おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ、秘密の部屋編。
R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできております。

秘密の部屋がはじまるのであった〜のプロローグ終了。



AVB、或いは静かなる丘と秘密の部屋 ⑫

今朝、目覚めると不思議な気分だった。

見えるすべてが、色鮮やかに見えた。

まぁいつもより頭が重くてだるいのに、何もかも初めて目にしたような感じ?

よく見えるってのかなぁ、まぁ私は私なんだけどね。

 

長いはずの夏季休暇も終わりだ。

数日前辺りから、学校に先乗りしてきた子がチラホラ増えていた。

新入生と一緒だと混むからってのもあるけど、家からちょっとばかり時間のかかる子とか、早めに学校にやって来る。

友達と一緒にって子は、新学期の歓迎会のある入学式の当日。

混雑を避けたい子や、新入生の引率の無い生徒は先乗りってな感じ。

もちろん殆どの子は、新入生が入る当日だ。

 

何故かって?

結局、魔法界の子の親だって、マグルの親と同じで、集団で行き来してもらったほうが不安がない。

ガラガラの列車に乗って、ガラガラの寮に入る姿を想像したら不安でしょ?

だったら、同じ学年の同じ寮の子と一緒に送り出して、先輩方とまとまって行動してほしい。

 

もちろん、事情のある子は別。

今回、ハリー君は寮を拠点として暮らす事になった。

だから預かり先のウィーズリー家から、少し早めに出る事にした。

相部屋でも良かろうかと思ったけど、拠点とするならと私と同じく個室に移動。

同じく改造して私物をがっつり入れた。

更にさらに、マクゴナガル先生の目が行き届きやすい位置にしてあるそうだ。

つまりグリフィンドール男子寮側の入口近くね。

談話室側で監督生室の隣(悪い事はできないぞ!)

先生の気合の入り具合が目に見える。

 

私が育てる!

と、拳を天に突き上げてそうだ。

趣味のクィディッチ好きも同じだしね。

 

んで、先乗りしようとしたハリー君。

なぜか電車に乗れない問題発生。

式当日じゃなかったから、ウィーズリー夫妻だけが一緒だったんだけど、駅のホームに入れないって騒ぎに。

幸いにもご夫妻そろって先に入り込んでいなかった事。

オジサンが先に入って、ハリー君が入ろうとしたら弾き飛ばされた。

オバサンの手は入る。

ちなみに、魔法族ホームに入る隠し入口ね。

 

で、騒ぎ。

オジサンが入ってこないからって戻ろうとしたら、戻れない。

これはアカン!

 

で、駅の人やら何やら騒ぎになって……不意に通れる瞬間があるんだけど、ハリー君だけ入れない。

どうやら妖精のイタズラって奴かな?ってなって、妖精いるもんねリアルに。

 

そこで急遽、ホグワーツ特急じゃなくて、オジサンが魔法的に送るって話になったらだ、今度はその車にイタズラ。

しょうがないので、公共タクシー魔法版が呼ばれたけど、妨害。

で、悪質な妖精がいるってなって……騒ぎが大きくなること大きくなること。

 

そいで専門家出動。

ゴーストバスターズ並みの装備の人が出てきて(ハリー君談)捜査。

妖精専門の人がいるらしくて、わーわーやっている内に、その妖精が逃げたようで、無事、ハリー君はホグワーツに到着。

無事、グリフィンドール寮へと落ち着いた。

 

つまり、伯母さんのところへは戻らないって事が正式に決定した。

ヒゲはノーコメント。

まぁそういう感じだ。

 

私という例外がいたので、許された感じだけど、本来は魔法界での保護者を募るところだ。

これも私と同じく、ハリー君自身の生い立ちがあるから、そうそう誰でも良いって訳にもならない。

 

そもそもポッター家、純血の家系でお金持ってるんだよ。

事業で成功したお家ね。

まぁマクゴナガル先生も色々反省しちゃったらしくて、新学期準備と共に、飛び回っているそうだ。

もちろん、嬉しそうに仁王立ちして拳を突き上げてる感じでね。

この子は私が(以下略)

 

ただ、この例外が不遇の生徒全員に該当する訳じゃない。

私とハリー君は、犯罪に巻き込まれる可能性が高いから、だ。

そのへんをわからずに何か言ってくる人も一定数いるだろう。

 

えっ?

