ちなみに、あの設定かと気付かれた方もおるじゃろうが、これは香り付け程度じゃ。
原作終了年までは、きちんとハリー・ポッターの魔法ワールドのままじゃ。
クロスオーバー世界の設定が多数散見されるが、実はひとつの設定によって結びついている状態じゃ。
故に、ハリー・ポッターである事にかわりはないが、だいぶ、原作解釈とはかけ離れておるのは、平行世界であると考えてもらえるとありがたい。
つまり、原作で選ばなかった選択肢の世界じゃ。
ゆる〜い目で見てくれると、儂もセブルスもニッコリじゃ。
幕間
さて、そろそろホグワーツに帰るかの、セブルス、どうした浮かない顔をして。
わかっておるよ、あまり楽しい話ではない。
そうじゃ、伝える必要もなかろう。
未確定の話じゃよ。
そんな顔をしていると、アオイに心配をかけるじゃろう、しゃっきりせい。
あぁあと、ゲラートから渡された資料で、裏付けのとれた物を帰ったら渡すぞい。
それを読めば、ある程度、ディアボーンが何を述べているかもわかろう。
ほい、帰るぞい……あぁ寄り道?
(相変わらず、素直じゃないのぅ。彼女に菓子か何かを買い込むつもりじゃな)
じゃぁ儂は、先に行くぞ、あぁわかったわかった、余計な事は言わぬよ、ほいほい。
***
キャラドック・ディアボーンは、微笑んだ。
懐かしい顔である。
とてもとても懐かしい。
彼はとても機嫌が良かったので、託宣をする事にした。
故郷に戻ってきた寿ぎも兼ねている。
彼は幾人もの死を集めていたので、材料はたくさんある。
良き託宣には、多くの非業の末路が必要である。
十分に屍の山をあさり、冒涜を重ねた骨も得ていた。
「それは?」
この世界の賢者に問われ、その旧知の顔を眺めつつ、ディアボーンは微笑む。
自分が、まだまだ至れぬ場所に、死なずに到達できた相手だ。
素晴らしい、彼が死ぬ時は、大切に骨を集めようと思う。
だが今日は因果を占うだけにする。
「これはある男にもらった占い用の骨だ。」
「人の、骨かの?」
「獣の骨だ。まぁもとは人間だった」
「ほぅ、何を占ってくれるのかね?」
「その男とは?」
ディアボーンは、二人を見て考える。
一人はなりかけ、もう一人にはすでに資格がある。
戻ってから初めて感じる仲間の気配だ。
再び、現実世界から落ちた時の、アンカーになりうるだろう。
もうディアボーンは、共食いをする気力がない。
これでも殺し合いには飽きていた。
「第一次世界大戦で、外人部隊にいた男だ。
除隊したのは、いつだったかな。
まぁ彼は落ちたままだ。
俺が帰れたのは、たまたまだ。たまたま、ちくしょう!」
嘆いているのか喜んでいるのか、彼はだんだんわからなくなる。
だが戻ってみれば、ここも同じだった。
あちらと同じく、ろくでもない代物が増えていた。
人間をやめてまで戻りたかった場所なのにだ。
神はいない。
いるのはバケモノだけだ。
「男の事を話せ」
騎士団の男にしては、中々に退廃を知るようで、ディアボーンは既に古くからの知り合いのように感じていた。
黒い髪、黒い瞳、そして星の気配がまとわりついている。
実に良い、あと少しでこちらに来れるだろう。
「ボストンの出身だと言っていた。
学者と名乗っていたな。
彼は二度目だった。
あの場所に落ちるのは簡単だが、戻るのは至難の業。
そして戻れたら最後、力は失うという。
力を失うという表現は間違っていた。
そもそもが元には戻れない。
再度、構築された俺は、既にもう、以前の俺ではない。」
「あの場所、とは?」
「名を思い出せない。
凍てつく荒野。
夜に吠える神がいるとされるアジアの高地だ。
そこにある修道院にて、暫く身を寄せていた。」
「どうやってそこにたどり着いた。アジアのどこだ?」
「モンゴルか、よくわからない。
俺は落ちた。
死ぬ前に見る景色だ。
きっと俺は死にかけて、そこにいた。」
「だが、君はここにいる」
賢者を見やり、ディアボーンは笑った。
「そうだ。
俺は正しい答えを返し続けた。
対話は常に行われ、階段を時々戻った。
戻れないはずだった。
俺が戻れたのは、偶然だった。
冒涜者が、また罪を犯したのだ」
「冒涜者?」
「スコットランドの糞女が、儀式に失敗したんだ。
まただ、また、多くの命が犠牲になった!
フランスに逃げ戻ったその魔女は、のうのうと自分の身代わりを差し出した。
貴様を捉える星がそれだ。」
黒い男をじっと見つめる。
何もうつさぬ顔に、それでもディアボーンは星の輝きを見た。
「美しく健気な星、最後の星は、まだまだ子供のようだな。
だから貴様は星を手に囲う。
誰にも渡したくない。
誰にもだ。
あぁ嘘をついても無駄だ、星を手にした男は、二度と元には戻れない。」
無表情の黒い男に、ディアボーンは笑った。
あぁ楽しい、人間と話すのはいつぶりだろうか?
