おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ、秘密の部屋編。
R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできています。


AVB、或いは静かなる丘と秘密の部屋 ⑥

 幕間

 

 リスザルかなぁ?先生、僕はリスザルで脳内変換してます、可愛いですよね。

 えっちがう?

 あぁ図鑑ですね、えっ、これお猿なんですか?

 これに似てる?

 

(やっぱり先生って変わってるよなぁ)

 

 ブッシュベイビーってお猿なんですね、確かに目が大きくて可愛いや。

 えっと何々、ユニークな生き物で、禁輸動物、縄張り意識も高く活動が活発。

 音にも敏感なので決してペットとして飼ってはいけない。ふんふん。

 

(たぶん、飼いたいけど飼っちゃ駄目な、可愛い野生の猿って意味だったんだぁ、…面倒くさい大人だなぁ)

 

「調子に乗るなよ、ポッター」

 

「……魔法で頭の中を見るのを止めてくださいよ、大人げないなぁ。可愛い生き物の話ですよね?」

 

「……」

 

「減点したら、マクゴナガル先生に会話を開示します。僕は無実です。」

 

 セブルス君とハリー君は友人になった。

 大人げない大人と、大人っぽい子供は、けっこう気が合います。

 

 リリーママもジェームズパパも、案外、セブルス君と仲の良い息子を喜んでいます。

 死後に知る世界の真理!

 

 クズい大人が多すぎて、セブルス君が思うよりマトモだったからです。

 ただセブルス君が、だいぶ爛れた大人になっている事にリリーママはちょっとショック。

 そして可愛い女生徒に手を出さないか、その女生徒に女神信者とか言われてるのを聞いて更にショック。

 まぁ倫理的な問題はさておき、リリーママはいろんな意味でハラハラ。

 

 セブ、何か勘違いされてるわよ?

 私達って、恋人じゃないでしょ?←ジェームズ、ゲラって酸欠?で倒れる。

 

 虐待家庭からの脱出に両親は感謝しているが、それはそれ、これはこれ。

 息子の背後霊で、今更知る幼馴染のダメンズぶり。

 ジェームズの好感度が逆に鰻登りだ。

 

 そんな背後霊を背負ってるハリー君は、今日もセブルス君の授業の後に、お片付けの手伝いである。

 グリフィンドールの皆は、勘違いしてるけど罰則じゃなくて自主的なお手伝いだったりする。

 そんな平和なホグワーツに忍び寄る影が!

 

 まぁいつものノリの、いつもの、それは違うでしょう?のお話です。

 

 ……

 ……

 ……

 ……

 ……

 ……

 

 

 いやぁ特等席だよね。

 謎空間にカウチ。

 ハリーは見えてるけど、プライバシーが確保されてるとか。

 いまだに仕組みはわからないけれど。

 でさ、今更聞くけど、リリー、アイツのことってさぁ〜

 

 皆、勘違いしてるけど、セブは初めて魔法の世界を教えてくれた大切な幼馴染よ。

 家族みたいに思ってた。

 これね、本当にそう思ってた。

 彼が違う事は知ってたけどね。

 貴方ならわかるでしょ。

 正直に言っていいのよ、打算ずくで嫌な女だって。

 

 それ、普通だよ。

 リリー、普通。

 結婚相手は、安定した生活が築けるだろうか、だろ?

 

 貴方の口から、真っ当な言葉を聞くと、背中がムズムズしちゃう。

 

 掻いてあげるよ〜

 

 ありがとう、おバカさん。

 それでね、自分でも酷い女すぎって笑っちゃうわけ。

 今なら言えるけど、正直、無理だった。

 認める。

 私が悪い。

 セブは過大評価してくれるけど、私って、普通の女でしょ?

 

 え〜リリーは世界一だよぅ

 

 ジェームズ、わかってるでしょ?

 私は、普通よ。

 旦那と子供、そして安定した家庭が理想だった。

 恋愛じゃなくて、家庭がほしかったの。

 最初から、彼のような人は無理だった。

 

 え〜僕だって君と恋愛してるじゃ〜ん!

 大好きだよぅ〜リリー!

 僕の可愛いリリー!

 

 はいはい、私達、出会ったときから色々あったけど、結局、似ていたわよね。

 貴方も、貴方の友達も、普通の家庭が欲しかった。

 理想の形っていうのかしらね。

 それを探してた。

 セブも似ていたけど、彼は、家庭とか安定の意味が最初からわからない人だった。

 彼に与えられる女だったら違うでしょうけど、私は与えてもらいたい女だった。

 それも程よくね。

 彼は一生懸命だったけど、その先に何があるのか、とっても怖かった。

 わからなくて、怖かった。

 子供だったのね。

 ズルいって言われるのは当然だって知ってる。

 

