R15と残酷描写は、予防処置と寮監先生の苦行成分でできております。
幕間
マルフォイ家にて
マルフォイママ上
「貴方、我が家の屋敷しもべ妖精が一人、消えたのですが。新たに手配してもよろしくて?
なかなか難しいでしょうけど、実家のブラックを取り仕切る屋敷しもべ妖精なら、なんとかしてくれると思うの」
マルフォイパパ上
「荘園を取り仕切っている者がいただろう。それを呼び戻しておけば良い。で、どの屋敷しもべかね、もちろん私の礼服をアイロンで焦がしたドビーだよな」
マルフォイママ上
「そうですね、今度は女性の屋敷しもべを頼もうかしら。刺繍入りのタオルも可愛らしいのを用意しましょう」
マルフォイパパ上
「ねぇナルシッサ、聞いてるかね?ドビーだよな、私のクラバットをボロボロにした、ドビーだよな?」
マルフォイママ上
「若い女の子がいいわね。やっぱりいずれ、ドラコのお嫁様が決まったら、仲良くできるようにしてもらわないと」
マルフォイパパ上
「うん、わかったよ、うん、そうだね、ドビーはいるんだね、うん、わかってた、うん」
マルフォイママ上
「あら、ドビーが残ってたほうが良かったかしら?いま、家のハウスエルフは貴方の祖母の代から仕えてくれてる子じゃないの。目が悪いからいつもいつも、貴方の書類を別の梟に頼んじゃってる……。」
マルフォイパパ上
「さらばだ、ドビー、辞めさせようとすると姿を晦ますあの芸術的な逃げっぷり、私も見習いたいと思っていたんだよね」
マルフォイママ上
「じゃぁ魔法省に探してもらいましょうか?」
マルフォイパパ上
「最近、ナルシッサが虐めるんだよぅ」
マルフォイママ上
「義父様のような態度をドラコにとるようなら、私にも考えがあります。
教育とは、虐げることではありませんのよ、貴方」
マルフォイパパ上
「すまなかった……。」
マルフォイママ上
「で、ドビーは、本当にどうします?戻ってきたら、再び家に置きますか?」
マルフォイパパ上
「普通に人間の使用人を増やそう。妖精契約で我が家に不利益な言動はできまい。だが、契約をもってしても戻らぬ者を同じ条件で雇うことはできない。屋敷しもべであろうとも一度裏切った者は、信じてはならぬ」
マルフォイママ上
「まぁ貴方の新品の背広がボロボロになる事はこれで防げますわね、手遅れですけど」
マルフォイパパ上
「えっ……えぇ?」
マルフォイ家のドビー、屋敷しもべ妖精で正規契約してたのに、元からフリーダム妖精だった……。
そんなフリーダムスナフキンのような、ドビー。
君は今、どこにいるの?
***
私の周りでは平和な時間が過ぎていた。
雨の多いハイランドの秋だけど、子供たちはクィディッチの練習に励み、マルフォイ君とハリー君は相変わらずおもしろい事になっている。
それでもハー子さん、例の禁止用語に関しては謝罪を受けたよ。
マルフォイ君曰く、お母さんに立派なマルフォイ家の惣領息子の態度として、下々に対する寛大な態度こそ相応しく〜と、お説教を受けたそうだ。
マグル出身でも魔法族なら寛大な心をもつのが支配者の姿であるってママに言われたから、謝ってやる!とまぁ、ハー子さん的にアウトの発言をしたようだ。
けど最近、マイダーリン翻訳を習得し、スリザリン語に開眼しつつあるハー子さん。
ごめんね。本当はマグル出身でも勉強できちゃう君に嫉妬してた。
本音では、お家のことがなかったら、ハリー君や君とも仲良くしたいんだ。
つまり別に、マグル出身でも有能な女の子なら、べっべつに嫌いじゃないんだぞ!
