R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできております。
幕間
アテシ、ニフラー
キラキラ、さがしてるの!
でも、キラキラでもコワコワは嫌いなの。
ムカムカしたので、お水にぽいっ!
あーいうの嫌い、コワコワ。
森の奥も、コワコワだったよ?
いっちゃだめだよ、ピカピカ!
ピカピカ?
キラキラくれたピカピカ!
じゃぁガオガオ?
ニフラーは食べないでね?
***
ホグワーツにも音楽室はある。
防音が施され、楽器が置かれてもいる。
誰も使わないけどね。
楽器類は調律も手入れも常にされている。
おまけに音響設備もステージに備わっていて、コンサートもできるんだ。
誰もしないけどね。
お城だからダンスホールもあるし、夜会だってひらける。
まぁ当たり前。
で、子供たちが利用するのは、この音楽室の手前、レコードホールだ。
レコード盤と蓄音機、鑑賞用の椅子が置かれたミニサロン。
ここでクラブ活動してるのがスリザリンの意識高い系自主学習の人達だったりする。
他の寮生もそれぞれ自寮の談話室以外だと図書室やこうした学校の設備を借りて集まったりするわけ。
で、スリザリンの育ちのよい家庭の子どもは、音楽、楽器も嗜んでいたりする。
「結論を述べよ」
あのゴドリックツアーから、早くもハロウィン前日である。
ワクワクハロウィンで盛り上がってるけど、私としては、ちょっと慎重になってる。
いくらアホでも、小さな出来事を積み上げると、分かるわけ。
だから今日も放課後は、薬学教室で暇を潰してる。
鍋を洗ってる背中を見つつ、他の教科の宿題をしながらのおしゃべりだ。
んじゃ、結論。
ミリセントちゃん、すごいピアノ上手。
「……。」
あれ、たぶんプロ並み。
プロで食べられなくても家庭教師とかピアノ教室開けるよ。
彼女の家庭、家族に音楽家がいるんじゃない?
彼女のプロフィール特典ゲットじゃね?
「……。」
なんで流しに両手をついて項垂れるんじゃダーリン?
「君は何をやってるんだ……。」
そこは褒めてよ。
クラッブ君とゴイル君も一緒に勉強会したんよ。
ほら、意識高い系のスリザリン先輩たちの所に混じってさ、緊張させとくと真面目にやるかなって。
まぁそればっかりじゃ可哀想だからって、先輩方の休憩時間に、ほら、奥の音楽室開いて歌ってあげたら、彼女、ピアノを弾いてくれたんよ。
簡単な童謡とか最初は歌ったんだけど、アカペラで歌ったあとだと完コピしてアレンジでね、弾いてくれんの。
もうびっくり、彼女のヒエラルキーは確実に上昇したはずだよ〜。
あぁ、それからオヤツで釣るとクラッブ君とゴイル君も勉強するんだわ。
あと例えは全部食べ物がいいみたい。名前の綴りも、もう間違えないよ。
クイズとか遊びにしたら楽しそうだった。
成績も最下位は免れるかな。二人とも何だかんだ言いながら、運動神経も悪くないし、応援すると調子に乗るし、良い子だよ。
なんだろうね、お家であまりかまってもらえてないのかな。
ご両親は健在だよね?
「君を褒めるべきだとは、理解している」
わかってるって、やっぱり褒めなくていいよ。
お天気が悪くて外に出られないし、なるべくひと気の無い場所に行かんようにしてるだけだから。
そして教師としては感謝したいところだけど、苦言を呈するのがダーリンのお役目ね。
わかってるよ、誰にも肩入れせず、偏らず、でしょ?
「……。」
怒ってるの?
なら、じゃまにならない程度に教授室にいていいかな?
図書室だと、なんだか落ち着かないし。
寮の談話室は、最近、雨だから密度が高いし。
ほら、自室にこもると、皆、心配するんだよね。
笑えるのが、生きてる?
生きてるわよねって?パンジーちゃんが見に来るの。
「葵、残党の動きが活発化している。外に出向く時は今まで通りに。問題は」
護符の制裁は続いてるの?
「そこが解せぬのだ。
解呪はされていない。
護符は相手が潰えるまで反応を示す。
つまり敵は耐え続けている。
辿れば敷地内ではある。だが……。」
それって城の中?