 私ね、チュニーと同じなのよ。

 貴方も知ってる通りにね。

 私ね、幸せになりたかったの。

 普通の幸せよ。

 怖くなって、彼の手を振りほどいちゃった。

 でもね、変わらず彼は幼馴染のセブで、私を一番だって言ってくれる。

 先に死んでしまったのに。

 ジェームズ、悔しいわ。

 彼に残酷な事をしちゃった。

 手を振りほどいて突き放すんじゃ駄目だったのに。

 きちんと、話し合って、そして、無理な事の意味を。

 私の現実を見せなきゃいけなかったのにね。

 私が普通の、打算もある、女だって。

 教えればよかった。

 

 それはね、無理な話だ、リリー。

 奴だって、わかってる。

 君は僕を選んだ。

 男女の事さ、正解は無い。

 責められるなら、それは僕さ。

 僕は君に幸せを約束したのに、守れなかった。

 

 あぁゴメン、泣かないで。

 

 後悔しても遅いし、僕も嫌な男だったよ。

 仲直りの機会を潰していたんだしね。

 ほら、泣いても誰にも届かない。

 せっかく、楽しい観客席が用意されたんだ。

 応援しよう。

 生きている人をさ、息子を見守ろう。

 嫌な女と嫌な男、釣り合いがとれてるし、ヤジを飛ばして楽しもう?

 

 そうかもね、貴方は私をわかってる人だった。

 セブは、私の嫌な部分を、見ないのよね。

 あの人ね、とっても純真だから。

 

 え〜やめてくれよぅ、アレがピュアなら、僕は透明になっちゃうよ。

 あら、私達もう、スケスケよ?(笑)

 

 ねぇ僕達はもう終わってしまったけれど、彼がこれからどんな風になるのか、ハリーと一緒に眺めようよ。

 奴がこっちに来たら、からかってやろうぜ。

 気になるのは、やっぱりあの女の子、だよね。

 

 色々、他にも気になるけど、強烈な子よね。

 セブ、大丈夫かしら?

 

 たのしぃ〜ハリー、ヤツを見張れ、からかってやれ!!

 あぁリリー、ポップコーンとか食べられたら最高なのに!

 

 ***

 

 アーサー・ウィーズリーは、細身で赤毛の中年男性だった。

 疲れ切っているらしく、台所の椅子に腰掛けてぐったりしている。

 

「やぁハリー、初めまして、アーサーだ。いつも息子たちと仲良くしてくれてありがとう」

 

 それでもハリーを見ると、キラキラと瞳を輝かせて身を起こした。

 

 優しくて、真っ当そうな人に見える。

 ハリーは、笑顔のモリーとその家族を見回して、力を抜いた。

 大人の男に相対すると、どうしても力が入ってしまう。

 

「おかえりなさい、父さん。遅かったね」

 

 握手をするハリーをみながら、兄弟たちは料理の配膳を始めた。

 手際よく大量の料理の器がテーブルに並べられていく。

 

「夜勤明けで帰れるはずだったんだがね。緊急の調査依頼が来たんだ。それも何件もだ。」

 

「珍しいなぁ、親父のところって、緊急でも立て込むってほどじゃぁないだろ?」

 

「フレッド!」

 

「ははっそのはずなんだがねぇ、ほら、食事にしよう。

 お腹をいっぱいにしないと、眠れそうもない。

 ハリー、ゆっくりしっかりと食べなさい。

 君の好きなもの、そうだねぇマグルの食べ物は〜」

 

 ***

 

「それで?」

 

「セブルスの話も聞きました。

 食事もおろそかで、最低限は与えられたとハリーは言っていましたけど。

 あの様子では、後で癒者に見せたほうが良いでしょう。

 相手方の事情もあるでしょうが、あれはいけません。

 こちらからの接触を断つべきなのは、わかっていましたが。

 もう少し、何とかするべきでした。」

 

「ハリーの所在をわからなくする事。隠す事が優先だったからね」

 

「それでも限度があります。裏から手を回す方法もあったはずですよ。

 それに現在も問題がある。

 ポッターの財産がどうなっているのか、セブルスが案じておりました。」

 

「彼が、かね?」

 

「リリーの子ですからね。本当は自分で面倒を見たかったのかと」

 

「あの、男がかね?」

 

「私の目をお疑いに?」

 

「そうじゃない、そうじゃないよ、モリー」

 

「貴方はどうお考えに?

