R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできております。
ちなみに、主人公がセブルスと会話をしている頃、フィルチ氏は怒り狂い、殆ど首無しニックは、ポドモア卿からクラブ入会を断られて凹んでいます。
ハリーは雨に濡れて泥だらけ、ロンは魔法薬学の宿題が終わらずに絶望中。
そして双子は、セブルスの予想通り、ハロウィンのイタズラを考えても盛り上がっています。
ジニーは風邪気味で、元気爆発薬を飲まされて耳から煙りを出していましたが、変な本とは遭遇していません。
アーサーパパは大乱闘してないし、ルシウスパパも本を子供の荷物に忍び込ませてはいません。
じゃぁ例の本は何処へ?
幕間
「パパが言ってたけど、穴を見つけても、見ないふりがいいの。
それからやまびこね。
知ってる人の声でまねっこするの。
だから、声がきこえても、聞こえないふりね。
たぶん、まだ、大丈夫。
風ね、風が吹くと、前触れ。
三回目ぐらいまでは、しらんぷりで逃げられると思うの。
お星さまはキラキラだもの。
でも大きな手が掴んできたら、目をとじても、風がふいちゃう。
そうだ、パパにお手紙書こう。
キラキラお星さまに、おまじない。」
「ラブグッド、どれが正解だ?」
「う〜ん、正解?正解は無いよ、先生」
「では、質問を変えよう、どれに中身が無い?」
「コレかなぁ」
「どうしてそう思った?」
「嘘つきで、変なニオイ。土、水、ちょっとカビ臭いの。パパも言ってたけど、そういうのは見ないふりよ」
「相わかった」
「先生、手を離しちゃ駄目よ。穴から出てくるのは、似てるけど、別だよ。
パパもね、ずっと悲しいの。
だからお星さまはキラキラ、風は吹いてる。手をはなしちゃだめよ」
「……ラブグッド、君も近寄ってはならぬぞ」
「はぁ〜い」
***
10月はハロウィンだ。
大きな人は、畑でかぼちゃを育ててる。
キャベツは未確認だ。
どうやらもっとギリギリの魔の森浅層で育成中らしい。
自動で野生動物を撃退できるナニカらしい……。
そしてハロウィン向けに、カボチャ畑ではモリモリとんでもない大きさにナニカが成長している。
こちらは自立歩行しない、いちおう普通の野菜だ。
たぶん……。
その畑にカボチャ大王はいないけど、最近、うさぎのような女の子がいる。
近寄ると逃げるのに、ときどきぼんやり近くにいたりする。
あれ、何かよう?
って聞くと、ちがう〜って感じでぽよぽよ彷徨ってる。
少し焦げた美味しい色の髪の女の子で、レイブンクローだね。
大きな人のカボチャ畑で、座り込んでいる。
暇さえあればカボチャを眺めているので、私の中ではカボチャマニアのうさぎちゃん。
なぜ頻回に遭遇するかといえば、心の友であるファング君の所へいけば、ついでにカボチャ畑を通る事になるからだ。
ホグワーツは生徒数の割に大きいから、人と会わないルートを選ぶと、本当に誰とも会わないのさ。
ちなみに位置関係ね。
今の私が知り得ているホグワーツの敷地地図ね。
地図的に上を北として考えてね。
一番南側手前→ホグズミード駅、ホグワーツ特急は東方向から西方向、ホグズミード村を回り込む感じで線路が続いてるよ。
そいで駅の北側が大きな湖。
ホグワーツ城から見ると、お城を囲むように南側に広がってる。
新入生はお舟で進む、あの湖ね。これも東側に広がる禁じられた森の方向が水源。
そして巨大イカちゃんが住んでる。
ワタシ的にはキャサリンと呼んでいる、レディ・キャサリン。
美女のお嬢様って感じでつけてみた。
岸辺に座ってるとちょいちょい、オモロイ事をしてくれる。
ボールとか投げると打ち返してくれるし、魔法なんかも打ち返してくれる。
