R15と残酷描写タグは、過労死寸前の寮監先生の苦行成分でできています。
テスト期間が終了した。
クィディッチ杯も終了した。
入学前なんで当然不参加。
そいで相変わらず寮監先生が死にかけていた。
他の先生も、こんなに死にそうに忙しいんだろうか?
まぁ先生、ちょっと怪しいもんね。
どこかに時々消えてるし、薬草採取といいつつ、いなくなるもんね。
まぁ大人だからね、追求しないぞ!
「歌え、せめて歌って思考を垂れ流すな」
時々、力尽きて倒れている。
まぁ教授室とか、木立の中にある薬草の畑とかで。
「森と森番のところには行くなよ。危険物を混ぜたくない.」
森番の大きい人にまだ、会ってないんだよね。
「グリフィンドールに誘拐されないようにしろ」
遊んでくれてるだけだよ。
「人質に取られたと、スリザリンの監督生が言っていたぞ」
軽い冗談だよ。双子が手を繋いでブランコしてくれた。
「妹や弟相手なら微笑ましいで済むのだがな。
他の寮で、不審な男はいないか?」
大丈夫だよ、パパ。
「入学前な上に自寮の生徒では減点できない、無念」
寮監先生は呻いてベンチに伸びている。
今日は、お気に入り薬草スポットで行き倒れだ。
お城の教室の方向からは、木陰になってて見えない。
通路方向は茂みである。
きっとお付き合いしてるラブラブカップルも利用したい穴場である。
しかし、怨念こもる薬草の群生地が目の前だ。
残念、ここは寮監先生の縄張りだ。
カップルどころか、少年少女の度胸試しにしかならない。
それ故、ここは唯一、私が徘徊してもいい場所になっている。
何しろ寮監先生の出没スポットなので、悪戯をしかけると確実に減点になるからだ。
スリザリン寮からも近かったりする。
「ともかく、歌え」
んで、リクエストを受けると歌っている。
もちろん、誰もいないよねって時だけだ。
最近は、開き直ってジャンルも時代も関係なく歌う。
寮監先生のお好みは、大体がラヴ・ソングでバラード。
適当に好きな歌をうたう。
そいでロックかーらの〜グランジ〜を混ぜる。
と、ちょっと大丈夫?
maneskinとかsweetboxの歌をリクエストされた。
メンタル弱々、失恋女子かよ?
マグルの歌は慣れてる。
なるほど、先生、子供の頃はマグル界にいた.なるほど。
でも歌うと傾向がわかるね。
ポップスとかじゃないんだよね……寮監先生、やっぱり女関係で失敗してそう。
「...」
沈黙は肯定とみなされるよ、先生。
「プライマリー時代のお前の担当教師の苦労が偲ばれる、な...」
女の子なんて、こんなもんでしょ?
お喋りしてないとシンじゃう感じ。
と、こんな風に垂れ流してる会話も、先生的には慣れたそうだ。
「不意をつかれなければ、こちらの魔力操作で受け流せる。だが、こっちには素手で触れるな」
で、何かお薬飲んでる。
やべぇドーピングさせてる?
聞いたんだけど、私との会話って、魅了の力が乗ってて苦しいらしい。
発語は、男性特攻なのはわかる。
まさか、念話にも力が乗ってるとは思わんかった。
ほどほどに手加減してあげてねって、校長先生に言われた。
最初の頃は、そんな力が乗ってなかったけど、魔力量が増えて、この念話にも毒が乗るようになったらしい。
そう魅了って毒だよね。
先生さ、ぶっちゃけ、寮変えして、マクゴナガル先生とか女の先生に預けても良いんだよ。
「ピラニアをテムズ川に流せると思うか?」
校長先生の考え? とか、私への配慮はさ、ほどほどでさ。
ってピラニア?
こんな可愛いお魚ちゃん、いないでしょぅ?
...
