おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生と人外生徒の明日はどっちだ、秘密の部屋編。
R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできております。

ラブだけが行方不明なんじゃ、愛はあるのにトキメキラブだけ、どこかへ旅立っておるんじゃよ。
エロはのぅ、エロは大人になってからじゃのぅ(゚∀゚)アヒャ


AVB、或いは静かなる丘と秘密の部屋 ⑭

朝、カメラ少年、ハリー君、マルフォイ君による寸劇。

小競り合いが広がり、ウィーズリー弟君も巻き込んでの口喧嘩となる。

喧嘩になると、マルフォイ君の側には、お付きの二人がスタンバイ。

 

「行くな」

 

制止を受けるのと、小説家がしゃしゃり出るのは同時だった。

あぶねぇ。

寸劇に巻き込まれるところだった。

 

「護符はつけているか?」

 

忘れていたが、首輪の時と同じく、髪飾りも含めて魔力の調整をしてもらう。

これも久しぶりだ。

首飾りはほぼメンテナンスを必要としていないが、髪飾りは別。

 

「即席な上に衝撃にも弱い。まぁ実害はカスのみだ。ともかくアレには近寄るな」

 

え〜

 

がっと顔を両手でつかまれる。

いつもの端っこでの安全確認である。

今日も素晴らしきご尊顔、肉食って寝ろよ、ダーリン。目の下真っ黒。

 

「賭けに負けるのは君だ」

 

別に負けてもいーんだけどね〜

 

「今日は私と校長は外だ」

 

珍しいね。

 

「パリの例の男が移送されてきた」

 

ディアボーン?

 

「問題を起こすな、いいな?」

 

授業は?

 

「今日は、担当時間が無い」

 

それこそ珍しい?

で、ワーワーやってる方を何となく二人で見る。

 

小説家の授業でトラブルがあったら?

 

「副校長に投げろ」

 

おとなしくするか…

 

「……吾輩の時もおとなしくできないものですかね?」

 

ワイ、いーこだよー

 

しばし見つめ合う飼い主とアニマル。

何気に掴まれた顔が締め上げられている。

アザになったら、ちゅ~するぞー!

 

「できるものなら、やってみろ。痺れるどころか固めて湖のイカに投げつけるぞ」

 

ワイ的に大イカちゃんとは、お友達なりよーアバババ!

 

「……。」

 

ぺいっと顎から手が離れる。

シビシビ攻撃はあかん、マジで笑い出しそうな刺激だ。

そしてアニマルに呆れお仕置きをやめたのではない。

私を写そうとするカメラ小僧を見つけたからだ。

 

「グリフィンドールは何時の時代も馬鹿しかいないのか?」

 

いや、爺ちゃんもグリフィンドールで変身術の先生だったじゃ〜ん。

呟きに反射で返したが、カメラ少年の無謀なチャレンジに、私も内心驚いていた。

未成年だから、一応、止めなきゃ。

 

「撮らせろ、マグル式のカメラの場合もデータが欲しい」

 

教育者ー!

んで、手遅れ。

小競り合いしてたハリー君達も、キラキラしてる小説家も、気がついて凍りつく。

 

パシャ

 

フラッシュが消えて、雑音も消える。

 

「即効性は無い。その愚か者から離れろ、距離をとれ。」

 

その辺は魔法族、子供でも素早い。

 

「コリン・クリービー、その場を動くな。

周りも下手に手を出すな、仲間と判定されるとペナルティが入る。」

 

セウェルスは杖を振った。

 

「マダム・ポンフリーにご足労願う。

校長と吾輩は本日、魔法省にて重要な会議がある。

その愚か者には、皆、関わらぬように。

なに、今日はまだ……、死にはしない」

 

と、マダム・ポンフリーに連絡を飛ばした。

 

ちなみに、ワイが触っても大丈夫だよね。

 

「関わるな」

 

お漏らししそうな勢いで泣き出してるんだけど。

 

「自業自得だ」

 

そうは言っても、結局悪く言われるのは、誰だと思う?

いや、そんな苦々しい顔しなさんな。

 

「ドラコ、午前中、葵は授業を抜ける。教科担当に伝えるように」

 

つまりオッケーね。

ワイは泣いてるカメラ少年に近寄る。

 

(ダメなのに、どうして撮っちゃったの?つーか、盗み撮りしないのは、わかってるって事だよね?)

