おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ、秘密の部屋編。

ハリー君回。
ヒゲ、ハリー君に見限られる。
しょうがないので、アオイはもっとかまってあげる事にした。
理想のアップルパイを作れるまでチャレンジだっ!
大丈夫、小さいの毎日焼いて、完璧に仕上がったらダーリンに食べさせるにょ〜
なんぞという夏休みの裏。
キャプションは本文とは関係ないですぞ!


AVB、或いは静かなる丘と秘密の部屋 ⑤

「お姫様が、お姫様だった。」

「もう、恥ずかしがって隠れないのかよぅ」

「お姫様みたら、色々、何か飛んだ。

知ってる、あのワンピース、月刊マジカル・ガール(少女オシャレ雑誌)で載ってたデザインよ。

でもモデルより綺麗っていうか、私も欲しい!

型紙取り寄せなきゃ、色違いにしようかな?

マグルファッション寄りだけど、大人っぽくて上品だって、ママも言ってたから、オッケーよね?

あとリング、可愛いエナメルの奴、ステキステキステキ……」

「え〜ちんちくりんが着たら悲惨じゃぁん」

「……シネ」

「ロン、蹴られないとわからないとか、馬鹿だと思うよ。」

「うちのお姫様だって可愛いだろう」

 

パーシー達の仲裁にロンは舌を出し、それを見た妹に更に膝裏を蹴られて転がる。

スネを蹴ってからの膝裏蹴りだ。

中々に鋭い攻撃である。

さすが男兄弟の末っ子だ、容赦がない。

それに妹に反撃しないロンはエライ。

と、ハリーは思う。

 

「ちがうよ、それやったらフレッドとジョージ、それにパーシーとパパにゲンコツフルコースだぞ。頭の形がかわっちゃうよぅ。それに大きな兄さんたちの耳に入ったら、きっと来年は畑に植えられてるかも」

 

仲がいーなー

と、ハリーは、ぼんやりと眺めた。

もう、こののんびりとした空気だけで、彼は涙が出そうである。

まぁ泣かないけど。

 

「だからさぁ少しぐらい夢を見たって良いと思わない?」

「何の話?」

 

テラス・デッキに並ぶ鉢植えの側でゴロゴロしながら、ロンは口を尖らせている。

 

「美人の話だよ。どうしてスリザリンで、どうしてあんなオッサンがいいんだよぅ」

 

呆れた双子の片割れ、ジョージの方が笑った。

最近、区別がついてきた。

ちょっとばかり笑い方とか微妙に違うのだ。

 

「だってさ、ハリー。

美女は妹の人見知り成分もぶっ壊すし、末っ子は現実を拒否するそうな。」

「だからって見て良い夢でもねーだろ?

弟よ、アレは狙っちゃならん女の子だ。わかるだろう?」

 

フレッドも呆れたように末の弟に目を向けた。

 

「そりゃぁわかってるよ、ただ、スネイプだよ、おかしいだろ?」

 

その会話に、ハリーも思わず笑う。

夕焼けの裏庭で、皆でジュースを飲んでいた。

黒衣の男とアオイは帰った後だ。

 

ジニーに蹴られたスネを擦りながら、ロンがデッキでゴロゴロと転がる。

平和である。

学校なら、ハーマイオニーに蹴られているだろう。

そんなロンのうっかりが、ハリーは好きだった。

彼は底意地の悪いダドリーとは違って、ちょっとうっかりなだけで、イイ奴である。

そう、昼間の出来事は既に遠い。

自分でも思うより、心が落ち着いていた。

だから、つい素直に言葉にしていた。

 

「ロン、忘れてるけど、彼女はスリザリンだよ」

「それなー」

「そしてね、彼女はいい意味でスリザリンだったよ。」

「どういう事だいハリー?」

 

自分の生活を言葉にするのは恥ずかしいと思っていた。

今までだったら濁していた。

聞かれないことに安堵していた。

けど、今となっては、何もかもどうでもいいような事に思えた。

 

だって彼らは、今もこれからも、ちっとも幸せじゃないのだ。

 

どうしてそんな意地の悪い考え方をするんだい、ハリー・ポッター?

そんな悪い考えをもつなんて、君は普通じゃないんだね。

 

ハリーが原因で、彼らは酷い目にあった。

ハリーがいるから、何もかもうまく行かない。

ハリーは普通じゃないから。

 

生き残った男の子

魔法界では有名だけど、親戚の家では問題児。

 

でも、それが単なる八つ当たりで、ハリー自身が良い子のマグルでも同じ扱いだったら?

さらに言えば、ハリーがいなくたって変わらないとしたら?

 

少しだけ、世の中が見えたような気がした。

彼らは弱い人達で、自分は彼らほど弱くはない。

 

曲がらなかった君は、立派で勇気がある。

 

そうだったら良いな。

 

誰かが不幸でなければ、幸せを感じられないほど惨めではないつもりだ。

なぜ、自分に辛く当たるのか。

ハリーが不幸なら、彼らは幸福なのか?

