おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ、秘密の部屋編。
R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできています。


AVB、或いは静かなる丘と秘密の部屋 ⑧

幕間

 

みぞの鏡をアルバスは私室に置いていたが、テロリストが破壊を目論むので、クローゼットにしまうことにした。

テロリストは怒り、アルバスのヒゲは美しい縦ロールに進化した。

コテで縦ロールにして、美容ミストで固めるという、念の入れ方だ。

まぁそれはそれで楽しいのだが。

 

魔法で鏡をしまい込む。

静かな夜をそれは映し、まるで暗い穴に見えた。

 

クローゼットの扉を手に、アルバスは動きを止める。

己の姿は霞み、影となり誰かが手を振る。

わかっていても、ジッと見てしまう。

あぁそうだ。

 

戒めと郷愁、後悔と思慕。

自ら鏡を割る事はできず。

一人そっと見てしまう。

 

心のなかで疎んでいた事。

それでも愛していた事。

彼女はきっと狂気の霧の中でも、感じていただろう。

兄の心を。

時々訪れる静かな時に、一生懸命、兄の瞳を覗き込むのだ。

呼んでも、呼んでも、もう届かない。

今では恐れの形、影にさえなっている。

自分の中の欺瞞。

失ってしまった過去は、何故かとてもキラキラと輝いている。

皆、若く、当時のままで。

 

『いいかげんにしろよ、ヒゲ』

 

けれど、少女の姿をした魔物がニヤッと映り込む。

ひょいっと家族の姿をかき消して、ニヤニヤと笑う。

アリアナの影をかき消して、かつて停滞した日々をぶち壊しに忍び込んでくる美しい魔物とそっくりな。

悪戯をしようぜと、遊びに誘い出してくれた少年の姿にも似た。

傲慢にふんぞり返って可愛らしくも、命令をする少女の姿が。

愚か者め、この弱虫が!

 

『また、ろくでもない事を考えているな?』

 

アルバスは、サッとクローゼットの扉を閉じた。

不思議な事もあるものだ。

みぞの鏡に割り込むとは、きっと鏡もかち割られたくないということだろうか?

 

「……そう、か。恐れたか。」

 

魔物の血が濃い故に、呪具が恐れた。

冗談に浮かんだ考えが、あんがい真実の答えのようだとアルバスは笑った。

 

***

 

魔法族のお菓子より、マグルのジャンクスナックやファストフードが食べたいな〜。

そう思いつつ、スプラウト先生のお使いを終わらせる。

どうしてそう思ったのか?

そのお店、輸出入品の窓口なだけじゃなくて、輸入食品とかも売ってたからね。

アジア圏の不思議な品々も置かれてたけど、マグルの日本が私の知ってる世界かなぁって又、考えちゃったりもした。

そしてついでに普通のお菓子を買い込んだけど、さすがにジャンクな食べ物はない。

まぁ実際、魔法界はマグルの世界と隣り合わせだから、食べに行くことはできるんだけどね。

さすがに、ジャンクフード食べたいから付き合ってとは言えないでしょ。

食事に引っ張り出してるけど、それはあくまでもダーリンの食生活改善なだけだ。

それで思ったんだけど、ダーリンは、食生活をカロリーバーで乗り切れる人だと思う。

まだ、栄養補助食品が充実していない頃なのでよかったよ。

想像できるでしょ?

カップラーメンもまだまだこっちでは、メジャーじゃない。

よかった。

 

さすがにね、ダーリン、色々お育ちを卑下しているが、その佇まいは自分でいうほどではない。

そもそも貧相に痩せている自認だけど、姿勢を正したら骨格そのものが大きくて見栄えがするんだよ。

むしろさ、兵士のように姿勢を正すと背が高くて威圧感がある。

実際、父親似の顔だって、お鼻の形もノーブルだ。

顎のラインから首筋も端正。

彼をひと目で印象付けるお鼻は、特に素晴らしいじゃない?

異論は認めるよ。

 

女性は魔女の鼻っていって、本物の魔女も嫌がる人多数。

女性の場合ね。

 

鉤鼻は人種特徴としては地中海沿岸や中東にいた人たちの特徴なんだよね。

肖像画とかで描かれると、貴族やユダヤ商人とかに採用されちゃう。

つまり権威とか威厳とか、マイナスイメージもかなりプラスされちゃう。

 

それでも男性の場合は、悪いばかりのイメージじゃなくてクールじゃね?ってなる。

まぁ顔色悪くて目つき最悪で、目の下にクマを飼ってたら舞台の悪徳商人って感じになるけど。

子供が見たら、あ〜悪役って一目で分類できるっていう。

 

そう、彼が私の姿や有り様を指して純血そのものだって言うのと同じく、彼にも出てるんだよ。

魔法族の血がね。

父親のお顔立ちにそっくりだったから、マグル割合八割?