的な裏が聞こえちゃったそうだ。
ちなみに純血でもウィーズリーは、ノンデリだから嫌いらしい。と、言う内容のコソコソ話も翻訳できたそうだ。
擁護できなくて、ハー子さんは珍しく言い返せず。
謝罪というか喧嘩腰の会話から、意味を汲み取ってエネルギーを消費したらしい。
マルフォイ君が去った後、パンジーちゃんに睨まれて、だからって、アンタのこと、好きって意味じゃないんだから!って捨て台詞ももらったそうだ。
そしてそれも翻訳できちゃったのよって、私に漏らす彼女。
パンジーちゃんのツンデレ語も翻訳できたそうで、
ドラコって可愛いでしょ、でも、可愛いのわかっちゃったからって、いい気にならないでよね!
彼は純血の家系の女の子としか付き合わないから、あそこの家、そういう家だから勘違いして怒られないようにね?
翻訳できるとオモロイでしょ?って言ったら、ハー子さんに怒られた。
わかると奥深いけど、疲れるって。
グリフィンドールフィルターが壊れると、人生が複雑になるようだ。
それはさておき……。
問題は、カメラ少年を脅した上級生が不明って事。
腐ってるはずなんだけど、未だに姿を現さない。
自己申告しないと、腐り落ちて腐敗臭でバレるんだけどね。
……。
ちょっと正気にかえるとさ、ダーリン、すげぇ啓蒙高いよね。
前に爺ちゃんにも言ったけどさ、ダーリンの感覚ってさ、現役の兵隊なんだよね。
だから周囲と齟齬が出る。
そもそも魔法族の感覚が現代じゃないってのもある。
魔法の使えない人間と魔法が使える人間という分け方だけだと理解できないかも。
少なくとも十九世紀後半の感覚の人だって、魔法族としては今風ってなる。
魔法が使える不思議な人種で考え方が古いんじゃなくて、基礎的な感覚と常識の時間の流れが違うんだよね。
で、第一次世界大戦の頃のカルチャーでも新人類。
現代人からすると更に一昔前だけどね。
ジャパンで言うところの、大名とか武家が現役で、侍も現役って感じ。
で、ちょくちょくギャップに慄くんだけどさ。
魔法界、中世モデル的に眺めるとだ。
ダーリンを兵士って言ったけど、所謂、爺ちゃんが騎士団長な訳じゃん。
すると役割ロールとしてはだ、騎士になる。
騎士にも色々あるわけでさ。
例えば白騎士、まぁファンタジーに倣って白ってわかりやすくするけど、前に出る騎士とさ、後ろに控える黒騎士って役割があるんよ。
白は人前で体を張ってのお仕事で、いわば皆の中にある騎士のイメージまんまね。んで黒ってのは後ろに控えて後始末をする役割ってわけよ。
別に悪役なんかじゃなくてね。
白と黒って言ったけど、別に区別があるわけじゃなくて持ち場の違いね。
階級の上の人間と現場の叩き上げの職分がはっきりと分かれてる、中世モデルって考えかな。
明確な上下関係が社会にあった頃ね。
ファンタジーロープレしちゃうと感覚的にわからんことになるけど、モノホンの騎士だと実務担当ってやつがいるわけ。
つまり貴人の護衛して、こう無礼な輩が出たら、貴人を守って戦って。
それが白騎士さんなわけ、で、黒騎士さんは、現場でこんな事がありましたヨロって言われて、現場を焼き払いに行って、首謀者吊し上げて、原因の貴族だか何だかの首を晒すって訳。
ほら、村焼いてこいよって言われる方の騎士って事。
変な話ね、ハリー君の話を聞いてさ、ハリー君のパパは、家族を守るために死んじゃったわけ。