 彼は自分を今まで表さなかった。

 言葉は全て、ダンブルドアの命じた話、だけでしたものね。

 約束事は守り、指示には従う。

 身の潔白を自ら口にはしませんし、何も考えを読ませない。

 信じてくれとも言わず。

 彼は頑なでしたものね。

 どちらとも取れる態度のみ。

 でも、今日は自らの立ち位置を、消極的ながら示した。

 ハリーを連れてきた。

 ここに連れてきたのは指示だとしても、様子を見に指示無く、彼の家に向かった。

 両方の監視はついていたでしょうに。」

 

 それにアーサー・ウィーズリーは、ため息をついた。

 寝不足の頭でも、その意味する事が重要なのはわかっている。

 あの、死喰い人……が動きを見せた。

 つまり動いても良いと判断できる何かがあったのだ。

 世間的に、動きを見せても問題がないと。

 

「色々な考え方ができるね。君の印象は?」

 

「リリーの子を案じただけ、とも見えたわ。

 ダンブルドアにも何かあったと思ったほうがいいでしょう。」

 

「吉兆だと思うかね?」

 

「さすがに今日の会話だけでは」

 

「まぁそうだね」

 

「ただ、変化があった。

 それは確実。

 ハリーの所へ彼が向かった。

 取り戻そうとしているように見えました。」

 

「取り戻す、かね?」

 

「えぇ、子供の頃に大切だったものを。

 リリー・エバンズの子と、生き直そうとしているように。

 生徒を案じる教師に見えました。

 そうですね、今度、本人と対話してみたらいかがですか?

 子供たちも良い教師と思っているようです。」

 

「同じ人物の話かね?」

 

「セブルスですが」

 

「あの、ロクデモナイ男の話じゃないよな?」

 

「子供たちに聞こえますよ」

 

「君が知っているか、ちょっと不安なんだが」

 

 言いかけた夫に、モリーは右掌を向けて止めた。

 

「ミネルバ共々私も、彼の行状は知っていますよ。

 女性の情報屋は、皆、彼と懇意です。

 そして殆どが、女性の方が未練たらたらですわね。」

 

「それが良い教師?」

 

「えぇ、良い教師でしたわね。逆に不安になるほど」

 

 妻のちょっとしたトゲのある言葉に、アーサーは笑った。

 つまり、ほどほどに悪くないと彼女は思った。

 足元をすくわれる、邪悪な意図は見えなかった。

 信じられないが、悪い兆候は窺えない。

 アーサーは力を抜いた。

 

「彼の評価ってむずかしいんだよねぇ〜あそこまで灰色だと、私程度では無理だ。

 どこまでが本気か」

 

 彼が帝王に反意を示し、ダンブルドアに下ったのは二十歳過ぎ。

 あれから時が流れたが、口を閉ざし身を潜め続けた。

 頑なであり、態度は変わらず。

 誠実と見るか危険と見るか。

 

「少なくとも、お連れのお嬢様の扱いは真っ当でしたけれど。」

 

「それもねぇ、どんな具合だったかね?」

 

「しっかりとしたお嬢様でしたよ。普通の娘に見えましたね」

 

 モリーにお茶を頼むと、アーサーは頭を振った。

 

「何か闇祓いがしくじったそうでね。

 夏の旅行先で揉めたそうだ。

 パリの支局長が更迭されたやら。

 わがままな娘やらなんやら、まぁ聞いたんだけどねぇ?

 ほら、私の所に来る奴って、あれだろ?」

 

「あら、息子たちに話を聞くといいわ。あとジニーにとっては、憧れのお姫様になってるわね。」

 

 お茶を口にしていたアーサーは、動きを止めた。

 

「憧れ、の?」

 

「噂が流れるようならご存知でしょう?

 目を疑うような美貌だったわよ。

 美人じゃないわ、美女よ。

 血で血を洗うような争いを呼びそうな、これが私の感想よ。

 童話のお姫様、本の挿絵に似てるからって、ジニーはお姫様呼びだったわね。」

 

「それは、また……お姫様、ね。

 そろそろゴシップ雑誌が動き出しそうだと耳に挟んだよ。

 まぁ動いたら、何処かから圧力がかかってこの世から消えそうだけどねぇ」

 

「聞いていた以上の美貌ですわね。

 ロンと同じ歳には全く見えませんでした。

 礼儀正しく、お淑やかな純血の姫君という感じでした。」

 

「聞きたくないが、その」

 

「真っ当な教師の態度でしたが……ミネルバが倒れていないか心配よ。」

 

「ダンブルドアは何を考えているのやら」

 

「彼女が、名家の最後の生き残りというなら、セブルスを側に置くのは妥当でしょう。

 雰囲気を軽くしようとしていましたけれど、彼は護衛ね。

 飲食も制限させられていたわ。

 冗談で誤魔化していたけれど、何一つ笑える様子ではなかったのよ。」

 

 ジッと夫と目を合わせてから、モリーが肩をすくめた。

 

「あまりよくないことを、ダンブルドアは考えているんじゃないかしら?」

「聞きたくないような」

「下世話に考えれば、簡単よ。彼を縛る条件を足した。」

 

 それにアーサーは眉をひそめた。

 

「子供だろう?」

 

「リリー・エバンズへの後悔を条件に、彼女の息子の命を錘に。

 彼は今のところ裏切っていない。

 けれど、それで信頼とするには、何も示していない。

 なら?