 

彼女いわく、彼らは選んで不幸らしい。

 

たとえ自分がいなくなっても、変わらない。

だったら気にする必要はないし、弱い人間から何も与えられる必要はない。

愛や優しさを乞う心を、嘲笑うような輩の正しさに、何をおもねるというのだ。

 

そう、アオイは実にスリザリンだ。

 

ハリーは自分もスリザリンにむいていると言われた事を思い出していた。

帽子は、スリザリンの素質ありだと。

 

弱い者に構う必要はあるのか?

不幸を数えて満足しているような輩を、どうして気にするんだ?

 

マルフォイが同じ意味の事を漏らしたら、意地悪で嫌味な奴だと思う。

 

スリザリン的?

そう、違いは少しだけ。

割り切り方だろうか?

 

ハリー、物真似鳥に話しかけたって、ジョークの意味は理解できないんだぞ?

 

もちろんそんな言葉を彼女は吐いていない。

脳内で想像する小さな猿が可愛らしく喋っているだけだ。

スネイプもきっと美人のビジュアルを脳内で変化させてるんじゃないかな。

そうしないとギャップで頭痛がしてくるからだ。

 

彼女の言葉は、意味がわかると容赦がないものだ。けれどハリーには受け入れやすかった。

ヒヤリとする冷たさは、スリザリンの他の生徒と同じでも、だ。

 

意地悪ではない、強さ、だ。

 

彼女の考え。

馬鹿にしているどころか、ペチュニアとその家族を憐れんでいた。

マグルだからではない。

別種の生き物と競う必要はないと思ってるみたいだった。

対等な人間だとは欠片も思っていない。

見下すのとは、微妙に違う。

それは同じ人間同士の話だ。

もっと酷いとも言える。

怖いほど、線引きがされて。

そう、存在は認めるけど、価値を認めない。

ならばお互い不干渉。

他者の評価を、必要としない強さと傲慢さ、それは悪い意味ばかりには思えなかった。

殴りつけてくる相手の美点を探すよりも、真っ当に思えた。

 

そして似た考え方をする人を知っている。

 

気がついてしまった。

ハリーは気がついて、身震いをした。

 

助けてもらえないのが、当たり前だったから。

優しくしてもらったような気がして、考えもしなかったけれど。

答えがあるのに、正解は教えてもらえない。

口をつぐんでいるのはハリーのためだとしてもだ。

両親の事を一番知ってるのは、彼だ。

ダーズリーにハリーを……

突き詰めると怖い真実に行き当たりそうで、ハリーは考えるのを止めた。

今は、彼女の話だ。

 

「言葉にするのが難しいんだけどさ」

 

今日はハリーを迎えた初日だ。

子ども同士で固まり、ハリーの話を皆、聞きたがっていた。

 

モリーは濁したが、マグルの親戚は最悪だったらしい、と子供たちにも説明がなされた。

ハーマイオニーにも連絡がいって、他にもハリーに出された手紙やカードが全て行方不明だという。

それでもハリーが無事なら、まぁめでたしだ。

 

ロンのスネを蹴ったジニーは、モリーに呼ばれて室内に入っていった。

どうも歓迎のご馳走が出るらしい。

ジニーに料理の手伝いの指令がでたようだ。

普段は兄弟たちもお手伝いするんだろうけど、ハリーの接待、まぁ邪魔だから固まってろ、と、指令がでていた。

もちろんハリーも、明日からは手伝うつもりだが、今日はお客様でいるように、こちらも指令が出ていた。

 

「順を追って話したほうがいいのかなぁ。」

「ハリー、戻らなくていいんだよな?」

「先生が言うには、もう、戻らなくていいらしい。

ホグワーツを卒業できれば、魔法界で職も得られるだろうし、合わないようなら、マグルの大学で学び直す事もできるだろうって。」

「スネイプが、そんなマトモな事を君に?」

 

ロンの反応を見て、少しばかりアオイの気持ちがわかった。

自分と仲の良い人を悪く言われるのは、寂しいし悲しい。

少なくとも感謝すべき相手だと、ハリーは今日、考えを改めてもいた。

セブルス・スネイプは、嫌なやつだけど、感謝すべき人だった。

どんなに嫌味で喧嘩腰の男でもだ。

そう大人気なくて嫌味で、意地悪でもだ。

あれ、感謝する気持ちが消えちゃいそうだ?