時間稼ぎに無手でも悪漢に身を晒した。
良い悪いとかの話じゃなくてね。
白騎士の役割を貫いた。
その後始末、焼き払いに回ってるのが、セウェルスだなって。
同じ騎士でも、感謝もされないし嫌われ者って奴。
でも忠誠心は同じっていうかバリ高でさ、職務や忠義に応えるわけ。
まぁ彼の騎士の心を捧げているのが、ハリー君のママで、彼女が天に召されても、彼の忠義と人生はすべて彼女に捧げられてる。
そんな彼は奇特にも、私を庇護してくれている。
理由はある。
な〜んにも不思議な話じゃないし、そこに私への特別な感情なんてないんだ。
騎士団長の爺ちゃんの命令。
私を野放しにした時のリスク。
そして一番が、ハリー君の世界を守るための手段のひとつ。
これも良い悪いの話じゃなくて、私にとっては幸いだって事。
違う違う、私の話じゃなかった。
はぁ、何を言いたいのか、最近、考えがクルクル周りながら流れていく。
多分、ウサギちゃんと同じで、答えを探しちゃうんだよね。
ついつい、色々考えて考えて、最後にわけがわからなくなるってやつ。
そうそう護符の事ね。
現役バリバリの兵士感覚、黒騎士さんの呪詛は、そりゃもう苦しめる方向に全振りなわけで。
不本意ながらって感じでさ、保健医先生に「優しめにお薬配合しました〜」みたいなお為ごかしを言ってたよね?
でも意味はさ。
死ぬまで十分に苦しめる呪詛を込めました。
なかなか死なないじゃなくて死ねない仕様です、ありがとうございますって奴よ。
自分で言ってて怖いじゃん……。
でも、本当に怖いのはセウェルスではない。
どの寮でも腐ってシニカケてる輩がいないんだよ。
つまり生徒達も、わかってくる。
犯人、どこの誰なの?
ワタシ的には可能性は2つあると思ってる。
外部の人間か死人のどちらかだよ。
ホグワーツ内の人間じゃないなら、騒ぎも聞こえないじゃない。
でも腐り始めたら、何処にいても問題にはなるだろう。
人知れず死んでなければね。
でも、セウェルスは、呪詛が近く、ホグワーツ敷地内で反応したとも言っていた。
つまり、近場の生徒以外だ。
ホグワーツで働く外部の人間か?
それも同じだよね、だって腐るんだよ?
つまり結論は、生きていないナニカになる。
ダーリンが腐る方向で呪詛攻撃したのは正解かぁ。
また、入り込んでるのかなぁってのと、本当にゴーストか、だよね。
まぁこんな事、校長もセウェルスも分かりきっている。
護符の反撃が呪詛だとすると、その呪詛を解呪した場合、やはり反応がでるそうだ。
そして解呪ではなく、壊す、もしくは継続していてもある程度は、わかる、らしい。
つまり呪われたままであるし、死んでもいないようだ。
もちろん、私にはっきりと彼らは伝えて来ないが、反撃に対してのリアクションがなく、そして解かれてもいないと判断しているように見えた。
良くない兆候である。
ホグワーツに、また、異物が入り込んでいる可能性があるわけだ。
だからといって、そうそうビクついてもいられない。
なにより、ダーリンが非常にナーバスだ。
呪詛トラブルもあるだろうが、去年は..去年は盛りだくさんで気が付かなかった、この季節は不機嫌が極まるようだ。
校内の巡回を増やし、夜回りを長時間しているようで、顔色が非常に悪い。
どうしたのん?