 彼が裏切らないと確信を得たいとするなら、試すか、裏切らないように更なる縛りを与えるか、かしら」

 

「私は、そういう思考がね、想像できないんだよねぇ」

 

「それが貴方の良いところよ。

 ただ、条件としてはハマりすぎているの。

 純血の、この国の血ではない娘よ。

 考え方が、そもそも違う。」

 

「純血の傲慢さが奴にあうと?」

 

「私達とは根本的に考え方が違う。殺し合いをした身内じゃないの」

 

「あぁ、あぁそういう事か」

 

「想像できてしまうのよ。

 お姫様がね、合理を理想や愛よりも信じていれば、許すでしょう。

 例え、死喰い人の男でも許容する。

 それも美しい純血のお姫様がね。」

 

「試すために、彼女を預けたと?」

 

「ダンブルドアは、善や愛を信じているけれど、人間を信頼はしていないわ。

 何を知っていても、セブルス以外に集めた情報を全て渡しては来ない。

 縛り付け従えた相手となら安心するのかしら。

 人は間違うもので、善き道筋にたどり着けない者は、悪気無く諦めてしまうわ。弱いものとしてね」

 

「いつもより辛辣だね」

 

「やせ衰えた子供を見せられたのよ。己が信じるほど、ダンブルドアは私たちを信頼していないとわかるでしょう?

 セブルスに美しくも悲劇を背負う娘を押し付けるのは、試していると考えて間違いないわ。

 彼がどういった質の男か知っているでしょう?」

 

「えっと、女にだらしない?」

 

「まっとうな価値観が無い男ですよ」

 

「何が違うのかわからないんだが?」

 

「笑えますね」

 

「怖いよ、彼は私じゃないんだが?」

 

「彼女を試験紙にしているのよ。

 彼女の幸せはどこにあるのかしら?」

 

「良い子、だったんだね」

 

「明るい子でしたよ。

 無償の庇護でない事は重々承知している。子供でしょうに、無惨にも理解している様子でしたよ。」

 

「不穏な噂ばかりでね、それも大方が馬鹿げているんだが、どう考えるべきかねぇ」

 

「アーサー、それが理由だと思うの。

 あの手の男はね、表に出さないけれど、必要とされると依存するのよ。

 ダンブルドアは、彼女の為に、彼を用意したように言うわ。

 でも実際は、セブルスの裏切りを防ぐ為か、試す為に見えるのよ。

 古い血筋の恐ろしさに、普通の人間では対処できないのは本当なのよ。

 反対もできない。

 どうなろうとも、ダンブルドアは結果を複数得るわけね。

 嫌な構造よ。」

 

「依存、普通は子供のほうじゃないのかね?」

 

「子供、少女の見た目を取り払えば、精神的には強い子ね。

 きっと人の考えを読んで、男を誘導できるでしょう。

 そして男も誘導される事を望む。

 周りも止められないわ。

 拉致監禁、睡眠薬や毒も警戒しているようだった。

 護符を与えて、死喰い人が側に立つ。

 どんな相手なの?

 美しくたって、ちょっと育ってしまったからって、子供に何を目の色をかえるというのよ」

 

「モリー、彼女に関して、私のところにまでお達しが来たよ。

 面倒な血筋、ブラック系統とも関わりがあるって話だったろ?」

 

「ブラックも美形の家系だけど、あの子は別格ね。

 息子たちが欠片も、そういう意味ではアプローチしていないのよ。」

 

「ん?美人なんだろ」

 

「美女、すぎるのよ」

 

「……」

 

「家の子は真っ当だったようよ。どうしたの?」

 

 天井を見る夫に、モリーは首を傾げた。

 

「お達しと一緒にな、とんでもない噂が回ってきてな。

 ホラと捨て置いたんだが。」

 

「気になる話なのね?」

 

「あぁ、よく流れるだろ。

 誰それの子だ、隠し子だとな。

 その程度の話だと、考えていた。」

 

「誰の名が」

 

「黒い魔法使い、よく流れるだろう、それだ。

 その噂を信じられるような子だったかい?」

 

 噂を真に受ける必要はない。

 と、いつもなら言うところであった。

 

 だが、あの容姿に態度。

 大人の男を従える姿は、子供には欠片も見えず。

 滲むような瞳の色に、どこか人ならざるような雰囲気。

 グリンデルバルドの血だと言われれば、現実主義のモリーでさえ納得してしまいそうだった。

 真実と言える材料など欠片もない噂だが、自分の夫にまで聞こえるのだ、大方の人間の耳には届いているだろう。

 

「どうやら、あのカリスマのひ孫だと言われれば、信じてしまいそうな子だったんだね。

 嘘か誠かよりも、純血名家の沈黙が気になるなぁ。

 ダンブルドアがホグワーツに留め置き、セブルスを張り付かせる。

 酷い暮らしをさせられたハリー君はマグル家庭での結界を必要とした。

 じゃぁその子を手元に置く理由はなんだ?」

 

 冗談にしては質の悪い内容に、モリーは口を開こうとして閉じた。

 

「今の君の話を聞いて、ちょっとばかり思いついたんだが……。

 ダンブルドアがセブルス・スネイプを張り付かせて守らせる意味は、その試しだけだと思うかね?」

 

「スリザリンの……違うわ、あぁ、嫌だ、見落としていたわ。

 繋がるわね。

 嫌だわ、そうなのね。重要度が変わったのね?」

 

「我が家にハリー君を寄越したのも、ちょっと解釈がかわるだろう?

