R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできております。
幕間
ちなみに主人公は、普段着は90年代ラルフ・ローレンか、ちょっとよそ行きはバーバリーのトラッドスタイル。
本当は、もっとこの年代に流行ったストリートファッションとかグランジ系のを着たい。
けど、絶望的に似合わない事を本人だけは忘れています。
そこで寮監先生は、英国ロイヤルブランドのダックスを、おしゃれ番長から着せられています。
下着とか量販店のワゴンセールを利用していたのに、これもダメ出しがでて、今ではよくわからないけど、ハイブランド。(クローゼットの中身は教師用の服以外は入れ替えされちゃっています)
おしゃれ番長の情報網にひっかかり、お嬢様の側に煤けたオッサンを配置するのはアカンという配慮。
せめて清潔感、せめて、顔色悪い屍みたいなオッサン風味を消したい、消したいのにぃ!!バンバンバンっ!!
母上、大丈夫ですか?その、急にテーブルを…
えぇ大丈夫よ、ドラコ、ごめんなさいね、虫がいて、少々取り乱してしまったわ。
ほら、セブルスがせっかくパーティに来てくれたのだから、お話してらっしゃい。
あまりにも敵が手強いわ、加齢臭はまだ、大丈夫よね……。
寮監先生は、よくいるオシャレってわからんけど、マネキンと店員さん任せ、もしくはママ任せのタイプです。
妥協点はカラーを黒にすれば、寮監先生はだいたい受け入れます。
あと、ソックスはダサめの白。
実は90年代おしゃれ番長のマルフォイの奥方的には、この頃の白ソックスは逆にオシャレさんだったりします。
あの、不躾な質問になるけれど、セブルス、貴方、もしかして……。
はい、何でしょうか?
ヘアカット、もしかして自分でしているの?
はい?
Q:セブルス君は、ヘアカットは自分でしますか?
A:元死喰い人のセブルス君は、刃物を密室で他人にもたせるのを嫌がります。
Q:セブルス君は、身支度専用の魔法を開発していますか?
A:セブルス君は、ひげ剃りも魔法でします。
ボタンも魔法で留められますが、それがなにか?
ナルシッサ・マルフォイ
アナター!!貴方の後輩の生活指導、お願いー貴方ー!!!
せめて紳士、オッサンはだめー!
若いお嬢さんが絶望、絶望しちゃう、貴方ー!!!
妙なエロオヤジになってないだけまし?
そうじゃないでしょー貴方、ドラコと同じ年代の娘さんから見て、コレよ?
その、ルシウス、奥方はどうしたのですかな?
いや、うん、まぁなんとなく、うん、理解した。
ナルシッサ、そう、うん、彼には彼のスタイルというものがね。
あぁ、うん。
それね、気にしてないようだよ?
言わないだけ?
フォローしろ?
あーうん、そうだね、うん、うん。
あぁそうだ、セブルス、今度、君の、うんそうだね。
ちょっとしたお願いをしたい事があってね。
書斎で話そうか?
というやり取りがあったかもしれない夏のお話。
出かける時に、爽やかとまではいかないけど、オシャレさんに進化したのは、おしゃれ番長さんの意向でした。
***
時間もそこそこ余裕があったので、ハー子さんに梟を飛ばした。
本屋さんにはいつ頃いくつもり?って。
時間は昼近く、ダイアゴン横丁で、ハリー君達と落ち合うそうだ。
そうだ、スプラウト先生にも用事を頼まれてるけど、爺ちゃんも何か欲しいものある?
お菓子はアップルパイとこの間のお土産、まだあるよね?
「スプラウト先生の新しい植物の種かね?」
美味しいデザートフルーツみたいだよ、楽しみ。
特になければ、何か大枠で、お菓子、食べ物、変わった小物、とか?
「う〜ん、そうじゃのぅ、なんでも揃っておるからのう。」
じゃぁ何かお茶か、目についたものね。
それから見てきた事を話すよ。
すごい人出なんでしょ?