と、思ったけど、傍にいる分には、そうでもないんだよね。
なんというか、歌を歌っていると、どんよりしてるのは変わりないけど、ピリピリは和らぐ。
まぁその理由は予想がつくよ。
ハリー君のご両親の命日が、ハロウィンだ。
彼自身は実感が無いようだ。
どうやらハリー君と魔法界そのものを遠ざける事が一番だという考えだったらしく、両親の死の状況でさえ誰も語る事はなかったそうだ。
伯母さんも、あまりいい言葉では表現しなかったそうだが、葬儀や埋葬にさえ立ち会えず、死後の墓参りさえも許されていなかったらしいので、そこは責めるべきではない。
そう、ここでダンブルドアを責めないのか?ってなるけどさ。
テロリストから赤子を守る方法ってのは、中々、難しかったと思うよ。
誰が裏切り者かわからないんだもの。
爺ちゃんの視点からすると、そこはシビアでさ。
裏切らない人間なんていないわけよ。
家族を人質に取られたら終わりだしね。
なら、汚れ役は自分だって考えるだろうしね。
恨まれてもいいよって。
まぁそんな感じで、ダーリンはピリピリしてる。
それを私がどう思うか?
何もわからないふりをする、だよ。
共感も憐れみも、私が外に示してはダメだ。
私は彼らの過去については、完全な部外者である。
彼らを好きだとしても、その苦痛を肩代わりはできないし、本当に理解する事もできない。
突き放すって意味じゃないけどね。
手をつなぐ事は出来るし、彼らが私に何かを求めてくれるなら、出来ることを差し出すよ。
でも彼らが悲しむことを止めてはいけない。
亡くしてしまった人と語らうことは悪いことばかりじゃない。くそ鏡とは違って、自分の心で語り合うことだよ。
けど、私から安い慰めを語るのは変じゃないかな。それって傲慢じゃない?
傷つけるのも嫌だし、押し付けるくらいなら、冷たいって嫌われる方がいい。
ね、ここが爺ちゃんと私が理解しあえる部分なんだよ。
悲しみは悲しみのままで、愛を押し付けて塗りつぶす事はできないし、してはならない。
一人ぼっちの理由は、嫌われ方の選択の違いなのさ。
求めてくれるなら、差し出すけれど。
求めていないなら、私は目を閉じる。
求めてくれるなら、なんでもあげるのにな。
「このあと出かけてくる……」
最近は、すっかり気温が下がったので、週末は地下教授室にて魔力コントロールの訓練をしてる。
屋外のあのベンチは封印。
暖炉の前で、歌を歌ってる。
お菓子は常備されてて、とっても快適。
まぁ部屋の主の屍具合は加速中。
どうしたもんか。
今日は本気で崩折れている。
離れた1人がけの椅子で潰れたままだ。
「問題を起こすなよ」
金曜の午後、それも雨が降ってる寒い日にだよ?
晩御飯前じゃん。
飲みに行くならいいけど、仕事じゃないよね?
「プライベートだ……」
なら、まぁいいか。
でも、寝る時間は確保、水分と何かを胃に入れる。
暖かくして行くんだよ?
「……。」
はいはい、余計なお世話。
仮眠してから?
「今から」
もう、言ってくれれば午後は来なかったよ!
「……」
ふと、Travis の Why does it always rain on me ?が浮かんだ。
何も相手は言っていないし、何もその瞳には浮かんでいない。
繋がりからも伝えていないのに、ふっと浮かぶ。
雨音、暖炉の火、夕食には早い。
暗い午後に、マウスウォッシュが苦かったみたいな口元。
無表情の相手を見やって、私は、ことさらニッコリと笑ってみせる。
『何でも言うがよいのだ、婚約者殿。
私は寛大かつ、良い子なので、君の願いを叶えよう。
まぁ報酬は、全身に塗る保湿クリームを作ってくれ。
香りは控えめでトータルで使っているものの邪魔をしないやつでヨロ』
んで、何故かダーリンは、困ったように笑った。
***
授業から解放された金曜日の午後である。
うぇ~い、楽しいぜぇ……
雨混じりで最悪なんだけど、雨よけの魔法で濡れていない。
なんでクィディッチやってる少年少女は、これをやらんのだ?
「さぁな、別に禁止はされていないはずだが」
教えないのがダーリンクオリティ。
「プロチームは、水濡れ防止だな。
やり方を間違えると、体を損ねる。
なので生徒には魔法を使わせていないのだろう」
なるほどね。
で、一緒に行ってもいいの?