 

ワンワン泣いてて、答えられそうもないね。

ごめんなさいって言ってるのかな?

ウンウン、お姉ちゃんは怒ってないし、大丈夫、ちゃんと呪いが解けるようにダーリンにお願いするからね。

 

「たぶん、自分からじゃないと思う。護符の事、怖がってたから」

 

ハリー君が、遠巻きにしながら言った。

あぁなるほど。

誰かに強要されたのか。

彼を虐めようとした?

 

泣いてる子供を見て、シラッと冷めた思考が巡る。

意地悪にしてはたちが悪い。

だから先に警告を出していた訳で、それをイジメの道具にしたとすれば、ヘイトのダーツが刺さるのは、教唆した方になる。

じゃぁ本当は、誰を刺したかった?

単純に一年を標的にしたイジメ?

 

そんな簡単だったらいーねー

それに結局、責任をとるのはこちらだ。

手酷いペナルティを子供が受けても、結果は解呪する大人と私へのヘイトが溜まるだけである。

ふ〜ん、そっかぁ……。

 

(スネイプ教授、教唆した人間も効果範囲だよね?)

 

見えるように、大きな魔法文字で描く。

ほんとうにしょうもないね。

本気のダーリンの護符だよ。

即死だってありえるのに。

私も彼も人殺しになりたいわけじゃない。

 

それにマダム・ポンフリーと話していたダーリンが文字を見て、少し首を傾げる。

 

(彼を脅すような悪い子の方が、大変なことになる?)

 

ニヤリ

満面の笑み。

 

恐怖の波が、爽やかな朝の大広間に広がった。

カメラ少年はギャン泣き。

少年少女のギャラリーは潮が引くように距離を取る。

 

子供たちよ、演技だからね。

彼のロールとしての演技……だよね?ちょっと不安になる。

 

それに、君は馬鹿だろう?

と、いう視線をもらう。

 

どうやら、カメラ少年への護符の反応は、それほど強くないようだ。

冗談が出るあたり、マグルのカメラと悪意の無い子どもという組み合わせが、呪詛の判断、反撃方向を抑えたようだ。

そしてあの笑顔からすれば、この子にアホをやらせた方向へ呪詛が飛んだ。

うむ。

 

なかなか良いデータがとれた?

よかったねー

でも、また悪評が増えたよ。

一年生の魔法薬学授業、ヒステリー起こす子供がでるかもよ?

まぁ、私も少しオコである。

 

面倒を増やしてくれた愚か者め、呪われて腐れろ。

心を込めて祈ってやろう。

 

(大丈夫だ、カメラの子。

呪いは悪意に反応する。

脅された者よりも脅した者に、重大なペナルティをもたらすだろう。

きっと君のかわりに、とんでもない罰を与えてくれるだろう。)

 

よしよしと、引き寄せて背中をポンポン。

ほら、一緒に保健室いこーなー、ご飯まだだよね?

ワイもまだやねん、お姉ちゃんとご飯しよーなー

 

***

 

「いーなー、僕も呪われたらポンポンして、ぎゅってしてもらえるのかな?」

 

「ロン、それはさすがに僕もキモチワルイと思うよ。

一年相手だから、彼女は慰めているだけだ。

それに彼女だって、自分の護符で誰かが呪われたら嫌だろうし。」

 

「それってコリンへの嫌がらせじゃなくて、彼女への嫌がらせも考えられるってこと?」

 

「そこまでは……。」

「確かに……彼女の護符のせいだって言う人、後で出てくると思うわ。

元々、彼女の事情を汲み取らない人っていたし。

特別扱いだって、何かと不満を影で言ってる人がいるの、知ってるでしょ?」

 

ハーマイオニーの発言は、やけに大広間に響いた。

 

「あー美人のスリザリン、先生のご贔屓?