そんなふざけた気分になるくらい、今日は感謝をしていた。

明日はわからないけど。

 

と、ハリーは思いながら親友に、浮かんだ事をできるかぎり伝える事にした。

アオイが気にしていた抗魔力攻撃で、判断力が激鈍りになってる親友に。

 

「ロン、今日だけでも僕は、スネイプに感謝してるんだ。

そして君たちにも感謝してる。

だからこれは、余計な話だってわかってるけど言っておくよ。」

「おっおぅ」

「ドヴワティーヌさんはね、スネイプを悪く言われるのは嫌なんだよ。

許しているけど、嫌なんだ。

ロンも皆も嫌う理由があるのは知ってるけど、彼女はね、それでも多めに見て欲しいってさ。

きっと彼女は自分のせいで、更に悪く言われてないか気にしてるんだ。

彼女がふざけた事をするのも、きっとそれも理由の一つだと思うんだ。

ジョークにしてねって。

だからね、彼女のかわりにさ、今日は僕も、感謝も兼ねて言っておこうかなって。」

 

ハリーの言葉の調子に、皆、注意を向けた。

パーシーはちょっと不思議そうである。

彼はアオイとあまり接点が無い。

 

「彼女が変わってるのは知ってる。

スネイプ教授と仲が良くて、まぁ事情がある事もね。大方は誰も本気で悪く言ってないよ。

むしろスリザリン的では無い彼女のおかげで、最近は評判も良いと思うけど?」

「それな〜」

 

その意見に、ハリーも真面目に頷いた。

 

「ロンが言う、嫌味な奴らとも違うけど。

でもね、今日は改めて、スリザリンだなぁって思ったんだよ。」

 

「どんな所がだい?」

 

「今日、僕が連れ出された時だよ。」

 

「叔母さん家から、だよね」

 

「うん。

今日はさ、朝からずっと雑用をしてたんだ。

ご飯を抜きにされるのも、面倒くさい話をされるのも嫌だからさ。

ずっと黙って働いてたんだ。

サボってもいなかったんだけど。

それが気に入らなかったらしくて、従兄弟のさ、嫌な奴がずっと隣りで囃し立ててるんだ。

で、暑いし最悪だし、もう魔法を使いたいな〜なんてね。

考えながら顔を上げたらさ、目の前に先生がいるんだよ。

それもスネイプ、暑さで病気になったのかと思ったよ。」

 

「最悪だなぁ」

 

「先生が僕の生活にいるなんて、想像もできない事だった。呆然としちゃうだろ。

さらに言えば、先生の姿は生け垣が遮ってて、豚みたいに喚いてる従兄弟からは見えないんだよ。

沈黙したまま見つめ合ってさ、BGMが豚の鳴き声なんだよ」

 

「そいつも暇だなぁ」

 

「ふふっ、考えてみるとそうだよね。

僕が生け垣を刈ってる間中、となりでわーわー言ってるんだ。

さぼってるって伯母さんに嘘つくしさ。

キレた伯母さんに物を投げられて、しゃがんで避けたんだよ。

あれはマズかった。」

 

「まてまて、ちょっとまて。何か変な単語、はいってたぞ?」

「サラッと言ったが、ハリーの伯母さんは何処にいたんだよ?」

 

双子が思わず声をあげた。

それにハリーは何を驚かれたのかわからず、首を傾げた。

 

「前庭が芝生で道路に面しててさ、僕は生け垣をカットしてたんだ。

僕より後ろ、生け垣の影で豚がアイス食べながらず〜っと喚いてて、直ぐ側の窓が台所。

洗い物してた伯母さんが、手に持ってた奴を投げつけてきたんだ。

ちょうど背後からだったから、慣れでしゃがんだけど、コース的に危うかったね。」

 

「バイオレンスすぎるだろう」

「予想以上だな、ハリー、よく生きてたなぁ」

「ずっと家にいなよ」

 

「ありがとう。

それでも直接的な暴力は減ってたんだよ。

殴ったり蹴られたりは、見えない所だけだしさ。」

 

「これは重症だなぁ」

「ロン、お前がしっかりしとけよ?」

「うん、あ〜うん、ちょっと整理する、っていうか、本当に僕んちにずっといなよぅ」

 

「ははは〜大丈夫、もう、戻らないしね。

それに最近は言葉だけだったよ。

今日が特別、だったのもある。」

 

「誕生日、おめでとう。いっぱい遊ぼうな、ハリー」

 

口々に祝いの言葉をもらう。

ハリーはちょっとばかり恥ずかしくなったが、素直に言葉を受け取った。

 

「ありがとう。

でも残念ながら、ダーズリー達は僕を笑い者にするだけだ。

彼らにとって特別だったのは、あの家にお客が来るから、マグルのね。

それでピリピリしてたんだよ。

避けるのも逃げるのも慣れてるから、それは最悪でも、まだマシ。

酷いのは、それを見て先生がさ、黙って掴んだ事のほうさ。」

 

「いやいや、突っ込め、誰か突っ込め」

「もしかして、投げつけられた物をスネイプが掴んだ?」

「驚いてたよ。咄嗟に掴んじゃったみたいだね」

「何を投げられたんだ?言いたくなかったら」

 

「フライパン。ドヴワティーヌさんは鈍器って言ってた」

 

「それ、まずいどころじゃないだろ」

 

「いつもは見える所を殴ったり怪我させたりはしてこないよ」

 

「うん、スネイプに感謝する日が来るとは」

 

