、笑えない感じになるんだ。

貴方に甘い?

違うよ、貴方に甘いんじゃない。

怖いんだ。

忘れちゃったらさ、私、化け物になると思うんだ。

もうさ、自由だーってね。

それもいいかな〜って、思うけどさ。

けどさ、誰かの記憶にある私のままで、いたいとも思うんだよ。

 

まぁ言わないけどね。

ちょうどハリー君が戻ってきたので、思考を止める。

目の前の幸せを味わうのだ。

シリアスなんて夏休みに必要ないのである。

 

***

 

グリンゴッツでの用事は終了。

小鬼店長さんからはコンサルティングリストと魔法界の投資案件についての簡易な資料を渡される。

お土産はゴールデンゴブリンキーホルダー。

 

コレを下げるといいことあるの?

特に何も効果はない?

魔除けになるかな?

 

で、ハリー君もお金を下ろすことができたので、買い物へと出発。

 

そいでハリー君は、自分の好きな服を選んで、自分で買った。

好きに選ぶって大切。

もともとイケメンだもん、なんでも似合う。

そいで言った通り鞄はこっちで買った。

誕生日だしね、そいでダーリンにモリモリ拡張軽量魔法をかけさせた。

二人の距離感はイマイチだけど、まぁ今日の騒ぎを乗り越えた仲だ、じんわりと何かかわったかな?

でさ、ウィーズリーパパね。

迎えに来るはずが来ない。

どないなっとるんやろ?で、もう一度連絡。

そしたら職場でトラブルらしい。

じゃぁ夏休みで暇な俺たちが〜と双子。

で、セウェルスとウィーズリーママからストップが双子にかかった。

そりゃそうだよね。

で、急いで行くからね〜で、待つことしばし。

煙突飛行で到着したウィーズリーママに引き渡して〜終了、にはならなかったんだよね。うん。

 

「今、どんな状況か尋ねるのはやめておくわ。

まずは、いったん家に来てちょうだい」

 

小柄な夫人の提案に、傍らのセウェルスを見やった。

 

「手を煩わす必要はありません。彼を預かっていただけるのでしたら」

「もちろん預かるのは当然よ、セブルス。

子供の前で色々話したくないし、早く落ち着かせてやりたいのよ。」

 

有無を言わさず、私達三人を促す。

 

「ウィーズリー夫人。煙突飛行は無理だ。」

 

ちなみに漏れ鍋、パブの二階の一室である。

ワイは拉致られた宇宙人状態だったけど、今はセウェルスだけが掴んでいるね。

ハリー君は、ウィーズリーのママに挨拶して、そのまま手を繋いでいた。

たぶん、このまま移動しちゃおうって考えているんだろう。

 

んで、私は真面目にしている。

これはまずいなぁって予感ビシバシ。

 

頭の回転が早いタイプだと思う。

外見は、おっとりとして見えるけど、どちらかと言えば、即断即決自分ルールタイプ?

一旦、敵認定されたら終わる、って魔女子さんが囁く。

手強い魔女のニオイがするって。

 

「彼女は体内魔力のバランスが悪い。それと発語に問題がある」

 

ちょっと考え込むウィーズリーママ。

 

「彼女を一人にはできない」

「付き添い姿現しも無理かしら?状況を知りたいのもあるし、彼女だってここで外されたら嫌でしょう」

「……わかった、後から追う」

 

そうして暖炉に向かう二人。

ワクワクして見守るワイ。んでも、お淑やかにおとなしくする。

 

「えっと今のうちに言っとく、今日はありがとう、ドヴワティーヌさん。君のおかげで、すごく助かった。それから……先生ありがとう。誕生日プレゼントも、ほんとに」

 

「教師としてあたりまえだ」

 

ツンツン。

 

「アオイ」

 

消え去る二人を見送った所で、セウェルスは静音隠蔽を室内にかけた。

 