ふんっ、じゃなくてケッって顔した。
寮監先生、最近、遠慮ないよね。
それからテムズ川なんて、流したらピラニアの方が死んじゃうよ。
「どちらにしろ、他に念話相手ができたとしても、止めねばならぬ場合もあろう。
その場合、慣れた吾輩が呼ばれる、確実にな。残念だ、まこと残念に過ぎる.」
まーねー。
11歳の私、ちょっとだけ思い出したら、この私より大人だった。てへっ
でさ、この力って、悪いもの、毒だって自覚してた。
私よりずっとずっと、この力の意味を子供なのに知ってた。
男の頭のネジを外す力で、治らない。
そう、私は治らないってね。
11歳の私も今の私も、人間が嫌いなわけじゃない。
彼女は怖かっただけ。
私は、幻滅してただけ。
それでもね、誰かを苦しめたいわけじゃないんだよね。
そして11歳の私、結構、いや、攻撃的。
敵対者を苦しめても、ぜんぜん平気。
でもさぁ、そういう息苦しい生き方はしたくないんだよね。
皆、ハッピーってのを願ってるんだ。
だから、私の面倒をみる為に、ドーピングして目の下、どす黒くさせるのは嫌なんだよ。
って意味の事を伝えたらさ、先生、珍しく笑った。
ハッって息を吐いてから、ニヤリってね。
もう、悪人の笑い。
たぶん本当の笑い顔だね。
「正直に言えば、君の事で疲弊はしていない。
余所事だ。
私に正直さを求めても、ろくな事が無いと忠告しておこう。
覚えておくがいい。
魅了の魔力を受け続けても、結局、私にすれば、ダメージはゼロだ。
闇の力、それに準ずる魔術は知り抜いている。
血肉に既に染み込んでいるのに、何を恐れる?
獣が獣である事にかわりはない。
私は変わらず、君は無力だ。
だが、万に一つ陥落したところで、そもそもがろくでなしの男だ。
私は変わらず、君は無力なままだ。
私の仕事に影響があるから、受け流しているに過ぎない」
吾輩氏、正直な私で語る。
んで、その本音の意味を考える。
要約すると、魅了は効かねぇよ。
弾いてるのは、仕事柄面倒くさいからだ。
ガキの力なんぞ効かねぇんだ、馬鹿が。
まぁその程度なら慣れてる、心配無用ってところかな?
11歳の私、そうか〜この人、この手の魔力に耐性あるんだ〜何ぃぃい! 誰、どこの誰で慣れてんの?
っていうか、先生、グレてるよ?
この思考に笑った。
子供って潔癖よね。
魅了持ちの癖に、しょせんはオコチャマ、ガチガチの理想論。
まぁしょうがないよね、子供だもの。
逆に言えば、今の私で、寮監先生と出会ってよかったよ。
まぁだから、チュウチュウしちゃったんだろうけどね。
11歳の私だったら、もっとコントロールできたんだろうし、この先生を獲物にはしない。
もっともっと狡猾に立ち回ろうとして、失敗するやつだ。
イケメンで女関係きれいな先輩に突撃したんだろうか。
それとも、身を潜めてたんだろうか。
まぁ仮定は無意味だけどね。
結局、寮監先生に寄生? というかパスを繋いだ理由は、今もわからない。
セルフネグレクトを繰り返してる姿は破滅願望マシマシ。
そんな人にアンダーグラウンドな過去があっても、当然で。
慣れてるんなら、ありがたく甘えさせてもらおうかなってなる。
んで、結論。
11歳の私よ、考えてもご覧よ。
寮監先生以外の男、オジサンとかに、ハァハァされてもキモいでしょ。
そのへんのお兄ちゃんに付き纏われるのも、最悪でしょ?
それともリクエストあんの?
で、内なる11歳。
じっと眉間にシワを寄せてる吾輩氏を観察。
どうよ?
例えばよ、この包装紙のチョコレートなら、少し苦くてもよくね?
ガチガチにボタンが並ぶ上着。
素肌を見せない服装。
真っ黒。
修道士か喪服って様相である。
この包装紙、絶対に剥がさないし剥がせねぇだろって具合いだ。
顔色も悪いし、目つきも悪い。
笑えば、尖った歯が見える。
青年の時期は過ぎてる、どうみても健全じゃない。
けどね、チョコレートは、砂糖マシマシばっかりじゃぁ美味しくないんだよ。
ミルクだって控えめがいい。
知ってる?