私には言って来て無いだろ?って幻の声がきこえるが、まぁそうだけどね。

黒衣の不審者が側にいるのが常態だもんね。

私に意見しているはずが、隣りの男に何故かスライド論点すり替えが起きる事、高確率。

そんな理不尽が起きるのは子供でもわかる訳で。

誰かさんが、ネチネチネチネチ言い出すのも、目に見えている。

予想というより事実。

良い悪いは別にして、誰も、わざわざそんな火種を掘り返したくない。

 

すまねぇ〜すまねぇ〜ワイはヤギやで〜

全学年寮共通、ダーリンの嫌われっぷりは突き抜けていらっしゃるから。(もちろん、一部界隈には好かれているらしいぞ!)

 

そしてハリー君にも言ってこないだろう。

魔法界、ウィーズリーオジサンが言った通り狭いコミュニティだ。

僻む人もいるかもしれないけれど、それを口にするのは、まぁそれさえもわからない子になる。

 

まぁ、うん、実はいるんだよ。

子供って、まだ自意識とか色々あるし、特に私みたいな奴は、嫌われ要素も盛りだくさんだ。

本来なら、スリザリン女子に嫌われるわけよ。

ところが監督生の女子生徒が天使。

さらに言えば、純血家系のお嬢様達がね、私を別の生き物だと考えている訳よ。

寄生先が屍人みたいな寮監先生だしね。

もう本心では、この寄生虫女がっ!って思ってても言わない訳よ。

本気で場の空気読めないタイプでもね、一応な。

 

えっ?そんな子スリザリンにいた?

私以外を標的にイジメて暴れるゾウみたいな子はいたね。

まぁ数人、目についた子はいた。

高学年になるとね、また、別の意味でこう、なかなかよろしくない子もちらほらね。

人間だもんね。

名前は覚えてないけど。

ほら、不快だなぁとか認識した途端に、ワイの魔力って攻撃成分含むみたいだから認識しないようにしてるんよ。

 

でも、たまたま見ちゃうじゃない?

こう昔ながらのスタイルの、お約束で笑かしにきてんのかよっていうヤツをね。

そうすると、ワイの内なるアニマルがね、上下関係わからせんとアカンかなぁと踊りだすわけよ。

 

イジメ?

ワイのテリトリーで、ワイの群れに?

何ふざけたことしてんのや、そんな暇があるなら、ワイと遊んでよ。

 

で、あそぼーぜーで、イジメっ子女子にハグ。

そこからプロレス技をかけずに、ちゅーぺろぺろ。

で、ぎゃーって悲鳴。

あらゆる場所から悲鳴。

引き剥がそうとするギャラリー。

白目をむきそうになりながら嫌がる高慢ちきギャルと中々に体格のよい暴れん坊の女の子。

こらー言いがかりつけたり、物を隠す子はおしおきだぞー!

あと暴力はいかんぞ〜!

そいで加担してそうな女子を見つけると飛びかかる。

ハグ&ペロペロ!

標的になってた子まで泣き出した!

しょうがない、ハグしてぐるぐる〜!

 

ワーワー騒ぎになって、まぁ説教を受けるワイと説教をする黒衣の不審者。

これを延々と学期中すると、あら不思議、いざこざの前に、ワイのセクハラに恐れおののく女子の群れが出来上がるという。

大丈夫、楽しく愉快に過ごしている女の子の前ではおとなしいぞい。

時々、パンジーちゃんに怒られてるけど、最近は、見なかったことにされる、さみちぃ。

 

男子?

それやったらマジモンの犯罪になるっしょ。

今年も新入生が入学したら、ちぇっくしようっと。

もちろん、スリザリン以外でもセクハラしてるよー(犯罪者宣言です)

 

んで、そんな事を続けてたら寮では更に浮くのよね。

馬鹿だろーってセウェルスには言われてるんだけど、何故か暴れん坊の女の子とマルフォイ君のお付きの二人がね、そ〜っとついてくるようになった。

それが学期末。

テストの後ぐらいかなぁ。

遊びたいんか〜で、近寄ると青い顔して逃げるからさ〜

よく分からんから、お菓子を三人に食わせて、時々頭を撫でてる。

こわくないぞ〜ってね。

 

なんでそんな話してるかって?