美人は美人だし、ご贔屓も何も、勉強はできる。

ハーマイオニーも時々教えてもらってるレベルだし。

貴族の血筋で姫とか、あだ名じゃなくて本物だし。

それ、悪口言うとさー鏡見てからさー言えよー。

中身も外見も、自分はぶ」

 

「ロン、僕は女の子の敵を作りたくないんだ。残りの学生生活を地獄にしたくない」

 

「まだ何も言ってない……」

 

「……私が言いたいのは、新入生を虐めるにしては、早すぎるし、誰が困るかって言ったら優しい彼女自身じゃないかって事。

 意地悪だったら気にしないけど、彼女はスネイプ先生じゃないもの」

 

教師達は消え、食卓にはまだ、生徒たちしか集まっていない。

話によれば、今日はダンブルドアも出かける様子、それに何故かロックハートまでも保健室へと行ってしまっていた。

 

「まさか、彼女への嫌がらせなのか?」

 

確かめるように繰り返したのは、ドラコ・マルフォイだ。

あまりのことに、言い争いは勢いを失い、ハリーとロンは席に戻り、ドラコも近場の椅子へと腰をおろしていた。

 

「そんな馬鹿な事をする者は、スリザリンにはいない。

やるとしたらグリフィンドールだろう。

身の程知らずのマグルが多いからな」

 

それにいつもなら切り返すだろうロンが、ポツリとこぼした。

 

「スリザリンじゃないのは、わかってるよ。

さすがに、シャレにならないもの。

古い魔法族の家の子が、そんな事をしないのは、わかってるよ。

でも、それは僕らも同じだよ。

ドヴワティーヌさん関連は、僕達だってちょっかいかけないよ。

うちの兄貴たちだって、その辺はわかってる。」

 

その双子は、呪いの効果が見たいと、さっさと保健室に飛び出していき、パーシーは暗い顔をして寮監のマクゴナガルを呼びにいった。

 

スリザリンのテーブルでは、後から来ただろう生徒たちも話を聞いて、グリフィンドールの生徒を敵意をもった眼差しで睨んでいる。

 

だが意外なことに、ドラコは頷きロンに同意を示す。

いくら考えの違うウィーズリーでも、古い家系である。

 

貴種の女性に対する考え方は、それほどかけ離れていないとドラコでもわかる。

その認識を欠いては、魔法族とは言えない。

 

そして魔法界の女性は貴種云々に関わらず、貴重な財産に等しいと言うのが共通の認識だ。

当たり前だが、魔女、女性から優秀な魔法使いは産まれるのだ。

 

この当たり前の事実によって、魔女にまつわるトラブルは重く見られる。

そして優秀な魔女であるなら、マグル出身の魔女も、貴重な財産の範疇だ。

ドラコ・マルフォイが、劣等感からハーマイオニー・グレンジャーを罵ったところで、絶対に手をあげたり攻撃魔法をしかけないのも、優秀な魔法族を産む可能性のある女性だからだ。

 

これを口にすると差別だと騒ぎ立てるだろう彼女本人には、この純血の考え方を知られないように注意を払っていた。

 

「悪質すぎるわ、だってマグル出身の一年生に強要するって、最低よ。

アオイだっていい迷惑よ。

買い物に行った時も、新聞記者から身を隠すのに、先生が抱えてたのよ!」

 

ハーマイオニー!!

 

シリアスな空気が違う方向に曲がったのを、魔法界随一の有名な少年は直ぐに感じ取った。

野生の勘が働いた!と、アオイがいれば茶化すだろう。

 

ハリーは、どうやったらハーマイオニーの口を閉じさせる事ができるだろうかと、ロンを見る。

空気を読める男の子、ハリー・ポッター。

ジャパンの空気読みレベルで言えば、現地人レベルだ。

さすがダーズリーと言うサバイバルフィールドで生き残ってきた猛者である。

 

しかし、相手はナチュラルボーンな地雷を踏み抜く男、歴戦のコメディリリーフ、ロン・ウィーズリーだ。

ハリーはその顔を見ただけで敗北を悟る。

 

親友が次に何を言うのか想像できて、心の中で子猿に陳謝した。

これならロックハートと一緒に写真を撮って、サインでもしてたほうがいいような気がする。

 

頼む、何も言わないでくれ。

スネイプの真意はわからずとも、彼女の話が地雷なのは誰でもわかる。

 

そして奴は地獄耳だ。

この場の会話を誰かが耳に入れるだろう。

そして何故かハリーが悪く言われるのだ。

 

世の中は、魔法界も変わらず理不尽である。

知ってる、僕、知ってる。

そうして諦めがつくと、潔いのがハリーだ。

 

さすがグリフィンドールですな!