なに、怖いぐらいのポテンシャル。
それってゴジラじゃ〜んって思ったけど、どうやらレディらしい。
レディ・キャサリンとか可愛いよねっていったら、お礼に水底に沈んでた髪飾りをくれた。
爺ちゃんに見せたら呆気にとられてたなぁ。
どうやらこの学校の誰かの持ち物らしくて、返しておくって。
素手で触って大事ないか?って聞かれたけど、別に湖の底でヌルヌルに苔むしてたから、手を洗ったけど大丈夫って返した。
呪われてるの?って聞いたら、爺ちゃんが唸る。
うんうん、唸って、ある程度考え込んでから、ぽいって感じで魔法収納に突っ込んだから、たぶん、アカン品ではあるが、まーいいかーにおさまった模様。
そいで代わりになにか欲しいか?って聞かれたけど、みぞの鏡を破壊させろって言ったら駄目だって、ケチ。
けど、鏡の破壊は許されなかったけど、破壊する権利はもらった。
私が自力でたどり着いて、木っ端微塵にしても怒らないよって権利。
それが一昨日ね。
キャサリンの話をして、そのご褒美の話をしたらダーリンが血相変えて校長の所に走っていったっけ。
何だったのかな?
破壊許可が問題?
キャサリン呼びが問題?
わからん。
まぁあの髪飾りは、どうやらホグワーツに縁のある品らしくて、とっても重要だって事は教えてもらえた。
それに世界最高峰攻撃型賢者が、まっいーか〜って考えているなら、アニマル的には終わった話である。
そんな感じでホグワーツ暮らし、あっちこっち探検してる。
今度、ハリー君も誘うつもり。
休暇中は、多分、どこかのお家にホームステイするんだろうけど、時々は学校ぐらしで残るでしょ。
せっかくファンタジー魔法世界だよ、マグルではできないアトラクションを楽しまなきゃね。
アトラクション=しゃれにならんわ!だとしてもね。
そいでホグワーツ城があって、温室は東側、魔の森手前の湖の水源が横を通ってる。
温室の隣に暴れ柳、これはグリフィンドール寮がある塔から近いかな。
そしてその更に北側に大きな人の小屋、小屋の東側にカボチャ畑。
つまり小屋はお城の北側ね。
その小屋を西に進むと箒の練習したりする場所が結構な広さで広がっている。
お城の天文台からよく見える北西方向だね。
そして西側。
こっちはホグズミード村へと続く校門側の道が門まで続いてる。
ホグワーツ城は、この西側が正面なんだよ。
駅から見えるのは、岩山の上に聳える城塞の裏手って訳。
ホグズミード駅から出ている馬車は西門から入ってくるようになるね。
そしてその道をまたいで更に西南方向にクィディッチ競技場がある。
スタジアムね。
その南側には、箒置き場、それにそれぞれの寮が道具をしまっている建物なんかがある。
説明するの、ちょっと地形が複雑で分かりづらいかな。
じゃぁ整理する?
私がいるのは、ホグワーツのお城の北側で、畑を眺めてる。
そうするとホグズミード村は、後ろ、南西に位置してる。
学校を透明にして想像してね。
振り返った視界には学校の塀が見えるね。
で、その視線を東にゆっくりと向ける。
正面は湖が広がっていて、湖の向こうの学校の塀は山に続いている。
更に東に顔を向けると、その山が少し低くなって魔の森に消えていく。
その東側は魔の森で、森は東側から北に向かって囲むようになってる。
つまりホグワーツは半分以上を自然の地形で囲む形にしているんだ。
北はハイランドの険しい山々、そして北西方向は広大なムーア。
学校の塀は湖側だけが自然を利用してるけど、北側にはあるね。
さて、南西に位置するホグズミード村との間は、南側にある山と森に遮られている。
村に向かう場合は、ホグワーツの西の門から森を回り込むようにして向かうってわけ。
そしてスリザリンの寮がどこにあるか、わかった?