というか、改めて教科書を買うのは大変だよね。
親御さんは痛い出費、まぁ基本の授業料が無いから恵まれてはいるんだろうけどね。
「防衛術の教科書は、本来、新しくする必要は無いんじゃ。
じゃから、クィレル先生の教科書は売り払わずに残しておくんじゃぞ」
基本共通で少し買い足す事はあっても、何冊も新しくするってのは、新入生以外は無いはず?
「そうじゃ。
選択科目が増える時や、特別な授業に必要な場合だけじゃ。
基本教科は新入学の時、そして進級時も基本の教科書に少し足していく。
別に前の教師が指定した教科書を使ってもいいんじゃ、今回の指定教科書を必須にした所で、教える範囲というのは、本来それほど違うものでもない。
つまり今回だけ、防衛術の教科書を全学年が買いなおすという訳じゃな」
『罪悪感は?』
それに校長は肩をすくめた。
『実は、あれ、読み終わっちゃった』
全巻、ひっそりと図書室の新刊コーナーに分けられていた。
司書先生に、これオモロイって聞いたら、微妙な顔になってた。
「どうおもったかね?」
校長の目を見る。
魔女子さん的にかな。
ロックハート先生は、魔法省の特別エージェント?
それともコメディアン?
優秀なリポーター、小説家、文章力構成力もある。
楽しい小説だったね。
彼は注目の作家の一人だね。
エンターテイメント業界に向いてるよ、精神的に病気じゃなければね。
それに校長は神妙な顔をして頷いた。
怒らないで、うむ、だって。
きっとね、英雄賢者フィルターをもってたら騙されるけど、この人、スンゴイ笑いそうになってる。
もう、そういうのいくないよ?
「すまぬの」
ちょっとは隠せよー!
呪いの噂、マジかよーどんな罠なんだよ!
もしかして今回も補填で何か事故物件当ててるとか?
「今年の教科書は転売に向いておろう?」
マクゴナガル先生ー!
爺ちゃんはねーこーいうー人なんだよー
しってるぅー?
「知っておるよ、時々、叱られておるしの」
『それでもリスペクトフィルター付きでしょ。
新学期の防衛術の先生に同情するよ。
来年までもてばいいね、
それに小説……、値崩れして転売じゃなくて処分じゃね?』
で、拳をあててから二人でゲラっていると、セウェルスが校長室にきた。
頭の悪いフィスト・バンプを目撃した彼は、すんごい嫌そうな顔だ。
どうやら、校長がそろそろ時間だぞって呼んでくれたみたいだね。
「何かおかしなことでも?」
ジンクスの話。
防衛術の先生って一年ももたないんだね。
今回の先生はどれぐらい頑張れると思う?
「悪趣味な、教師を馬鹿にするのもいい加減にしなさい。まぁ……半年ですかな」
『それじゃぁ九ヶ月』
「できれば一年もってほしいのぅ」
一番遠かった人が外食奢り。
どこで食事するかは、勝った人が指定する。
「いい加減にしなさい」
「正直のところ、賭けにはならんと思うんじゃが」
『期待の防衛術教師、Mr.ロックハートがジンクスを打ち破ったら、その彼を食事に誘うよ』
「アオイ、冗談にならないぞ?」
お遊びさ。
セウェルスが勝てば、どこにも行かなくて済むか、何か高いアルコールでも頼めば?
おっ?
その顔は、乗り気だね、ダーリン。
「……The Macallan」
「何年物がよいかの?」
「18年」
「儂の秘蔵品にあったかのぅ、アルマニャックのヴィンテージではどうかの、こっちも中々じゃぞ」
「Gonzalez Byassのノエ、ペドロヒメネスの30年」
「それは中々良いチョイスじゃな。アイスにかければ、アオイも食べられる」
それってお酒?