びっくりしているウィーズリー兄弟達の顔を見て気がつく。

ハリーは、相手の要求ばかりに振り回されていた。

あの家にいる事が正しい。

帰るべきで、それが僕の為。

肯定されないと不安だった。

卑屈で卑しい気持ちを持つことが恥ずかしかった。

だが、今は知られてもよかった。

友達や心配してくれる人たちは、味方だと信じられたし、正しい答えを求めてくる事は無い。

だから、今日感じたこと、考えたことをやっぱり伝えたかった。

 

「ロン、アイツは嫌味で陰険かもしれないけど先生だったよ。

彼女が繰り返し訴えていた通りだったよ。

嫌いな僕の事も、連絡がつかないからって見に来てくれた。

今思うとおかしな話だよね。

先生も困惑してた。

ちょっと見に来たら、僕は、馬鹿みたいに突っ立ってるし。

何でか伯母さんの方が、被害者みたいに、喚くしさ。

おまけに、スネイプ、先生の手にはさ、泡だらけのフライパンがあるんだ。笑えるだろ?」

 

聞いていた双子は、口元だけで笑った。

ロンは、頭を掻いた。

パーシーは考え込むように、外を眺めた。

自分が一番、歳上なのに、どんな言葉をかければいいのかわからなかった。

他者に認められる事を喜びとするタイプには、養い親に罵られる状況は、考えるまでもなく地獄に思えた。

 

「想像できた?

生け垣の向こうがわで、フライパンをもってる先生。

こっち側で刈り込み鋏をもった僕。

となりで喚く豚に、台所から飛び出してきた伯母さんだ。

近所中に響き渡るような絶叫と一緒に、伯母さんが罵るんだ。

ちょっとしたイベントばりの声の響きだったよ。

先生は、困惑して考え込んでてさ。僕は暑いし酷いしぼーっとしちゃったんだ。

そんな中で、救世主登場さ」

 

「何をしたの?」

 

「何もしてないよ。

突然現れてさ、ごきげんようって挨拶だけさ。」

 

「それだけ?」

 

「そうだよ。それだけ。

いつも通り、笑顔で優雅に挨拶をしてね。

伯母さんを見つめると、キラキラした目で笑うんだ。大丈夫よって」

 

「君にじゃなくて?」

 

「そう。わかるかい?

僕はわからなかった。

だから後で意味を聞いたんだ。

彼女は、まるで伯母さんを憐れんでいるかのようだったから。

まぁ今も、全部は理解できてないけどね。」

 

「その、僕もわからないなぁ」

 

それが普通だ。

普通じゃないのは彼女の方なのだ。

 

「でも、何だか思ったんだ。

誰の顔色も気にしてないのは想像できるでしょ?

ヒステリーおこしてさ、フライパンを窓から投げつけてくる伯母さんにさ。

大丈夫よって、笑顔もこう、大変ねって」

 

「何でそれがスリザリン的なの、ハリー」

 

ロンは眉を寄せて腕を組んだ。

だがそんな弟とは違い、双子はそれなりに想像がついたようだった。

 

「そいつぁ、すげぇや」

「フレッド、どういう意味?」

「他にはどんな事を言ってた?」

「正しい人は、弱いって」

「どういう事?」

「僕もあまりわからなかったけど、話を聞いて、何ていうんだろう」

 

「シニカルでジャッジが早いって事だろう?」

 

ジョージは肩を竦めた。

 

「それもあるね」

 

「ジョージに同意。

その正しいってのはさ。

大声だして自分の意見を押し付ける奴って事かな。

わかり合おうってスタンスが欠片もない。そういう正しさって事だろ?」

 

フレッドの言葉に、ロンが首を捻った。

 

「正しい事の何が悪いんだよ?彼女、変な事言うね」

 

「ロン、姫はな、見た目を裏切るニヒリズムとリベラルの超個人主義者だと俺達は見てる。

そういう人に求めるレベルが高いって自覚ももってる。

天才型の人間だけど空気が読めるって奴さ。

だから大凡の、下々を許してくれる。

その大丈夫だってのも、許してくださってるわけ。

つまり超絶皮肉だ、違うかな?」

 

「うん、僕に謝ってくれたよ。

言葉のチョイスを間違ったねって。

彼女が投げた言葉、大丈夫の先は、こんな感じだった。

誰かの所為にしなくても大丈夫、貴女の苦しみは貴女のモノよ。って。

暑さと訳のわからない事に、ぼんやりしちゃって聞き漏らしてたけどね」

 

「あ〜組み立てが逆って奴か。そりゃぁスリザリンだなぁ。

元から地獄にいるんだから、そのままご自分だけで楽しんでねって奴ね」

「本当に正しい人なら、大丈夫よね。かもよ、兄貴。スリザリン的王様思考だね、そりゃ怖い。」

 

「王様的?」

 

シニカルな彼女の想像がつかない弟に、双子が笑った。

 

「お姫様じゃなくて王様だって考えてみろよ。

例えばマルフォイみたいな奴ならさ。

不平不満だけの使用人を雇い続けるような輩じゃないだろ?