いやいや、違うでしょ。

 

彼の反骨心も、マグルの父親の血だけでなく、魔法族の血が出ているんじゃないかな?

実際、純血の血ってスンゴイ果汁100どころか煮詰まった毒物状態だと思うんだ。

そこにちょこっとマグルの血が混じったって、やっと良い部分が出るぐらいの要素だと思ってる。

 

ワイの血族それね。

どんなに外の男を夫に選んでも、この私のような化け物になっちゃうのよ。

話はそれまくっちゃったけど、そんな彼にカロリーバーは、私の中の美意識高い系魔女子さん達が許さない。

別に純血云々じゃなくてね、なかなかに整った魔法族の男に、栄養補助食品とかインスタントな食生活をさせたら、美意識がシヌ。

 

それは駄目、それは緊急事態の時の、非常食。

そして目に浮かぶ、研究三昧の男の傍らに、カフェインとインスタントの食品の山が。

だめ、それはだめ!

腹の出た中年男はだめ!

彼の骨ばった美しい手と腕を守るのよ!

 

……

……

……

 

 

闇の帝王のさー血の縛りが見えたから、彼を初対面でキャッチしたけどさー

魔女子さんの記憶でも、実は好きなタイプなんでしょー

わかるんだー

ダメンズで、マッチョじゃない感じの、ちょっと知的なタイプが好きー

内なる葵ちゃんも、ファザコン気味だしねー

いやぁ、皆、結局、好き嫌いじゃぁ〜ん!

 

等というアホ丸出しの脳内会話は、伝わらぬようにガッチリガードしてる。

まぁ伝わっちゃったって、好感度ダーリン高めでダーリンちゅき!っていうアホ思考なので問題ない。

現実逃避?

そりゃぁね、ダーリンじゃなくても人が多すぎだよ。

爺ちゃんの悪巧みで、買い出しの人間が増えてるのは確実だと思う。

バーゲンならぬ、新学期準備ね。

 

目の前に広がるダイアゴン横丁は激混みである。

 

そういえば、肉食植物飼ってる先生は生きてる?

 

スプラウト先生の南国フルーツの種を受け取って思い出した。

寝室で肉食植物育ててるチキチキレースしてる先生。

ちなみに、予想ではシニストラ先生だと思っている。

あまり会話したことが無いエキゾチック美人。

 

「何でそう思った?」

 

これ言うと確実にゲンコツをもらうだろうなぁ。

 

「言ってみろ?」

 

寝室で植物栽培してるダーリンの……だと思ったから。

 

もちろん、ダーリンの秘密の……ぐへへっ!

 

って伝えたら、すんごい表情をされた。

片方の眉をあげて、お前、信じられねぇ想像しやがったなって。

 

現在、道の端っこ、茶葉の店の前である。

 

「口に出したくもないが、職場ではその手の行動は一切していない。

そして言っておくが、多分、君と私以上の彼女とは年の差がある。

もちろん、女性の年齢云々を持ち出したくないが、許容範囲外と伝えておく。

そのおが屑のつまった頭部によくよく刻み込んでおけ、愚か者が。

さらに言えば、寝室に入ったわけではなく、ミネルバ共々、茶会の席の話題で現物を見ただけだ。」

 

職場では?

 

「悍ましい事を考えるな、ミネルバに、一時間説教コースだ。」

 

職場では?

 

彼は立ち止まると天を仰いだ。

私も空を見る。

何故か、ダイアゴン横丁の空は曇っていた。

今日、晴れてなかったっけ?

 

「私と意識を繋げていても、正解は汲み取れないという意味か?」

 

そりゃ、ワイ、子供。

ダーリンの私生活はわからんちんよ。

わからないように、それこそ親が守りを与えてるかもね。

だから、成人後は進化する可能性大。

ダーリンとの関係性の密度によって、危険レベルが変化。

ワイ、今のうちに謝っとく。

きっとね、純血の血の呪いとしては典型的じゃないかな?

 

「密度とは?」

 

それ聞く?

闇祓いのおじさんがキレてたの、これでしょ?

そいで、ワイとダーリンの場合、エッチなしでこのレベル。

 

「つまり魔力交流の濃度によっては……」

 

魔力交流っていうか、はっきり言えばエッチしたらどうなるんだろーね〜。

あ〜激怒する前に、マジな話だってばよ。

これ本当に、深刻な話だから。

 

問題は、やっぱり抗魔力。

パートナーマグルだと、極端な二択だったんじゃないかな。

鈍くて魅了に反応できないか、犬化。

魔法族の場合は、どうなるか未知。

レベルが釣り合っていても、その、いろいろ致した場合の予測がつかん。

いいよいいよ、ワイ、ますます人外ね。

 

ほら、尼寺へ行け!って意味は違うけど、何か業が深くて、アオイちゃんローティーンで絶望よ?