純血のお家の子ってね、マルフォイ君にへばりついて友達枠を確保しとけとか、親から指示されるんだってさ。

権力者の子供の友達枠ね。

あとは横の繋がりを確かにして、お家の為になるようなムーブも期待される。

そうすると、子供の社会でもヒエラルキーがあって、マルフォイ君とかは、同年代への采配も期待される。

すごいねーストレスじゃん。

 

んで、なんでか、そのマルフォイ君からワイの見張りの指示がでたそうな。

確かに、猿がでたぞー!!という見張りは必要だが、ワイ、ちょっとしょんもり……。

 

そいで今朝の食卓にもその顔が3つ。

いつもなら友達に合わせるはずが先乗りしてきたようである。

いや、ワイなんぞ、見張らせんなよ。暴れるぞ?

だから見張ってる?

真理!!

 

***

 

「厄介払いだろう。ミリセント・ブルストロードも派閥的には馴染んでいるが……避けられる理由がある。」

 

そよそよと爽やかな風が吹く夕暮れ。

だらけきって伸びているダーリン。

新学期前の色々準備プラス暗躍&色々あって行き倒れていた男の傍らに座っている。

いつも通りの、あのベンチだ。

 

いじめ返しなら、ワイ、アニマル、野生の掟、マルフォイ氏のご子息を泣かせるでござるよぅ。

 

「やめろ、火消しは私だ。

それにイジメではない。

会話がままならず、そうだな、精神年齢が君と彼らのように離れてしまい、どうしようもないのだろう。

だから仲間はずれにはしていないが、友人クラスメイトとしても、フォローだけになる。

しかし、それも限度がある。

君がある意味、皆に認められているのは、教師の贔屓と言われないだけの学力と魔法力があるからだ。

子供だとて理解するものだ。

君は厄介だ。

砂糖菓子の見た目に、中身は劇薬だ。

学力も既にO.W.L.ぐらい余裕で突破できるだろう?

否定するな。

君が誤魔化しているのはわかっている。

ある意味、狡い能力だ。」

 

狡いって?

 

「ヴィーラ由来の魅了とは別の魔力侵食をしてくる力は、綿密な魔力コントロールを基礎とした何かだ。

何か、まだ良く理解できていないが、それが支配をもたらしている。

そしてその通常の人間よりも細かな魔力の広がりは、相手の形、魔力形状を写し取っている。

無意識にだ。

それが君の記憶力をも補っている。

目に力が現れているからな。

見て、覚える。

学習効果は詐欺レベルだろう。」

 

ほめてないねー

 

「褒めている。

君は純血の容姿に、純血としての力を見せ、己が上位者だとわからせている。

言葉でも暴力でも、家の資金力でもなくだ。

君自身の価値だけでだ。

美しさだけでも恐ろしいモノであろうに、幼い者ほど、家族に言い含められるだろう。

君の影響力を侮るな。

関わらず逆らうなとな。」

 

それはうれしくないなー

たのしくもないしなー

 

「気にもしていなかろう。

話は戻るが、ブルストロードは典型的な旧家の娘だ。

何の為にホグワーツに来たか、あまり理解していない。

没落した家を立て直すべく動くパンジー・パーキンソンとは逆だ。

パーキンソンは、己が学力もつけ、どこに嫁がされようと負けぬと必死であろう。」

 

マルフォイの嫁には無理なの?

 

「無理ではないし、一番、結婚する可能性はある。

だが、縁組は家の考えで変わるものだ。

今のところ思想的には同じ派閥だがな。」

 

あ〜そういう感じなんだねぇ。

 

「自由に相手を選べるのは、純血家の場合は、本人にそれだけの力があるか、家の力が地の底をはっているかだ。

旧家の子供は、結婚は家の為だと教えられているだろう。

それに運よく、政略同士でも愛を育める者達もいる。悪いばかりでもない。

だが抗うにしても、正しい判断ができる人間ばかりでもない。

大方の純血は結婚は家の為、愛人は複数いても目を瞑る。

マグルとも付き合う者さえいる。

魔法族マグル双方の孤児院が、定員割れをする事は無いと言う訳だ。」

 

詳細な解説はいらんがな、ワイ、子供な。

 

「都合の良い子供っぷりだ。

ともかく、ブルストロードは学力が追いついていない。ドラコの取り巻きもだな。」

 

そんなに酷いの?