「目の届くところに置いておけば、悪さはしまい。」
しょんな〜ワイは、えーこなんよ〜
と、まぁお出かけについて行ってもよいらしい。
冷たい手を握る。
あまり覗いてはならんと、考えをそらす。
すると、また、彼が笑った。
薄暗い道をホグズミードへと歩く。
「隠し通路もある」
村までの?
「ホグワーツは城塞だ。物資の搬入路も当然ある。」
やっぱりね〜
でも、そうそう使わないでしょ、使えば非常口にならんし。
グリフィンドールの……あぁ。
大きなため息。
まぁ子供は潜り込むから、あの騒ぎに繋がったわけか。
そして隠密行動してる大人も使っていると。
雨に煙る景色、冬手前の何とも秘密めいた雰囲気だ。
私はある意味気楽だ。
彼を含めた大人の憂鬱とは関わりがない。
顔も忘れた叔母についても、思い出した限りイギリスにいるよりも、私の側にいるよりも安全だ。
大人たちには悪いが、私は彼女に関しては情報を流さない。捜査の助けにはなろうが、情報はどこに流れても彼女の為にはならない。
ほら、これも爺ちゃんと同じ考え方だね。
でも仕方ないよね。
雨音を聞きながら鼻歌。
さっき彼を見て浮かんだTravisの、まぁまだリリースされてないかな……。
優しげなボーカルの声を思い出しながら呟く。
うまくいかねぇ〜って感じなんだけどメロディは優しくて暗くない。
これもイギリスポップだったかな?
んで、ホグズミード外れから、短めの姿現しを3回。
イギリス西部のすんごい僻地な村につく。
雨のせいかな、薄暗くてすべてが滲んで見えた。
ほら、ゲームに出てくる村みたい。
ゾンビ出てきそうな。
でもきっと春の陽射しの中なら、牧歌的で穏やかでキラキラなのかな。
でも色彩は灰色と黒、白と茶色。
何で俺にばっかりトラブル三昧って感じの歌を口ずさむ。
で、村の真ん中、井戸があってそこで彼は立ち止まった。
「なぜ、その歌を歌う?」
雨の歌だから。
すげぇため息。
何?
「皮肉か?」
ん?
「私に対しての皮肉かと思った。」
歌詞の内容を考える。
これ、歌ってるシンガーが野外コンサートで雨が降ると客と一緒に歌ってる奴。
深い意味じゃなくて、誰にもあるだろって気持ち。
やってらんねぇやってやつ。
不快なら別の歌にするよ。
さわやか〜に、Cat StevensのMorning has brokenとか、すげぇ懐メロ、ワイが生まれる前。
ダーリンの頃だと現役?
「……なぜ、その曲になる」
いや、雨だし。
朝の雨だけど、リリックはお子様が聞いても安心安全な、こう春の雨だね〜世界を讃えましょう?みたいな。
んで、一節歌ってみせる。
教会で歌ってそうな歌詞である。
これもお気に召さなかったようだ。
じゃぁお口チャック。
「……好きに歌え」
んじゃぁRick AstleyのNever gonna give you upを歌っちゃうよ。
めっちゃ陽気にソウルフルな感じで、ダンスステップ踏みながら歌いだしたら、ダーリンは頭を振りながら村の奥に向かって歩き出した。
その後を少し離れて歩く。
フルオケでディスコライトに照らされてる感じで歌う。
もちろん、住民の皆様に御迷惑をかけない程度だよ。
どうせ雨で聴こえないだろうしね。
つーか、住民いるのかな?
小さな商店やパブもない。
家の傍に置かれた鉢植えの花も枯れ果ててる。
灯りもないよ。
で、何でダンスステップ踏んでるかって言うと、防水と雨除け魔法で全く濡れないのが面白いし、水たまりを踏んで派手に飛沫を飛ばしても、ワイに被害ゼロ。
これは長靴を履いた小学生のように転げ回るしか無い。
いや、そんな場合じゃない?