 今、私が忙しいのもね、疑えばきりがない。

 どうする?職場の移動指示がでるんじゃないかなぁ」

 

「先に情報収集よ、誰に聞けば。

 きっと純血名家は把握しているわよね」

 

「モリー、落ち着いて。

 よく考えてご覧、よくよくだ。

 確定情報ではない。でも、もしもだ。もしも」

 

 夫婦は手を取り合い、お互いの目を覗き込んだ。

 

「私の考えている事がわかる?」

 

「たぶん、私も同じ事を考えているよ、モリー」

 

「どうしましょう、すごく嬉しいけど、信じられない」

 

「私もだ。だが、当たっていれば残党が割れる。しっかりとしないと」

 

「えぇ、そうね。そう……。

 セブルスは、先の話をしたのよ、これからのこと。

 ダンブルドアは、だから許したのね。」

 

「あぁ家族を失う危険が遠ざかったかもしれん。」

 

「気を引き締めましょう。まずは」

 

「まずは?」

 

「貴方は寝る。私は友人たちに手紙を書く。子供たちは夏を楽しむ」

 

「それはいい、実にいい。明日はパイが食べたいなぁ」

 

「何がいいかしら?」

 

「ピーチカスタード、ラムレーズン、レモン」

 

「アーサー」

 

「わかっているよ、甘さ控えめなんだろう?」

 

「いい知らせを手に入れたら、ストロベーリーも作ってあげるわ」

 

「ハリー君も、君の料理で元気にしてやってくれ」

 

 ***

 

 お休みってあっという間に過ぎていくよね。

 朝、起きるでしょ。

 一人の寮で起きて、わぁさみちぃ〜とか言いながら、のんびりと朝活。

 存分に声を出しながら、呪文を唱えたりする。

 時々、遠くからこっそり覗き見してる、屋敷しもべ妖精ちゃんたち。

 最近、我が無害なアニマルであると、やっとわかったようだ。

 

 いい子には無害よ〜

 悪いごはぁ〜いねぇがぁ〜

 ナマハゲかな?

 

 まぁ妖精さんたちには、お土産という賄賂とアップルパイマスターへの飽くなきチャレンジが功を奏しているようだ。

 まぁそんな感じで朝起きる〜で、セウェルスの所へ突撃をかます前に、予防線なのか勘がいいのか、ダーリンが迎えに来て朝食。

 ゴリゴリ最近は寝不足じゃが、どうもワイの貸し出してる本を参考に何やら実験タイムで夜更ししているようだ。

 うむ、これは時間制限を設けねば、突然死リスクがあがりそうである。

 貸出の要件を今後書面にて取り決めよう。

 ダーリンは約束をすると守るタイプ。

 意地でも守る、いじっぱりである。

 

 そんなこんなで夏休み組と朝食タイム。

 ワイワイ楽しげである。

 もちろん、ワイとダーリンに慣れてきた子供たちは、案外、遠慮なくのびのびとしていた。

 やっぱり順応性高いよね。

 

 たぶん、ラインがわかったんだよね。

 ほら、怒られるライン。

 セウェルスは案外、はっきりしている。

 

 礼儀正しく、普通にしてれば問題はない。

 食事中にうるさく騒いだとしても、許容範囲があって沈黙しろとは言っていない。

 たぶん、スリザリンの子だったら注意するし、グリフィンドールレベルの騒がしさだと罰則減点即レスだ。

 けれど普通の子供の会話ぐらいでは反応しない。

 1日中キレ散らかしてる血圧高めと勘違いされがちだけど、実際、低血圧のローテンション。

 ダウナーどころか、会話も成り立たないほどのローだ。

 食事を自室でとりたいと心底思っていても、ワイの挙動の予想がつかない。

 

 ざんねんだー

 あにまるはーじゆうがほーしーいーぞー

 

「そう言えば、学用品の注文はどうしますか?」

 

 スプラウト先生の問いに、セウェルスの焦点がやっと合う。

 寝てたと思う。

 たぶん、頭の中は霧の中だ。

 

 かわりに隣に、まぁ隣にいつもどおり座っちゃってたんだけど、誰も指摘しないんだよこれがさぁ。

 休みだから、皆ひとつのテーブルなのもあるんだけど、本来は、離れて座るべきだろう。

 

 じゃがな、ここで問題がでるんじゃ。

 居残り組は絶対にセウェルスの正面や横には座りたくない。

 壮絶な心理戦の後に、ワイがわかってるよーって座る。

 

 もうね、わかってる。

 ワイ、キーホルダーみたいなもんよ。

 

 先生、私、少し私物を購入したいです。

 梟お取り寄せでは、少々はばかりがある品なんですが。

 スプラウト先生に渡そうとしたメモを途中で回収してしまったダーリン、そうとう寝ぼけている。

 ぐらついている視線の前で指を振る。

 それをさっと握られる。

 

「物は?」

 

 そうじゃないでしょ、口実。

 

 そんな私の返答に、鈍った視線が泳ぐ。

 

 指定教科書籍の販売日に、彼らも来るでしょう?