「そじゃ、シェリーじゃな。
うむ、勝負じゃしな。
儂が勝ったら、そうじゃのぅ久方ぶりにロンドンで食事にするかの、ふふっ」
およっ?
二人とも悪い笑いだ。
ロックハート氏は、期待に違わぬお人のようだ。
まぁ私が勝ったら、二人を連れて高級レストランにいくんだも〜ん。
それか負けても、二人を連れてお高いレストランで食べるんだもんね。
ワイ的には、負けても勝ってもいいのである。
***
今日のダーリンもオシャレさんだ。
90年代のオシャレさん、まぁ俳優さん達のファッションを思い浮かべると、グランジシーンが席巻していて、お固くて高級な感じじゃなくて、ちょっとゾロっとした緩いファッションが多かった。
それかクラシックスタイルにクロムハーツやチェーンを入れちゃうとか、少し尖った感じに仕上げる。
もちろん、ダーリンに限って、ゴシックスタイルが似合うプロトタイプならぬ、現代ファッションとは乖離している人である。
何を望んでも、無難ならすべて良しである。
それでもオシャレさんである。
どうしたの、そのさりげないシャツとトラウザーズの美しき比率。
絶対、ブランドでしょ、マグルの。
そいであいも変わらず、黒一色じゃが。
「何故か、今までの服を処分されてな。差し入れと称してすべてが入れ替えられていた。」
それでも着てるんだから、大口スポンサー?
「マルフォイの奥方が、何故か気鬱になったようでな。夫君が言うには気晴らしだそうだ。」
あーわかった。
夏に遊びに行って、おしゃれ番長にダメ出しを食らったんだね。
というか、奥方が耐えられなくて、旦那さんに命令したんだ。
マルフォイ君の家系ってお笑いの血が流れてるの?
「純血貴族の情報網には流れたようだ」
それもあるかぁ。
ダーリン、どうする?
プリンス家を再興するなら、後押しするよ。
「今、目立つ事は危うい。この後に流れるのは、帝王失脚が確実だという噂だ」
噂ねぇ。
「始まるのは、愚か者どもの共食いや小競り合いだ。
目立たぬ事が肝要だ。
まぁ君は無理だろうから、せいぜい、おとなしくするんだぞ」
いつもおとなしいぞ?きゅるるん!
あだだだっ!
「今日は暑くなりそうだな。汗が目に入ったか?」
ちげぇー、お仕置きしてるのダーリン!
ぼーりょくはんたーい!
耳がとれるー
「舐め腐った思考のままにしておくと、喋れるようになってから苦労するぞ。
まさか校長相手に、いつも先ほどの調子ではなかろうな?」
うへぇ、あんなの普通の世間話じゃん。
そもそも爺ちゃんを一人にすると、ロクでもない事ばっか企むぞ?
あんな防衛術の教科書採用したのも、こっちがオーストリアに行ってた間だし。
あの小説、読みやすくて全部読んじゃったけど、どう考えても時系列的に辻褄合わんし、あれが自叙伝なら、カウンセリング必要だってわかるでしょ?
フィクションなら面白いけど、リアル討伐記録とかだったら、対魔法生物戦が事実だとしても、語り手の思考も発言も、統一感ゼロの穴が多すぎて、性格分裂を疑うよ。
そっちのレポートのつもりなら、分かるけど。
「あぁ、虚言と性格分裂の病人の記録文書としてなら興味深いか」
まぁ勲章を貰った冒険家?らしいけど、多分、別の意味で興味深くて楽しみって感じ。
校長もある意味、生きた教材のつもりでしょ?
「高尚過ぎて理解不能、生徒には厄介な一年になろうな」
校長は防衛術そのものの学習を、子供たちに深くはさせたくないんじゃない?
「どうしてそう思った?」
一年ももたないジンクスが、そのままだからだよ。
「そういう見方はある、か」
敗戦国教育と同じでね、そもそも武器を持たせないのさ。
「直接、その思考を伝えたのか?」
爺ちゃんは、あからさまだぞ?