つーか闇の生物で、その手のいる?

 

それにセウェルスは、会話が周りに聞こえないよう静音の魔法を使った。

 

「君は人間だ」

 

でも、それは希望的観測。

 

パス相手の身体に危害が加えられるとアンテナ立つ訳で。

じゃぁもっと深く結びついた相手は?

旦那や子供は?

 

きっとさー私を確保したい人って、能力の遺伝とか、こういう部分を研究したいんだろうね。

妊娠中はどうなのかーとか。

って考えたら、セウェルスが苦々しい表情で呟いた。

 

「君は人間だ。繰り返すが、君が頭で考えることには、ノイズが混じっている」

 

ノイズ?

 

「君は自認するほど強くはない。

君に触れたからと言って、誰も死にはしない。

君に触れて死ぬのは、君が嫌がる相手だけだ。

それも私の護符によってだ。

 

君が健全に愛を育み、結婚をし、子供を作る未来はある。

君の未来はある。

そしてな、愚かな勘違いしているようだが、君は、まだ子供なのだ。

まだ、子供でいていいのだ。

悩む問題を選び間違っているぞ。」

 

うん。

 

「そして不本意ながら我輩とも共通する合理主義により帰結するであろう考えと行動が目に浮かぶ。

故に、一つ忠告をしておこう。」

 

うん?

 

「試そうとはするなよ?」

 

目が合う。

 

……。

うむ。

 

何が言いたいのか、ツーカーで通じちゃうのは、別にパスが繋がっているだけではない。

そもそもの思考パターンが、非常に似ていたりするからって訳で。

ワイ、疑問があったら即試すアニマル。

そいで未来の私がやりそうな行動パターンと言えば。

 

ダーリーン、あのさあのさーもう大人になったからさーっ〜

 

アホがアホのまま成長すれば、必ずやるだろう行動。

つまり?

 

あそぼーぜーのノリで、やーらー「黙れ」

 

ごめんごめん、ふざけすぎた。

 

「何を恐れている。」

 

貴方を傷つけたくないんだよ。

こんな偽装、大丈夫なの?

 

「以前にも同じ話題を繰り返した記憶があるが」

 

私の存在で不利益を被る人はいない?

貴方が愛する人、貴方を愛する人。

大切にしたい繋がりを壊さない?

何度でも聞くよ。

噂もまわり始めたんでしょ?

ヒゲが隠蔽を緩めろって、今日も二人で出歩くのを止めなかった。

 

彼は顔をこちらに向けた。

やっぱり器用に片方の眉があがったままだ。

 

「だから、謎の婚約者か?」

 

うん、誰だかわからないけど婚約者がいる。

それでいいよ。

それ以上は望まないよ。

標的にわざわざなる必要はないよ。

 

それに眉を戻すと、何故か笑顔になった。

 

「勘違いしている。

甚だ馬鹿らしい勘違いだ。

平穏を望むような人間ではない。

理想、未来を望む形にしようとする輩が、口だけの弱腰ではいられまい。

 

口だけの、詐欺師に誰がなるか。

校長も私も、既に選んだ。

 

それに落伍者の私に何がある?

私はもう、失って惜しいものは無い。

 

君の慈悲は的外れだ。

それこそ大人の、男の私が、未来ある君を思いやるべきだろう?

守られる君を利用している。

どちらが悪いか、はっきりしているだろう」

 

きっぱりと言い切る相手に、私は、ちょっとばかり悲しくなった。

私は、馬鹿だなぁ。

 

嫌な告白をさせてしまったね。

じゃぁ男らしく私は責任をとらないとな!

 

「君はいつから男になったんだ?」

 

君はいつから女の子になったんだい?

 

「腰抜けだと?」

 

それでも大切にしたい人ができたら言ってほしい。

私は誰かの幸せを奪い取ってまで、生きていたくない。

 

「ナンセンス。

私がいる限り君は死にはしない。

そして私が永遠を誓うのは、彼女と私の過去だけだ。」

 

私は何だか、感動していた。

かっこいいなぁ、ダーリン!

 

でもいいんだよ、全てを私に教えなくてもさ。

 

「彼女と自分の時間に、私は誓った。

だから君が憂う事は無い。

それを伝えたかったのだ。

過去は揺らがぬし永遠だ。

誰も私達を壊しはしない。」

 

大丈夫って事?

 

「わからずともよい。

私に思いやるほどの縁は、すでに無いのだ。

そして憐れむ必要も無い。

私の永遠は変わらず、輝きの世界を知っている。

そしてよくよく今の私を見ろ。

君の目の前にいる私が、必要としているのは何だ?

