おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ秘密の部屋編。
R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできています。
死の秘宝へと続くルートにはならぬ、グダグダ弥次喜多道中の予定です。



AVB、或いは静かなる丘と秘密の部屋 ⑩

グリンゴッツの階段から手を振るハー子さん。

人混みでごった返す通りの向こうからは、ウィーズリーファミリー。

もう陰キャのエネルギーは切れかけている。

逃げ出そうとする背中を軽く叩きながら、道の端に寄る。

 

「スネイプ先生、こんにちは。

それからハグリッドも。

ハリー、アオイも元気そうでよかった。

これからグリンゴッツに?」

 

微妙にワイとダーリンから視点をずらしている。

わかるよ、うん、わかる。

 

相変わらずよね、でも、あまり見たくないなぁ。

聞きたくないしぃ、うん、私、見てない聞いてないもん。

そう、ハリーのことよ、そっちが重要!!

 

って考えてるよなぁ、きっと。

 

「いや、ほら、彼らとはぐれちゃって」

 

代表してハリー君が通り向こうで騒いでるウィーズリーファミリーを指差す。

ブラザーズが人の流れの向こうで手を振り回していた。

ほら陰キャ、奴らの顔見て、一気に面倒になるなよ。

 

「はぐれた?」

 

先に到着したのは、息子さん達だ。

 

「ハリー、よかった無事で」

「あ〜何だかエライ面子だなぁ、でも無事でよかったよ」

 

そして赤毛のおじさんが、息を切らして登場。

ぜぇぜぇしてる、大丈夫かな?

 

「ハリー、せめて一つ向こうの火格子まで、だったら、と思ってたんだが。

スネイプ教授、どうやら見つけてくれたようだね。」

 

それに彼は肩をすくめた。

 

「それでどういう状況だったんだね?」

「道端でする話ではないでしょう。」

「確かに」

「提案ですが、Mr.ウィーズリー。

子供たちは教科書購入へハグリッドに引率してもらい、漏れ鍋で我々は待つというのは如何でしょうか?

ハグリッドもポッター達と話があるだろう、どうかね?」

 

「おぅ、それな」

 

で、大きい人は空気は読めないが、善意百パーセントの人である。

嬉しそう。

陰キャ、ちょっとこの成分摂取してみれば?

ちょっ、触れているウエストに微量なぴりぴり静電気?みたいな無駄に高等な魔術をっあばばばば

 

「奥方は、見えないようですが、その連絡も彼らにおまかせすれば?」

 

面倒というか子供たちをボッシュートしようと提案。

何となく、保護者と会話したいのはわかる。

そもそも魔法省職員でダンブルドア派だよな、このオジサン。

先に意思疎通して、最低限の害意は無いと彼に情報共有するのも、いちおう今回の目的だ。

んで、ウィーズリーパパは、そんな提案をしたセウェルスを一瞬見つめると笑顔で承諾した。

 

「フローリシュ・アンド・ブロッツ書店でモリー達とは待ち合わせをしている。

良ければなんだが、そこまで子供たちを引率してもらえないかね?」

「あぁ、大丈夫でさぁ、買い物はすんでますんで、それにハリーの話も聞きたいと思っていたんでさぁ。

お前さん達は、それでいいかね?」

 

こうして話はつき、陰キャのエネルギー消費は抑えられた。

ウエストが赤くなってたら、責任取ってダーリン結婚して!と、念話を飛ばす。

あばばばば……

 

「痣にはならん。

血流が良くなるぐらいだ。

だが、気になるというなら苦味成分を最大量加えたポーションを送ろう。これで解決だな」

 

体罰禁止を提案する!

つーか、無駄に高等技術な魔法でお仕置きすんなよ。

後で教えてちょ。

爺ちゃんの肩こり解消に効きそう。

 

「生意気な言葉を吐かず、模範的な生徒として教師を敬い、苦言を素直に聞き入れるならば。

そしてこれは練習する為に攻撃力を減弱させたものだ。

校長に向けた場合、自動で反撃されるぞ。」

 

なーるぅほどぉ、マッサージ魔法じゃないのだねって攻撃魔法かよっ!

でさ、反省して真面目になったらなったで疑うっしょ?