イマジナリースネイプのうざ絡みが聞こえても、沈黙を選ぶ事にした。

僕は空気だ……。

 

「二度見した、悪夢」

 

言っちゃったよ。

と、思いつつも確かにそうだったな〜と天井のシャンデリアを見るハリー。

そこには見慣れた梟がいた。

天井の梁から、こちらに向かって配達物を見せてくる。

やぁヘドウィグ、手紙?あぁ渡すタイミングがつかめない?

 

どこからって、あぁ届かなかった手紙の束かな?今頃みつかったみたいだなぁ。

けっこうな束だね。

いいよいいよ、後でね。

隣りの梟は?

ロンのお家の子で、迷ってた?

へぇ、そうなんだー

最近ね、アオイにならって、君たちとお話できる気でいるのが重要だっていわれてさ。

うん、なんとなくわかる気がしてきたなーあたってる?

ははは、羽を振ってくれてるな、かわいーなー

 

「どっどういう事だ、ぐっグレンジャー?」

 

吐く仕草をするロンを見て、ドラコの声が裏返る。

気持ちはわかる。

聞きたくないけど、聞いておかないと気になってご飯を食べられない!

と、顔に書いてある。

 

たぶん、コリン・クリービーを脅した奴の話よりは良い。

きっと脅したやつは、死ぬほど後悔している。

名乗り出て詫びなければ、呪いで十日後にはシヌ。

そしてその十日間、どうやら腐るらしい。

全身が腐っても助かるんだろうか?

 

「あぁだって、スネイプ先生がいなかったら、アオイは外出できないじゃない。

二人で買い物してたわよ。

いつもどおり、アオイはおしゃれなファッションだったわ。

あぁジニー、どんなファッションかって、アーバンスタイルのウエスタンね。

えっと、ウエスタンスタイルってわかるかしら?」

 

少女二人のおしゃれ談義などどうでもいい少年は、いつも喧嘩している相手に目線を戻した。

 

「こんな感じだった」

 

で、ロンはハリーのウエストに手を回す。

ハリーの目が死んだ。

再現度が高いからキツイ。

 

二人は見えないと思っていただろうが、お互いのウエストを突きあっていた。

仲良し!

なだけなのはわかる。

自分とロンならじゃれ合いだ。

でも、ハーマイオニーにするか?と聞かれたら、絶対にしないと言える。

 

広間にいた男子達、先輩も含めての視線も死んだ。

 

あり得ない、それは恋人との距離だ。

母上が何か言っていたが、冗談じゃなかったのか?

 

テーブルに肘をついて顔を伏せるドラコ。

深淵を覗いたかのように顔が影になって表情が見えない。

数人の少年達も同じ格好だ。

思春期にダメージが入ったようだ。

ユニコーン拗らせは、どうやらどこの世界も共通らしい。

 

ハリーは、アオイが言っていた抗魔力という言葉が気になった。

今度、スネイプに聞いてみよう。

もう最近、嫌味も怒声にも慣れてきた気がする。

 

「しょうが無いじゃない、変な人達に追いかけ回されたんだもの。」

 

馬鹿じゃないのという発言を受けて、スリザリンの少女たちも珍しく同意の為か頷いている。

 

「まぁロックハート先生が呪いを解いてくれるそうだから、素敵よね、先生」

 

その発言に広間にいた大半の少年たちの目が追加で濁る。

 

「ハーマイオニー、それ本気で言ってるの?」

 

ロンの発言に、言われた彼女は不思議そうに首を傾げた。

 

「学年1位でも、感染するんだね……」

 

感染……。

 

少年たちの心に何故か染み渡る。

言ったのは珍しく失言マスターのロンではなくネビルだ。

 

薄紫色のローブという狂気の色合いを身に着けた香水臭い男を素敵という女子がけっこう発生していた。

いや、発症か。

あれは感染するのか……。

 

ネビルが朝食の席に腰をおろしつつ呟いた言葉である。

耳にした少年達が、更にテーブルに肘をついてお祈りのようなポーズになった。

その殆どが、新人教師に感染……した彼女をもつ少年だ。冗談にならない。

思春期チャレンジ、ダメージの連打である。

 

「ハーマイオニー、僕はスネイプの次に、奴が嫌いだ。

そして今、その順位が変わった。

たぶん殆どのホグワーツ男子生徒の意見は一致してると思うよ」

 

「何言ってるの?