料理を焦がしても、フライパンの所為にするようなさ」

 

「それ、マルフォイだからじゃん」

 

「思考的には、それほどかけ離れてないって事をハリーは言ってるのさ。

可哀想に弱いのね、大丈夫、弱いままでいたいのよね。

じゃぁもう関わらないわ。

私も忘れてあげるって優しい感じだけどね。」

 

「いや、それ、なに?」

「あぁそうかも。

彼女は、変な話だけどさ、喧嘩にもならないんじゃないかな。

いろいろ許してくれるけど、見放されたら終わり?

伯母さんを憐れんでたけど、それ以上は興味が無さそうだった。」

 

「それがスリザリン的?」

 

「うん、本当なら、ちょっと嫌に感じるかもなんだけど。

何だか、僕も可哀想かもって思えたら。

気持ちが少し楽になった感じ?」

 

「ハリー」

 

「ちょっと話がずれたけど、彼女は黙ってしまった伯母さん達を不思議がってた。

僕やスネイプからしたら、当たり前でさ。

聞かれたスネイプが言うんだ。

無表情で、言い回しは同じじゃないけど、こんな風に。

君は自分が、とんでもない美人の部類だという事を失念してる。

自分にとっては野生の猿で意味は無いが、って感じの言葉、だったかな?」

 

「酷すぎ」

「いや、猿かぁ」

 

「これにも先があるんだ。

うんとね、君は美人の部類だが、自分にとっては野生の猿以下だ。

だが、彼らにとっては、真夏に歩く雪だるまだって。」

 

「真夏の雪だるま!」

「冗談だよな、それ」

「うん、冗談だと思うよ。

スネイプなりの、ありがとうだと思う。」

「意味不明なのは僕だけ?」

「スリザリン的な会話になるのかな?」

「いや、それほどでもないけど、多分、姫は喋らせたら普通にシニカルだし、冗談もだいぶキツめだろ」

「見かけで騙されるからなぁ」

「それも言ってたよ。

自分の外側は、呪いみたいなものだって。

だから、あまり彼女の外見にうっとりしちゃう人も、馬鹿にしてる節があるのかな」

 

それに双子は納得したように頷いた。

 

「末っ子は気がついてないが、彼女は頭の回転が早いどころか、天才型だぞ。

勉強関連は、手抜きしてる。

彼女の中身を褒めたほうが、好感度は上がるぞ。

歌を褒めてもいいさ。

思いやりや気配りでもいい。

まちがっても顔や体を評価するなよ、綺麗だといって許されるのは、前段階で君の中身が素晴らしいって持ち上げないと。これ、どの女の子でも共通な」

「その割に、付き合おうって子と長続きしないよな、お前ら」

「監督生は真面目だよな〜俺達は、いろいろと可能性を追求してるのさ〜」

「わかった女子監督生に言っておくわ。新入生にも伝わるだろう」

「パーシーゴメン、許して」

「まぁふざけた話は置いといてだ。

シビアな話になるが、スネイプはガチで彼女を気に入っている。

つまり会話が噛み合うんだ。

馬鹿が嫌いな、あの嫌味野郎とだ。

ただのお人形なら、適当に箱に詰めて飾っておくだけだ。」

「まぁロンからすれば、美人だから贔屓してるってなるんだろうが。その贔屓も美人やら何やらだけなら、俺達も面白がらないんだよ」

「フレッドもジョージもたちが悪いよね」

「それは褒め言葉だ、ハリー!」

「でもきっとそうなんだろうね。

今日の、あの、時間。

最悪だった。

けど、助かったんだよね、場の空気をぶっ壊してくれてさ。

きっとスネイプも。

伯母さんもかな。

本当に、助かったんだ。

最悪なのはさ、聞きたくないこと、言いたくないことをさ、あの場所でぶちまけちゃう事だった。

なら、可哀想ねってさ、終わりにしてもらったほうが、最悪じゃないって。

伯母さんから、両親の話、それも悪い話を聞かずにすんだなぁって。

スネイプだってそうだよ。

伯母さんの罵りを聞いてたけど、先生も言い返さなかった。」

 

「ひどい一日だったんだな」

 

「そうでもないよ、こうして皆の所に来られた。

パーラーでアイスとかも食べたよ。

彼女もさ、楽しい夏になるよって断言して、そう、ロン。

彼女はね、真夏の雪だるまなんだ。」

 

「びっくり美人?わかってるよ、たださぁ、あのスネイプが側にいるのがさぁ」

 

「言いたいことはわかるよ。

でも、他に誰がいるんだろうってね」

 

「他?」

 

「だって、誰が彼女を守るんだい?

スリザリンのお姫様じゃなくて、王様なんだよ。

きっとね、王子様なんて彼女はいらないんだよ。

考えてご覧よ、白い歯をした王子だって、君はどうせ気に食わないんだろ?」

 

「うん、まぁそうだけどね。あれでマルフォイが付き合うとか聞いたら、奴に呪いをかけるね」

「きっと股下が短くなる奴だな」

「顎が更に尖るのも良いぞ」

「冗談にしてくれよな、弟ども」

「わかってるって、でも誰も彼女と付き合いたいなんて考えないのは、これが理由だろ?」

 

ジョージの言葉に、ハリーは頷く。

 

「考えてよ、彼女はそんな皆の考えを想像できない人かな?