おっ図星!ってあばばばば

この筋肉痛に効きそうなビリビリ〜

これの上位互換呪文を正式に杖をつかって成立させると、ステューピファイ、失神麻痺呪文だそうな。

なんつーもんでピリピリしてくるんじゃ!

仕返しにつねり返すワイ。

脂肪分ゼロのウエストが掴めぬので爪を立てておこう。

 

バレないかって?

大丈夫、アホなことをしながら笑顔をキープし、ダーリンは無表情。

ハー子さんだけ、微妙な顔をしてたから、バレてそうだ。

なんぞと、ウィーズリーパパに見えないよう背後で攻防をしつつ、皆に手を振ってわかれた。

子供たちの集団とワイワイしながら、大きな人が楽しそうに消えていく。

ちなみに肉食ナメクジの駆除剤とは?

大きな人の買い物が物騒な件。

ノクターン横丁にて、その薬剤を購入すべく、酒を浴びつつふらついていたそうだ。

相変わらず人生楽しそう。

ダーリンも少し見習ったら?あばばばば……

って、やめれ!

そもそも肉食ナメクジってハイランドにいるんだね。でもキャベツにつくのは……あ〜うん。

 

「キャベツにつくナメクジには必要がない薬だ。

普通はジョークだ。

あの男の場合は、一番薬効が高そうだと真面目に買い込んだ説が有力、もしくは誰かに騙された可能性。

どちらにしろ肉食ナメクジもいるので、経費で落ちるだろう。

そもそもキャベツを何処で育てているのか聞きたい。

いや、本当にキャベツなのか……後で確認せねばならん、クソッ!」

 

移動しながら、ウィーズリーパパの口元がモゴモゴ喋りだしそうになってる。

わかるよオジサン、色々、突っ込みたいけど、どこから球を拾っていいかわからない上に、どこが爆発物かもわからないんでしょ?

そもそも女の子を小脇に抱えている時点で、何で子供たちもそこを指摘しないの?ってなってるよね。

そいで何で、大人で話しましょうっていってるのに、ワイが小脇に抱えられてるの?

ほら、結論、ヤギの人と同じ分類に…あばばばば……これ、腰痛にもいいんじゃね?

是非、ヒゲにも試し……あばばばば!

 

「試すな。

君はヤギではない。

Mr.ウィーズリー、これにも一応理由がある。

聞けば馬鹿らしいとお思いになるだろう理由ですがね。

それにそこで改めて挨拶と自己紹介をさせます。」

 

それにオジサンは、大丈夫?って、私に目配せ。

あ〜オジサン、普通のオジサンだけど、とんでもなく抗魔力高めの人だ。

ん、当たり前だろう?

 

「本人を前にしていうのはあれだが、元グリフィンドール監督生で、魔法省職員だ。

抗魔力、魔力の流れも見えるだろうし、有能なのは当たり前だ。」

「おっ、君たち、やっぱり見えない会話をしているんだね」

「それも含めて、説明します。」

 

そいで漏れ鍋に到着。

本来人目を避けるなら個室だけど、やましいことが無いという前提をもって、壁際奥のブースに落ち着く。

あれほど通りは混雑していたけど、この店はまだ人が落ち着ける余裕が見えた。

常連客がカウンターを埋めてるし、窓際や表のスツールは埋まってるけどね。

 

で、席に落ち着き注文を終える。

何気なく、チップと料金はセウェルスが全部先払いしてしまった。

ウィーズリーパパは遠慮してたけど、話に誘ったのはこちらですと彼は言い切って流した。

 

「静音と隠蔽をかけます、よろしいでしょうか?」

 

と、落ち着いた所で彼が言うと、オジサンは了承の頷きを返した。

穏やかな風貌の人で、うん、魔法省、お役人というか市役所窓口にいそうな人かな。

いかにもウィーズリー成分な外見で、男の子達がパパ似である事がわかる。

 

「まず、彼女の話から」

 

改めて挨拶を交わす。

 

「校長からの、指示の一つ。

簡単に言えば、護衛が主な役目となります。

私の経歴と、加えて彼女と意思疎通、魔力交換が接触無しで行えたからです。」

 