「……。」
確証は無いけどって感じ?
そこで大きなため息。
「スリザリン寮内はクリーンだ。
だが、校内では一人になるな。
そして城の外へは行くな。
私が不在の時は教授室に入らないほうがいい。
望まぬやからと鉢合わせするやもしれぬ。
教授室には生徒も外部の者も訪ねてくるのだ。
君が思うより、ここは解放されている。
鍵はかけるが、魔法的に解除することは可能だ。
愚か者が薬品棚を荒らすのも頻度としては低くない。」
わざと?
「人は隠す、閉じれば気になるであろう?」
じゃぁ邪魔にならない程度に、傍にいて良い?
「今も、十分いるだろうが。
私の私室には入り込むなよ。
大きなネズミ捕りを仕掛けておく。
校内は安全と言いきれればよいのだが、校長もいまひとつ探しきれていない。
少し君の護符を弄ることも考えたが、攻撃反応を強くすると今度は逆流が怖い」
呪詛返しだね。
「よく知っているな」
まぁ概念的には?
「呪い呪われは、どこで落とすかが重要だ。
反撃以上の攻撃を付け加えると、相手が勝てば更に攻撃がくる。
初手で即死を狙うのも、繋がりを持たせずに断ち切る為だ。」
特別講義が啓蒙高すぎなんだけど。
「君の言う啓蒙の意味が、なんとなく理解できたような気がする」
良かったね〜。
ちなみに闇の帝王系譜の犯罪者達を啓蒙が高いとは言わんのよ。
啓蒙が高いってのは、善悪を理解したうえでの、人の倫理を越えられる意識ってやつ。
わかりやすいのがグリンデルバルド氏だよ。
あの人、啓蒙ポイントが極まってる。
正常の概念が理解できてるって意味ね。
そしてある程度社会性を維持してるからたちが悪い。
「君の文脈からすると、ダンブルドアも同じになるが?」
魔法族は、多かれ少なかれ啓蒙が高いものじゃない?
知識を求め、現実を越えようとする。
啓蒙は、そうした人が抱える倫理観や人としての意識のレベルを指してる。
高いからいいわけでもないし、低いから悪いわけでもない。
どちらも越えない事が望まれるだけさ。
啓蒙なんて人間としては、高低極まったら終わりだしね。
「知識を増やすことが良くないと?」
人間の中央値を外れると、どちらも人間としては終わるって話だよ。
思い当たらない?
啓蒙が高いってのは、人間としての位階をあげるって意味も含んでる。
そしてその逆も人を越えるって事ね。
どちらも極まると神の領域。
褒め言葉でもあり、怖いって意味だよ。
「なるほど」
なるほど、と、2回繰り返すと彼は頭を振って作業に戻った。
私が啓蒙やSAN値を持ち出してるのは、リアルにこの世界だと、ルールが適用されてる気がするからだ。
嫌な話だけど、魔法使いを極めるとヤバいんじゃないかってね。
まぁいつも通りの頭の中だけの、どうでもいい話だよ。
魔女の知識的には答えが出ててもね。
啓蒙と言ったけど、魔法使い的に能力を尖らせて極めると、人としての存在が上がると思ってる。
前にもお喋りしたかな?
魔法使いとして極めるとさ、寿命が延びて魔力も逆に大きくなり続ける。
存在が同じ人のラインから上がるってのかな。
そのラインより上なのは、確実に爺ちゃんズだと思う。
セウェルスもラインを越えつつある。
じゃぁ闇の帝王は?
ラインを越えた時はあったけど、啓蒙が極まった先にいけなかった、今はラインを下げすぎた感じだって思ってる。
位階が上がったはずなのに、何故かあの始末。
人未満まで堕ちた。
魂、霊やエネルギーとしての概念は既に失われているし、そうなると人の死という概念、消滅とも違うわけだし。
存在が変質するって死なのかな?
消え失せてるわけじゃなくて、お花が石ころになるみたいな?