何で誰も言ってこないのか、逆に不思議に思ってるよ。
きっと権威もちの爺ちゃんが、演技、うますぎるんだよね。年寄りの演技。
「事実だろう?」
グリンデルバルド爺ちゃんもだけど、魔法族の年齢が、肉体活動限界とか攻撃力にさー、比例してると思う?
衰えていくのがスタンダードなのは、普通の魔力量の人間だけだよ。
歳をとった魔法使いが恐れられるのは、経験だけじゃないよ。
魔力を使い込むと練度と限界の、枠が拡張するからだよ。
魔女子さんの知識と照らし合わせても、それほど間違ってないと思う。
事実、貴方だって限界を広げるように魔法を使ってるでしょ?
成長期の実力がピークって常識は、強い魔法使いほど信じてないと思うよ。
まぁそれもわざと隠すだろうけどね。
現役の職業魔法使いってのかな、そういう人は実感しやすいんじゃない?
闇祓いだってベテランがヒエラルキートップにいるでしょ。
そりゃぁ若い人の方が荒事に体は動くだろうけど、魔力のカバーを考えたら、やっぱり老猫の方が強いと思うんだよね。
だからヒゲや監獄城塞の爺ちゃんの事も未だに皆、権威以上に恐れてるわけでさ。
「なるほど、限界拡張か」
まぁその手のデータとってる人は少ないんじゃない?
強力な魔法使い様に、どのくらいツヨツヨなんですか?
本当は年齢超越してますよね?なんて言ったら消し炭だもん。
「君の中では化物か?」
違うの?
ワイはアニマルだけど、爺ちゃん、トンデモ食物連鎖の頂点、あんぎゃーって口からブレス吐くレベルな。
ワイ、基本、逆らってないべ?
「その割に、その態度か?」
ワイ、アニマル。
爺ちゃん討伐できるアニマルなんて、雑魚だもん気にしないよー。
そいで爺ちゃん、さも穏当な年寄りの演技してるけどさ。
あれ、やりすぎな。
爺ちゃん本人も、自分の嘘の境界がわからなくなってるし。
爺ちゃん自身が食物連鎖の頂点で、叱る人もいないからねー。
皆、勘違いしてるけど、爺ちゃん、ヒゲはヒトデナシだぞ?
立派だろうけど、成分的にはダーリンと同じで、ダメンズだぞ?
定期的に見張らないと、ヒゲ、またクソ鏡を覗いてたくさいし。
どこに隠したんだか。
ぜったい破壊したる。
呪物め!
「……校長の寝室に殴り込みをかけるなよ?」
眠れない時は、一緒に寝てあげるって約束したよ?
あだっ!
ぶつかった、急に立ち止まるから、鼻が潰れたぞい。
「微笑ましいと、そこで笑うと思うか愚か者め。
他人の寝室を侵略するでない。この肩の上についているのはスカスカの中身の無いかぼちゃなのか?」
え〜ワイ、ローティーン、ガキンチョなりよ?
そして賢者の爺ちゃんとこに、お泊りしたからってなんもねーじゃん。
目頭を揉んで項垂れるダーリン。
きっとこのアニマルにどうやって躾をすればいいんだって考えてそうだ。
「誰も何も心配はしていない。
だが、礼儀と品性は人として最低限守らねばならぬ。
例え化石となろう相手が年寄りだとて、若い娘が入り込むなぞ、けしからん。
ミネルバに説教をしてもらうから覚悟しておけよ」
そこはダーリンの説教じゃないんだ。
「私が小一時間説教をしたところで、何も聞いていまい?