それに対して、オジサンは何の反応も示さなかった。

 

「貴方の疑念、まぁ世間一般からの疑念は当然ですし、理解しています。

虐待などの彼女への暴力をお疑いになるのは当然ですが、こちらの話を先に続けます。

彼女はマグル界にて養育をされてきましたが、事件に巻き込まれホグワーツにて養育と相成りました。

経緯は聞き及びに?」

「イギリス在住のスクイブの叔母君が行方不明、非常に凶悪な事件と聞いているよ。

大変だったね、お嬢さん」

 

ありがとう、ウィーズリー氏。

 

「問題は複数。

彼女自身が受け継いだ資産が莫大である事。

彼女の容姿をご覧いただければ、保護者不在が非常にまずい事もおわかりでしょう。

更に、彼女は特殊な家系故に、血の問題が多数。

ここで全てをお話できませんが、貴種故に、イギリス以外の魔法族による拉致が想定されるのです。」

 

それに対するコメントもなく、オジサンは少し眉を下げた。

 

「彼女の父がフランス、ボーバトン出身、そしてマグル界の家系図もフランス貴族になります。

フランス、ヨーロッパ魔法族からの略奪を阻止しなければなりません。

そうした事案を想定し、純血家は行動していると思ってください。

貴方はたぶん、不思議に思っておられるでしょう、疑問のひとつがこれです。

主流の純血家系は、吾輩が侍る事を了承ではなく、必要と考えたのです。」

 

「つまり、いつものかね?」

 

「故に奇妙、倫理的によろしくない事が、まことしやかに流れても、ある程度は、それを避ける為の口実であると思っていただきたい。」

 

「理不尽な事、君はされてないのかい?

大人は色々屁理屈いってくるけど、嫌だったり、強要されてるようなら、大声だしていいんだよ?」

 

さすがウィーズリーである。

私は思わずセウェルスを見た。

笑いながらね。

想定内なんだろう、彼の表情は何も変わっていなかった。

 

『強要はされていません。薬や脅迫も、されていません。

今もこれからも、きっと彼の側にいれば、恐ろしい事はおきない。』

 

疑わしいと隣りに視線を流すオジサン。

 

「古い純血の家々などから多くの申し出がありました。

彼女の身の上を鑑みての保護、善意。

しかしいずれも、ダンブルドア、副校長とも吟味しましたが、よろしく無い提案ばかりでした。」

 

「その君と一緒にいることでたてられるだろう、悪いとされる噂よりもかね?」

 

「えぇ、まだ、マシだと。

吾輩は半純血ですが、イギリス魔法族、そしてご存知の素性。

素性の悪い人間だから、置かれたとも言えます。」

 

はっきりと言っておけば?

倫理にもとる事はしていないって。

 

「本物の犬と変わらぬのにか?」

 

「犬?何の話だね」

 

不穏な単語に、オジサンの眉が跳ね上がる。

 

「彼女の氏族の事は、聞き及んでおりませんでしたかな?」

 

「貴族の末裔であり、美女の家系で多くの古い家と縁が繋がっている。と、だけだね。まぁ色々な噂は耳にしているが..」

 

「彼女は貴方の末息子と同じ年齢ですが、自身が絡む事柄は伝えています。危険ですから」

 

「しかし、君」

 

「彼女の氏族の女は、複数の犬を従え、飼いならすと。

はっきり言えば、男を籠絡する能力、人を支配する能力が血にながれている。

抗魔力の弱い相手に、彼女の言葉を向ける事は控えさせています。

貴方の息子たちにも、筆談を用いてのコミュニケーションをさせています。」

 

「それは周知の事、なのかね?」

 

「純血の古い血筋は理解しています。

彼らは、貴種と尊ぶと同じく血の支配を恐れているというわけですな。

そしてその貴種の血がイギリス以外に置かれる事をよしとしていない。

故に、この血の力については、公言する事はありません。

彼女の一族の多くが、古い血筋に入っている事もありますし、過去、その支配を受けた犬が未だに生きているのもあります。」

 

「犬、ね」

 

「酷いいいざまですが、その影響力も事実。

枯れ木のような年寄も昔の縁に、彼女を援助すると申し出る始末。

血の雨が降るのが目に見える、悍ましい醜態を晒しておりますな。」

 