「モリー・ウィーズリー、不死鳥騎士団の賛同者、ダンブルドア側の人間だ。

彼女は、自分の兄達を闇の陣営に殺されている。

当然、ヴォルデモートに対しての殺意、忌避感が強い。

純血家をヴォルデモートに与する輩と見ているのも、ロナルド・ウィーズリーのスリザリンへの批判も、両親からの教えだ。

彼女の夫のアーサー・ウィーズリーも、妻の無念を知っているため、やはり純血思想には反対の立場をとっている。

純血家系でありながら、純血を裏切る者。

半純血やマグルの魔法使いに縁が多い。

厄介であり頼りになるだろうからこそ、ダンブルドアも彼らを信頼している。

問題は、正論を安易に口にしてしまう事か。

正しいとなればグリフィンドールらしく、逆に排他的思考に陥りやすい。

賢い筈が正しさという論点になると話にならない。

中庸を選ばず、結果がアーサー・ウィーズリーの魔法省の立場となる。」

 

そこは頑固な純血、なんだねぇ。

 

「つまり、魔法界での立ち位置をはっきりさせている。

信頼できる表側の顔だな。

ダンブルドアの考えに賛同し、彼女の息子たちも賛同者だ。

彼女自身は、一見、過干渉の母親に見えるが、どちらかと言えば、あの家庭は母親の方が有能で、家庭向きではない。子供も囲い込んでいる訳でも無い。

ポッターにとっては、逗留先としては悪くない。

ダンブルドアに賛同しているが、子供を利用し搾取する事は無い。

そういった輩が一番、彼女の怒りに触れる事になろう。」

 

あながち第一印象は間違ってなさそうだ。

たぶん、私の属性が地雷かも。

 

「どういう意味だ?」

 

テリトリーが重なると駄目だと思うよ。

彼女は私と違うタイプのアルファ個体。

独自の基準を持ったリーダータイプ?

 

私は、テリトリーを食い荒らす方向だし、純血主義のステレオタイプに見えない?

 

「いや、彼女は合理主義とは違うが、最初から知りもせずに、相手を否定はしない。

どう伝わっているかにもよるが、反感を最初から持たれはしない。

私個人には不信感しかないだろうがね。

私の立ち位置は、ダンブルドアが許容している限りはグレー。

私の経歴からすれば対立するのが自然だが、その意味では純血の魔法族の中でも冷静だ。」

 

つまり冷静で戦略的、見た目を裏切る頭脳派かな?

 

「大家族の母親で世間知らずの世話焼きと言うイメージだけで考えるとしくじる。魔女に多い外見詐欺のいい例だな。」

 

怖いねぇ。

彼女の傾向は?

 

「君とは似ている部分がある。

子供の権利を重視しているところか。

庇護すべき相手か否か。

そんな価値観で行動する。

ダンブルドアに賛同しているが、生活者としての視点を重視してもいるか。

子供を搾取し駒とすれば、ダンブルドア相手でも敵にもなろう。

今回のことは、多分詰められる。」

 

知らなかったスタンスしかなくね?

 

「母親と幼馴染である事は知られている。」

 

責任者は校長だし、他寮の子供だよ。

手紙が届かないのはそっちこそ知ってたんだから、スリザリンの寮監先生がフォローしたの逆に感謝じゃない?

 

「理屈ならな。

だが、あの手の女、いやグリフィンドールらしい考え方の人間に理屈はない。

大人になっても、あそこの家庭は典型的な例だ。

おかげで安心して預けられる理由でもある。

他人の子供であろうと、庇護の手は出す。

ただしウィーズリー達を見れば分かるように、細かな情緒のフォローをしているとは言えない。

家長、父親的な立ち回りの人間だと見れば理解しやすいだろうか。

子供の自立心を妨げないとも言える。

放任主義とも言えないのは、苦情と教育的指導には対処しているからだ」

 

他寮なのによく分析、調べたの?

 

「双子のイタズラ被害で苦情を上げているのは私が一番だ」

 

先にハリー君を行かせたのも戦略?

 

「彼女のフィールドでは、こんな話をできまい?」

 

私が行く必要ある?

 

「教師としての私の話と、整合性をとるつもりか。息子たちと関わりのある君を知りたいのだろう。」

 

それは恐ろしいなぁ。

 

「普段通りで良かろう。君は彼女の息子たちに何もしていない。」

 

まーねー

ちょっかいかけてるの、目の前の婚約者だけだしねー

 

と両手をつかんでぶらぶらしたら、彼は考え込んだ。

 

何?