包装紙が綺麗で、白い歯が輝く王子様ってさ、自分の顔が良いことを知ってるんだよ。
そしてね、食べてみるとぜんぜん、美味しくないんだよ。
ほら、見栄えばっかりでさ、コーティングされてる割に、ヒデェの。
守ってもくれないし、約束も覚えててくれない。
だって、高級菓子だから、お前に食ってもらわなくてもいいんだぜ。なんて考えてる。
自惚れたお味は、甘いだけの砂糖の味だよ。
いずれみーんなジジイになるのにね。
でもさ、この人、たぶん、ジジイになっても、変わらないと思うよ。
きっと味は変わらない。
中身の苦さも、包み紙の硬さも。
きっとね、いい味だよ、苦くてもね。
と、アダルトな視点で問いかけたら、内なる11歳の私、ちょっと恥ずかしそうに笑った。
ほぅほぅ、チミは通好みなんだね。
もしかして、チミはファザコンだったりするのかね?
ここまで自己分析して、己にセルフダメージを与える。
そーなんだ、ふーん、である。
そして当の吾輩氏。
精神に影響を及ぼす魔法は、耐性をつける事が一番であると宣う。
つまり私が日々、言葉を垂れ流し、暇さえあれば歌うようにすれば、それだけ寮監先生に耐性がつく。
「だが、それも吾輩の場合は、だ」
ん?
「魅了の魔力の影響、感覚を見極め、拒絶する。
拒否すると、維持し続けねば意味がない」
ん?
「なぜ、魅了の能力、魔法の類が恐ろしいのか、それは相手が受け入れてしまうからだ。
毒だとわかっていれば、誰も美味くは感じまい?
だが、毒であっても、美味い、死んでもいいと思えば、耐性はできない。
耐性ではなく蓄積していくだけだ。
ガーゴイルが魅了を使ったところで、耽溺はしないが、美しい女、それもまるで毒など含んでいないような女が、死んでくれというなら、死んでもいいという馬鹿はいる」
先生は、こういう攻撃に慣れてる?
「闇の魔法がそれだ。
人の心を無遠慮にかき混ぜ、変えようとする方法は、いくらでもある。
魔法薬もあれば、君のような血の混じる能力もある。
そして闇の魔法は、支配と服従を促すものだ。
痛み、恐怖、そして快楽」
魅了も闇に含まれるの?
「含まれていたら?
恐れるべきか?
だが、私は、恐れていない。
君を恐れる理由など、微塵もないからだ。
なぜなら、愚かにも、それだけの力を持ちながら、君は何も考えていないからだ。
何もだ。
力を流して、どうするか。
私には何も期待していない。
何を私は心配するんだ?
小娘の分際で、大人を支配したところで、その先を考えていない。
それとも私を陥落させて、膝をつかせたいと思うかね?」
馬鹿らしいと鼻で笑われる。
まぁつまり、大丈夫ってことである。
寮監先生は、半分以上腐っていそうだけど、きちんと先生だった。
じゃぁ支配したら、人間らしい生活をするように、命令してあげます。
「大きなお世話だ、できるものなら、してみるがいい」
悪い笑顔だ。
現場検証は、理事会の方から却下された。
未成年で保護者行方不明なのに、そのお家に侵入者がいたらしいから、現場の不審な何かを確認しろ?
冗談じゃないよ、ペペッ! ってクレームが入ったそうだ。
なんでもドヴワティーヌっていうお名前が、理事会の古いお家の方々に響いたそうだ。
「一部の年寄りの記憶に残っていたそうだ。
たぶん、君の曾祖母あたりだろう。
社交界で交流があったとか。
ハイランドの古い家に嫁いだが早世したらしい」
どこで個人情報がもれたんでしょうか?