大イカが徘徊する湖、南西方向の地下ね。
こんな感じ〜、ん?
うさぎちゃんと目があった。
一年生だね、まだ、よく話したこと無いし。
可愛い、目が大っきい。
やぁ!と手を振る。
頷くうさぎちゃん。
ただし巨大カボチャのとなりでしゃがんでいるのが、とってもファニー。
でもカワエェねぇとか思ってたら、ど〜ん!
ファング君、相変わらずだね。
うんうん、遊びに?
栗を見つけた?
茸も?
りんご、りんごの芯をわんわん食べたら駄目だよ。
魚も捕まえて焼こう?
うんうん、茸、毒じゃないやつ?
わからない?
うんうん、わかった、いっしょにいこう。
わふわふしてるワンワンとワレを見て、ウサギちゃんがぼ〜っとしてる。
(これから秋の味覚を探しに行くけど、くる?)
ワンワンとウサギちゃんとワレは、こうしてカボチャ畑から、温室方向へと向かう。
比較的、魔の森の際だけど安全地帯を選んでるよ。
間違っても森の中にふらふら入り込んだら、黒衣の男がキレ散らかしながら追っかけてくるからね。
今日は学校にいるはず、最近、週末は出かけているけど、新年度の授業が始まったばかりだ。
さすがに色々なカリキュラムを捌く教師に自由時間は無い。
おまけに、ちょこちょこと検閲を通った魔導書が届いている。
曰く付きじゃない最初に頼んだ希少本の方ね。
それが届いているから目を通すのに忙しい。
魔法薬学教授でありスリザリンの生徒の貴重品を預かっている体裁で、セウェルスの書架が潤っている訳だ。
睡眠不足どころじゃない。
もちろん睡眠時間を確保しなかったら、貸さないよって約束させてはある。
ただ、体力削ってるところを見るに、何か、魔道具使って時間調節してそうなんだよね、見張らなきゃ..
そして隠れようとすれば、いくらでも行方不明になれちゃう広さなのが、この学校だったりする。
校長は、屋敷しもべ妖精や絵画の人達を掌握してるから、ほぼ、死角は無いんだろうけどね。
そんなホグワーツ城、すごく不思議な魔法のお城って思うでしょ?
確かに魔法建築で内部もいろいろ不思議な事になっているけど、基本はヨーロッパ城塞建築とかと同じなんだよ。
地下にダンジョンが広がってるから、もろファンタジーじゃん!と思うかもしれないけれど、古いマグルの都市構造と同じなんだ。
つまり地下にはカタコンベがあり、古い城塞、三層ぐらいの回廊構造に、使用人の通路が壁の中を走っている。
魔法的に不思議な通路があるんじゃなくて、古いお城の使用人通路に、墓守りありきのカタコンベがある、だけなんだ。
地下には墓守りが常駐し、使用人は表通路を使わない。
不思議な階段や通路が移動しているからファンタジーなのは確かだけど、実際は、昔の建築物に魔法の仕掛けをかけた状態ってのが本当。
開かずの間や知らない部屋も、お城の作りとしては当たり前だったわけ。
外壁や壁の中に通路や小部屋があるってのは、昔のお城としては当たり前って意味だよ。
そこに使わない家具とか、不要な品を詰め込んだり、使用人の待機室にしてたんだよ。
あれ、何の話だったっけ?