わかってるよ、でも、ダーリンは、アホで何の苦しみも悲しみも知らん人間がいて欲しいようだったからね。
んで、歌い終わったらマペットショーに出てるSabrina Carpenterな感じで歌う。
彼女かわいいよねって、今の時代だと生まれてないや!!
で、歌いながら考える。
そういやぁディズニーな曲を歌ってないなぁ。
ディズニーな世界はあるよね。
この世界、そこまで違っちゃってないよね。
う〜んって考えていると、ダーリンはどんどん村外れまで突き進む。
人の気配は無くて、金曜の午後なのに村は暗く沈んでいた。
廃村、ではないと思うんだけどね。
で、どこに向かうのかなって思ったら、村外れに向かうにつれて廃屋が目立つようになってくる。
やっぱり過疎っているみたいで、放棄された家がツタに覆われていた。
直されていない柵、放置された桶。
ちょっと侘しい感じの道筋に、屋根の壊れた家が見えた。
りっぱなコテージ、二階建てかな屋根裏ありの大きな建物。
その屋根には大穴が開いていた。
でも、その屋根の大穴以外は、なぜか庭も雑草なんかなくて綺麗だ。
家の戸口は、少し壊れて歪んでいるね。
それでも窓が割れてたり荒れ果ててはいない。
あんなに屋根が吹き飛んでるのにね。
「……魔法省で封印をしている、教訓として。いま、ダンブルドアが掛け合い、正当な持ち主の財産として修復後に引き渡す。」
反応の無い私に、彼は少し口の端を引き上げた。
「この季節、雨ならば人が来ない」
そして更に奥へと進んだ。
暗い空に黒い建物。
教会だ。
先に進むと古い墓地だ。
そして奥、西側の林の際に新しい墓だ。
苔むしてもいない。
墓碑は
The last enemy that shall be destroyed is death.
最後の敵なる死もまた亡ぼされん・聖書からの引用だね
ハリー君の両親の名。
リリーとジェームズ・ポッター。
私はぐるりと見回した。
ここがゴドリックの谷かぁ。
確かに雨で霞んでいるけど、空が狭い。
牧歌的なんだろうけど、今では寂れている。
そりゃそうだ。
若夫婦が殺された悲劇の土地であり、闇の帝王なる男が潰えた場所って事だ。
魔法界の名所でもある。
万聖節前にお墓参りか。
「それだけではない。
君に言われ、不安になった。」
ん?
「人は愚かだ」
彼は墓に花を手向ける。
そこはシリアスなはずなのに、彼はきちんと女神が眠る側に花を置き、器用に残りの葉をその夫の方へと撒き散らす。
器用というか徹底していると言うか、きっと夫婦が見てたら笑っていそうだ。
「人としての禁忌は、マグルも魔法族も変わらぬと思う。
墓を暴く等という不届き者は、余程の罰当たりである。
しかし、魔法族に関しては、人の死体が貴重な素材である事は知っている。
もちろん、重罪であり嫌悪感からそのような犯罪は稀だ。」
血肉、唾液、髪の毛でさえ、薬剤や魔法の媒体や原料になるって話だったか。
「髪の話をしていた時に、不安になった。
毎年、封印の魔法を施してきたが、妖精族の魔法や闇の者にたいする防御は薄い。
帝王が戻らぬとなれば、いや、信じられぬ輩が何をするかと考え、少々、いや、不安になった。」
だから来た?
「遺体がすべて骨までも溶けて無くなっていればよいが、朽ちたとて利用できぬことはない。
特に、この時期は非常に生者の世界が揺らぐ。
彼らが使われる事は非常にまずい。」
今までは無事だったんでしょ?