「理事の親族は寮生にもいる。
君の容姿を伝えたのだろう。
能力は誰にも漏らすなよ。
監禁されて売り飛ばされずとも、地下牢ぐらしになりかねないぞ」
混血ですけど、需要あるのでしょうか。
「魔法族にすれば純血だ。需要どころか、純血の娘が少ない年代だ。奪い合いで血の雨が降るだろう」
ないすじょーく、ざっつ、まーべらす!
「冗談であってほしいものだ。寮生の男女比を知っているだろう」
うへぇ。
私、将来は魔法薬を売って暮らすんです。
叔母さんと一緒にこっそりひっそり暮らすんです。
まともな人と叔母さんが結婚したら、その子供のお世話をしつつ魔女っ子で生きていくんです。
「誰しも夢は見れる。無意味でも夢はタダだ」
わぁお、しょうわず、まーべらす!!
「嫌味を言う、余力もないのだ。黙っていてくれ。というか何語だそれは」
肉食べてます?
因みに、一部、11歳の私が融合してなんとなく、ザワザワするけど、全部思い出したいとも考えてる。
叔母さんを何処に飛ばしたのか、忘れていたほうが良いのかもしれないけれど。
それだと敵もわからないからね。
一廉の魔女っ子になったら、敵をどうにかしたい。
***
で、寮監先生とお出かけだ。
7月で修了式。
夏休みに入るからだ。
ごめんね、先生。
買い物に付き合わせて。
終わったら、夏休み楽しんでくださいね。
盛大な溜息が隣から聞こえる。
移動方法は三種類。
煙突飛行粉。
暖炉の炎に投げ込んで指定の場所に飛ぶ。
姿現し
瞬間移動の魔法だね。
これ移動する人、体をしっかりとイメージして使わないとバラバラ事故になる奴。
魔法の乗り物、その他
箒とか不思議なナニカ。
まず、姿現しは学校施設では安全の為、使用できないようになっている。
そりゃそうだ。
不審者入り放題になっちゃうもんね。
そして魔法の乗り物も、学校の上空にはふくろう便とか決まった出入りを許されてる生き物とかしか通過できない。
まぁそうだよね。
んじゃ、近場の村に行って、となるけど、それもまぁあまりおすすめできない。
寮監先生なら如何様にも移動できるけど、私には無理だから。
まず姿現しは、杖もないような子供だと、明確な出現地も自分の身体の構造も理解できずにワープしてバラけて事故る。
そうだよね、瞬間移動だものね。
熟練の魔法使いならいざ知らず、なんちゃって魔法使いの私には無理。
そして私を連れて姿現しも消える事もできるけど、そんな労力を先生はしたくない。
そもそも私と出かけたくねーんだよって人である。
これは致し方ない。
時間短縮で姿現しってのも考えたろうけど、そもそも私に近寄りたくないと明言された。
しょうがないので、煙突飛行が安全かと思うでしょ?
私、喋れないんだよ。
お粉を暖炉の炎に投げつけると共に行き先をば言うわけよ。
はい、アウト。
そいでホグワーツに来た時、煙突飛行だと思ってたのは、ポートキーって言うやつだった。
瞬間移動できる魔法が込められた場所指定の移動キー。
それに触れて移動したって訳。
まぁそれは例外というか、学校では許可がでない。緊急時とかじゃないとね。
そいで、今回も特別に、校長先生がつくったポートキーのお出番となった。
なぜか、あの魔笛に魔力を込めてくださった。
ぽぴ〜
ただし、夏季休暇の学生さん達が帰ってから行くと寮監先生は、目の下にクマをつくって主張。
幸いにもスリザリンで残る子はいなかった。
仕事多すぎない?
で、そういう訳で、学校から学生さんがはけて、静まり返ってから一路ロンドンへ行くことになった。
もちろん、魔法族の商業施設に行って、杖を購入する為だ。
ロンドンの7月は、少し肌寒い場合もある。
薄手のブラウスにカーディガン、ローブもマグルの街角でも異様に見えないかな? という程度に収まってるつもり。
身長は160を越えた。
食べても食べても追いつかない。
髪の毛の色が少し暗めになったかな。
ブロンドではなく、重めの灰色に見える。
これも伸びるのが早い。
編んで巻きつけてるけど、腰まで伸びた。
眼鏡は、まだ交換していない。
手袋は小さな籠に増えていく。
まだ見かけない屋敷しもべ妖精さんが増やしてくれているのだろう。
そして魔石は三個目。
いずれ漬物石サイズになるのだろうか。
ぴったりの杖があれば、コントロールできるようになるのかな?