かわりにミネルバが五分程度、涙ぐみながら喋るのに貴様は耐えられるか?」
たえられましぇん、ごめんなさい。
「どのような冷血漢、鉄面皮でも、人としての倫理と知性がティースプーン半分でもあれば、善意の教えを無下にはできまい。」
ディスってるよね、普通に、ワイをディスってるよね。
「それで本日の予定を述べたまえ」
スプラウト先生の御品を引き取る。
帰りに校長へのお土産を購入しに茶葉の店に寄る。
そいでフロリアン・フォテスキューのアイスクリーム・パーラーでアイスを食べる。
コーヒーもあるし、ダーリンはビスケット?
まぁ怒らんで聞いて、多分、彼らも寄るよ。
偶然だねぇ。
状況によっては、フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店は前後するね。
ダーリンはワイの見張り番ね。
「前提として混雑している」
あぁシヌねぇ、ダーリンのヒットポイントが削れるねぇ。
そいでも様子をちらっと見て、元気に夏休みご飯いっぱい食べてるか確認してもいいじゃん。
ウィーズリー家の親御さんがいれば、印象よくするために声をかけてもいい。
まぁ遠くから観察して、ワイのお出かけの見張り番って感じでいればいいじゃん。
偶然だし、きっと私が側にいれば、誰も彼も私の方に気をとられるよ。
ほら、見て、今日も私、可愛いでしょ?
まぁ今日の隠蔽はそこそこ。
あんまりきつめでも駄目だって校長がね。
んで、ダーリン、鼻で笑いやがったよ。
はっ、猿が何を言ってるんだ?ってか!
もう、女の子を褒めてもいいんだぞ!
「猫」
猫?
「小鳥」
うん?
「ウサギ」
小動物?
「そこに猿は含まれない」
……。
ぷぅっと頬を膨らます。
いーもん、いーもん、ワイ、可愛いんじゃないもん、美人だもん。
「夕焼け」
再び歩きながら、ダーリンが呟く。
ホグワーツの回廊、外の陽射しが射し込んで、緑が美しい。
「朝の湖面」
夏だ。
「川のせせらぎ」
わかってるよ、この世の美しさは知ってるけど、人の外側に意味は無い。
「君の紫の瞳」
へぁ〜!
変な声が出た。
それにゲラゲラと珍しく笑う黒衣の不審者。
からかうねぇぃ!!
「からかっていない。
重々、評判を気にしろ。
足元をすくわれるような行動を見られるな。
一つの悪が潰えても、この世は昏い穴が足元に開いている。
君は子供。
君は貴種。
君は、高い能力を持っている。
この世界は、君を引き裂くことなど簡単だ。
私は……。」
私は?
彼は外を眺めて目を細めた。
子供たちの消えた景色。
美しい緑、不思議な魔法世界。
でも、実際、魔法族だって人間で、どこもかわりのない人間の世界だ。
愛する人がいて、素晴らしいと歌うような世界も確かにあるけれど。
傷ついて、失ってしまう、とても恐ろしい人間同士の争いの世界でもある。
彼は失ったし、愛する彼女の息子も、あまりうまくいかない人生をあがいている。
校長が嘘をつくのだって、少しでも希望が欲しいからだと思う。
大きく見れば、この世界の、物語をなぞるだろうこの世界の人も、生きて少しでも幸せになりたいと考えている。
私もだ。
そして私達、マーガレットと私が出会った恐怖は、物語の何かではない。
マーガレットと私が出会ったのは、幻想を打ち砕く恐怖だ。
幸せになりたい人々、この魔法の世界とは、相容れない代物だと思う。
幸せを守るって大変だ。
守ろうとしている人は、大切にしたいんだよね。
まぁホグワーツの校長も、この人も、悪い人ではない。
良い人でもないけどねー
でも、少しでも明日への希望が欲しい。
嘘つき達だけど、人間の中ではまともだと思ってるよ。
改めて思うんだ。
ハリー君のお話の中で、校長とこの人はどういう結末なんだろうって。
異物の混じったこの世界で、彼らは良き終わりになるのだろうか。
私は物語を知らないけれど、一緒に働いていた人、女性の、顔も思い出せない誰かが言っていた。