 

「婚約者だと知れる事のリスクを考えていた」

 

思わず笑う。

リスクだ。

倫理の踏み絵だ。

でも、婚約者は免罪符でもあるね。

 

「アーサー・ウィーズリーの情報網の確認にもなる」

 

おぉ、そっちね。

まぁ、おとなしい猫をかぶるよ。

ただし

 

「馬鹿な提案は却下」

 

違うよ、いつも通り私を離さないでね。

と、言って両手をハグの体勢にする。

ほら、姿現し限界チャレンジ。

失神したら起こしてよ?

 

ため息がデフォルトだね。

フッと景色が歪んだ。

 

アガサ・クリスティーの小説でさ、ミス・マープルってしってる?

ポアロじゃなくて、ミス・マープルね。

ドラマシリーズもポアロと同じく、ミス・マープルもあってさ。

イギリスのTVシリーズが有名だったりする。

女優さんは、ベテランの可愛らしい感じの御婦人で、小柄で編み物してる感じ?

おっとりしてる雰囲気の、世話焼き噂好きのおばあちゃんなのに、推理力洞察力がとんでもない。

そんなミス・マープルが暮らす世界ってのは、如何にもな田園風景。

なだらかな丘と畑。

ヘッジ、生け垣ね、それで仕切られた農地。

細い田舎道に家々が点在してる。

見通しはよいけど、ほどよいパーソナル空間が保たれてる。

森には隠れてないけど、霧がでるとすべてがぼんやりとして、美しくて静か。

古い家屋は手入れされてて、放し飼いにされたアヒルちゃんや鶏が闊歩してる。

そんな一昔前の田園風景ね。

 

そいで、姿現しをした先は、そんな緑と傾いた日差しの世界だった。

綺麗だし、静かだし、人の気配が無い。

 

「向こうだ」

 

指し示された森の際に、ちょっとばかりパースの狂った独特の家が見えた。

何階建てなんだろう。

 

「魔法建築物だ、ホグワーツと同じく変化してるだろう」

 

日によって?

 

「日によって。

大家族だ。

内部は拡張しているだろう。

行くぞ。

ここは彼らのエリア判定外だが、すでにマグルよけと隠蔽が効いている。

排除系の魔法は使われていないので、このまま立ち入れるだろう。」

 

防犯的に田舎基準?

 

手を引かれて歩き出す。

ふわっと何かを通り抜ける感覚だ。

 

「今、通り抜けたのは一番外側に展開されている反応陣だろう。

踏み入れると即座に伝わるタイプで、エリアが広大に指定されている。

これはウィーズリー家が、何かあれば命優先で全てを捨てるスタンスだからだ。

防御を固めて籠もるのではなく、逃げ去る備えをしている。」

 

家族が多いから?

 

「そうだ。まとまって固まるのは愚策。

家族を生き延びさせる事を一番にしている。

バラけて逃げられては追う方も迷うし力が分散する。

そうして逃走に全振りされては、なかなかに厄介。

そもそも侵入者判定の基準を厳しくしているだろうから、害意があれば即座にわかるだろうし、家長、あの夫婦はきっと相手が何者かも判別できるだろう」

 

たくましいねぇ。

 

「ここを襲撃するのに二の足をふむのは、あの夫婦が戦闘になれば強いのもあるが、逃げ足も早く無駄足になるからだ。」

 

おっ襲撃者の視点?

 

「ダンブルドアにすれば、警戒を薄くできる場所でもある」

 

えっと、つまりわざと侵入者を呼び込む穴って意味?

 

「本人たちに自覚はなかろうが、中々餌としてはいい。

ここを観察した所で、片方の靴下がみつからないと騒ぐ子供の姿が拝めるぐらいだ。

実際、見られてはならぬ物をさらすほど、ウィーズリーは馬鹿ではない。」

 

死喰い人幹部視点だねぇ。

 

「死喰い人に脳みそはない」

 

およっ、そうなの?

 

「君が以前言っていたように、首魁が駄目になれば、残りは何も考えられぬ烏合の衆だ。社会に適応できぬ者だけが残る。逃げ足の早い知恵の回る者は、そもそも己を死喰い人であると公言はしない。」

 

いつにもましてシニカル増量。

やっぱり、罵られたのが後をひいてるねぇ。

今夜のディナーは、しっかりと食べさせよう。

 

そんな事を考えているうちに、玄関に到着。

呼び鈴を鳴らす前に扉がバタンと音を立てて開いた。

 

「姫〜元気してた〜

ハリーを迎えに行ってくれたんだって?