両替、しなきゃな。
今日は銀行行って現金おろしてから、お洋服を買いたいでっす!
「護衛として側を離れることができない。
特殊な購入物は後日、取り寄せるが良い」
女性物の購入は駄目だと?
「吾輩に何をさせたいんだ?」
面白いことは好きですが、わざとではありません。
ですが、サイズが変わりすぎているので、身につける物は本日購入したい所存。
んで、指し示す足元。
膝下スカートがジャパンの女子高生のように。
顔を手で覆う寮監先生。
長めのローブだったから、中身は隠れている。
が、これは私でも不味かろうと思う。
ガーター見えちゃうよ。
因みに、お胸が
「黙れ」
すんげぇ嫌そう。
夏休み、マクゴナガル先生が世話を申し出たんだけど、却下。
ワイの能力、それに叔母さんの事、さらには徐々にワイの存在が、一部界隈の貴族の人に流れていることを鑑みて、寮監先生の夏休みが削られるという。
それでも買い物は行くんだけどね。
ホグワーツに隣接するホグズミード村っていう所にも、お店はある。
でも今日は杖を新調する事が、一番のミッションだ。
魔法族の商業施設的場所に向かうわけで、ついでに洋服と下着を買いたいし、女の子の必需品も買いたい。
寮監先生的には地獄のツアーの開幕である。
***
でさ、マグルの駅を利用するのは確定で、ローブ姿の黒衣のままなのかと思ったら、マグル側になると目立たない格好になるんだよ。
たぶん、目眩まし的な奴。
寮監先生は、ちょっと古風だけどフロックコートぽくって、髪の毛も一つに結んでる。
黒いのは変わらないけど、それほど目立つわけでもない。
で、私は普段着だしね。
さっさとマグル側を通過し、魔法族の町に入る。
こちらも隠蔽されてて、妙な場所が開いて入り込む。
そうして魔法族の世界に来ると、寮監先生の姿は元に戻る。
便利だ。
そこからは不思議世界である。
古風な町並みに、様々な格好の魔法族の人達。
大きな人もいれば、人間じゃない感じの人もいる。
先生からはぐれないようにしなきゃと思ったが、触っちゃ駄目という縛りもあって、ローブを掴んで進むことに。
さすがに迷子になるのも、護衛を疎かにする気もないらしく、振り払われはしなかった。
基本、私は人が多い場所が苦手だ。
だから11歳の私成分がプラスされても、目に映るすべてに興奮して騒ぐ気にはならない。
私の能力的な物もあると、思う。
私はきっと対人攻略するような能力だ。
マグル的にSFなら、精神感応能力をもってる。
つまり思念を読むタイプだ。
そうして弱点を見極めて攻略し、魅了するんだろう。
だから、多くの人の思念があると、疲れる。
多分普通の子供より、ずっとずっと刺激を楽しめない。
だから、子鬼の銀行に両親の預貯金の一部を移しており、それを両替しても、驚くより疲れてしまう。
キャッシュレスじゃね〜のかよ、という不遜な私の感想が飛び出すわけだ。
口座開設を受けて、オマケのお財布をもらう。
硬貨は魔法界の通貨。
金貨銀貨銅貨とか、ファンタジー。
でも、ちっちゃなお財布、巾着である。
良く入るなぁ。
「どうみても拡張魔法と軽量化魔法がかかった高級品だ。
口座開設というが、そうとうな財産を移したようだな。
がめつい子鬼が揉み手をしてるぞ」
それ、マグルの弁護士も心配してた。
専用の会計士とか、いろいろ手配してくれた。
先生、私、両親の財産、とんでもないんだってさ。
一族死に絶えてるから、殆ど、私のところにきちゃってね。
税金対策で色々売り払ったんだけどね、私、アパルトマンで叔母さんと暮らしてたけど、そんなの知らないわけよ。
成人したらって話で、今回のグリンゴッツに移したのだって、毎年支給される手当だけだって。
「それだけ条件が重なれば、お前の親も隠蔽魔法と魔力封印をするはずだ。
親の事故に不審な点はなかったのか?」
記憶ないし、それこそ校長先生に聞いて下さいよぅ。
鬱になるぅ。
「今後、接触してくる貴族家や、男は、保護者を通せ」
それって寮監先生?