児童文学ではない、辛うじてヤングアダルトぐらいのレーティング。
子供に向けての教訓話ではなくて、ファンタジー装丁のリアル社会構造が見える話だって。
多くのキャラクターが戦いの中で命を失う。
ファンタジー文脈で見ると不可解。
時代背景込みで見ると個々の人物の行動が納得できる。
人生の選択を迫られ続けたが、最後は主人公が選ぶまでの話。
とても苦しいお話になっていくから、子供だと最後まで物語を追えないだろうって。
夢いっぱいの世界だけれど、ある意味、とても苦しい話運びで結末を迎える。
感動したとも言っていた。
まぁ、だからこそ私は読めなかったのかもしれない。
主人公の成長や、登場人物の苦しみや死を感じたくなかったのかもしれない。
すこし現実に疲れすぎてたからね。
緩い話だったら、斜め読みしただろう。
そしてこうして現実に突き落とされてみれば、知らぬ幸いで救われてもいる。
ほら、前にも思ったけど、誰かのカウントダウンを知っていたら地獄だ。
知らないから、こうして自分の人生の重荷だけを背負えている。
そして物語の結末なんか知らなくても、人生は選択の連続で、ハッピーエンドなんて無い事もわかっている。
私の立ち位置が原作にあるのだろうか。
誰が死ぬのか、誰が失われていくのか。
でも、人間はいつか死ぬのだから、悲しい気持ちに捕らわれる必要はない。
先を歩く人の手を握る。
少し袖口をまくると、更におしゃれだよ〜
「君のリボンが見える」
わぁぉ、よかったつけてくれてるんだねぇ。
やっぱり魔法系金属で作ろうよ、そうすれば違和感なくなるし。
「変化が続いている。このままでいい。」
アクセサリーが欲しいなぁ。
勘違いしないで、ダーリンのだよ。
ベルトのバックルまで黒とか、メン・イン・ブラックどころじゃないよ。
そこまでオシャレにキメてるんだから、あともう一声なんだよね。
メガネ、サングラス、ピアス?
尖りすぎると、アレだしなぁ。
うぉっ、すんごいため息、どうした?
「実はな、生活魔法の部類をマルフォイの奥方に話したら、そもそもが屋敷しもべ妖精達が使う魔法に似ているらしい。
その妖精の魔法についての話から、気がつくとワードローブの貧しさについての説教になっていた。
謎だ。
たぶん、身なりを正せという話なのだろうが、魔法族としてはそれほどおかしな出で立ちでは無い。
むしろマルフォイ邸に呼ばれていた魔女の集団は、中世サバトの魔女スタイルだ。
なぜ、私だけマグルファッションになる?
ルシウスもついでに改造されていた。
私には理解しがたいが、TPO的に駄目らしい。つかれた、もう、行きたくない。」
珍しく弱音。
でも情報収集なわけでしょ?
うすうす正解にはたどり着いてる?
「やっと噂が入り込んだようだ。」
ホグズミードに向かいながら、夏の陽射しを見上げる。
厚底のサンダルは断念した。
足首を挫く未来が見えたので、レース仕様のロマンティックウエスタンブーツだ。
身長は更に高くなるヒールサイズなので、目線が合いやすい。
「君の格式に合わせろという意味だろう。ルシウスは巻き込まれて奥方の気鬱の解消か、不憫だ。」
私の格式ねぇ。
育ちは一般マグル生活だよ。
ジャンクフードも食べるし、お金持ちの生活ではなかったはずだよ。
アパルトマンは、叔母さんと私の女二人が暮らせる程度だし、外食だって月に一回か二回。
ストークされてからは、というか記憶は無いけど、学校と往復だけの生活だったって言われた。
特別に何かをほしいと思わないし、持ち物だってこだわりは無いよ。
オシャレかどうかなんて、女の子の普通の感覚だし、高級品じゃなきゃっていう訳でもない。
「だが、君は忘れてしまっていても、身のこなしが違う。
そして恵まれた者特有の思考だ。
傲慢であっても人を押しのけはしない。
純血の容姿の美しさも、近年は揺らいでいるが、事実だろうしな」
ハプスブルク顎って知ってる?