ホグワーツってどんな配置って話だったか。
えっとだ、つまり私が日向ぼっこして、ダーリンが屍と化すベンチがあるのが、スタジアム方向にある南西の湖側で小島が見える岸辺。
自然な薬草群生地もあってスリザリンの寮側。
そこからトコトコ南側の正面玄関側を回り込む。
景色は堂々とした御城正面と南門へと続く美しい庭園ね。
北西方向は少し丘陵になっていて、様々なホグワーツの授業に必要な場所や、なにかする為の広場というか運動場みたいに開けた景色。
んで、徐々に見えてくるのは魔の森の片鱗。
振り返ると西門、スタジアム、ホグズミード方向の森や駅方向へと続く山ね。
で、そのまま北に進むと最初に見えてくるのが、暴れ柳って奴。
その奥はもう魔の森の入口が見えてて、昼間でもお空まで少し暗め。
更に回り込むと、右手にはグリフィンドール塔に近い出入り口の階段。
ちょっとした生活感のある地下への扉、多分、屋敷しもべ妖精達が出入りしてるのか、ガラクタと洗濯物干し場がある。
片付いてないけど何だかほっとする場所で、低木とお花とかバラバラに咲いてるね。
そして更に進むと森から続く林の中に大きな人の小屋と畑。
小屋って言うけど、住んでる人がビッグサイズだから大きいよ。
畑に鶏小屋とか、ここもなんていうか楽しげで、ファング君のお家もある。
その東側にはカボチャ畑が今の時期だと広がっている。
気がついたかな?
ホグワーツ城の中も回廊構造だから庭になってるし、この学校の敷地内、子供たちが動き回れる場所って、すごい広い。
そして広い割には整っている。
屋敷しもべ妖精と、実は園丁として働いている人達がいるんだ。
そりゃそうだよね。
すべて屋敷しもべが〜って言うけれど、人間も働いていないと間に合わない。
妖精の魔法だけで、本当は済むにしてもね。
そこで働く人はスクイブの人だったり、低魔力の人だったりする。
セウェルスの話に出てきた、魔法使いであると名乗れずとも、魔法界の住人である人たちだ。
用務員であるフィルチ氏もその一人で、彼一人で全てを賄っているわけではない。
彼の役割は、このホグワーツの魔法的誓約の中の、墓守りの位置になるんだって。
言葉が用務員になっただけで、彼がお城のメンテナンスや総括をしているのは、その役割がホグワーツの魔法に組み込まれているからなんだ。
この話は、ダンブルドア校長、爺ちゃんへの質問から知り得た話。
小説家をジンクスのある職につけた時にね。
このジンクス、防衛術教師の職についた人間が呪われる範囲ってどのくらい?って。
つまり教授職につく者が呪われるとして、それは生者以外にも適用されるのか?
名簿に載った時点で、呪われるのか?
名簿、役職、学校、どこが呪いの範囲であり、術が置かれているのか?
辞退すれば免れるのか?
とまぁ色々質問して、どうせ具体的には答えねぇだろうなぁで頂いた反応が、ホグワーツでの役割にかけられた呪いだってこと。
名簿にかけただけの呪いなら、解き方は簡単だ。
けど、そもそものホグワーツという仕組みに食い込ませてあるから難しい。
防衛術教授の職についた時点で呪われるし、職から解かれた時点で終る、かも不明。
二度と復帰しない状態まで追い込まれている可能性さえある。
確かなのは、ビンズ先生のような幽霊でも呪われるし、一年以内に防衛術教師ではいられなくなる。
そのいられなくなるが、先にも述べたように終わり方も不明だし、辞退だけで免れる事ができるかも不明。
そもそもがホグワーツ魔法魔術学校のシステムが、一つの魔法であり、その制約にひとつのルールが足された状態なんだそうだ。
魔法学校の校長という役職に付随する権限にも、魔法学校校長のロールルールが存在している。
屋敷しもべ妖精ちゃんを統括できたり、学校の防衛とか色々ね。
そしてたくさんの人間の使用人もいるけれど、用務員として生徒と関わりのあるフィルチ氏がホグワーツ内部のメンテの軸に置かれているのも、このルールのひとつなんだそうだ。
昔のお城の職業ロール。
つまり墓守りの役割で、これは中世では重要な職種のひとつだった。
まぁその辺はいろいろ難しい昔々の話なんだけど、彼が夜回りをし、お城のメンテナンスをし、地下を徘徊しているのは、それが決められたホグワーツの学校としての形を保つルールのひとつになっているから、らしい。
ポルターガイスト氏も、ゴーストの皆様もだ。
だから、防衛術教師の席、ロールルールが誓約として、この魔法学校全体の誓約として発動しているので、これを取り除く事が難しいらしい。
と、これが爺ちゃんの話から読み取れる呪いの全容、爺ちゃんだから、どこまで本当かはわからないけどね。
でもそれがある程度本当だって考えると、その呪いを置いたやつは、すげぇ天才だ。
魔法学校を維持する為に創設者が作り上げた防衛と維持のルールに、余計な約束を付け足せるだけの知識と魔力があった事になる。
呪いが解けない、つまり俺様は貴様らより上だ!