「人は追い詰められると何をするかはわからぬ」
と、彼は言うと墓に何かを施した。
墓石と地面、そして小さな石を四方に埋める。
「君の護符と同じモノだ。今現在、私が考える限り最高の術式だ。破ろうとすれば朽ちる。それが妖精であろうと霊魂であろうともだ。」
ニヤニヤと笑い、彼は墓に向かって言った。
「奴は死ぬこともできぬが、生きる事もできぬ。
そうリンボにも向かえぬ末路よ、だが器だけを戻されても業腹、ここは封じさせてもらう」
中はいじられてる様子はない?
「あぁ、少し探ってみたが、中身を持ち去られた様子もない。余計なものも入り込んでおらぬようだ。」
ため息。
長い溜息だ。
私はもう一度、辺りを見回した。
古い墓だ。
扉のついた石室みたいなのもある。
すごいホラー感。
ほら、少し扉開いてるし。
キリスト教圏のお墓ってどんな感じに……。
「そこまで」
頭を掴まれた。
頭だよ?
レディの頭でござるよ!
「他人様の墓を暴くな」
だって開いてるから、ちょっとくらいあアババババ!
「帰るぞ、夕飯までに帰らぬとな。刻んで跳んだが、体調不良にならぬように、帰りも三回に分けるか」
んで、お家(ホグワーツ)に帰った。
夕ご飯のメニューはね、何、セウェルスの話を飛ばしたな?
飛ばしてないよ。
普通にゴドリックの名所案内をされて帰宅しただけ。
ダンブルドアの生家跡とか、グリンデルバルドの親戚の人のお家とか。
若い頃に二人がここですごしてたんだよ〜ってね。
あの谷は、魔法族の歴史を考えるうえで重要で、マグル地図から言うとここで〜とか普通に先生の講義だったよ。
聞きたい?
茶化すとお仕置きされるので、真面目に聞いて、普通に帰ってきただけ。
でも憂鬱な雰囲気は消えて、彼の屍具合も多少は緩和されたよ。
きっと毎年毎年、お墓に行ってたんだね。
当たり前か。
そして今年はハリー君も学校預かりになったしね。
もっと静かにひとりで……ひとりで行ったところで、何処かで去った人たちはもう戻らないと考えてる人にとっては、過去との対話なんて毎日している訳で、うん、まぁ目的を果たした事のほうが重要だったって感じかな。
夕飯のメニューを語るほうが有意義だ。
メインはローストチキンのハーブと根菜添え。
ラムのシチューとカボチャのパイ。
パイは甘くなくて美味しかった。
副菜はマッシュポテトにグレイビーソースがけ。
パンは黒パンだった。
スープはオニオン。
デザートはアップルクランブル。
飲み物はハーブティーにしてもらった。
すごいカロリーでしょ。
ちゃんと食べてるかなーって眺めるけど、教師のテーブルはちょっと遠いからね。
基本食べない人だからなぁ。
寝る前に、少しデザートを取り分けてもらって持っていこうかなぁ。
***
「……で、どうじゃった?」
「予想通り、他の墓は荒らされておりました。そちらも移した後でよかった」
「ダンブルドア家は、もともと荒らされる可能性が大きいからの。
恨む者が何をするかと弟の方で回収済みじゃったが……。
やはりか、闇祓い達には、他の墓所も巡回するようにとはしておるが。
本命は、ジェームズとリリーが埋葬されたゴドリックのようじゃのう。
棺の土もよくないが……遺骸の一部を持ち出されるよりは、まだましかのう」
「応急処置は致しましたが、繰り返されるようなら、中身は移したほうが安全でしょう。
また、潰えた古い家系の墓所、領地内にある墳墓なども範囲に入れたほうが無難でしょうな。
名家の墓所から、力ある魔法族の骨を持ち出されるのは非常に危険です」
「……純血名家で没落後廃屋となった家屋敷を少し調べたほうがよかろうかのぅ」