それに彼女の現実はさ、ダーズリーにいた僕より、怖いと思わないかい?

実際さ、彼女の叔母さんはさ、行方不明だ。

彼女は付き添いがなければ、どこにも行けないんだ。

さっきはふざけて茶化したけど、彼女はね、ホグワーツのご飯以外は、毒見をしてもらわないと食べられないんだ。

スネイプは直接食べなくても、常に彼女が何を口にしているか見てるんだってさ。」

「あぁそれもあるんだなぁ」

「フレッド、何が?」

「ロン、スネイプの専門は薬学で、毒薬のエキスパートだ。彼女が毒をもられても対処できる」

 

それにロンは、へにょっと眉を下げた。

優しい彼は、妹や母親を大切にする良い息子でもある。

女性が怖い目にあうなんて、考えるのも嫌だろう。

 

「こうして僕をあずかってくれる君達と知り合えて、僕は幸せだ。

すくなくとも伯母さん達家族より、ずっと幸運で幸せだよ。

じゃぁ彼女はどうかな?

ロン、彼女はさ、キラキラのお姫様に見えるけど、実際は、僕とかわらないんだ。」

 

追い打ちをかけられた親友は、目が泳ぎ始めていた。

 

「パパとママがいない。

違うのはスクイブの優しい叔母さんが面倒を見てくれてた。

でも、その叔母さんはいない。

彼女はとっても有名で、とっても綺麗だ。

でも、一人ぼっちの子供なんだ。

それは幸せなお姫様のお話かな?

彼女がどうして先生の手を握るのか、君のお兄さん達は理由を言ったでしょ。

どんなに僕達とは反りが合わなくても、きっと彼女には大切な安全地帯なんだよ。

だって、あの嫌味で陰険で、何を考えているかわからない大人の男が側にいれば、彼女は暴力を振るわれたり、誘拐されたり、害虫に付け回される事もないんだ。

安心して、ご飯をたべて、ゆっくりと眠れる。」

 

「その安全地帯が問題でも?」

「フライパンは掴んでくれたよ。おかげで僕の頭は二つにならなかった」

「おわぁ〜」

 

奇声をあげてロンがデッキに転がった。

ジニーに蹴られた時よりも、衝撃があったようだ。

 

アオイの前でだけでも、スネイプをこき下ろすのをやめるといいな~と、ハリーは笑った。

そんなノックアウトされた弟を兄弟も笑う。

 

「ロンの意見もわかるんだよ。はたしてアレが安全地帯と言えるのか?」

「結局は姫が許すか許さないか。モテ力って奴が答えなんだよなぁ」

 

「冗談なんでしょ?」

 

「実はさ、俺達も奴に助けられた事がある。だから、どんな人間か知りたいと思ったんだ。」

 

「ホグワーツにいる男を対象とした好感度調査。

これをしたの。

ハンサムランキングは勝手に結果できちゃっただけ。

生徒側から見た、男子生徒じゃなくて、男性職員の評判が知りたかったんだよ。

簡易アンケートは男子生徒にしてあったけど、自由欄は、どっちかっていうと潜在的な考えをさぐる感じで、ある程度答えを絞ったんだ。

こんなふうにね、尊敬できる人、信頼できる人、もしくはその逆をどうぞってね。

そもそも害虫騒ぎもあったし、マクゴナガル先生とかがさ、女生徒の言えない本音ってのを調べるのを許可してくれたんだよね。

そうじゃなかったら、大々的にはできないだろ?」

 

「もしかして、フレッドとジョージなら内緒話をするだろうって先生方が?」

 

「女の、先生方さ。

だから集計結果は、マクゴナガル先生に渡してあるよ。

元のアンケートは残ってるから、休み明けに結果も公表するつもり。

悪いランキングは公表しないから安心しろよ。先生方に怒られるからさ。」

 

「で、ホントのホントのとこな。

スネイプの好感度は、実は本当に高いんだ。

高学年の卒業を控える年齢の女子が特に感謝してる。

進路科目のフォローが充実してるって意味でな。

性格とかその他の話じゃない。

それに女生徒に対してフラットで、厭らしいアプローチや冗談を言わないってのが高得点。

ロンが望む結果とは真逆だ。

それからスリザリンにもいちおう配ろうとしたら、ストップがかかった。

彼らの親や血縁者がホグワーツ理事や人事に関係してるからね、お遊びでもまずいだろうって」

 

「何がまずいの?」

 

「それぞれの家の考え方として捉えられると問題になるからって。まぁ妥当だ。人事権のある家庭の子供って訳さ。スリザリンの特色がでているよな」

 

「面倒くさいなぁ」

 

「そうとも言えるし、家業を継ぐ子供が多いってことだ」

 