んで、それが現在、カピカピの化石みたいになっちゃった、闇の帝王(笑)が、その俺様らしい。
もったいないよね、無駄に才能豊かとか。
そんな事を考えながら、温室の東側に向かう。
こっちは日当たりが良くて木々も暗い影を作っていない。
では、ファング君、おやつを探すのである!
***
収穫物はブラックベリーに栗にりんご。
茸は、ウサギちゃんが言うには、毒毒茸なので、ドラゴンもイチコロらしい。
うむ、と丁寧に保存瓶を持ち出して収納。
ダーリンのお薬の原料になりそうなので、お土産にするのである。
採取用手袋もして保存瓶へ投入、手袋も処理してスコージファイしてるから大丈夫だぞ。
ワイは犯罪者ではないので毒物は医薬品の材料として医学の発展の為に献上するのである。
それからファング君はナメナメもしちゃダメだからね!
そいで私達は収穫物をそれぞれ手に、(袋は持参してるので、うさぎちゃんにも渡してある。)ファング君は首に袋を下げて戻る。
と、フィルチ氏とその他二人、多分、園丁の人と出会う。
「お嬢さん、スネイプ先生を困らせるんじゃァないぞ?」
大きい人にも言われるいつものフレーズである。
ワイ、にっこり。
ワイは、えーこだよー!
足元ではミセス・ノリスに鼻で笑われる。ご褒美!
と、スススっとウサギちゃんが私の後ろに隠れた。
三人から、お気をつけて戻ってくださいねと丁寧なご挨拶を受け、ラジャ〜じゃなくて、ありがとうございますと猫をかぶって返す。
園丁さん達とは、学生はあまり顔をあわせる事は無い。
彼らは妖精達の手が必要のない仕事を担っている裏方さんで、生徒がいる場所を避けているみたいだ。
ただし、そもそも彼らが必要とされるのは、その魔法を使ってはならない場所みたい。
魔法で片付けてはならない、細かなメンテね。
だいたいは回廊内側の庭園だったり、運動場などの整備、校門から見える景色の手入れだ。
魔法植物関係や森は危険なので近寄らせないのである。
そう、フィルチ氏と同じ、スクイブや低魔力の人って事。
これはわざとでもあるんだ。
実際、呪いや魔法に抵抗できない魔力無しの人たちでも、逆に魔力が低いことで助かる事がある。
つまり魔法族だと無理な場所に入れるって事。
歪んだ魔力で、私が目を回すのと同じ原理ね。
感じるセンサーがなければ、近寄れるって場合だ。
フィルチ氏達を見送ってから、私達は再びゆっくりと歩き出した。
(屋敷しもべ妖精ちゃんに渡して、後でお菓子にしてもらったりするよ。
ファング君は、大きい人に渡すんだよ。食べていいやつをあげてねってメモ書きも入ってるから。)
わんわんの首に下げた、布に包んだ収穫物を指差す。
らじゃ〜って感じで尻尾が揺れる。
相変わらずの良い子である。
フリーダムな飼い主に似なくてよかったね。
「あのね……」
中に入る前にゴソゴソやってるとウサギちゃんが、ぽそっと話しだした。
お座りするワンワンと、収穫物を選り分けていたワイは、おとなしく彼女を見返す。
彼女の手にも収穫物の包みがある。
それに目を落としつつ、彼女は考えるように、ぽそぽそ話す。
つーか、初めて声を聞いたぞい。
「まだ、わからないことおおくて」
うむ。
「でも、だいたいはナーグルの所為だと思うけど。」
ナーグル?