「妖精族の魔法にも対応できたほうが無難です」
「使役者が純血だと?」
「そもそもが偽装でスリザリンの旧制服を利用しています。
没落家系の名家を洗うのが自然でしょう。
そして屋敷しもべに命じて事を為しているようなら、そもそもがお手上げです」
「三十はくだらぬな。驚くほどではないぞ、スリザリンの末裔だとて潰えて……」
「いかが致しましたかな」
「……潰えていると放置しておった、儂も耄碌したもんじゃ。
セブルス、戻ったばかりで申し訳ないが、闇祓い達と共に少々頼みごとをしたい」
サラサラと文字が綴られ、紙片が手渡される。
リトル・ハングルトン近郊
人里離れた丘
魔法的な保存処置が施されていない廃屋
注意 血の魔術、精神汚染強、ノイズ強、魔法的探査の乱数拡大領域。
ひとりでの探索は避け、防御用護符を複数所持。
また、毒や呪詛などが制御無く放置されている可能性を考え、常に防護服を着用すること。
「これは?」
「サラザール・スリザリンの末裔、ゴーントじゃ。
放置していたのは、場所が魔術的に歪み腐り落ちている為、浮浪なる者も住み着かぬだろうからだ。
まぁ明確に出自を明らかにはしていないが隠してもおらぬ、トムの母親の実家じゃの。
そう嫌な顔をするでない。
儀式などに使われそうな品はすべて回収させて、残りは焼き払うがよかろう。」
「……どこまでをお望みで」
「できうれば、あの土地ごと利用される事のないように……。
うむ、母親の遺体と父親の遺体も調べておかねばならぬか。
まいったのぅ、まさかホークラックスの現物を見せられては、己の認識の甘さを突きつけられた。
彼が自滅を選んでおらねば、今頃どうなっておったか」
「それでも我々は備えておりました」
「じゃが、向こうは儂らの考えを上回る悍ましい行いをしていたようじゃ。
なぁセブルスや。」
「はい」
「アオイの一族はな、遺体を残さんのじゃ。」
「はい?」
「火葬にするのが家訓らしい。財産管理人が一族の約束事はそれだけと申しておってな。
意味深かろう?」
「古い血筋らしく、己の死体を利用される事を忌避したのでしょうな」
「儂らも苦い経験を重ねてきたと思うたが、まだまだ甘いという事じゃな」
「……。」
「何じゃ?」
「別段、己が死んだ後にどうなろうとも、私はかまわないかと思いまして……。」
「前提が違っておるよ、美しい女の死体だ。
儂らのようなキタナイ男の死体なんぞ、魔法薬の材料にしかならんだろうが……。
あ〜すまぬ、すまなんだ、セブルス。そうそう怒るでない。
儂も話題を間違えた。」
「……まさか死体を愛で剥製にでもすると?」
「怒るぐらいなら聞くな。
人間とは変わらず憐れな生き物なのじゃ。
じゃからの、きちんと守ってやっておくれ。
さて、トムはホークラックスをいくつ残しておるかのぅ。
まぁ使えぬモノではあるが、集めておくに越したことはなかろうて。
あぁそうそうハロウィンの次の週あたりに、このような催しをしたいと言われての」
紙を渡された男は、ぐしゃりと手の中で用紙を握りつぶした。
「防衛術の特別授業ですか……。」
「あぁ」
嗤う校長と二人、壁を見やる。
校長室の壁に額装されたテスト用紙が飾られていた。
なぜ飾るのか、なぜこんなものを晒して平気なのか、男には欠片も理解できなかった。
恥ずかしげもない自筆サイン!がペールパープルに輝いている。
テスト用紙とは?
「決闘クラブですか」
「助手をしてほしいらしい」
「……ほぅ」
「手加減をしておくれ、まだ、グレーなんじゃ」
「何を泳がして観察しているのかは存じませんが、命は取らぬと致しましょう」
「生徒に怪我のないようにの」
「かしこまりました」