「あの糞ババァ、また、やりやがったのさ。
幾度も幾度も繰り返し、とうとう残る星も一人だ。
あぁ、まだ星はいるだろうさ。
だが道標になるような輝きは、貴様の星が最後だ。
これがスコットランドの魔女の呪い、これが貴様の星の因果だ。」
骨の一つを並べ、そこに順々に因果を置く。
「これが元凶の魔女だ。
一度神に誓ったというのに、逃げたのだ。
死を恐れ、神を冒涜した。
そして次に、これが元凶の魔女が欲しがる星だ。
星は我らが神に捧げられる事を受け入れるが、冒涜者の愚考は嫌った。」
ひとつの因果を取り去る。
「自ら死に、因果を切る。
だが、冒涜者は執拗だ。
死にたくない死にたくないと足掻く。
だが、その念が強ければ強いほど、自ら落ちていく。
幾度も幾度も繰り返した。
神はますます星を輝かせ、その犠牲を尊んだ。
そしてますます、冒涜を続ける女に地獄の責め苦を与えた。
女は、それでも多くの間違いを選び、穴を穿ち、星を掴もうとした。
己が落ちる穴を塞ごうとな」
ディアボーンは二つの骨を指さした。
「彼らは賢き神を選んだ。
生き延びる事を選ばず、子の為にと受け入れた。
お陰で神はその因果を手のひらに戻し、寿いだ。
良き死に様を得たとな。」
二つの骨を取り去る。
そして黒い男の目の前にある骨を指差す。
「貴様の囲う星だ。
冒涜者は落ちる。
俺が落ちた場所は、まだ、底ではない。
それよりも深い場所だ。
俺が戻れたのは、その横やりの御蔭、たまたまだ。
星を俺も崇めよう。
魔女にはくれてやるな、どうせ無駄だ。
笑えるのはな、あの糞ババァ、自分が何に戻りたいのかも、もうわからねぇんだよ。
人間の時もバケモノみたいな女だったがな。
貴様の星さえつかめれば、戻れると思っているのだろう。
もし運悪く出くわしちまったら、聞いてみな。
バケモノがどうして人間になれると思ってるんだ?もともと人間じゃぁなかろうってな。
星を食らって成り代わったって、もう人間のフリもできねぇだろってな。」
「儂らにもわかるようにいってくれないかね?」
「アルバス、アンタは理解できているだろう?
スコットランドの邪悪な糞女だ。あの女を覚えているんじゃないか?」
「君が誰のことを言っているのか見当はつく。じゃが、彼女は儂よりも遥かに高齢じゃ。
儂が子供の頃には、既に200は越えていた。
すでに召されたと思っていたがのぅ」
「娘のような姿のままだったぞ、腹の中に蛆を飼っていたがな。
言わぬが花ではあるが、星の器を一番欲しがっているのも確かだ。
殺しすぎたと悔いてもいるだろう。
身代わりに魂だけを差し出し、外側だけを掠め取ろうとするやもしれぬ」
「……信じられぬ話じゃのぅ。何か……証拠となる何か……は無いのかね。
我々が納得できる事を示してほしい。
さすれば、もう少し良い待遇を与える事ができるのじゃが」
もとよりディアボーンにとっては、どこにいても同じである。
不自由をしているとすれば、信者を狩る道具を作る場所が無い事だろうか。
「俺の力を恐れているのは知っている。
だが、俺はこのイギリスで死にたい。
普通に墓に入って土に還りたい。
だから、このイギリスを蝕むモノを取り除く手伝いをしたい。
あぁあと、俺の頭の中身を覗くのはオススメしない。
正気を保てなくなるぞ、それでも良ければ、見ると良い。隠してはいない。」
すると覗こうとした黒い男を賢者は止めた。
「忠告をありがたく受け取ろう。
で、彼女は今、何処に?」
ディアボーンは骨を転がした。
「場所は、アメリカだな。
メリーランド州、山、まぁたぶん、山脈ぞいだな。
ひでぇ臭いがする。
死んでるな、死んでやがる。
調べるなら、あっちの魔法族に任せたほうがいい、そうとう溜め込んでる。」
「否定はせぬが、溜め込むとは?」
「あぁ信じなくてもいいさ、お遊びの占いだ。
湿地帯も見える。
女が多いな、やっぱり女を軸に攫っている。
見境がねぇから、マグルの方でも兵隊を出すかもしれねぇな。
ともかく、見物だけにしとけよ。」
骨を拾い集め袋に戻す。
久方ぶりに覗いたが、相当に食い込んでいる。
触りを占っただけで、汚臭はそうとうな物だ。
そして感じる事ができぬはずの魔法族二人にも、その腐敗臭が感じ取れるほどだった。
「彼女はイギリスに来ると思うかね?」
「アンタとほら、お友だちの男がいるかぎり、暫くはこっちの方向へは来ない。
たぶん、アメリカあたりで巣を食うんじゃねぇかなぁ。
ともかく、調べるとしても中身に気をつけなよ」
「中身とは?」
「セブルス・スネイプ、だったか。
貴様は、もう見ただろ?
人間の皮から飛び出してくる、海老みたいな奴らをよ」
ディアボーンは椅子を後ろに傾けて、器用に揺らすと笑い続けた。