素敵な先生じゃない。

良くわからないけど、ともかく食事にしましょうよ。

先生方も忙しそうだし、先に始めてても時間的に怒られないわ。

そうですよね?」

 

それぞれのテーブルの監督生が同意を示し、生徒たちに座るように指示した。

 

素敵?

ステキって、アレが?

ロンの呟きを、スルーしようと決めたハリーは、テーブルの、妙な形の染みを眺めることにした。

 

暫くするとマクゴナガルとロックハートが他の教諭と共に大広間へと戻ってきた。

校長とスネイプの姿はなく、出かけるという話は早朝からだったようだ。

 

皆、コリン・クリービーがどうなったのかマクゴナガルに聞こうとした。

そう問う前に、ロックハートが勝手に、呪いの広がりは一時的に食い止められ、彼の命に別状はないと楽しそうに宣言した。

ざわめきが広間に広がる。

それに他の教師と話し込んでいたマクゴナガルが食事を取りながらでいいので、少し話を聞くようにと言った。

 

「皆さん、コリン・クリービーのカメラは一時没収、本人へのペナルティが暫く続くため、減点対象とはしておりません。

また、彼に無理強いをした生徒が誰であるか、一年生である彼には判別ができていません。

名も知らぬ上級生だったとの証言を得ています。

どうやら、個人的な品を取り上げられて脅迫を受けたようです。

嘘か真かは、十日のうちに結果が出るでしょう。

 

もし、そのような行為で脅された場合は速やかに教職員へと申し出るように。

今回の事からもわかるように、決して言われるままに従っても、良い結果とはなりません。

また今後、校内で写真を撮る場合は、あらかじめ教師に機材の持ち込みなどを申請するように。

そうすれば持ち込んだ機材に対して、こちらで事故を防ぐ改造をいたします。

 

それから、ミス・ドヴワティーヌがどうして、写真に写ってはならないかを、改めて皆さんに言っておきます。

新入生は知らぬ話ですし、改めて認知しておくべき事柄として話しておきましょう。」

 

と、マクゴナガルは言うと静かに話し始めた。

 

「彼女の親族は犯罪に巻き込まれて行方不明。

そしてご両親も事故でお亡くなりになっています。

彼女自身も由緒正しいお家柄で、誘拐や犯罪に巻き込まれる可能性があるからです。

その容姿が知れ渡る事は危険なのです。

わかりますね。

写真という物は、様々な情報を知らせる事になります。」

 

ここまで語ってから、マクゴナガルは大きなため息を吐いた。

そして言葉を選び考えるように続けた。

 

「彼女がいないこの場で言っておきます。

彼女はマグルの世界で、スクイブの叔母と暮らしていました。

貴種の女性、魔法族の女性を狙う輩から身を隠す為です。」

 

その言葉に、寮関係なく少女たちが顔を顰めた。

嫌な話であるが、関係ないとも言い切れない。

魔法族の少女の数が少ないという事実。その意味は、皆、よくわかっていた。

むしろマグル生まれの魔法族の少女達には、今ひとつ危機感が伝わっていない。

マクゴナガルは、それも含めて改めて言葉にしていた。

 

「魔力のないスクイブの叔母君では、魔法界での盾になれぬからでしょう。

そして、このような話を子供の貴方がたに聞かせるのは、今回の事がたとえイタズラだとしても、非常に危険な行為だったからです。」

 

彼女は飽きたと言わんばかりの低学年の子供達を見回した。

 

「それからミス・ドヴワティーヌのように、防御のタリスマンを持つことは、珍しくはありません。

もちろんホグワーツ内にて身につける子供は珍しいでしょう。

ですが実社会で、若い魔女は、防御の護符を持つべきだと考えられています。

マグル出身、マグル社会で暮らしていると気が付きにくい話ですね。

それか家族によって守られていれば、高価な護符に頼ることは滅多にないでしょう。

ですが、それでもできれば手にしておくべきだと大方の親は考えています。

縁組を控える娘の親、または、社会に出た若い魔女の間では、できれば持ちたいと考えるようになるものです。

そこには魔法族の女性全般が口にしない厳しい現実があるのです。

今回のことで、皆さんには他人事では無いと想像して欲しいのですよ。」

 

言葉の意味をどこまで理解してくれるだろうかと、マクゴナガルは考える。

アオイには申し訳ないが、具体的な想像が子供たちには難しいのだ。

ならば、想像しやすい例え話をするしかない。

実際は、どの魔法族の少女にもいえる話なのだ。

 

「話を戻しますが、そのスクイブの叔母君も彼女と同じく非常に美しい方だったそうです。

スクイブならば狙われないのか。

そんな事はありません。

わかりますか?