私に必要なのは睡眠だ。

女の寝室に忍び込んで更なる煩わしさを求めると思うか?」

 

薄い灰色の混じった黒い瞳。

やはりどこか東洋の瞳とは違う色合いである。

それを一心に覗き込む私がうつる。

変だね、泣きそうな顔をしてるな〜私。

 

正直に言うとね、私は貴方といると楽しい。

だから奪うのは嫌なんだよ。

我儘ばかりだしね、トラブルは貴方に押し寄せる。

きっともっとディープにね。

 

「何かまずいものを食べたか?毒味をしていたはずだが」

 

相変わらずの返しに、瞳の中の私はぎこちなく微笑んだ。

 

パパラッチがいる。

 

ごめん、と伝えると、何故か歓喜の感情がどっと相手から押し寄せた。

 

あれ?

彼は、ゆっくりと息を吸い目を細めた。

心底、楽しい?

あれ?

予想外。

何で?

 

彼は私の肩を掴むと、人の流れから庇うように壁に体を押し付けた。

 

「…護符のデータが収集できる。遅効性と即効性の両方の効果がある。

許可なく君の情報をカタチとして写し撮ろうとした場合、どうなるか。どいつだ?」

 

背後、男女カップル。

まぁもしかしたらパパラッチじゃなくて観光客かもだけど。

 

「悪意の反応域も情報収集できるか、距離を見たい。ビジョンを、明確な映像を頭に浮かべろ」

 

生き生きしてきたぞ。

どんよりしたお疲れ様状態から、スイッチオンだ。

あ〜何か、馬鹿らしくなってきた。

 

「アオイ、私といると楽しいんだろう?私もだ!」

 

うん、それスンゴイ違う意味だよねー。

まぁいいか、喜んでもらえて幸いだよ。

でも呪いでどうかなったとしても、それをどうやって知るの?

 

「解呪不能で広がるのにか?

タイムリミットは何をしたかにもよるが、まぁ写真なら十日以上は耐えられるか……」

 

いや、小首を傾げられても。

可愛いぞ、ダーリン。

まぁ呪われて、助けを求めても、高レベルの呪詛だ。

常人には解呪不能。

 

校長に助けを求める?

 

「腕の良い癒者や呪術師なら、祟りの広がりを見て手を出さぬだろう。」

 

祟りって言っちゃったよ、この人。

 

「闇の魔法の本領であるぞ?

詫びを入れてくるはずだ、腐れて死ぬ前にな。

で、この娯楽以上に楽しいことが女のベッドにあるのか?」

 

駄目な大人だなぁ。

 

「そのとおり。さぁ婚約者どの私が触れてよい場所はどこだ?次の店に行くぞ」

 

美声で囁かれても、オコチャマとしては苦笑しか浮かばん。

 

了解、写真を撮りたくなるアングル確保ね。

どこでもどうぞ、あー説教追加はずるいよ。

聞いたのはそっち。

で、いつも通り手を繋ぐ、それかウエストに腕を回す。今日はヒール高いから不自然じゃないでしょ?

肩でもいいんじゃね。

 

「言っておいて何だが、抵抗感でこちらが先にダメージを受けそうだ」

 

そんなに嫌かよ!!

そいじゃ手を、ほら手を出せ!!

 

んで手を繋ぐダーリン。

見つめ合うと言うより、なんというかカメラフラッシュを待つ。

ペカッ

 

「Yes!」

 

すごいなぁ、今までで一番生き生きしてるかも。あー貴重な薬草を採取してる時と同じぐらい?

冒涜書籍の時もか……。

 

そして嫌がってた割にデータ収集になると心理的ハードルがぶっ壊れるようだ。

人混みの中、ルンルンで腰に手を回すダーリン。

まぁ表情はいつも通りのしかめっ面だけどな。

そいで私に触れてるようで触れてない。

 

大丈夫だよ。ちゃんと抱えててよ。

むしろ嫌がらせしてるみたいで、こっちが嫌だからさ。

それに実際、とんでも無い混雑なんよ。

抱き寄せてもらわんと進めない。

茶葉の店で校長の好きそうなのを二種類選ぶ。

 

再びのフラッシュ。

ダーリン、すんげぇ目の奥がキラキラ。

そりゃもう悪役の高笑いをしそうになってる。

我慢しろよ?

 

「抵抗力にもよるが、フィルムだけでなく、虹彩にも焼き付くだろう。ぜひ、見たい」

 

サイコ発言である。

目を取りだしたいと?

 

「無駄にしてはもったいなかろう」

 

ドン引きだよ、ダーリン。

 

「虹彩部分に呪術方陣が刻まれる仕様だ。是非にも呪いを解く前に観察記録が欲しい」

 

呪いが?