「つまり彼女の親族に支配を一度でも受けると、相手が死んでも支配を受けた側は、そのままだって事かい?」

 

「実に厄介。

表の歴史には出ておらぬようで、吾輩も初めて知りました。

古い純血、ホグワーツの幽霊達も知っておりましたな。

むしろヨーロッパ魔法族では、彼女の血を求めて争い続けた様子。

彼女の一族、女たちの末路は何れも早逝となっているのも、それ故でしょう。

過剰な守りに見えましょうが、これも今正式に生き残っているのが、彼女だけ、というのもあります。

事件も、もしやと皆、考えているのです。」

 

そうなの?

 

「あぁ、その可能性も考えている。

例え、スクイブだろうと、その血の子供は、魔法族として産まれる可能性は高い。」

 

あぁ、見落としていた。

あの異様な相手以外にも、身を潜める理由はあったんだなぁ。

 

「事件もその線があると?」

 

「可能性は捨ててはいません。

単に、美しい女が狙われたとしても、ですな」

 

「嫌な、話だ」

 

オジサンにも警告しておいてよ、マグルの世界にお買い物にいったりするの、奥さんと娘さんには、事件が解決するまではやめるように。

それから、魔法界でも、ちょっと嫌な雰囲気だから、奥さんと娘さんだけで行動するのを控えさせてよ。

 

「Mr.ウィーズリー。

今現在の、彼女の事件は未解決です。

魔法省職員の方に、吾輩が忠告するのは烏滸がましい話ですが、マグル界へ、奥方と御息女だけで向かわれるのはお控えになったほうがよろしいでしょう」

 

それにオジサンは眉を寄せた。

 

「彼女の事件は、魔法族の女をターゲットにしています。

情報を改めて拾ってみると、イギリス国内では稀な事件となっています。

ですが、範囲を広げれば、アメリカ等他国の魔法族の女性、スクイブも含めて近年、所在不明となっている者が出ている様子です。

いらぬ心配かもしれませんが、この魔法界にも不穏な雰囲気が見え始めています。

マグル界へだけでなく、何処に出歩かれる場合でも、奥方と御息女を単独で外に出さぬほうが良いでしょう」

 

「そういう動きがあると?」

 

「これが助かったのは、子供では考えられないほどの魔力量と能力故。

貴方の御息女ならば、口を塞がれ、そのまま連れ去られていたと考えられる。

魔力のないスクイブの女性と、子供です。

公式には流しておりませんが、彼女の叔母は、存命でしょう。

これが魔力を振り絞り、何処かへと飛ばした。

たぶん、国外の魔法族のいない場所へ、それも言葉も通じぬ異国かもしれない。

ともかく遠くへと渡らせ、自らの記憶まで封じた。

探ろうとしても探れぬという見事な逃げっぷりですな。

お陰で、犯人も探れませぬが」

 

オジサンは、再び、困ったように黙った。

情報が多すぎるし、日頃、何も語らぬ相手が饒舌に話し続けているので、口を挟んで遮りたくないのだろう。

 

「話は戻りますが。

一度でも、同じ氏族の血の縛りを受けた男は、犬と化し、同じ血筋の女に従うようです。

子や孫にまで。

悍ましい限りですが、本来の人格も残り、なんら私生活には問題もなく。

問題があるとすれば、彼女の血を崇めすぎて、狂うぐらいでしょうか。」

 

「問題だらけだろう」

 

「本人は多幸感に包まれているようすですが、まぁ、その周囲は地獄でしょうな。

問題は、彼女の氏族がいない、事でしょう。

支配から時がたち、その支配した女が死んで久しいと、更に狂うようでして。

まったくもって、愚かしくも醜い駄犬が複数。

お陰で、ひとりの娘に群がり、犬の分際で弁えもせず、おこがましくも主の手を煩わせる。

愚かにて醜悪。」

 

「すまないが、本当なのかね?」

 

「残念ながら。

一部、駄犬と化した輩と、これが財産をもった孤児であると知った碌でもない者共が複数。

そこで吾輩と言うわけですな。

まぁお聞きください。

そこでまずは、献上された宝石にて護符をつくり持たせております。」

 