 

「焦土だな」

 

荒れ地どころか焼け焦げるレベルの学力で、補習授業どころでは追いつけないと。

 

「ジョークではなく、5年までは補講などで留年を免れたところで、O.W.L.は通過できまい。」

 

家庭教育がおろそかだった?

 

「言葉に不自由する留学生のほうが単語をきちんと綴れるぞ。

まぁどの寮にも、基礎学習ができていない者はいる。

毎週末、追加課題を出しているが、そもそものやる気も、理解しようとする努力も放棄しているタイプだ。」

 

なるほどね〜

なんとなくウィーズリー氏のお話が蘇る。

つまり、彼らはホグワーツ卒業資格を得ずとも食うには困らない家庭なんだろうか?

 

そんな話題を振る必要は無いのだが、昨日の晩に到着したらしい3つの顔を見てね。

今朝の朝食風景に、およよっとなったわけよ。

何故かハリー君と例のイカツイ女の子がぎこちなく隣同士で食事をしている風景。

ちなみに、ワイの眼の前で喧嘩なんぞしたら、ペロペロするぞって言ってあるので、彼女は静かだ。

もともと癇癪持ちというより、子供らしい言語化できないストレスで手が出る子供みたいだ。

身体も大きいしね、それも低学年のうちだけだから、今のうちからね、止めないと……これ親と教師の問題じゃね?

 

んで、一日、新学期準備したりセウェルスの邪魔したり、ヒゲの部屋にいってゲスイ事してないかチェックして、わんわんと戯れての、今ね。

 

ちなみにフラッフィーは魔の森に放し飼いすると言いやがった大きな人には悪いが、ヒゲに言ってギリシャに返却した。

お家に帰してあげなさいって説教して、ケルトバーン先生にも言って返送済み。

 

相変わらず大きな人は楽しい人生だよな。

いちばんエンジョイしてる。

ヨダレが猛毒の、魔のワンワンをホグワーツで放し飼い。

やっぱり脳みそにエイリアン寄生してんじゃないかな。

 

「君のいう食うに困らない事は確かだが、それほど先行きがあかるい訳でもない。

例の問題もある。」

 

例の問題?

 

「血の問題だ」

 

彼らの意欲の欠如はそっちだと?

 

「遺伝、病理、そちらの方向なら説明が……つかんな」

 

おい!

 

「まぁ問題があろうとも、不適格となるほどではない。

旧来の体制と価値観を信じている方が問題だ。

家族の方がな。

歴史は繰り返すが同じではない。

確実に純血旧家は変革を求めぬ家から没落するだろう。

子供を見れば分かる。

最低限の教育を与える事も忘れている危うさを、自覚もできぬのだ」

 

純血筆頭は何と?

 

「さぁ、時流によっては、か」

 

純血を推し進めるリスク開示をしそうかな。

いや、あのパパ上だと、そもそもがマグル嫌い?

 

「そこが微妙だ」

 

あぁ微妙なのね。

利益があるなら妥協できる。

ただし、自分の権益や縄張りにマグルが入る事は嫌がる。

 

半純血でもスクイブでも有能であれば良し?

 

「嫌悪、差別をする感情を抑える事はできるだろう。

己の縄張りを荒らさなければ、殺せとまでは考えない。

利用できるなら利用する。

現実面で利益を産む存在であれば、マグルとのビジネスもできるだろう。」

 

魔法族とマグルの違いと言うより、階級が〜の方なのかな?分からん。

他の寮にはいないのかな、学力とか魔法界に馴染めてない感じの子って。

 

「いるだろうな。

マグル生まれで魔法族そのものを初めて知る者もいる。

ただ、マグル生まれは読み書きで困る事は無い。

プライマリーに通うからな。」

 

スリザリンの三人は、基礎学習を繰り返せばなんとかなりそう?

 

「ドラコが面倒を見ていたが、匙を投げたのだろう」

 

学校側としては?