「ヨーロッパマグルの名門王家であろう。あれも近親婚の結果だな。」
トム・リドルは、それを理解していたのかな?
「グリンデルバルドも同じルートを辿っていたぞ?」
リドルよりは現実的なビジョンだよ。
不思議なのは、どうして逆に行ったかだよ。
「危険な話題だ。時代背景が要因だとしておこう。
だが、それも本人しか知り得ぬ動機が元……」
まぁ、帝王、人間解脱しちゃったしね。
「アオイ、今」
ん、何?
「今、名前を言ったか?」
ん、トム・リドルね。
呻くダーリン。
ワイ、わからず首を傾げる。
んで、暫くしてから、ようやく思い出したように続けた。
「聞き逃していたが、その名前は少数の人間のみが認識している。けっして漏らすなよ」
あれ?前から普通に名前出してたよ?
「……」
唸れ己の記憶!
みたいな雰囲気でダーリンが額に手を置いた。
普通に爺ちゃんの会話に出るから。
ほら、帝王(笑)になった後かな、大まかな概要は爺ちゃんが説明してくれているよ。
丸ごと事実かどうかは別としてね。
質問しても答えてくれないし。
ほら、半純血「クソ◯○○○!」なのに、どーして純血思想になるのかなー矛盾じゃねとか?
いま、Fから始まる罵りが聴こえたような?
まーいーかー
おまけに純血殺すし、あぁ闇の魔法も楽しそうじゃねって言ったら、それは止めてって泣きが入ってた。
ワイ、適正高そうだし討伐されるの秒読み?ぎゃはは!
ダーリンがドシリアスで、じっとこっちを見下ろす。
たぶん記憶抜き取ると、こいつ馬鹿が更に馬鹿になるし、どうすっかなーだろうか。
「同じ死喰い人でも知らぬであろう話だ。
ぜったいに誰にも漏らすなよ。
残党の耳にでも入れば、拒絶反応でなぶり殺しになるぞ」
ワイ、殆ど冗談でできてるから、誰も信じないお。
それに帝王(笑)だし、もういーじゃん。
「残っているんだ、生徒の親兄弟にな。
それも異常者と殺人鬼、野放しの狼男もいる。
マルフォイの親戚やブラックの親戚もだ。」
わ〜豪華だね〜
ほら、血筋も格も、この程度よ。
アニマルは野生の害獣なりよ。
「その考え方もだ。
食事の仕方、人への態度。記憶がなくとも、君は誰かを押しのけることはしない。」
そうかなぁ?
「スリザリンの食卓だから気がついていない。普通のマグルの子供とは、全く違う」
魔女子さんの因子だなぁ、それ。
う〜ん。
過去の魔女の記憶のせいだよ。
礼儀がもしかしたら外れている可能性もある。
中世は野蛮だし、フォークとナイフの無い世代さえあるよ。
「君は与えられることを知っている。
大人に傅かれる事を、その意味を。
相手の欲望を見抜いている。
それは後から身につけにくい。」
じゃぁ貴方だってプリンスの末裔じゃない?