「そういう考え方なんだね」

 

「ハリー、君は辛い経験をしたけど、その分、すげぇ人間観察力を持っている。

姫と黒衣の不審者についての考え方は、実に的確だと思うぜ。

我ら悪戯仕掛人の仲間にふさわしいと認めよう。」

 

「いいよ、何か君たちのママとか先生に怒られるグループっぽいし」

 

「するどいねぇ。そんなハリーに内緒話だ。」

 

「パーシー先輩に丸聞こえだけど」

 

「僕の栄光の道に関係なければ、いいよ。

なにしろ僕は、彼女がいるからって、毎度毎度からかわれるしね。

注意したら彼女に迷惑がいきそうだ。」

 

「栄光の道と言い切るパーシーが俺達は好きだぜぃ。それからロンも聞いておけよ」

 

「何、僕を巻き込まないでよね。だいたいが僕が怒られるんだよぅ」

 

「いつもノリノリのくせに何言ってるんだ。

というか、俺達は、悪戯グッズを開発しつつ、これからも人間に焦点を当てていくつもりだ。

意識調査もその一環ね。」

 

「卒業後の進路の話だよ、フレッドと俺は、ちょっとした悪戯グッズを扱う店をやろうか、なんて考えてた。だが、それも面白いが、あることに気がついたんだ。」

 

「あること?」

 

「人間について俺達は知りたいんだ。」

 

「えっと、学問的に?」

 

「まぁそれもあるけど、人間の関係性や社会の中で何がおきているのかを調べるって感じだ。

つまり今回のメンズのアンケートもその一環。

新聞記者みたいな仕事とは違う、調査専門って奴。

役所の法規制側の取り締まり調査とは別だな。

リサーチを専門にして情報を売るかな。

例えば、さっき妹が言ってた、はやりのファッションとかね。

グッズ開発の需要リサーチが軸だけど、それにあわせて魔法族全体の一般的なニーズとか意識の調査をするのは、面白いかなってね。」

 

「役所にお伺いを立てながらだけど、小さく店をひらきつつ、資金繰りの方向はそっちのリサーチ会社で稼ごうかって」

 

「すごいね、今からもう卒業の事、考えてるんだね」

 

「ぼんやりとでいいから考えておいたほうがいい。

選択科目がでてくるからね。

僕は魔法省官僚をめざしてるよ。」

 

パーシーの言葉に、双子はうんうんと頷く。

 

「これで魔法省へのツテの予定が一つできた。

ホグワーツでの人脈ってのは大切だ。

だから、スリザリンでさえ、ほどよい距離感を保っておいて損はない。

ハリーたちは幸運なんだぜ。

あの姫がいれば、おおよその取っ掛かりができているようなものだ。」

 

「スリザリンはな〜別に、僕はいいよぅ」

 

ハリーは双子が何を言いたいのかわかったが、親友は兄達の言葉の裏が読めなかったようだ。

それでもそんな軽口のあと、補足が続いた。

双子が単なる興味だけで事業を考えているわけではない、という話だ。

未成年の子供だとしても、ウィーズリー家としては、商売を始めるべき時期なんじゃないか?

という。

つまり、金を稼ぐ方向で準備しないとヤバメ。

 

親の受け売りをそのまま飲み込んでしまうのが子供だが、その親でさえ、口にだしている事が本当とは限らない。流動的であり小さな社会である魔法界にて、対立構造を残す事のリスクは、安定に向かえば向かうほど浮いてしまう。

ウィーズリーは既に浮き、流されつつある。

もし、魔法省再編の動きが出て、帝王復活があり得ないと判断された時、父親は閑職から戻されるかもしれない。つまり、正論を垂れ流して馘首になるか、それとも中庸を選ぶかでウィーズリー家の生活も様変わりするかもしれない。

もちろん、父親は正しいが、それだけでは食っていけない現実がある。

 

双子は特権階級は悪という理論を盲目的に流し込まれるまま信じるほど、物知らずではない。

 

そしてハリーも、正しさだけの話を鵜呑みにするほど信じきれない。

 

実際助けてくれたのは、スリザリンの生徒と寮監だ。

そして自分は子供で、そんな子供に意味不明のゲームをさせる大人は、ちょっと嫌である。

もちろん、校長は一人の生徒に注意を払ってもいられないだろう。

たとえ、押し付けられたと毎度毎度伯母がどなる相手が、ダンブルドアでもだ。

うん、きっと何か理由があるんだろう。

けれど問題を知らせずに、答えを望まれるゲームには参加したくない。

 

あの賢者の石で学んだ。

自分は普通の子供で、特別ではない。

大人が言うことは鵜呑みにしちゃだめ。

 

特に、立派な大人が丸ごと正解であると信じるのもだ。

 

例えば、

 

彼女と自分が逆の立場だったら?

タラレバは無駄?