やだ、それ、すんごい解呪不能にならん?

 

「何を言っている。

最初から、解呪できない仕様だ。」

 

いやいやいや!

 

「警告は、連盟の記録にも残っている。何処が問題だ?」

 

爺ちゃんに怒られるよ。

 

「君に被害が及ばぬ事こそが、世の平らかなるを守る事になる」

 

いや、それやり過ぎ。

ポーカーフェイスで、ウキウキすんなや。

 

「腐れるのは体だけではない。チラチラと幻影が見えるようになるだろう、それも己が恐怖の形でだ。

この術式の復元には時間がかかったのだ。元は南米アステカで行われていた蛇神との誓約の儀式に使われていた。死喰い人の印もこれに近い要素で構成されていてな」

 

うん、正気にもどれ、マッド、早口やめろ。

あ〜訴えられない?

 

「訴えてみればいい、私が証言台で盛大に嘆いてやろう。

駄犬がいるとな。

躾のなっていない駄犬が、まさかイギリス魔法族にいるはずがないとな」

 

わ〜ひでぇ。

それ魔法省のお役人同士で責任の擦り付けあいになりそうじゃん。

 

「そもそも未成年の撮影は禁じられている。保護者の許可なくば、そもそもが不法行為だ」

 

あぁ、そうだった、ワイ、未成年だった。

 

「それよりも先に淫行の罪で、私が裁かれる方が確率が高い。

無念である。

教科書購入の為に保護者同伴。

言い訳がどこまで通用するか、面倒くさい。」

 

いや、どんよりするなよ。

そう言いながらも、ワイの頭部に顎が乗る。

どうやらヒール分、ジャストフィット顎下になるようだ。

ラブカップルの演出だろうが、ペットを押さえる飼い主が真実の姿である。

そいで呪われつつあるパパラッチカップルは、だんだんと隠れている事を忘れ、どう考えてもお前ら記者だよなって様子に。判断力も呪われてんのか?

 

「もう少しヒリヒリするラインで、呪詛を組み立てるか……カメラマンだけで、連れに飛び火していないな」

 

そういうチキチキはやめなよぅ。

だからさぁ、護衛でいいじゃん。

 

「甚だ不本意ながら、人は信じたい事だけを信じるものだ。」

 

まぁ確かに、私の能力的に、ダーリンは犬だと思われている。

エロ込みのね。

 

私が、そういう生き物だと思われてるって事だよ。

普通の女の子だったら、耐え難い話、になるのかな?

葵ちゃんは、その点、欲望を向けてくる大人が怖かったし潔癖。

今の私?

どっちもかなぁ。

能力が戻り始めてるからかな、怖さは自分の中身になり始めてる。

それに1人ではない。

私の評判も地を這うだろう話、なんだけどね。

つまり私がビッチだと言われようと、男を食い物にする化け物と言われようと、実はどうでもいい。

私の好きな人達が攻撃されなきゃね。

私のせいで、苦しまなければどうでもいいんだよ。

 

巻き込んで、盾にしている男も含めて、ね。

 

欺瞞?

そうかも。

それでもやはり艀は一人で、帝王なんぞに縛られるのはもったいなくて、手放せない。

それに彼はとっても変わっていた。

変わっていて、安心できた。

 

ダーリンは駄目な大人だが、ホグワーツの生徒のくくりになると倫理観ガチガチ。

最近は少し慣れてきたけど、それはワイがアニマルでガキンチョだからだ。

手加減してくれてるわけじゃが、世間は元死喰い人でアンダーグラウンドな彼の倫理観を信じてはいない。

むしろユニコーンぐらいのガチな子供に対するブレーキを持ってるなんてのも、誰に言っても笑い話にもならん訳で。

 

そして犬だと憚りがあるから、婚約者(仮)。

でも世間の理由を知らない人達からすると、これがねぇ。

ダブルスタンダードとか暗黙の了解は、純血の間だけで通じる話で、この爆弾を普通の魔法族に渡すと、単なるスキャンダルになる。

 

実は、必要に迫られた苦肉の策であり、私自身の命綱にもなっている。

イギリス魔法族の男が好きな私っていう囲いね。

 

そうでもしないと、父親の血筋を持ち出されて、イギリスから連れ出されてしまう、誘拐される可能性もあるわけよ。

嫌な、可能性無限大。

 

そうすると、先程の、ダーリンに迷惑が降りかかるって話になるわけ。

さすがの魔物、アニマルも良心がシクシクするのよ。

だって実質、ダーリンは恋人でも犬でもない。

恋人?

そりゃぁもう、そうなったら使い潰すし。

犬?

そりゃもう、そうなったら使い潰すし。

あれ?