魔法族の血縁者は、とてもとても注意しなければなりません。

美しく若い女性です。

アオイの叔母君も、隠れるように暮らしていた。

ご自身も含めて、魔法族の無法な男達を恐れていました。

わかりますね。

例えスクイブであろうとも、その子供が古い血筋を受け継ぐ、非常に才能豊かな魔法族として誕生する可能性がある。」

 

おぞましい可能性がすぐに浮かんだ高学年の少女達は、表情を暗くした。

想像もつかぬであろう、新入生達も恐ろしい話であるとはわかったようだ。

 

「彼女と叔母は襲撃にあったのです。

命からがら逃げ出しましたが、叔母君は行方知れずに。

アオイがこのホグワーツに来た時の姿を覚えている上級生も多いでしょう。

彼女は死にかけ、全身を包帯で包まれ、顔もわからぬ姿でした。

逃げる時に、マグルの車の下敷きになった。

記憶も言葉も損なわれました。

家族の事も思い出せないほどのダメージです。

名が入学名簿に載ったことを確かめに行った時でした。

悔しい話です。

私が訪ねた時には、あの子は車の下で血まみれになっており、マグル達が助けようと囲んでいました。」

 

迎えに行くのが遅すぎたと、彼女はずっと悔やんでいた。

入学名簿に突如名が記載され、その古い家名と存在が明らかになった子供。

理屈や道理はわかっていても。

あと少し早く訪ねれば、その場に自分がいれば、彼女は家族も記憶も失うことはなかったのだ。

そう思うと、マクゴナガルは悔やまずにはいられず、涙が自然と滲んだ。

魔法族の女性だからこそ、魔女だからこそ、昔から同じような事が繰り返されてきた。

恐ろしい事であり、これからの子供にあってはならない話だった。

 

「友達同士、家族同士で写真を撮りあうのは当たり前の話です。

一緒に思い出を残すことは素晴らしいことです。

ですが、それを許しあえるのは、お互いに相手の事を思いやり信頼できる間柄だからです。

昨日、スネイプ先生が警告したのは、そういった楽しい思い出を作ることとは違います。

彼女の容姿が知れ渡る。

顔がわかってしまう危険は、想像力がなくともわかるでしょう。

やっとホグワーツで守れるようになったのです。

スネイプ先生が側にいつもいる意味を、面白おかしくからかうのはいいでしょう。

ですが、本当に越えてはいけない冗談があるのですよ。

犯人はまだ捕まっていないのです。

大人の魔法使いになり、自衛できるようになるまで、彼女の容姿を外に安易に流すことができぬのです。」

 

静まり返る大広間にて、彼女は慎重に言葉を続けた。

 

「自分たちには関係の無い事柄と思わないでほしいのです。

こうして改めて言葉にしているのは、このお話が普通の魔女にもあてはまるからなのですよ。

貴種と限定している話ではないのです。

魔法族の女性、誰にもあてはまる話なのです。

自衛できる魔女ならば、まだましです。

そして友人同士、相手も魔法族の家庭の子で、その写真がアルバムに収まるだけだとわかっているならよろしいでしょう。

ただし、本人の知らぬ間に売買や譲渡が行われた場合、そのリスクは大きなものとなります。

故に、写真を撮る場合は、被写体に対して必ず許可を求めるように。

また、写してしまった場合は、その後に本人に許可を求め、許可が下りなかった場合は相手に元のフィルムごと譲渡するように。

トラブルが生徒の間に起きた場合は、監督生を交えての話し合いともなります。

今後、ホグワーツ内にて、そのような写真、本人の許可を得ない写真撮影が行われた場合は、ペナルティとして減点し、その他の奉仕作業などを割り振り、後に保護者を交えての面談といたします。」

 

そこでハーマイオニーが手をあげた。

 

「なんですか、グレンジャーさん」

 

「先生、コリン・クリービー君は大丈夫ですか?」

 

それにマクゴナガルではなく、ロックハートが答えた。

 

「大丈夫ですよ!この私が対処しましたからね!