 

「補講補習、予備課題は出している。学習意欲まではどうにもならんな」

 

スクールカウンセラーは?

 

「それで解決すると思うか?そもそも純血の家の子供に外部の誰かを接触させるのは困難だ」

 

ホグワーツのドロップ率は?

 

「意味合いが違うな。

この間のアーサー・ウィーズリーの話には欠けた部分がある。」

 

ちなみに夏の午後、日差しが傾き始めたいつものベンチだ。

ちょうどいい涼しさの場所にいるのは、実はちょっとした相談があるって言ったからだよ。

気になることの一つを伝えたくてね。

言うか言うまいか、まだ、迷ってる。

確証は無いしね。

あのノクターン横丁で見た屋敷しもべ妖精の事だよ。

ハリー君にどうやらついて回っている感じ。

今回の妨害もね。

目的はわからんし、妖精がらみは扱いが難しい。

 

『欠けてる?』

 

「そうだ。

魔法界の子供は、全員が学校に通うわけではないという視点だ。」

 

『基礎教育、義務的なものではない?』

 

「そのとおりだ。

マグルの場合、就学前教育がプライマリー前にあるが、それと同じく義務では無い。

16までの義務教育がマグルにはあるが、それをホグワーツに当てはめるのは無意味だ。

魔力のあるイギリスの子供が呼ばれるが、辞退もできる。」

 

それは知らんかった。

 

「家庭環境、健康状態、子供が全部通えるわけがないだろう。

それによく考えてみろ、スクイブだけではない。

低魔力の子供で、ホグワーツの教育に耐えられない子供もいる。

スクイブに近いが、魔法族ではある、という子供だな。

そして魔法族が小さなコミュニティであるからこそ、表立って低魔力の子供の話題が出ることは無い。

スクイブや半純血、低魔力の子供はあってはならぬタブーだ。

勘違いするな、非道とばかりは言えぬ。

昔は間引いていたと考えれば、これでも改善はしているのだ。

私が言いたいのは、魔法界を去らねばならぬ家庭がある事実の方だ。

ゴドリックのような小さな村などでマグルと同じ生活様式をしている家庭も大方がそれだ。

きっぱりとマグルの世界に行く親や子供もいる。

マグルの世界で生きるなら、マグルの教育を受けるべきなのは当然だ。

どうだ?

思うより、ホグワーツは全ての子供が通り過ぎる場所ではないことがわかるだろう。

魔法界で生きていくのに、学歴が必要な職業は限られている。

だから、五年時の試験を受けて、修了として学校を離れる子供も多い。

七年まで在籍し、そこから進路に向けて七年修了とするか、卒業とするかは又、分かれる。

卒業ではなく五年修了でも、マグルで言うドロップアウトではない。

魔法界には、いわばマグルでいう産業革命前の徒弟制度もあるのだ。

官僚や高等技術職を目指す以外は、七年在籍し卒業試験を受ける必要はないのだ。」

 

あぁそうか、マグル社会と同じつもりでいたかも。

 

「アーサー・ウィーズリー、開明的な考え方をする純血の古い血筋の魔法族、なのだよ。

子供はホグワーツで教育を受け、卒業するのは当たり前だと考える親だ。

彼らはグリフィンドールだが、その基本的な物の見方は、それほどスリザリンの純血旧家の家庭とかけ離れている訳では無い。

貧しい家庭の子供の事情は汲み取れるが、本当の貧しさやスクイブ差別は実感していないのだ。

スクイブも、低魔力の子供も彼らには産まれなかったのだ。考えもしないのだろう。」

 

う〜ん、つまりガツガツ勉強しない子もいて、マルフォイ君は彼らが、その修了組になるんだろうと思った?

 

「卒業を目指すには、並大抵の勉強量ではおいつかない。

現実面として、まったく学ぶ気の無い者を側においても、それを助ける行為は無意味だ。

まして派閥としてはあまり重要でもない家だ。

没落を眺めるだけ、子供に教育を与える意味も拾えない。

ドラコのお付き二人も、ブルストロードも、上流家庭との縁や良い嫁ぎ先をとホグワーツに入れたようだが、逆に作用するだろう。」

 

そういう言い方はよくないぞ、子供は可能性の固まりだぞ、駄目教師。

 

「思うのだ」

 

何を?