「献上、いやはや..護符?」

 

「防御のタリスマンで誘拐や暴力に対するものですな。毒などの対策は吾輩自身で今のところは対処しております。

そして、貴方や世間の方々の反応を見れば、これが最適解。

わかりやすい警告が吾輩という訳です。

吾輩が血迷い心血を注ぎ、側についていると」

 

それにオジサンが言いにくそうに返した。

 

「違うのかね?」

 

「さぁ、少なくとも駄犬では無いとは自認しております。

主が誰かを忘れ、噛み殺す行いをする下品な輩なぞ、朽ちて果てるが相応しい。

吾輩を是非にも軽んじる事を望んでおります。

駄犬どもが無謀にも己が傲慢にも挑むというなら、存分に楽しませて頂く所存。

悪意を向ければ、非常に愉快な結末を迎えること、吾輩の薄汚れた血をもって請け合いましょう」

 

閉口したのか、オジサンは首を少し傾げて考え込んだ。

ちょうど飲み物が来たので、配膳が済むまで二人は黙る。

再び隠蔽と静音がかけられると、私は聞いた。

 

『護符、ホグワーツで外しても大丈夫だったけど?』

 

「条件付けをしてある。

あれは国外へ行く状況だったからだ。

前の封印具の性質にたす形で防御を石ごとに入れてある。

指輪と首飾りでも条件付けを変えている。

が、そうでもしなければ、付け外しができまい。そして試す前に聞け。」

 

うぇ~い。

 

「そして本日、その警告を無視し、記者が尾行を」

 

「あー、噂は出ていたよ。新聞記者が動き始めたとね」

 

「与えている護符の反応域には、勝手に写真などの情報収集をした場合も含まれています。

積極的な反撃構築術を採用しております」

 

そこまで話してから、それぞれに飲み物を口にした。私はレモネードね。

 

「聞いていいかね。つまり、その」

 

あ~多分、文脈的にわかる。

私と彼の魔力の混じり具合が見えてるんだよね。

つまり、いつも通りダーリンが疑われるアレだ。

ちらりと彼をみれば、何も表に出さずにカップを傾けている。

あ~なるほど。

わかってて、セウェルスは疑わせてる部分がある。

偽装が始まってから、セウェルスが私を無理やり犯してると疑う場合は、否定しない。

私が好んで彼を利用しているとする場合は否定する。

どちらにせよ、人は信じたいことだけを信じるから。

そして今回は否定しないんだねぇ。

じゃぁかわりに私が否定するか。

 

『先生は、実験以外で私をハグするのは泣いてる時だけ。

後は私から無理やりするの。

彼は、挨拶する以外、触らない。

実験と演技以外では、それもイヤイヤね。

彼は私に手出しをしていない。

魔力のラインが通ってるのは、血の力、だから初対面から。

彼は子供を搾取の対象にはしない。

彼の愛する人が許さない。』

 

「擁護は要らん。

犬がいることを知らしめる行動をしておりました。

まぁご覧になった通りですな」

 

「不埒な意図だね」

 

「あらゆる意味で」

 

「で、その記者たちは」

 

「魔法連盟に、国外での今夏、吾輩達の記録があるでしょう。

その中で犬の躾についての見解を述べております。ご照覧いただければ」

 

「なるほど」

 

「彼女のことはこの程度で、問題あらば校長へと問いただしていただければ。」

 

「うん、それで納得するわけないよね。

未成年の女の子に触る意図は、護衛だから見逃せ?

保護者としては納得しないし、他所の娘さんだからというくくりはない。ダンブルドアの指示でもね」

 

と、オジサンは真面目なお顔で言い切った。

ウィーズリー夫婦が、ダンブルドアから信頼を受ける理由がこれかぁ。

 

「御尤も」

 

『Mr.ウィーズリー、それ違う。』

 

「大人の男相手で恐ろしいと思うことがあるようなら、いくらでも口にしていいんだ。

何でも言いなさい。」

 

いい人だね。

 

『何でも、ね』

 

オジサンを手招く。

なになにと、顔を寄せるオジサン。

 

『お心遣い、ありがたく思う。

故に偽るようで、本当に申し訳ないが..私は..その違うのです』

 

「違う?」

 

『立場も肉体的にも弱いのは事実ですが、その、見た目詐欺みたいなものでして。

どちらかと言うと、彼を困らせているのは、私、なのです。』

 

目を丸くするオジサン。

私は笑った。

 

『可哀想な娘、これが皆様のイメージ、でしょうかね。

誤認させているのは、私の顔でしょうか?