(ごめんね、私、記憶が欠けてるから、ナーグルって何?)
「夜と、排水口、葦の岸辺は、きっとナーグルが、いるわ。お星さまはね、ツリーのてっぺんにいないと」
眉根を寄せて、とても真剣に彼女は言う。
「まだ、ここに慣れてないから、違う、かも。
でも、ちょっと、お姉さんは……きっと怖がらないけど、帰れるうちに、帰ったほうがいいよ」
(……台所に行こうか)
もしかしなくても、何かの忠告かな。
ファングくんとバイバイして、城の中に入る。
週末、ホグズミードに遊びに行っている上級生以外は、クィディッチの練習やら補習勉強、その他に忙しく西側の通路には誰もいなかった。
(夜の排水口、葦の岸辺、はナーグル?がいるってことかな)
ウサギちゃんは、首を少し傾けた。
何かぽや〜っとしているが、自分なりのロジックを組み立てているようだ。
「におい。水のにおいだけど、変だった。
パパは、感じたら、知らないフリがいいっていったけど、お姉さんは、風が吹くと楽しそうだから」
ハッフルパフ側の通路に向かい、台所が隠されている壁を探す。
見つかりにくい壁を探しながら、なんとなく、その意味不明の言葉の破片が、私の中ではしっくりきた。
きっと心にある魔女の血が、笑っている気がした。
(ホグワーツにナーグルはいっぱいいる?)
ウサギちゃんは、首を振った。
(ジャムにしてもらおうか、お友だちと食べられるようにお部屋に届けてもらおうね。)
ウサギちゃんは頷いた。
「ナーグルは、まだ、いいの。」
うむ。
ナーグル、まだ、いいのか。
「ここの森は、広さがヘンテコ。たぶん、大きな木と不思議な人がいっぱい。」
(もしかして、森の奥は行くなって話?)
「風ね、パパが言ってた、穴のお話。やまびこみたいに、声が届くの。」
うむ。
これも警告かな。
屋敷しもべ妖精ちゃんがピョコっと出てきて、収穫物を受け取ってくれる。
ウサギちゃんの分も渡して、お菓子にして届けてねと伝える。
らじゃ〜って、最近はだいぶ慣れた様子で返事を返してくれる。
「お姉さん、あの」
なんだい、ウサギちゃん?
「どうして隠してるの?」
およっ?
「とっても綺麗なのに」
もしやもしや?
(怖がらせちゃうからだよ)
と、返したら、彼女は頷いた。
どうやら、小説家と同じく、彼女も見えるタイプのようだ。
抗魔力は低めだけど、魔力量は高い。
独特の運用ってセウェルスは小説家を評していたから、きっと彼女も魔力運用が見る事に作用する感じなのかもね。
それにレイブンクローらしく、頭の回転が早そうだ。
結論が先にでちゃうから、説明できないってやつ。
ぼんやりしているのは、思考速度が速いって場合があるんだよ。
ぼんやりして見えるからって、中身もぼんやりしている訳じゃない。
情報量を多く受け取るアンテナのある子で、大量の情報を処理するから、見た感じいつも遅れた発言とか行動になっちゃう。
ところが、中身はすごい高速で考えを回しているから、結論とか会話のまとめが先に届いちゃう。
片付けながら、最終的な答えを見つけちゃうって感じかな。
口からでるのは不可解な言葉で、そこへの道筋はあるけど、彼女の処理が終わるのは、バラバラ。
ウサギちゃんは、このタイプに思えた。
ナーグルはわからないけど、何か、私の行動が、ちょっくらヤバメだよって話だと思う。
根拠はない。
けど、最近、答えだけポンッと浮かぶ感覚を私も体験してる。
言語化できないけど、見て聞いて知った事が噛み合う瞬間っていうのかな。
会話をする前に、会話の終着点が見える感じ。
だから、彼女、ウサギちゃんのバラバラのワードの意味というより、その全体から受け取る印象の方を優先してみた。
つまり、ちょっと不安なの、である。
その不安も、自分じゃなくて、私の事だ。
カボチャ畑から、屋敷しもべ妖精が飛び回る秘密の台所までの道程を考えても、特に不安に思う事はなかった。
森の奥まで行ったわけじゃないし、生徒が歩いても良い範囲の森の際までだったしね。
さすがに一年生連れて、森の奥には入りこまないよ。
でも、ナーグル、うん、ナーグルの意味がわかれば、少しは会話の解読ができるんかなぁ?