 

「グレンジャーぐらいのやる気があれば、吾輩も教師の端くれ、どんな無礼な態度のグリフィンドールであろうと相手はする。

グリフィンドール的な性格をしていようとも、吾輩は褒めはせぬが、真摯に卒業までの学習カリキュラムの相談にものるだろう。

だが、やる気のない輩は、スリザリンであろうと純血の古い血だろうと、駄目教師と呼ばれようとも、真摯に向き合える気がしない。」

 

おっぉぅ……。

いや、そんな淀んだ目で見んなよ、ダーリン。

 

「姿だけは目に優しいのだ、少し目を労らせてくれ。

くだらないモノばかりを、新学期を前に見せられてな。」

 

何を見たん?

 

ベンチに力尽きて伸びていた男が俯せになった。

 

「半分も終わらぬ夏季休暇用の補習課題だ。」

 

三人?

 

「ドラコの取り巻きは、たぶん、ドラコにせっつかれて終わらせてあったが、内容が酷い。

ブルストロードは、半分白紙だ。」

 

度胸あるなぁ。

スリザリンでも、ダーリンは勉強に関しての怠慢は許さん人なのに。

 

「普通の課題では無理だろうと、五歳児がやる絵に単語をつけよと示せば、半分ほど問いを埋めた物が提出される。

ドラコの取り巻きは、あぁ名前は知っている。

だが、己の名の綴りを間違えていた。

どうしろと?

説教する気も起きぬ。

半分だけ埋めてある。

では、残りはどうしたのだ?

埋まってる二人の後半部分は解読不能だ。

そしてどうして、そのような物を吾輩に出せるのだ?」

 

隣でくたばってる屍の頭を撫でた。

まぁ誰も見てないしね。

大変だったねー

 

振り払いもせずに歯ぎしり。

ストレスが極まっている。

おまけにホグワーツに女神の子供が来た。

ひゃっほぃ!

じゃなくて、どうすれば良いんだ?になってるからね。

 

「……知能の検査には問題がない。

だとするならば、後は血の病とみるしかあるまい。

怠惰のだ。

吾輩は怒らぬよ。

野原の雑草で指を切ったからと言って、その雑草を千切る真似はしない。

そもそもが己の失態。

情など掛けずに、初めから野焼きをすればよかったのだ」

 

あ〜駄目教師は言いすぎた。

特別カリキュラムのコースを作るとかは?

 

「揉める未来が見えないのか?」

 

見えるねぇ。

家の子を馬鹿にするのかー!

 

「そして馬鹿だ。と、答える吾輩の未来もみえないか?」

 

……吾輩氏のキレ芸が見える。

なら、穏便に別課題出して、合格点をそっと出し続けて、五年の外部試験で落とすと。

 

「そうだ。

ドラコも早々と見切りをつけたようだ。

君を見張れと言えば、面倒見の良い君ならなんとかするだろうとな。」

 

え〜ワイ、面倒見なんぞ、よくないぞ。

 

「菓子を食わせながら、マナーを教えているだろう?」

 

だって、ぼろぼろこぼすし、わしづかみよ?

 

「広間でも、食事マナーを直しているだろう?」

 

だって、近くに座ってガツガツされるとね。

 

「調教師と双子がほざいていたな」

 

調教師……。

まぁ目についたらフォローするけど、ワイ、それほど面倒見よくないぞ?

 

「あと、諍いの度に抱きついて吸い付くのはやめなさい。」

 

女子的には派閥がなくなっていい感じでしょ?

 

「……男子生徒にはやるなよ?」

 

毎回言うけど、そこまで頭オカシクないぞい?

って何でため息なんだよぅ。

 

「この間、休暇前だ……」

 

うん?

 

「ウィーズリーの末が、羨ましいとほざいて殴られていたぞ、女子に」

 

あ〜びっくりした、女の子ならいーじゃん。

 

「ともかく止めなさい。」

 

今年の一年次第かなぁ。

 

「……で、何か話があるのだろう?」

 

ハリー君の駅の事、どうなったかなって?