確かに状況は不幸を背負っているように見えますが。

ずうずうしく計算ずくの女といいましょうか。

同性に好かれない要素を煮詰めたような、クズ思考、あぁ認めたくないのですがぁ、彼にひっついているのも、付け入ろうとしているのも、私の方でして』

 

「君はどちらかというと、隠していないし、外見とは逆に、やんちゃな小僧だが」

 

『こんな具合で、私が彼を選んでいるのです。

常に選択肢は、私にある。

彼を選んだのも、私。

私が特別とした。

お陰で、彼は標的だ。

どちらが、被害者だとおもいますか、ミスター?』

 

「心配なのはね、男という生き物は、君のその優しさを斟酌しない欲望をもっているからだよ。」

 

『普通の娘ならば、そのお心遣いは何よりの助け手でありましょう。

今後も、そのお心遣い優しさ、正しさを多くの子らへと与え目配りをしていただきたい。

ですが、私は、もう、子供ではいられぬのです』

 

「葵」

 

『ほら、Mr.ウィーズリー、彼に聞いてみてください。』

 

「何をだね?」

 

私はスカーフを外した。

 

『この護符は誰が作ったか。素晴らしい宝飾品でしょう?

この散りばめられた小さな石一つ一つに様々な術が仕込まれている。

それも反発もせず、繊細で緻密、独特の呪詛です。』

 

「葵、しまっておきなさい。」

 

セウェルスは諌め、スカーフを奪うと首にまこうとする。

それを押し留め、凝視するオジサンに、私は笑った。

 

『これを献身と言わずに何と呼べようか。

私を弱者とする事は無駄。

他に話題を、時間が惜しい。違いますか?』

 

オジサンは大きなため息をつき、頭を振った。

 

「それでもだよ、何かあったら、私達にいいなさい」

 

ありがとう。

 

「...それも」

 

彼が私の首にスカーフを結ぶ姿を指さして、オジサンは気まずそうに言った。

演技かって?いやいつも通りなのである。

 

『ママみぃ』

「誰がだ、一見すると単なる高価な品です。盗人が触れれば指が飛びますし、好奇心で誰かが触れてもよくない仕込みが入っています。安全の為にも、視えなくしておくのが一番です。」

 

それこそいろんな意味でオジサンが、引くのがわかった。

 

「その、彼女を見えるように抱えていたのは」

『雑踏に流されないようにと、被検体を呼び寄せる為。それに義務と責任に彼は雁字搦め。被害者は?』

 

オジサンは両手をあげると降参した。

 

「で、本音は?」

 

オジサンに聞かれたダーリンは、何故か、悪役のようにニヤリと笑った。

 

そこからは、真面目にハリー君の話になった。

彼を一度マンゴに診察に行かせる事。

彼の資産などを正式に調査した後に管理者を据えること。

 

「私だけでは、いかんな、複数の保護者代理を、彼の名付け親は..」

「アズカバンですな」

「ブラックの財産管理人も加えておくか、後は、どこの家の者がいいか」

「ポッターの財産は凍結されていると考えていいでしょう。残っている事は確実なので、彼に確実に相続できるように複数の人間を介在させてください。

ダンブルドアは保証人としてはよろしいでしょうが、彼の投資や金銭感覚は信用しないでください。」

『それ、前も言ってたね。投資を持ちかけても聞くなと』

「……唯一、世間の知らぬ欠点なのだ」

『いや、爺ちゃん欠点だらけじゃん』

 

それにウィーズリー氏が吹き出した。

 

「個人財産の余剰分で遊ぶのは自由ですが、騎士団の会計処理が危機に陥るので、くだらない投資に資金を投げてほしくないのです。」

 