艀だから、まだマシ?

おや?

等とヒトデナシな事を考えながら更に移動。

すんげぇ人だかりと行列に遭遇。

もしかして……。

 

「取り寄せでいいんじゃないか?」

 

おしゃれな立て看板に、チョークでデコられた宣伝文句。

 

サイン会

ギルデロイ・ロックハート

自伝『私はマジックだ』

 

午後十二時三十分より十六時三十分まで

 

泣き事がダーリンの口からこぼれ出た。

女性達がキャイキャイしながら並んでるのを見て撃沈。

むしろ力が抜けて、演技じゃなくしなだれているが、マジで帰りたくなっているようだ。

ハリー君に会ってないぞー!

 

「君の情報網を駆使してくれ、グレンジャー辺りに後で聞き込みを」

 

ハリー君との好感度を上げて、財産管理が大丈夫かとか知りたくねーの?

 

それから女は野犬の群れじゃねーんだよ!

 

と、半分ハグと言うよりダメな大人を引きずりながら進む。

幅広い年齢層にファンがいるけど、うん。

ローティーンとマダムという、なんというか中間の適齢期は何故かいない。ふっしぎー!

 

そいでもその列を避けて本屋に入る。

ごちゃっと積み上がる本の数々。

普段は閑散としてるのに、今日はギチギチ。

 

まぁほぼイチャツイテル様子に見えるだろう私達の姿に、逆に慄くギャラリー。

倫理の踏み絵、あの行列に保護者がいたら笑える。

 

まぁごめん。

確実にいるわなぁ。

あのねーペットの散歩に疲れた飼い主なんよー残念!

そいでダーリンも諦めてる、潔いね〜おもれーな!

 

「覚えてろよ」

 

と、言いつつもなすがままなのは、プロフェッショナル演技と言うより、パパラッチと言う被験体がどうなるかのほうが気になるからだ。

カウンターの店員がビビり散らしているが、ワイ、優しいよ。

んで、防衛術の本を買う。

と同時に通りから、ばたっガラガラがっしゃ〜ん!

 

ダーリン、パパラッチ、とうとう吐血したよ〜?

外でひっくり返ったね。

 

「視線を向けるな」

 

アイサー、そしてもう一つ、本屋の上の階から視線を感じる。

すんごいビビり散らしてる。

見ていい?

 

「アオイ、本のカバーや書影を見たか?」

 

ましゃかぁ〜、有名な冒険家で防衛術の教授になろうというお人が、ビビるわけないじゃ~ん。

ワイ、バンシーより穏当よん。

 

「防衛術講師として最低ラインはクリアしているということだ。」

 

ワイの魔力が?

 

「君の、特別な血が見えるのだろう。」

 

そうだ、ちょうどいい。

挨拶をしていこうよ。

との、私の声に普段なら怒るだろうが、何を考えたのか彼は頷いた。

人と本を避けつつスロープのある階段を上がる。

 

あぁいいねぇ、本屋さんて。

ホグワーツに特別な部屋を作って、オモロイ本を置くけど、閲覧ルールを作るからね。

夜ふかし駄目とか、ルール守れる子だけに貸し出すから、ダーリンも守ってね。

 

「楽しみだ」

 

ルールじゃなくて発禁本がだろうなぁ。

んで、奥の狭苦しい棚の影に、人がいる。

残念ながら隠れてる意味がないくらい見えてる。

ワイから声をかけるか?

 

「それは無しだ」

 

なるほど。

でも、いくら待っても出てこない。

と、ダーリンが舌打ち。

相手は恐る恐る出てきた。

 

はぁ~い!

ミスター冒険家。

防衛術教師なんだろう、賭けの種なんだ、頑張って勤めろよな!!

 

とは言わずにおとなしく微笑む。

 

金髪碧眼のハンサム、少し前の歯磨き粉のコマーシャルに出てるような顔だね。

そしてびっくりするくらい、私に対する反応がマイナス。

 

予想:う〜ん、もしかしてQueen?

 

ダーリンの笑いのツボに、キルショット!

いや、冗談のつもりないしゲイなのかなぁって。

闇祓いにオネエサンもいたし、この世界って中々に、オープンマインドじゃん。

それとも本当に有能な人?

 

「それは無い」

 

無言で対峙していると、彼は挨拶をしてきた。

ガクブルで。

抗魔力は中々、拒絶具合が半端ない。

つまり雇っても私に血迷わない男を選んだわけだ。

そして適度に教師としては不適格……ヒゲ、性格悪すぎ。

 

「えっとサイン会まで、待ちきれないのは分かるけど、時間は守ってね」

 

確かにあれだけのファンが集まるなら、普通の発言。

すんげぇ怯えてなきゃね。

無言で対峙していると、先に小説家が泣き出した。

 

「すみません、すみません、すみません……」

 

あ〜ダーリン、この人、病気じゃね?