 たぶん、ハー子さん達と待ち合わせしてからなら、時間も推測しやすい。

 もっとピンポイントに無駄を省きたいなら、ハー子さんに梟飛ばすよ?

 

 何か言おうとして一旦口が開いた。

 だが、何も言わない。

 はいはい、眠いのね。

 

 握られた指を引き抜くと、もう一度、メモに言葉を綴る。

 

 外出のついでに購入してきます。

 私の分は取り寄せ無しで大丈夫です。

 ありがとうございます。

 

 卵をじっと見つめるダーリン。

 寝てる、うん、寝てるな。

 ほら、卵の半熟が固まるよ?

 

 無言。

 

 酒、薬、睡眠不足、もしくは人生について深く深く思考しているのか。

 半眼になって殆ど眠ってても、誰も気が付かないとか便利。

 きっと真面目な会議とかで、スヤァっとなってても気が付かれないんじゃね?

 

 貴方が無理なら行かずとも困らないよ。

 後からでも取り寄せられるし、ラインナップ見たけど、あれ、小説でしょ?

 

「読んだのか?」

 

 おっ、やっと反応が。

 読んだよ、セウェルスも読んだでしょ?

 

「あぁ、読み物としては、中々に完成されている。フィクションとして」

 

 だよねぇ。

 ヒゲは何て?

 

「いつも通りだ」

 

 いつも通りの秘密主義。

 仕掛けだけは念入りで、後は踊らされる人間の足掻き次第。

 酷いねぇ。

 それでどうする?

 

「野放しにできまい」

 

 眠いんでしょ?

 ドーピングは止めて欲しいな、マジで死ぬよ?

 

「出かけるまでに二時間。それぐらいか?」

 

 ギリ三時間半は余裕。

 

「了解した」

 

「で、話はまとまった?」

 

 デザートを食べるか迷っている風のスプラウト先生が聞いてきた。

 何ぞ?

 と、見ると、どうせならと、またもお使いを頼まれる。

 取り寄せできない系、謎の注文品引取である。

 やばいおくちゅりの原料?

 

「植物の種でも植生に影響のあるものだ。人間が運んだほうが事故が少ない」

 

「あぁフィルチ氏に頼むのだけれど、ホグワーツ全体の外壁の点検をしてもらっているので、店員に直接運んでもらう事も、ちょっと躊躇っていたのよ。

 今、外部からの来訪者のチェックが厳しいでしょ?」

 

 あぁそういう。

 んで、オッケーっすで、御駄賃に、その珍しい南米原産の不思議植物、脱法じゃない合法な植物の実がなったら分けてくれるって。つまり美味しいデザートね。

 ただ、種とか誤爆すると非常に魔法界植物らしくハイランド地方に馴染んじゃうらしい。

 馴染んで、えらい環境汚染したら怖いんで、人の手で移送するって訳だ。

 梟ちゃんは事故る割合が結構高いのである。

 ハリー君への郵便物然りである。

 

 そいで食後、私は部屋に戻り、どのようなお洋服ででかけようかな〜と、考える。

 それぐらいしか時間が潰せないのもある。

 私がフラフラすると、セウェルスは寝られない。

 部屋にこもるよ〜でやっと安心してくれるという、まったく信頼感ゼロの扱いである。

 とかいいつつ、ならば、一人リサイタルしながら、クローゼット整理するしかあるまい。

 ちょっと懐メロね

 

 ラブ・サイケデリコからの〜&エルトン・ジョン

 

 ほら、同じ題名の歌を思い出したからだよ。

 どういう脳内繋がりだよって?

 一人で歌うんだもの、こんな感じだよ。

 

 オルタナティヴ・ロックぽいボーカルのノリで。

 ティーンエイジャーの薄っぺらい恋愛観みたいなものを想像して歌う。

 まぁ難しく考えずに、こうキャッチーな感じで。

 時々、エアマイクして、エアギターしながらね。

 

 ワードローブは旅行後にクローゼットにきちんと片付けたよ。

 いつもお菓子補充してくれる屋敷しもべ妖精ちゃんが手伝ってくれた。

 

 ちなみにお部屋のクローゼットもナルニアに行けそうな魔改造がされてた。

 開いたら、ドレスやら小物を置ける空間に拡張。

 ヒゲいわく、貢物で安全なやつも渡すから広げといたって。

 まぁここが家みたいなもんだしね。

 

 管理は妖精さんたちがしてくれる。

 そいでワイ的にはだ、ジーンズにパーカーのちょっち小汚い格好で十分だったりする。

 ロンドンの下町にいる子供みたいな感じ?