『つまり爺ちゃん個人資産の余剰分が騎士団の運営資金の軸なんだね。』

 

「抵抗勢力として集まった集団だ。公的な資金援助は、騎士団が魔法省の闇祓いと連携している場合のみだ。」

 

「騎士団の資金は持ち寄りだけど、もしかして増やそうとして数年前のアメリカ株価暴落の巻き添え食ってたのってそれかい?」

 

「思い出したくないですな。そもそもマグル経済に投資をするなら、マグルの専門家を雇えとあれほど」

 

言葉を切るとダーリンは目を細めて通りの景色を眺めた。

 

「……ともかく、ポッターの話だけではない。

君も、君の財産については必ず専門家を通して動かせ。

いい人面をしたろくでない大人の真っ当そうな嘘に騙されるなよ」

 

『それ、爺ちゃんに言っとく。

大丈夫だよ、私は魔法界もマグル界にも、専門の会計顧問と投資家を据えてるし、グリンゴッツの子鬼店長さんとも堅実な投資についての意見は一致してる。

個人的には是非にもダーリンに投資をしたいぞ。

一口貴方の研究に投資をさせてくれ、プロポーズならいくらでもするぞ?』

 

「くだらん無駄口を叩くな。仕置が必要そうだな」

 

いや、そんな嫌そうな顔すんなや。

 

『じゃぁ個人的な希少蔵書の数々を用意しよう。

貴方は名誉会員にして、一生フリーパスで通える。

おまけに稀少本など欲しいリクエストも受け付けちゃうぞ?

我の資産なら、ブックハンターだって雇っちゃって探し放題だぞい?』

 

「クソッ、黙らぬと仕置に課題を積み上げるぞ、馬鹿者め」

 

うむ、それは良いのだな。可愛い奴め!

 

「君たち、いつもそんな会話をしているのかい?」

 

『どうせ周囲には聞こえないので、もっと酷い話題ばかりかな、ね?』

 

それにオジサンは、ちょっとばかり中身を見せない笑顔を浮かべた。

 

「じゃぁそんな君に、ちょっとだけ聞きたいことがあるんだ。彼の過去をどう思うかな?」

 

素早く考えが回る。

どういう意味だ?

 

『ミスターは何が知りたい?

私の考え?

それとも私が何を知っているか?

いや、そうじゃない、そういう質問ではないね。

貴方が本当に聞きたいことは、それじゃない。』

 

不思議と正しい回路が繋がっている感覚。

この男は、どんな答えを欲しがっているのか?

妙な確信、様々な断片映像が目の前を走る。

変な感覚だけど、私はうっすらと笑っていた。

 

『私に聞くのは間違い。

答えはあらゆる所に置かれていると思うよ。

つまり貴方が感じ取っている事は正解。ただし』

 

魔法族の男二人が私を不思議そうに見る。

 

『魔法族の女を狙う輩がいる。平和にはならないよね』

 

オジサンはため息を吐き、セウェルスは、視線をそらした。

 

帝王、あぼーんしたの?ってオジサンは聞きたかったんじゃないかな。

元死喰い人のセウェルスに聞かせる形でね。

でも、それを私の口から喋る必要はない。

知らないのは、知らなくていい人か、知らせたくない人だからだもんね。

 

つまりこのオジサンからすると、私とセウェルスの判定は黒。

もちろん、帝王側の人間としての黒じゃなくて、エッチこみの淫行罪の方ね。

セウェルスは私に手出しをしてると思ったし、私は言いくるめられている子供だと判断した。

 

そういう感じ?

しかし、ダーリンからは否定の感触。

 

「情勢が安定したと確認できれば、速やかにゴドリックの家を修復し、彼に渡す事を提案したいと考えています。住むには安全面に不安がありますので、養育はホグワーツとなりましょうが。」

 

オジサンは、驚きを表に出しはしなかったが、意味は理解できたようだった。

 

「それは、素晴らしい話だ、実に、素晴らしい。」

 

そこから買い物を終えた子供たちが戻って来るまで、様々な話し合いをした。

まぁアーサー・ウィーズリーは、最後まで信用してはいなかったが、提示された情報状況は信じることにしたようだ。

 

帝王の時代が終わったんだってね。

 

 

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