予想だけど、啓蒙を抱え人間でいられるかは、非常に難しいんじゃないかな。
人間の倫理は心の枠でもあるから、それを拡大しているうちに人間をやめる瞬間が来る。
そこでバケモノになったとしても枠を自分で人間にしようって思えるか、で耐えられるかどうかになるんじゃないかな。
爺ちゃん、ダンブルドア校長は人間としての自分をわかってるし、グリンデルバルドも自己認識は定まってそうだった。
あの人面疽は……爺ちゃんズを基準に考えると枠が脆かったんだろう。
脆い=幼稚かな
啓蒙ってのは、達観でもあるから、子供だと無理なんだと考えてる。
つまり闇の帝王(笑)なんだ。
恐怖のテロリストも魔法使いとしての極みにはたどり着けなかったって事だね。
そして怖いのが、ひたすら獣のように堕ちた先も、神のごとく極めた先も、案外同じ場所が到達点だったりするんじゃないかって事。
もちろん個人的な考えだよ。
人は理解しようとすると、どうしても既存の知識をあてはめようとする。
これは私も同じ。
魔法界を私が理解したくて、私の知ってるファンタジー文脈に落とし込んでるわけ。
そしてあながち間違いでもない。
魔女の知識とも噛み合うんだなぁこれが。
で、当然考えるわけ。
ハリー・ポッターとは別の何某かの知ってると思い込んでる創作世界のルールがあるんじゃないか?って。
だって原作知らんけど、絶対話としては違いそうだもの。そもそも私の能力、ファンタジーでもアダルトすぎるでしょ。
寮監先生の、セウェルスの倫理と良心によってエロ展開になってないだけだもの。
寄生生物とか呪いや儀式集団とか、魔女が狙われるとか、絶対違うでしょ?
で、お約束として、多分、この世界に神様がいるなら、私が絶対に嫌だなぁって言うルールが混ざってるんじゃない?
能力とは必要だからこそ与えられている。
人としての魂の位階が上がり、死後に向かうのは高次元とかスピリチュアルな感じでやんわりまとめてるかもしれんが、私が怖いのはすんなりと高みに、まぁ天国に行ける世界ならいいよね。でも……。
でも……違いそうじゃない?ってやつ。
儀式して何かを呼び出してる時点で、つまり違うルールがあるじゃん。
つまり邪悪な儀式をすると、ナニカと繋がるんでしょ?
魔法使い、賢者となって人の格を押し上げた先とさ、ナメクジまで堕ちた先がさ……。
存在は両極だけど、たどり着く先は一緒だったら?
中庸を選び続け人として死ぬのがハッピーエンドで天国行き。
賢者とナメクジルートがバッドエンド。
賢者こそ真エンドでハッピーエンド?
いやいや、世界の外側の真理が理解できても人間としては終われんでしょ。
ナメクジの方がマシ?違う違う。
そっちも人の枠から堕ちて、もっともっと野蛮な獣の世界が見えるのよ。
多分、ダークファンタジーとか嗜んでる人ならわかるんじゃない?
人間って、人間の枠にあるから幸せなのよ。
このルールだと怖いでしょ?
極めて高意識体として存在を得たとしても、ナメクジのようになってたどり着いた先も、地獄は同じで、適応するのも同じ。
これも魔女の知識で補完できたりするから、慄くのよ。
ここはキリスト教圏だからね、輪廻転生の概念じゃないのもある。
でも私の存在はある意味、啓蒙ではなく、この輪廻転生のシステムに置かれていそうだとも思う。
ファンタジーロープレじゃない?
わかってるよ、でも要素としてハリー・ポッターの世界が置かれてるなら、他もありなのは仮説として成り立つじゃない?
で、私の、ジャパンカルチャーに慣れ親しんだ女の記憶で、一番嫌だなぁ〜っていうルールはさ……
「連絡があった」
ん?
「……君の叔母君をつけまわしていた男が死んだ」
どういう話?
「親が強制入院させていた男が、死んで発見された。
原因は不明、遺体解剖も行われたが死因を定められず、便宜上心不全としたそうだ。」
不明……病院で?