 じゃが、そんな物は無い。

 エロ下着にゴシックファッションかお嬢スタイル。それも夜のお嬢ではなく、正統派お嬢様である。

 キャバ嬢ではない。

 あ〜本当に、こう気軽で身軽なファッションをしたい。

 スウェットの上下とか、二本線ジャージとか、ダサめな感じでこうキャラシャツ着たりしたい。

 たぶん、ダーリンは気にしない。

 清潔で肌色が見えなかったら、ダサファッションしても平気だと思うんだ。

 

 けど、マクゴナガル先生は胃が溶ける。

 ヒゲは悲しそうに涙ぐむ。奴は何気にファンシーおしゃれ番長だ。

 そいでお休み中とはいえ、お子様達が悲しい顔をする。

 

 何故に?

 

 一度、ダサファッションでよくない?って聞いたら、すごい悲しいって顔になったんよ。

 チミたち、何を考えてるんじゃ?

 ワイ、アニマルじゃぞ?

 

 と、そんな事を考えながら、思う存分、懐メロJ−POPを歌う。

 ドラマの主題歌とかね。

 日本語喋れたよ〜けど、すんごいアクセント違った。

 やっぱり脳内にインストールされた外付け人格なんだね。

 

 で、そのワードローブからお出かけするのに、何を着ようかな〜って考える。

 この時代、マグルファッション、お嬢様風ブランドだとラルフ・ローレンとかになる。

 マクゴナガル先生監修ファッション、実は魔法界製品だけでなく、イギリスマグルブランドも普段着は混じってるんだよ。

 

 実際ね、あまり魔法族っぽいファッションは、普段はしたくないんだよね。

 もしもマグル世界に入り込んじゃった時、浮きたくないってのもある。

 派手な格好もね。

 基本の白いブラウス、無難な腰のラインが細めのカーキ色のスリムジーンズ。

 ジャケットは明るいベージュに丈は短め。

 赤チェックのスカーフを首元にして、髪の毛は、まぁ流したままでいいかな。

 そこそこに珍しいウエスタンカジュアル。

 護符は常に首から下げてるけど、スカーフの下になるから目立たない。

 杖ホルダー、小物入れ、オッケー。

 どの靴にしようかな〜ショートブーツ、夏用あったかな〜お〜厚底サンダルで紐で縛ってあるぞ〜ダサくていいぞ〜めっちゃ足が長く見えるし、攻撃力高そう!

 

 ジャパンの歌をノリよく気持ちよく歌った後、エルトン・ジョンね。

 咳払いして70年代、脳内でアコースティックギターとピアノのメロディーを流す。

 さすがにイギリス、エルトン・ジョンいるよね?

 バーニーが作詞していた曲に、さらっと曲をあてちゃう天才ぶり。

 そして愛だよね。

 

 ゆっくりと歌う。

 誰に向けての愛なのか。

 きっと恋人、家族、大切な人に向けての歌、だと思うんだ。

 やさしく語りかける感じで、歌う。

 描いている夢

 少し恥ずかしい気持ち

 ストレートじゃない愛の気持ち

 

 って感じの歌だよ。

 まぁ言うまでもないよね、名曲だし素直で奥ゆかしい優しい歌だ。

 そっからイギリスヒットメドレー懐メロ版。

 レット・イット・ビーを歌う。

 ビートルズはいたよね?

 クイーンもいたよね?

 と、ちょっと不安になりながらも歌う。

 

 そいで歌いまくってたら、校長からメッセ。

 ちっちゃな蝶々がヒラっと入り込んできたら、お部屋に来てお茶しない?

 え〜セウェルスが寝てる間、おとなしくしてるって約束をしたにゃぁ〜ってあざとい返事をしたら、いーよー大丈夫、言い訳してあげるから、リサイタル校長室でしてって。

 

 まぁヒゲ、忙しくてメンタル削れたらしくてね、ハリー君の事で怒ったらね、ごめんちってした後ね、ずーっと元カレの愚痴になった。

 

 元彼?

 あぁ元の友達の監獄にいらっしゃるゲルマン民族の人ね。

 すんごい未知の情報を整理しないで投げてきた。

 そもそもの情報源を精査しなきゃならんし、整理しなきゃならんし、他人にも見せられない!

 うがーいそがしいー!!

 ってなったらしい。

 それもとんでもない量だ。

 

『ガンバ』

 

「年寄りを酷使するのはいかんと思うんじゃ」

 

『まだ、イケる』

 

「そうかのぅ」

 

『ボケ防止』

 

「優しくしてほしいのじゃが」

 

『リクエスト』

 

「好きな歌をお願いしようかのぅ」

 

 しょうがないので、肩を揉みながら歌った。

 そもそも肩こりの概念がないらしい。

 うそやろ?と、なりながら揉んだら、実は酷い肩こりだった。

 温泉治療が必要なレベルだ。

 

 しょうがないな〜でいつものラブソングを適当に歌う。

 自分の好きな曲ね。

 きっと音楽は聴こえてるかもね。

 頭の中で流れてるから。

 だから、歌ってる本人も、この人の歌だよ〜って想像する。

 

「ほぅ」

 

 もろハードロック、ヘヴィメタルなグループのラブバラード。

 この時代、現役、だよなぁ。

 後にちょっくら太ったおじさんになるけど、この頃はイケイケ美男子だった。

 誰だって?