彼はとてもいい経験をしたといっていました。

反省し、私のおかげだと涙を隠しながら感謝していました。

ですが、やはり騎士道精神からは外れた行いですからね、暫くは保健室暮らしだそうです。

今日の私の授業に出られないことを、たいへん、たいへんに残念だと」

 

「ミス・グレンジャー、ペナルティが完成するまで十日はかかるので、それまでに解呪できるそうです。

スネイプ教授も言っていました。安心してください。」

 

なにひとつ安心できないのでは?

ペナルティの完成=死亡。

それまでに解呪する。

つまり解呪には時間が掛かる見通しであり、その間は……。

 

「えっと、スネイプ、腐るとか言ってなかったっけ?」

 

相変わらずの失言マスターに、皆、顔色が悪くなる。

皆、コリンが馬鹿な事をしたと思ったが、心底同情するのだった。

 

***

 

保健室にて、ダーリンがカメラ少年を診察。

マダム・ポンフリー共々、実際の護符の影響がスルーした事を確認した。

安心したのである。

 

護符の反撃はカメラ少年経由で、脅した者に流れた模様。

網膜に呪いが刻まれてSAN値が削れたり、身体が腐る様子はない。

コリンの無事を確認すると、マクゴナガル先生は、先に広間に戻った。

 

呪いがスルーして飛び火した事は、他には教えない。

チャレンジが流行したらたまらない。

今回、カメラ少年は奇跡的に無傷なだけだしね。

 

洒落にならんわ〜で、校長も来ていた。

彼が来た時、保健室の外では小説家と双子は粘っていたが、校長にたしなめられて撤退。

君のお陰で心強い云々を小説家に言う爺ちゃん、さすがヒトデナシである。

きっとボクチンのおかげぐらいに言って、場を明るくしてくれるだろう。

ありがてぇありがてぇ。

 

そしてカメラ少年は、鎮静薬を飲まされて寝ていた。

ヒキツケちゃったのよ、びゃーびゃー泣いて死んじゃうんだーって。

 

「優秀な護符じゃ」

 

それにマダム・ポンフリーは、呆れたように頭を振った。

 

「首謀者のところへ呪詛が渡ったようです。

反応が消えるタイムラグからすれば、少なくとも校内にいる人物でしょう。

コリン・クリービーの持ち物を辿っても、校内の距離ですな。」

 

そんなヒトデナシの男二人に、校医先生が舌打ちをした。

 

「解呪不能に近い呪詛を撒く護符が、生徒の側にあるのは、どうしても受け入れがたい話です」

 

「間違いを選ばなければ良いだけの話。そもそもの論点を間違えておりますな」

 

「ヒキツケを起こすほどのトラウマを植え付けてもいいと?」

 

「警告はいたしました。

先に教師に相談することもできたでしょう。」

 

「もう少し穏やかな対処の物品はないのですか?」

 

「魔女を生贄に使うような輩への対処に、穏やかも何もありませんな。

それに彼女の命と馬鹿者のどちらを選ぶかと問われ、両方尊いとする偽善なぞ、吾輩は持ち合わせておりませんので。

あぁ、わかるように言いましょうか?

身を守る道具を捨てさせた結果を貴女は引き受けられると?

約束を守れぬ輩の為に、死ぬのを黙ってまてと言うのですかね?」

 

にべもない言葉に、校医先生は言葉を継ぐことができない。

 

やめてよ、セウェルス。

手を引くと、彼も失言だったかと目を伏せた。

 

「少し認識の齟齬があるようじゃ。

二人とも子供を守りたいのは一緒じゃ、まぁ、お互いに少し当たりを下げるのじゃ」

 

仲裁に二人は、気まずそうに視線をあわせた。

 

「失礼をいたしました」

 

「いいえ、癒者に対処できる類のモノではなかったので、少し取り乱しました。」

 

それにセウェルスは少し皮肉げに口の端をあげた。

 

「実際、この呪詛は思ったより単純。校長はいつでも解く事ができます。」

 

はっとする校医先生。

 

「あぁ、あぁそういう」

 

「表向き凶悪な守りであるが、解呪ができるから許可が出ているんじゃ。

解呪不能、つまり儂とセブルス以外は解呪できないという条件付けを見えなくしている。

普通の呪詛のように解く場所がもとより無い。

故に、解呪不能のように見える。

 

そして普通の呪い破りなら、この条件付けを探すものじゃろ?