 

「調べている。魔法省も闇祓いも、動いている。

ここは安全だ。

屋敷しもべが人間とは違う魔法を使えたとしてもだ。

ホグワーツの屋敷しもべは校長の管轄だ。

校長に従う契約が為されているので、同じ妖精でも何かあれば報告もすれば、撃退もしよう」

 

あぁそれは良かった。

なるほど、校長権限で管理できる状態ならいいや。

 

「他には?」

 

貴方のメンタルだよ。

ハリー君とは……。

 

「今まで通りだ」

 

まぁ徐々に交流だね。

そりゃそうか。

グリフィンドールのハリー君にフレンドリーになるとか、天変地異だもんね。

 

「そもそも、父親とは天敵同士だ」

 

それでもホグワーツの生徒で、彼は父親とは違う人格だよ。

それを言ったら、誰だって誰かの子供で、その人間のコピーってなる。

親の因果を子に与えてはいけないよ。

 

「相変わらずご立派な事だ。他に話はあるのか?」

 

例の防衛術の……。

 

ガバっと起きた。

正直、怖い。

 

ダーリン大丈夫?

何かを言いかけるダーリン。

無言で顔を背けて起き上がり、スッと立つと歩き出した。いつも通り冷静な……。

 

薬草群生地の先、水辺に立つと叫んだ。

Fワードである。

上流イギリス英語を口にしている教授とは思えない連続罵倒だ。

 

肩で息して口を閉じるが、それでも憤懣遣る方無いらしく。

足元にあった小石を放り投げた後に、枯れた小枝を踏み潰した。

 

ハリー君が見たら、怖くて二度と近寄ってこないよ。

ストレス溜まってるなぁ。

つまり第一遭遇終了済みか。

昼はいなかったから、午後一番かな。

ホグワーツに到着してお部屋に落ち着いてるのね。

了解した。

 

で、シーンとなった背中に夏の風が吹き抜けていく。

まぁニンゲンだものね。

そいで、ようやく正気に戻ったのか、ゆっくりと振り返る顔はいつもどおりの無表情。

発狂して取り乱した男の姿は幻となった。

つまり見なかったよ、うんうん、そんなオモロイことはね。

 

「部屋に戻るぞ、君に渡しておく物がある。例のカス対策だ。」

 

カスはやめようよ、それよりワイのご先祖スケスケ問題ね。

 

「わかっている。

ゴミカスに、いちいち妙な反応をされるのも困る。君の魔力の乱数を調整する。」

 

えっとどういう感じ?ゴミカスはやめようね、権威高きポーションマスター。

 

「……首飾りは、それ以上は追加の要素を入れると輪が乱れる。

指輪は校内では外しておくのが無難だと伝えていたか?」

 

うん、直接触れるとか、アクシデントに対して過剰な反応をする場合があるから、集団生活ではよしておいた方が無難って話だよね。

 

「外出時と私がいない時は、両方つけておけ」

 

まだ閑散とした廊下を進む背中。

その少し力の入った背中に、私は笑った。

子供っぽい部分を見せてくるようになった。

私に慣れたようだ。

嬉しいような、切ないような気分になる。

親しさは、悲しい気持ちを含む。

 

この人は複雑怪奇である。

理屈を求める私と同じぐらいロジカルな部分で、とても矛盾を抱えているな。

と、何となく今までに無い考えが、スッと心に差し込まれる。

 

今日の私はとても静かだ。

考えてみるに、私、アニマルな思考が、とてもクリアだ。

考えが冴えているのではない。

疲れがとれたような、まぁ実際はすごく眠いしダルい。

疲れているような気分だけれど、とても冴えているような気がした。

まぁ気のせいだろう。

 

彼の後ろ姿を見ながら、不思議と、その形が明瞭になる感じがした。

頭の形、髪の毛の揺れ、肩、首筋、長い上着の動き。

人の形、命の形。

とても不思議。

 

まるで今日、産まれたみたいじゃないか?

 

との考えが浮かび、更に私はニヤニヤとしてしまった。

あぁそうだった!って不意に浮かんだんだよ。

私、マーガレットを飛ばした先を思い出した。

ふふっ、彼女は大丈夫だ。

でも油断はしていないよ。

私はそこを知らない。

けれど、知ってる。

ふふっ、油断はいけない。

この夏、学んだでしょ?