だが比較は隠されていた事実を指し示す場合もある。

 

例えば、アオイに向かっては、ハリーにするような扱いをしない。

と、いうか、誰もできない。

 

ダーズリーでもだ。

美しい赤子に、あの家庭は崩壊していたはずだ。

たぶん、財産全部を彼女に捧げて、変な宗教みたいになっていたか、管理下に置かれて下僕と化しているかも知れない。

 

それかスネイプのように振り回されて、それなりに皆幸せかも。

そこまで想像すると、ちょっと気が抜ける。

 

故に双子の考え、未来設計は悪くない。

簡単に言えば、現実的にスリザリンを排除したくてもできないし、そもそも何故対立しているのか、である。

皆親戚、小さな世界が魔法族だ。

 

半純血やマグル出身の魔法族を擁護し、スクイブやマグルとも手を取り合える社会?

 

純血を排除し叩いた上で。

 

校長の望む理想は、グリフィンドール的な行動に見えない。むしろスリザリン的な思考と何が違うのだろうか?

 

私欲ではないから?

校長こそスリザリンみたいだと思った。

でも、もうダーズリーの家には戻らない。

 

きっと校長はもう、期待をしてこない。

何となくわかる。

不安な気持ちもあるが、そもそもハリーは魔法族、魔法そのものの不思議な世界に、父や母の世界を知りたくてホグワーツに来た訳である。

 

すこし勘違いしてたよね?

自分が特別だとか、恥ずかしいな。

と、彼は思った。

 

そうすると、自分に何ができるか考えれば、自ずと答えは簡単だ。

スネイプが言ったように、勉強して将来につなげるだけだ。

父や母のことも追々、彼に聞いても良いのだ。

 

「でも、闇の魔法使いはスリザリンの」

「それも、あんまり正確じゃないぞ。

記録的には、犯罪者の傾向はまんべんなくどの寮からもでてる。

グリフィンドールでさえ、裏切り者やアズカバン行きの人間は出てる。

純血云々で区切ると、他の寮にも親戚知人はいるから、でかい声でいい過ぎると、友達減るぞ?」

 

そもそも純血主義すべてが悪ではない。

流言に流されて利用されるなよという話のオチらしい。

ハリーにしても、毎度マルフォイと喧嘩したところで何も得るものは無い。

学校の噂に話題が移り、ハリーは先ほど考えていた事を頭の隅で取りだした。

 

彼女の語り口、考え方は彼に似ていた。

彼、ダンブルドアだ。

アオイの違いは、答えまで言ってくれる親切さだけだ。

 

正直に言えば、認められなければ捨てられる。と、いう恐怖があった。

彼らの価値観、正解を誤答したら、切り捨てられるのではないかという不安もある。

ダンブルドアの存在全てが正解で、アオイが言う弱さが不正解。

そんな風にビクビクとしている。

それでもだ。

ダーズリーでの正解探しの日々と同じで、それをホグワーツで繰り返すのか?という声が、ハリーの中で育っていた。

自分と他人のライン。

 

賢者の石の時の間違い。

 

自分の存在を認めてもらう事。

必要とされている事を確認したかった。

 

だから、ずっとあの家でも我慢していた?

行き場がないからじゃなくて、彼らの家族になりたかった?

 

今、こうして傷口をえぐるのは、あの家での生活が終わった事を確認したいのだ。

 

魔法使いだって知った時も、同じだ。

これで必要とされる特別な人になれると思った。

普通じゃなくても、許される人にだ。

 

だが、校長やアオイにしてみれば、誰かにおもねている、従う者は対等ではない。

彼らは優しさを与える相手を、シビアに観察しているふしがある。

 

そして笑えるのは、アオイは、スリザリンであるが、どんな相手でも苦境にあれば助けの手を差し伸べた。

けれどダンブルドアは、あの生活で十分だと判断した。

貧しく悲惨であろうと、あれで十分守られると判断した。

 

実にスリザリン的に思えるのは、僕だけだろうか?

 

もうあの生活に戻らずにすむ。

これがダンブルドアのみの判断であれば、もっと落ち着かなかっただろう。

だが、他の人間が介入している。

戻されないと判断できた。

 

考えていくと、怖い結論にいきついてしまう。

わかっている。

ダンブルドアは良かれと思い采配した。

親戚の伯母に預ければ、庇護が与えられる。

確かにそうだ。

普通なら。

でもハリーは訴えていた。

家に帰りたくないと。

アレは家じゃない。

 

だが、今回は、いや、これからは帰らなくてもいい。

そして帰れないと思う。

あんな場所に戻るぐらいなら、旅に出たほうがマシだ。

それにもう、階段下の物置は封印された。

 

呪術的溶接作業の結果、開かずの間になったのだ。

ざまぁみろゴルフバックは階段側を取り壊さないと取り出せないぞ。

 

そして僕は何もしていない。

アリバイ証明済み、最高だ。

 

「お兄ちゃんたちー!パパが帰ってきたよー、ご飯だからねー」

 

まぁ楽しい夏に、これ以上の無駄な詮索は必要無いのだ。

と、ハリーは友人達と室内に戻った。

 

 

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