「動物と話せるってほんと?」
(まぁ話せない子もいるけどね)
「じゃぁ、しわしわ角スノーカック、ラックスパート、ブリバリング・ハムディンガー、えっと、魔法生物がみつかったら、お話してくれる?」
(いいけど、全部、知らないよ。しゃべれなかったら、ごめんね)
「いいの、今度、ナーグル避けに、ネックレス、あ、だめか。何かお守り」
(うん、何もいらないよ、ほら、スリザリンの寮監先生が守ってくれるからね。でも、その同じ首飾りだったらお揃いで欲しいなぁ。)
って返したら、彼女はちょっと考え込んだ。
彼女の首から下がる、独特の首飾りと言うかコルクが連なってる面白い輪っかの事。
だったら、もらいたい。
是非にも首から下げて、毎朝、ダーリンに苦々しい顔をさせられそうだ、ウヒヒヒ。
「お姉さん、恋人をからかっちゃ、だめだよ。パパもママを怒らせてばっかりだったもん」
***
って、言われた。
ダーリン、ワイら恋人に見えるそうだよ。
「寝ている事を忘れたのだろう。君も眠っているんじゃないか、どれ久方ぶりに叩き起こしてやろうか?」
ヤメレ!
……まぁ冗談は置いといて、私、子供でも魔女の言葉って軽く扱わないし、扱えないのよ。
「君の言う生徒がレイブンクローのルーナ・ラブグッドなら、本気にする必要はなかろう。
彼女の発言の多くは父親の影響だ」
教師って、すべての生徒の事情を知っているものなの?
「教員同士で取扱に注意を払う生徒の情報はある程度共有する。」
特に情報収集は、貴方の仕事でもあるから?
で、彼女は、少し気を配ったほうがいいって事か、私のように?
「君の場合は、逆だ。何があっても大凡はダンブルドアに投げて関わるなだ。」
ひどいぃ
「もしくは、吾輩の寮生であり、吾輩に投げろだな。こっちこそ、酷い話だ」
ごめんごめん、で、彼女の話を本気にする必要が無い根拠って何?
「少し考えていた。
純血のバランスシートや関係を説明するのに、人物への補足を続けていたが、生徒個人の情報を君に渡す必要はあるのかと」
(Misery acquaints a man with strange bedfellows.難儀は、奇妙な寝床の共を作る・利害関係が一致すれば敵も同盟者となる)
「私が道化トリンキュローだと?」
貴方が道化なら、私は怪物キャリバンだね。
少なくとも私は貴方の仲間であり、誰かのプライベートを少し聴き込んでも吹聴はしない。
そもそも貴方は、皆が知っている話だけを私にしているんでしょ?