「私の両親は、ネグレクトと暴力を子供に与えた。
痛みと飢えにさらされ、浮浪児と同じであった。
人の暮らしという物は、ここで学んだ。
魔法族でなければ、そもそもが人間のルールを学ぶ事はできなかったろう。
私が受け継いだ魔法族の血といえば、闇の魔法と魔法薬学への適正だけだ。
後は、マグルのろくでなしの男の血がすべてだ。
君の格式は、それこそ純血の魔法族と言える。
あぁ、マグルの世界に戻っても、君は血筋からすれば貴族の末だ。
どちらにしろ浮浪児では側に置くことも憚られるという事だ。」
あ〜うん。
何かわかった。
自己評価低すぎ問題と、善意のすれ違いが見える。
けど、これ子供が言うと生意気なので、黙る。
オシャレ番長に理屈はない。
きっと美意識と善意。
そいで、セウェルスの底辺を走る自己評価からすると、やっちまったな〜かな。
それでも彼は言葉にして伝えてくる。
それは大人になったからだ。
この世の、負の側面を子供に伝える。
血筋、格、恵まれた土壌でも腐る根もある。
でも、貴方は立ち上がって這い上がってきた。
その価値は計り知れない。
その格があるという呪われた化け物の私は、貴方を艀と定めている。
そう、貴方は特別だ。
貴方自身が認めなくともだ。
もちろん、このヘヴィな魔女子さん思考は封印。
『似合ってるよ。衣替えの分は?』
「店を紹介されて、必要な品をオーダーすれば、適当にまとめて送ってくれるそうだ」
なにそれ、いーなー
「女性はそもそも選びたいものだろう」
魔法界のエロ下着が、許せねぇんだけど?
お任せしたら、またゴシックエロ系下着セットが届くビジョンが見えるよ。
「下品な」
ダーリン、中世の男性下着をはけと言われたら、マグルのワゴンセールのお安い下着の方がいいでしょ?
「話題が嫌だ」
セクハラだったね、ごめんね。
ホグズミードに入ると、すげぇ濃いキャラの人物と遭遇。
村人其の一なんだけど、そのお顔は爺ちゃんそっくり。
片手に仔山羊。
ワイ、思わず仔山羊に挨拶。
今日は暑いね〜
うん、オイチャンも暑いからお家に帰るって
オイチャンのヤギなん?
うん、おさんぽー、オイチャン、ちあん?とかいってた〜
オイチャンはどんな人?
おいしーごはん!
あそんでくれるー
うん、オイチャン、奥ちゃんとけんかちゅう〜
女のこどもちゃんともけんかぁ
男のこどもちゃんともばちばちぃ
お兄ちゃんともおこってぇ、夜に泣いてるの〜
だからね〜皆でめぇめぇおしゃべりしてあげてるの
そしたらねぇ〜ヤギの人って呼ばれて、ちょっとまたしょんぼりしてるの、かわいそうだよねー
うわぁ〜
べぇべぇ言ってる仔山羊とアニマルが見つめ合って会話してると、その爺ちゃんそっくりの人が、そっと仔山羊を下におろした。
ヒゲより背が高くて若いね。親戚かな?
テケテケと歩いてくる仔山羊。
と、何故か、頭突きをかましてくる。
あぶないから!
ワイ、護符で弾いちゃうから!
手加減だぞ、手加減、首飾り〜相手は仔山羊〜!
念じたおかげか、仔山羊は爆散しなかった、セ〜フ!
あたま、ごっつんこね〜
あぁ仔山羊の思考って、かわいいなぁ
で、存分にゴツゴツしてから、またオイチャンの所に戻ると片手に抱えられた。
私が言うのもなんだけど、すげぇ変人。
仔山羊の説明なかったら、怖すぎ。
あれ、ダーリン、どうしたの?
無言で去っていく、爺ちゃんそっくりの人を見送っていると、珍しく再び、スラングがその口から漏れている。
マーリンじゃなくてクソッタレね。
「校長の弟で、騎士団の協力者だ。
見回りだろう。
信じたくないが、ヤギに覚えさせて異変や異物のチェックをしてそうだ。
表向きは兄弟仲は険悪、キチガイの変人扱いで知られている。たぶん、表向き、だと思いたい。」
偽装でしょ。
奥さんと子供もいるみたいだし、仔山羊はほのぼの楽しい暮らしをしてるって。
「疲れた、帰りたい」
はいはい、今日は付き添いだけだからね。