楽しくて嬉しくて優しい気持ちの時も、油断をしてはいけない。

私は、捕食者であって獲物を盗られてはならないのだ。

 

地下ダンジョンへと階段を降りながら、そのつむじを見やる。

うむ、良きシャンプーを使っている。

私が持ち込んだ品である。

後年でも有名になる、頭皮を健やか爽やかにするスカルプケアにそっくりの奴だ。

ワイ、マジで探した。

香りはラベンダー&ウッディー、乾燥肌頭皮用におすすめ。

 

無いだと?

ならば、我財力よ、唸れ!!

で、マジでお小遣いを叩いて注文した。

 

有効成分に炎症を抑える薬効の奴とハーブの入ったやつで、もちろん、ダーリンに研究用にあげた。

そして思惑通り、自分に使って色々調合配分を試したようだ。

スンバラシイ、七種類のハーブと炎症を抑える東洋のハーブだぜ。

マグルの化粧品メーカーを舐めてはいけない。

最初に持ち込んだのは特注品。

本気の滝のような投資資金に相手は降参した。

元からダーリンに作らせないのが勝因。

そしてダーリンは素晴らしき髪質になった。

ねっとりはしていない。

しっとりだ。

 

そしてこのシットリなのにスッキリするスカルプシャンプーは、どんなモノグサ男でも、一度スッキリすると止められない。

定期的に購入したくなるお品だ。

開発費は投資したが、権利に関してはご自由にとメーカーにお渡ししたので、近年、新ブランドとして立ち上がるだろう。

ワイが資本金も提供じゃ!

 

なんぞと子供の夏休みに投資をするという可愛げの欠片もない過ごし方を最後にしていたが、そいでもアニマルの勝利である。

やはり本業に差し障りがあってはならないのである。

ワイはできるアニマル、ヤギではなく猿なのである。

 

さて、夏でもひんやりジメッとしたダンジョンの寮監部屋。

取り出されたのは、髪飾りだ。

紫の石は小さな葡萄で銀の房と蔦と葉が茂る。

小さな物だが、バレッタのようになっているので違和感はない。

後ろを向けと言われたので、髪の毛につけてもらう。

両サイドを少しとって飾りを後ろにつける。

 

どうかな?

 

似合うとは聞かない。無駄なのはわかってるぞい。

私を褒めだしたら、きっと風邪だと思うよ。

そんな彼は、真面目に頷いた。

 

「魔力の乱数制御はできている。奴がどう見るかはわからないが、少なくとも書店で見せた失態はせぬだろう。」

 

別に怯えてひれ伏しても構わないんじゃない?

 

「賭けは、私の勝ちになるが?」

 

***

 

そして新学期の歓迎会当日。

新入生が船を使い渡ってくるのを見ながら、大広間の席についた。

久しぶりの顔ぶれに挨拶をし、にょっきりと背の伸びた子供たちから、様々な夏休みの話を聞き出した。

私の動向を聞かされている家がスリザリンには多いのだろうか?

私の近況については上手に避けている。

代わりにもっぱらの話題は、ハリー・ポッターも同じくホグワーツ預かりの子供になる事。

そして……。

 

教員たちがついているテーブルに目をやれば、いつにもまして不景気な顔をしたセウェルスと、そんな彼の横で落ち着き無く話し続けている小説家がいた。

あ〜と思っていると、何故か小説家は、私に向かってウィンクをした。

うむ、どうやらセウェルスの髪飾りは、いい仕事をしているようだ。

私の本性を見えなくしてくれたようで、普通のスリザリンの女生徒に見えているようである。

 

「ちょっと、まさか、やめてよね」

 

パンジーちゃんの呟き。

 

私の手を珍しく掴んでひっぱった。

 

「止めてよ、ややこしくなるから」

 

何が?

 

「いつも通りよ、彼女は隣を見ているだけよ。

今回の害虫が出しゃばってるだけよ」

 

と、ダフネちゃん。

 

「あぁ、貴方もアレのファンじゃないわよね?」

「私、そんな趣味が悪いと思うの?」

「息抜きに丁度いいって、ほら」

「……正気なの?」

「いるのよ……」

 

「静粛に!それでは新学期の新入生の組分けの儀式を始めます!」

 

そしてとうとう二学年目が始まった。

楽しい一年でありますように!

 

 

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