あり得ると言う感じで、セウェルスは頷くと私を促し階下に戻った。

どうやらひっくり返ったパパラッチの騒ぎを避ける為の時間潰しのようだった。

 

「抗魔力、魔力量の簡単なサーチをした。

思うより高度、思ったより奇妙な魔力運用。

ただし、中身も人間だった。」

 

あ〜寄生されてないか、それが気になったのね。

 

「ただ」

 

ただ?

 

「私の方で、すこし」

 

少し言いにくそうに彼は囁いた。

 

「魔法を弄り、中身を覗く要領なのだが、相手には気が付かれやすい。

使い勝手の悪い改変だが、奴は、その点、その緩くてな」

 

何か見えた?

 

「君を見ると、獣の姿に見えていた。」

 

どんな?

もしかして、もしかするとワイのご先祖じゃね?

 

「獣の姿であるが、犬科の生き物のようだ。

巨大で白い影だが、四つ足。

思うより、あの男、カスではなさそうだ。」

 

カスって言ったよ。

小説家をカスって。

あ〜わかってるって、ホグワーツの教授職とすればって事だろうけど。

まぁ面白いね。

私が獣に見える。

つまり人間の姿じゃなくて、私の母方の血筋が見えてたんだね?

 

「そうなるな。真実味のない経歴も意味を持つ」

 

どういう事?

 

「ろくでもない事を言いふらしても、誰も信じない」

 

日頃から法螺吹いて、フィクションもノンフィクションも混合してたら、すごいねぇで終わるし。

本気の輩の殺意も見逃してくれるってわけかぁ。

 

どんな獣かなぁ。

ワイ的には、神系だと狐。

憑き物系だと犬。

大陸由来なら、狼かな。

 

女の子的には、杖と同じ狐様がいーなー。

 

「その基準がわからぬ」

 

美人の妖魔といえば、狐だからね。

東洋神話の狐は、男を騙すのだよ。

 

「なるほど、だが、君の気質は犬ではないかね?」

 

憑神としては凶悪だけど、犬は従うものだ。

そして狼にしては、私はワイルドライフといっても、小賢しすぎる。

 

「なるほど、自己認識はできているようだな。」

 

ひでぇ。

お狐様あたりなら、この杖との相性も納得できるでしょ。

天狐は狐火という火を扱うしね。

人間の男と添い遂げた狐だっている。

高名な呪術師、陰陽師を産んでるね。

マホウトコロでもメジャーな偉人じゃないかな?

 

「ほぅ、それは面白い。しかしあの男が教師となると面倒だ。すこし対策を考える。

君の何に反応して見えているのか、隠蔽の術式を少し弄らねばならんな」

 

聞き流してたけど、ダーリン、術式、魔法術式を改変したり弄ってるよね。

 

「あぁ」

 

それ、普通、無理じゃね?

 

「多くができたとしても隠しているだけだ。」

 

いや、それ、爺ちゃんズとか、賢者レベルならやってるって意味でしょ。

ねーダーリン

ちょっとさー

もっと天狗でいいんじゃね?

つーかプライドエベレストなのに、なんで自己評価微妙に底辺ランナーなの?

 

「テングとは?」

 

そこじゃねー!!

 

「だが、今日はアレが教師だと確認できただけでも、メリットがあった。

校長は、君の言うとおり防衛術そのものを学ばせたくないのだろう」

 

それな。

でもさ、その方針もそろそろ転換必要じゃない?

 

寄生体、闇だろうがなんだろうが、攻撃力と防御力高めてないと、あっというまに魔法界壊滅だよ?

と、言ったら、唸るダーリン。

 

そーいや、パパラッチの人はどっち方向へ。

 

「あちらだろう」

 

と、指し示された方向は、極端に人の流れが少ない。

歓楽街?

 

「いや、あまり治安のよろしく無い通りだ。」

 

見学は?

と、彼の視線の先には、どこか見慣れた姿。

マルフォイ君と、保護者かな?

行ってみる?

 

「隠蔽と静音を重ねる」

 

で、通りに入ると同時に、キツめの隠蔽がかかる。

それまで抱えていた腕を外そうとするので、押さえた。

 

言い訳が立つよ。

隠蔽のね。

 

「そういう知恵ばかり回る」

 

呆れたように歩き出した。

つまり、お忍びでイチャイチャしてたから、そっちも黙っててねってバレた時のいいわけね。

ダーリンの評判ガタ落ち!

 

「元から落ちるほど、高くない」

 

いやいやいや、最年少天才ポーションマスターでホグワーツ教授ー!!