「まぁそうだ。それに己が道化であるのは認めよう。許されるか否かはわからぬ愚か者でもある。」
まぁそう怒らないで、私も酒は飲まないし、自由を得たところでろくなものではない。
ただ、子供の言葉でも、あまり軽くは受け取れないと感じたんだ。
彼女は真剣だったしね。
午後、見る間に荒れ模様となり、秋晴れは去った。
まるでテンペスト、だね。
雨が窓を叩いている。
ここは空き教室の一つだ。
週明けの補習準備をしている。
もちろん、スリザリンの勉強が遅れがちな生徒だけでなく、作家の授業を不安がる卒業試験を来年に控えた生徒向けの補習だ。
有り難いことに、寮関係なく、何処の誰でも受けられる。
おかげでいつの間にか、本授業より一回あたりの聴講者数が多い。
陰険教師と言われようと、卒業できるか否かの瀬戸際、教えてもらえるだけでもありがたい。
そして嫌味なんて怖くないのさ、落第留年の恐怖に比べれば天国さ、である。
地下にいなかったので、通りかかった生徒に聞いたら、不機嫌な男の不機嫌な姿がここにあると教えてくれた。
多分、ハッフルパフの先輩だと思う。
穏やかな感じの人で、不機嫌そうだったよ〜と、のんびりと答えてくれた。
その手には、補習と自習課題があった。
不機嫌だろうが陰険だろうが、彼にとってはセウェルスは神らしい。
良いことだ、ぜひにも社会に出てエリートになったら、ダーリンに色々便宜を図ってくれ。
んで、ドクドク茸を届けての会話だ。
教卓の上には、大瓶に詰まるドラゴンイチコロドクドク茸。
ウサギちゃんの言った通り、とんでも毒物であり、呼吸器が麻痺るのでドラゴンもイケるらしい。
そして精製すると心臓の病気の特効薬とか。
お褒めの言葉を頂きつつの雑談である。
お外ではグリフィンドールのクィディッチチームが練習している。
彼曰く、風邪が流行り始めているのに、馬鹿は始末に悪いと苦々しく言う。
つまりハリー君大丈夫かな?である。
「プロスペローとミランダが、ラブグッドの家庭環境だ。
もちろん、父親のゼノフィリウスは、寡夫という点では共通するが、復讐者ではないがな。」
娘に愛情はあるけど、ちょっとというか、だいぶ特殊な家庭って事かな?
「魔法界のオカルト雑誌の編集者が、ゼノフィリウス・ラブグッドだ。
マグルで言う月刊タブロイドの編集長だな。
ウィーズリー家の近くに家があったはずだ……親子関係は良好だ。
三年ほど前に母親が亡くなっている、事故だな。
言動は父親の影響が大きい。
それから、君に言っておくが、万聖節、万霊節の行事は、ケルトドルイドの信仰をメインにホグワーツでは執り行っている。つまり、前夜祭であるハロウィンに関しては派手な行事はしていない。
魔法魔術的にも非常に境界が薄くなる日だ。
魔除けに火を焚き、灯りや火の側から離れぬように心がける。
そして次の日は身を清め、万霊節にて死者を悼むものだ。」
子供にそれが通じると?
「畑で異様に育った野菜を見かけたが、ドルイドの司祭はカブをランタンとしていた」
で、カボチャは冬の野菜だし、美味しいもんね。
「大手をふってイタズラして良い日ではない」
あぁそっちか。
で、話は戻るけど、彼女の話が気になるんだよね。
「……何かをする前に、私に言え。そして森には勝手に入るな。気になるというのなら、今日のように浅い場所でも外には向かうな。
護符があろうとも、呪いを受けても良いと思う輩もいよう。
君が何を気にしているのか、わからないでもない。
君は護符を得ている。
私がいて、校長が目配りをしている。
では、他の娘達は?と、いつものように君は考える。
君は結局、自分以外の子供、娘達を気にしている。
傷つけられないかとな。
ラブグッドに声をかけたのは、ひとりだったからだろう。
入学早々浮いているが、特段、本人に苦はない。
理解者を欲しがるタイプではないだろう。」
そういうものなのかなぁ。
でも、私の事は見えてたよ。
髪飾りをしてるのにさ。
「ほぅ」
だから、少し気になってね。
「手を」
ん?
「記憶を少し見せろ」
あぁそうか。
で、記憶を見せると、セウェルスは考え込んだ。