ありがとう、ありがとう!

俺達もさぁ〜迎えに行っちゃおうって話してたんだよねぇ」

「車、マグルの車をさ改造したのが家にあって、それをチョチョイっとパパがいない間に」

「あ〜ハリーは、今、僕の部屋にいるんだ、マグルの車ってさ、地面を走るんだけど、家のは空を飛ぶんだよ」

「あれで飛んで行けば、すぐだって言ったんだけどさ」

 

奥から、困惑している監督生のお兄ちゃんが、小さく会釈をしていた。

ママはどうやら、ハリー君の世話をしているようだ。

先に、少年たちがわーわーしながら騒ぐ。

 

「それは実行に移さなくてなによりですな。

ごきげんよう、諸君、君たちは訪問者に挨拶もできないのかね?

まぁ君たちに、そんな人間としての礼儀を求めるのは端から無理というものか。

校外故、減点はできないが、君たちの保護者へ注意をする事はできよう。

ロナルド・ウィーズリー、母君に来訪者を伝えたまえ」

 

なぜ、こんなに存在感がある相手を無視できるのかなー

いつも通りの感じに脱力する。

程なくママが降りてきて、子どもたちを居間から散らした。

招き入れられ、辺りを見回す。

とても素敵だ。

室内は、とても明るくてごちゃっとしているね。

それも楽しい感じにね。

窓から見える景色も、明るくて畑とかも見える。

夏を過ごすには楽しいだろうと、見るからに思える。

あのフライパンの人の片付いた家とは大違いだ。

良い悪いじゃなく、子供が夏を楽しめる、屈託のない一日を、過ごせるだろう雰囲気。

わかるかな?

ウィーズリー家の男の子達の明るさや元気の良さの原点が詰まってるね。

 

お茶を待つ間、手伝うのも変だからおとなしくする。と、握られている指に少し力がこもる。

彼は他所を見ながら。

 

何?

 

「君は」

 

黙るなよ、最後まで言ってよ。

無駄にシリアスだなぁ。

言いたいことはわかるけどね。

私は子供でいようとは思っていない。

そもそもが無理。

 

「すまない」

 

謝るねい!

私は、普通にはなれない。

普通、それってなんだ?

真夏の雪だるま、だしね〜

 

羨んではいない。

十分、楽しい。

それは貴方がいるからさ。

妙な具合の巡り合わせ、貴方にはトラブルの嵐だが、私は楽しい。

 

「Really?」

 

 

I swear.

 

さらに言えばだ。

貴方の側だから楽しいんだよね。

ホグワーツではないよ、私を知ってる、私のトラブルだらけの人生を知る貴方の側だ

 

もしかして、ダーリンは聖人様なの?

悟りを開けるんじゃね?

 

指が緩む。

 

お茶の用意ができたようで、並べられるのを眺めながら、さてと気持ちを引き締めた。

 

「お嬢さんとは、初めてよね。

息子たちから話は聞いてるわ。モリーよ、よろしくね」

 

よろしくと握手。

距離感は普通だね。

じっと見つめられる。

 

「単刀直入に聞くわね。

ハリー君の事でも判断を誤ったから。

貴女は今の生活に不自由は無いかしら?

問題があるようなら、言ってほしいの。

無理強いや、大人の都合で困っていることは無い?

言いにくいなら、彼には席を外してもらうわ」

 

おぉ、なるほど、そう来たか。

裏表なく受け取れば、この人の価値観は母親らしく見えるが、相手の判断を重んじる分、やはり少し違う。

裏表の裏を考えると、怖いなぁ。

裏がなくても怖いけど。

女性だから声を出すかと思ったが、止める。

 

私は自由を与えてもらっています。

校長や先生の庇護のおかげで、恐ろしい目にもあわず、楽しく学べています。

どうか、ハリー君に家族、家庭、夏休みの楽しさを教えてあげてください。

 

と、真面目に書いて渡す。

 

「……貴女は楽しい?」

 

今朝、ダンブルドア校長のおヒゲにリボンをつけてあげました。

 

「あらまぁ」

 

「手遅れだったか」

 

そんな感じで、尋問じゃなくてお話し合いが始まった。

 

 

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