「ゆるめの隔離施設で、治療は薬物ではなくカウンセリング中心。
外出は制限されて隔離は厳重。
施設内は自由だが警備によってブロックごとに電子ロックで管理されていた。
当然監視カメラの記録もある」
『自然死じゃないんだね?』
「健康で薬物摂取もない、少々女に執着しているが、脳みそ以外は健康体だ。
暴行の形跡もなく、監視カメラの映像にも不審な点はない。
ただ、直前の映像では何も無い空間に向かって延々とセッション、会話をしていたようだ。」
『……ナニカと会話して?』
「解剖所見で唯一の不審点は、コルチゾールの分泌異常。」
『コルチゾールって、確かストレスホルモン?』
「脳の海馬が萎縮していた。
まぁ当然、男のストレスは高く、行動から精神症状が出ていたので妥当とも言える。
だが、この萎縮の状態は脳全体にも影響を及ぼしており、察するに……。」
『いいよ、ぼやかさなくて』
「恐怖による萎縮が疑われ、入院中も極度の緊張にあったと考えられる。」
『もしかして?』
「呪詛だ。」
ため息をつきながら、ダーリンが捲っていた袖を戻す。
中々に萌え袖でよろしい。
「……君の謎思考が最近明確に伝わる。非常に不愉快だ。」
言い切るダーリン。
翻訳すると、少しは真面目に聞け、かな?
「魔法族の関与、ヴォルデモート以外のカルトの関与が疑われる。
つまり、より安全の……続……」
苦々しい顔である。
語尾が聞こえなかったぞい。
『結論を述べよ?』
「公式に君と私は、あれだ……立会人を介して……。」
見つめ合う猿とテイマー。
ウキキっ!
了解した!
皆まで言わんともいいよ。
『ごめんね、マイラブ!』
「……。」
氷点下の睨みをいただく。
でも、つまりは、私はチミの公式婚約者。
(仮)がとれるだけの話が、更に公正証書作っちゃえよって?
冗談にならんが、私的には問題無しだよ、社会的に死滅しそうなのはダーリンの方だしね。
「……。」
わかってるって不本意〜安全優先〜それも私の為だ。
ふざけてるんじゃなくて、断っていいんだよ?
誰に強要されたのか想像つくし、後で叱っとくから。
私との同盟は、公のつながりがなくたって継続できるんだ。
「……こちらの都合でもある。」
歯ぎしりせんでも、勘違いはしないから。
んで、東洋文化的な輪廻転生って概念、わかる?
「……様々な解釈があるが、魔法界は特定のマグルの宗教概念を採用はしていない。
魔女や魔法使いにとっては話題としてもよくない。
スタンスとしてはケルト文化を基本としている。
神よりも殉教者や聖人を崇める事が多かろう。
私個人としては、輪廻とは恐ろしい概念だ。
できうるならば、人としての生は一度で十分だ。」
因果応報もわかる?
「何が言いたいのだ?」
呪術は東洋の視点から考えると、バランスが重要になるんだって話。
護符による反撃も、ルールがありペナルティを指定しているけれど、相応、つまり反撃のバランスを入れている。
過激に見えるけど、呪詛の組み方としては。
手を出さなければ無害であるという部分を置いているからって事だよね。
だから重めのペナルティだとしても、前提として因果を含むからバランスが取れてる。
ダーリンが言うように、これ以上手を加えると、こちら側の攻撃になって因果の錘がこっちに乗る。
呪詛、魔法的な護符の構築って天秤になってるなぁってね。
だから、徹底的に相手を潰すなら、初手で即死の術を置かないとひっくり返っちゃう。
この仕組み、やっぱり東洋的な術の組み方だなぁってね。
反撃は致死を含む腐敗。
重めのペナルティ。
で、トリガーは?
写真を撮ること。
だけだとバランスが取れてない。
善悪ではなく重さ、行為と影響ね。
写真だけでは、使用者にとっても害悪だ。
私からの蓄積魔力依存だしね。
で、バランスが悪いと術としては天秤だったら傾いて、発動側に負担がかかる。呪うってのは発動側にも流れやすいからね。
だから術として等価の要素を入れる。
手出ししなければ無害、故に手出ししたものが受けるのは摂理だってね。具体的な呪文や陣は分からんけど、すごい術だね。
呪詛、魔法が因果、つまり原因に結果を求める要素込みで発動する、まぁ私の、魔女の知識による仮定だけど。
なら発動してるのに、相手は因果を受け取らない。
どういう状況だろうか?