 ワイの好きなアクセル・ローズだよ。

 前も歌った曲ね。

 88年のヒットだったはず。

 イギリスのヒットチャートにも三年ぐらい前には食い込んでたと思う。

 んで、いろいろ歌って、今日の一番の気分にあってるエルトン・ジョンのユア・ソング。

 

 時々、雑談しながら歌う。

 

「聞かないのかの?」

 

 何を聞いてほしいのかな、わからないよ?

 って答えたら、笑った。

 

「儂は馬鹿じゃろ?」

 

 賢者を馬鹿にはできないよぅ。

 でも、バカなのは本当だよね。

 自分をゼロにして、目的を達成する司令官はエライけど、間違ったら沈没。

 全員死亡とかやだもん。

 相談しろよ、ヒゲ。

 

「沈没か、君はどういう状況だと捉えているのか、教えてもらえるかね?

 儂の振る舞い、セブルスの立場、この学校の意味や、ハリーの事。

 君は何も知らぬだろうがの」

 

 また、ぼんやりとした問いだよね。

 じゃぁ簡略化して、感じたこと見たことをそのまま言うけど。

 

 皆の認識は、戦後。

 ワイ、いまいちわからん状態。

 

 で、校長の認識は、戦争中。

 

 校長は、戦時司令官。

 セウェルスは、司令官の校長の駒。

 呉越同舟の社会の縮図みたいな寮分けをして、セウェルスに、純血の子弟の思想チェックをさせてる。

 司令官は、若い世代を選別し、戦闘員や駒を増やす。

 この学校そのものの目指している教育は、前の戦争原因の芽を摘み、更にはそれぞれの勢力動向を観察する場である。

 校長自身は、権力志向では無いので、己が前にでる事をせず政治も裏から動かすスタイル。

 

 ただ、そうなるとトップダウン方式、権力一点集中しやすくなるが、いかにせよ身内同士で争ったのが前の戦争。誰が味方なのか心底判断できない。

 

 ただ、前提として組まれたこの形は、対闇の帝王戦である。

 帝王、ワイの発狂事件で、終わったの確認。

 ハリー君を利用する何かは、無意味になってしまった。←イマココね。

 

 そして私という、政治利用できそうだけどヤバメの爆弾と、妙な事件が魔法界で起きてる。

 校長は、秩序とか理想があるから、今までの体制を組み替えてるところかな?

 治安維持方向に舵をきるなら、騎士団と闇祓い双方の緊密な連携も必要だし、グリンデルバルドの寄越した何かも早めに分析しなきゃならない。

 オーバーワーク、シヌ。

 

 で、どうよ。

 何を言った所で正解は言わないんだろうし、ワイを危険なアニマルとして討伐したりする?

 

「セブルスがそう教えたのかね?」

 

 という事は、当たらずとも遠からず、かな?

 

 ダーリンが、ワイに何か言う人だと思う?

 ワイ、ダーリンのペット枠だよ。

 それに貴方は、ある意味わかりやすいよ。

 

「わかりやすい?」

 

 お茶請けのクッキーをつまみつつ、私は、リクエストの紙を見てから少し笑う。

 どうやら、叱られたいようだ。

 

『ヒゲ、鏡を見たな?』

 

 ギクッとする校長。

 演技なのか違うのかわからんが、どうやらクソ鏡を見て夏を過ごしていたらしい。

 

『そいつに映っているのは、ヒゲの知ってる人じゃない。

 幻だ。

 いい加減にしろ、夜は寝る。

 眠れないなら、夏でも足元に湯たんぽでも入れろ。

 ともかく鏡は見るな、いいな、それは幻だ。

 どうしても寝れないなら、一緒に寝てやるぞ?』

 

 と、言ったら、目を見開いた。

 

『ヒゲ、私生活ゼロの戦時司令官を好きでやってるならいい。

 それを罰にしてはいけない。

 お仕置きしてほしいなら、言え』

 

 そう偉そうに言ったら、頷いて笑った。

 目を覆っているところを見るに、クソ鏡を廃棄する気はなさそうだ。

 見つけたら割る。

 絶対に割る。

 だいたい腐ったペシミストな曲のリクエストを始めたらレッドゾーンだ。

 

「どうやらそうらしぃのう、気が付かぬものだのう。」

 

 で、ワイの解釈あってる?

 

「誰に似たのかのぅ」

 

 それダーリンにも言われた。家族の記憶があればねぇ〜。

 

 

 

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