 

「さっきのアレが座れる席だ。

更に言うと、私の場合は政治だ」

 

ヒゲー!!

ブラックに働かせすぎて、感覚がおかしくなってるぞー!!

 

何ぞと話しながら、後をつけた。

 

「ルシウス・マルフォイ、ドラコの父親でスリザリン卒。マルフォイ家は現在純血筆頭、死喰い人でもある。」

 

元?

 

「裁判では脅されて協力者となったと証言し、金を積んで放免。実質、帝王が戻れば復帰する。」

 

戻らなかったら、そのまま?

 

「彼の場合は実利だけだ。純血の家を守りたいのは本意だが、そもそも彼の家も子供がドラコ以外育たなかった。跡継ぎ問題もあろうし、帝王が家族を殺すと言えば逆らえないのは事実だ。

もちろん、利益を見ての話だがな。

マグルは嫌っているが、彼の収入源の荘園や事業はスクイブとマグルが働いている。

労働力として、彼らを酷使している様子はない。」

 

つまり、校長チェックも今のところ潰すとはなっていない?

 

「息子は死喰い人になれるだけの捻れた育ちをしていない。一人息子を失う可能性があるかぎり、親は子に役目を与えないだろう。」

 

あ〜いい子だもんね。

 

「ルシウスも奥方を愛している」

 

まっとうなんだねぇ。

 

「いや」

 

否定、そこで否定。

 

「ルシウスも私と同じく、帝王から印を与えられている。そして純血思想をもった氏族の頭領だ。」

 

あ〜。

でも、帝王、ジ・エンド、バキューン!

 

「不可逆だと思うか?」

 

見たでしょ?

 

「確かに、戻ってきたとしても、アレはもう人ではなかろう」

 

人間の肉を取り戻しても、器だけになると思うよ。

元の人格もコピーの何か。

それにマルフォイパパは従うかな?

 

「微妙だな。頭の悪い奴らは気が付かずに従うだろう」

 

化け物みたいな姿でも?

 

「あぁ」

 

すごい信仰心だね。

 

「同意だ。店に入ったな。何か処分するつもりだろうか」

 

胡散臭い店構えが並んでいる。

どちらかというと、魔法界らしいのはこっちだと思う。

その中でもひときわ店構えが立派で大きな、それでいてどう見ても胡散臭い店に、マルフォイ親子が入っていった。

隠蔽だけじゃ忍び込めないよね?

 

それにダーリンは肩をすくめた。

 

「なら、誰かを突っ込ませればいい」

 

普通にヒトデナシ発言の後、路地横で泡を吹いてる相棒を介抱していたパパラッチを魔法でヒョイ。

店の扉に叩きつけた。

 

あ〜

ナチュラルバイオレンス。

 

こういうところがね、もう、本当に犯罪者思考。

誰も彼がこういうタイプだって認識してないのがまた、ヤバい。

荒くれ者思考で、魔法じゃなければ拳がとぶ暴力野郎、バイオレンス言語の人。

 

「虫は叩き潰すようにしている」

 

虫じゃなくて女性。

 

「あれは、虫だ。顔を覚えておけ」

 

叩きつけられた魔法族も立ち上がって頭を振ってる。

ケガしてないね、よかった。

それが何か、という表情のダーリンの腕を叩いておく。

 

手加減してても、駄目でしょ!

 

そして扉が開くと、血相変えて店主が飛び出してきた。

パパラッチの片割れを怒鳴りつけ、普通にバトル開始。

 

あの記者、すげぇガッツだなぁ、誰かに投げ飛ばされて、すぐに復帰するとか。

金切り声の女性記者の声に、耳がキーン。

なんて考えるワイをヒョイッと抱えたまま、彼は店内に滑り込んだ。

とんでもねぇー手際のよさだ。

 

つまり、こんなことばかりしてたのね。

そいで呪物やら怪しげな品々で埋め尽くされた中、どう見てもこっちを見てそうなギョロギョロの目の人形と見つめあえちゃう棚に隠れた。

 

はぁ〜い!

呪物がゆっくりと瞬き。

 

先手:ブードゥー系呪物、ギロリッ!!

後手:ワイ魔力抵抗、なにすんねん、ゴラァ!

 

わぁ呪物、つーか目玉ヤバい回転してるね、お人形ちゃん、バレるから喋んなよなぁ。

うむ、黙っていてやるから、魔力よこせ?

やるかぁぼけぇ!

と、メンチをきりあっていたら、ダーリンが素手で人形の向きを変えた。

 

ぐりっ

 

さわって大丈夫、えんがちょ?

黙ってろ?

アイサー

 

そいで怪しいお店にワクワク、メタルギアソリッドする事になった!

あれ、何か、当初の目的とちがってね?

 

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