「校長と理事会、いや、だからか、理事はまずい。
次から次へと、なんなんだ」
巾着をポケットにしまうと、更にどんよりとした先生の後を追う。
次は杖である。
寮監先生、杖ってもって歩くものなのー?
「人による」
というと、先生は、どこに?
「杖は魔法を行使する際に、非常に重要な役割をする。
動作も含めて、見られただけで何を行使するか悟られてしまう事もある。
対人で魔法を行使する場合も、予備動作から見られる事も不利になろうし、更には杖を奪われることにもつながる。
故に、魔法使いが何処に己の杖を潜ませているか、あからさまにしているのは、一部の者だけだ」
隠して持つってのがスタンダード?
「強力かつ、長大な杖を持ち歩く者もいる。
癒者でも見える位置に備えて、不審な行動をせぬと最初から表している者もいるだろう。
職業や立場にもよるな」
闇祓いの人は、ススッと抜いてたね。
「攻撃姿勢になるまでの間が短くなければ、闇祓いにはなれぬだろう。そして杖を奪われてもすぐに取り戻せるように訓練もしている」
なるほど〜でも、教師の寮監先生が隠すのはなぜ?
「杖を奪われる事は、魔法使いにとって致命である。
増幅、管理、確実な行使をする為の媒体であり、必須ではないが、奪われることは大きなダメージに繋がる。
弱点を晒して歩くほど、吾輩は寝ぼけてはおらぬ」
使えないわけじゃない?
「食事にカトラリーは必須ではない」
なるほど、だけどあったほうが、美味しいし、汚れもしない。
「そうだ」
私はどうしようかな?
袖に、ポケット?
マクゴナガル先生はどこにしまってたかな? 記憶にない。
ローブの袖口にポケットつける?
やだ、ゴリゴリしそう。
「婦人用杖ホルダーなる品もある。
大方がベルトに差し込むなどしているが、面倒な話だ」
だから、先生は〜?
「隠蔽と収納を駆使している」
ずるい〜!
「自分で工夫しろ」
まぁそうだよね。
杖のお店に到着。
紀元前うんぬんとかかれているが、まぁ元祖ののぼり旗をたてるラーメン屋と同じで、老舗だよって事だろう。
古びた外装、その扉を押し開くとドアベルが鳴る。
薄暗い箱が四方の壁を埋めている。
カウンターに椅子、照明は少しだ。
不思議と木と薬草の香りがする。
私を促すと、寮監先生は扉を閉じた。
奥からするりと店主らしい老人が現れる。
挨拶の後、店主は寮監先生を見やり、黙った。
「杖の手入れではない。
彼女の杖をお願いしたい。
言葉が不自由故、かわりに話すが、借り物の杖を使用したが、魔力を通すことはできたが発動までは至っていない。
これが生涯初めての、杖の購入となる。
両親とも魔法使いであるが、早世しており、何処で購入し、どのような物を使用したかは不明。
また、彼女自身は、マグルとして養育されてきた為、良し悪しはわかっておらぬ。
注意がいる。特別に」
「注意とは」
ざっと話す寮監先生に、店主は表情を変えずに聞き返した。
「他言無用を望む。ダンブルドアからだ」
で、懐から手紙らしき物を差し出した。
それを受け取った店主は、そっと中身を開き、眼鏡を押し上げて読み込んだ。
「なるほど」
文面の中身は知らないが、多分、私の魅了の事であろう。
「なるほど、今、注意すべきことはございますかな?」
「素手で触れぬ事だ。コントロールができていない。また、試しにて発動した場合、耐性が無いと意識混濁など急激な精神汚染の症状がでる。
その場合、こちらで用意した魔法薬を使うか、強制的に意識を奪わせてもらう」
「なるほど。ですが、大丈夫でございましょう。