呪詛を分解し、何層にも渡り調べるのが基本じゃが。

 

この男は信じられない層の下に、この解呪へ至る条件を落としているのじゃ。

鍵ではなく、条件の取り掛かりそのものをバラバラにしてな。

そもそもがそこにたどり着ける者もおらぬ。」

 

「ヒトデナシどもには無理な方法、更に言えば呪い破りにとっては難しく見える呪詛でしょうな。

貴女のように、知識のあるものほど困難な呪詛に見えるでしょう。

さらに初手で手を出す者に飛び火する仕様ですからな。

ですが、解呪方法は実は簡単。

校長に詫び、解けよと願わせるだけです。」

 

「じゃが、それが一番困難じゃろうて、そして無理に手を出せば、同じく呪われる。じっくりと時間をかければ、さらにその手出しした者の縁者にまでじゃ。

マダム・ポンフリーがひと目見て、無理と思うのは正しい判断じゃ」

 

「犯罪者、悪意や欲望にまみれた者、嘘つきが、校長に詫びを入れるのは不可能。

悪意には悪意。

死と苦しみをもたらす呪詛となる。

猶予も十日と持たせてあります故。

じっくりと己が罪と向きあえるでしょう。

実際は、あまり危険ではないのです。敵対しなければ」

 

「あらまぁ」

 

「校長だけが知り得ている事が重要だとおわかりいただけたでしょうか。

安全の為に、吾輩と校長以外は、解呪できない仕様です。」

 

「ダンブルドア校長、何か恐ろしい事がおきるのですか」

 

聡い校医先生は、この二人がここまで話すという意味が理解できていた。

つまり、これからも、このような事がおきる。

 

「魔女がいなくなる事件がおきている。イギリス以外の土地でじゃ。

その話もあり、セブルスと儂は魔法省に出向かねばならんのじゃ。

生徒達には、解けぬと伝えておく事が肝要。

事実、解呪不可能の術式じゃ。

だからこそ相手も躊躇う。

じゃが絶対に解ける事もまた事実じゃ。

セブルスはリスク管理を知らぬ男ではない。

そして子供がどういった間違いをするかもわかってる。」

 

そうなれば校医先生に反論はなかった。

でも、迷惑をかけちゃったもんね。

ワイは謝ることができるアニマルである。

 

(ごめんなさい)

 

「こちらこそ、ごめんなさいね。」

 

「我々はこのまま出かける準備をする、食事はこちらで彼女にとらせて、午前中は自主学習。

午後からは平常通りスリザリンの集団に戻るように、問題が長引いてもセブルスは今日中に戻す。

アオイは、大丈夫かの?」

 

大丈夫、そっちこそ気をつけてね。

魔法が効かない相手とか普通に危険すぎるからね。

 

「わかっておるよ。それから念の為じゃ、彼は保健室にて自主学習を暫く続けるようになろう。

また、他生徒との接触も暫くは駄目じゃ。

あと、相手が本当に生徒かどうかも少し聞き出してくれるとありがたい。」

 

「生徒じゃない可能性が?」

 

それに校長は、真意の見えない表情をうかべた。

 

「制服が違うのじゃ」

 

「他所の生徒だと?」

 

「いや、儂が教鞭をとっていた頃の制服じゃの、およそ50年は前じゃ。

あの頃はグレーカラーのローブで、襟が少し違っておったじゃろ。

彼の記憶をちらっと見た限り、今の制服には見えんかった」

 

「顔は?」

 

「それがのぅ何故か首から上が見えぬのじゃ。

中々に、よくわかっておる魔法族じゃ。」

 

「開心術を警戒して、隠蔽をかけていると?」

 

「さて、儂らは出かけるとしよう。

アオイや、今日から暫く遊びに出る時は、この男がいる時だけにしなさい。

爺は心配で、夜しか眠れんからの。」

 

わかったー

罠を張るんだねー

爺ちゃん、本当にディアボーンに気をつけろよー

と、ハグして見送った。

 

その後、校医先生と少し笑ってから、ご飯にした。

校医先生も私も、爺ちゃんは戯けてたけど、やっぱり少し不安なのを隠せなかった。

 

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