あらゆる魔法族の為に、杖を用意してきた身、お嬢様のような能力をお持ちの方は、過去にもいらっしゃいましたよ」
と、店主は、そこでやっと私を見た。
「瞳を見ても?」
「よせ」
「ふむ、では手袋を外し、前に立ってもらえますかな?」
手袋を外し、店主の前に立つ。
「覗き込む事はいたしません。眼鏡を」
「よかろう、はずせ」
眼鏡を外す。
「ではお嬢様、杖腕を」
「利き手だ」
左腕を差し出す。
「杖の長さは体格とは関係ございません。
杖の長さは、使い手の心のありさまに惹かれ、使い手がよくつかう呪文でも選ばれます」
すっと渡されたのは、白っぽい杖だ。
何の特徴もない。
握ると、冷たい。
「これは違いますな。
お嬢様は、非常にこだわりのある御方のようですな。
そうですな、気まぐれやいたずら好きが好まれるかと思いましたが」
次々と杖を握らされては、取り替えられていく。
自分ではよくわからないが、まぁ専門家にまかせよう。
ニレ、クマシデ、この辺りの素材を特に渡される。
いずれも、特にこれはと感じる物はなかった。
「では、ご両親の出身地の素材を」
桜、ヒノキと続く。
「芯は一角獣、ドラゴン、不死鳥、どれもあいませんな」
つまり、私は魅了持ちだけど、魔女っ子じゃない?
「それはない。
店主。
これの母方の先祖には、獣の相があるそうだ。
獣の魔法生物だ」
それにハッとしたように、私を見ると店主はゴソゴソとカウンターの下をあさり出した。
もう、帰りたいな。
「自分の事だろう」
これで魔女っ子じゃないとなったらどうなるのかな?
「厄介事が増えるだけだろうな」
まぁそうか。
そんな会話をしていると、店主は埃だらけの木箱を取り出した。
彫刻が全面に施された木箱だ。
「材質は桜の木、柔らかめ、芯は不死鳥。良くしなる、23センチ短め」
取り出した杖は、持ち手が金属で覆われている。
金属部の彫刻は九尾の狐だ。
木材部は、杖先に向けて、細かなツタが巻き付くような模様もついている。
おっされー。
握るとビリっと痛みが奔る。
「それは少々扱いが難しい質にございます。お嬢様の眼でとくと御覧ください」
ピリピリとする。
静電気みたいだ。
でもとても良い香りだ。
白檀のような香り、顔を近づけると桜の香りもする。
アロマだね。
別に、魔法が使えなくても側に置いておきたいな。
とってもいい匂い。
幸せの香りがする。
持ち手もおしゃれね。
狐だって。
九尾の狐。
美人の狐ね。
男を支配下に置く、魔物。
私もそうみたい。
ちっとも楽しくないのにね。
でも、家族を守るのに役立ったんだから、それもまた良し。
あぁ綺麗な杖ね。
ふふっ。
じっと見つめると、持ち手の狐がほんのりと微笑んだ。
あら、可愛い。
猫派だけど、美人の狐もいいわね。
「おい、聞こえてるか!
手袋と眼鏡をしろ。
くそっ、気絶させられたくなかったら、目を閉じろ」
よくわからんが、目を閉じた。
杖が抜き取られる。
「逆だろう。
コントロールどころか、酷い、魔力の」
「だっ、大丈夫にございますよ。
従わせれば、後は忠誠を得たも同然。
むしろこれ程の血の魔術が使えるのなら、多少呪われた品でも使いこなせましょう」
「今、呪われた、と言ったか?」
「はぁまぁ、従いたくない相手を焼く事もございますが。お嬢様とは相性も良く」
「それはよかったな、娘を焼くようなら、この店もお前も焼くところであった」
「御冗談を、そんなヘマはいたしませんよ」
「...」
呪われた杖を手に入れたっ! テッテレッテー。