因果応報。
良いことも悪いことも、それに見合った報いがある。
「つまり君は、死んだ男も疑わしいと?」
『被害者だとしても、呪詛ならフックがある。
それも死に至らしめるなら、相手もリスク相殺できる言い訳や手段、代替があるはず。
生贄とかね。
高度な呪詛なんでしょ?』
「その発想は、過去の知識か?」
『私になってからのかなぁ、知識としては多分過去の誰かのを引き出してるけど、発想はマグルカルチャー。
つまりいつも通りの無駄口。いい加減な話だから聞き流してよ』
彼は薄暗くなりつつある外を眺めながら、近くの椅子に座った。
何かを考えているのか、落ちてくる前髪を押し上げながら黙った。
私は再び呪文学の宿題、古い方の綴り文字で呪文を書き出すことに戻った。
現代語を古語にする感じね。
美しき文字で、美しき配列。
魔法陣は数学なんだよねーだから、高学年になってかららしいよ。
「本音は?」
零された言葉に、私は顔を上げた。
「君は、よいのか?」
何に対しての確認か、察して唇が歪む。
呪詛らしきものでストーカーが死んだ。
危険度レベルがあがって、外野から私の保護を優先しろって圧力がかかったんだろうね。
笑っちゃダメなのは分かってる。
シリアスな話を真面目にしてるんだけどね。
何というか、この人は思うより、ずっとずっとまともだ。
多分、私が子供だからだろう。
これが責任のとれる大人なら、もっと無情な事を平気でするのもわかる。
なら、子供の特権で独占契約だい!
ダーリンは我のものなのだ〜婚約者なのだ〜!
だから罪悪感なんて無用なんだよ。
言葉にせずに、ニッカリ笑う。
それに考えてみてよ、トラブル積み上がってる純血のクソガキだぞ?
そっちこそ貧乏くじじゃん?
だからこそ、ありがとうしかないんだよ。
ありがとーだよ、先生。
そして子供にも意見を求める事ができるって男としては珍しいんだよ。
特にこの年代はね。
ここで笑いと皮肉で返すと、傷つけるのもわかるんだ。
どうせ確認したところで、私に選択肢なんてないんでしょ?とかね。
そのくらいでは傷つかない?
ダーリンは平気なお顔をするし、気が付かないだろうね。
でも傷は心につくものさ、本人が感じなくてもね。
それにこんな私と意思疎通を続けようとする貴方は、本当に特別なんだぞ。
どんなに私を賛美したってさ、私の意見に意識を向けてくれる男なんて稀なのさ。
夢も希望もないんだぞ。
本音?
私こそ、貴方から離れることができないのを謝るべきだ。
子供のうちだけは、許してほしい。
貴方には貴方の大切なものの為という理由があるんだろう。
だから、それに便乗することを許してほしい。
かわりに婚約者という立場を有効に活用しよう。
研究費をドカンと提供しよう、そうしよう!
と、伝わらないように、ニッカリ笑うだけにとどめる。
『ごめんね、私は楽しいよ?
貴方も楽しんでくれると、更に嬉しいぞ!』
真・こんやくしゃどの!
まぁ、後でヒゲをシメにいかんとな。
爺ちゃん、何か言い含めたな。
学生時代だけでいいって言ったのに!
まいすいーとはにーにいらん事しくさってからに。
くそ鏡も絶対に破壊しちゃる!
「……冗談にならん話だ。ともかく在学中、この件に関しては沈黙しろ」
ん?
「養子という提案もあったのだ。君を娘にしろとな……寒気がする。」
いや、ダーリンは独身。
ワイもさすがに寒いわ〜。
まだ、結婚しろって言うダイレクトアタックのほうが、健全な発想に思えるよ。
「狂気の沙汰に変わりはない……。
ダンブルドアも閉口する騒ぎだったそうだ。
日頃、権威だなんだと四角四面の事を垂れ流していた輩が、揃いも揃って狂ったようになったらしい。
君の事件の経過報告をしていた闇祓いの長官が、暫く病気休暇になったそうだ。」
冗談?
いや、ダーリン、そんな無表情に見つめられても……マジかぁ。
「純血の年寄りが、それなら我もと醜い言い争いを繰り広げてな。
ダンブルドアが記録を止めるようにと職員に」
それ魔法省にお出かけしての騒ぎ?
えっキモイ。
「何の違いかは分からぬが、吾輩は公式に君の犬になるそうだ……。」
婚約者(公式)=犬1号(公式)
闇祓いの犬1号は、私の能力ね。
ダーリンは志願してる犬になるわけか。
そりゃ演技や状況、ギブアンドテイクとさらに言えば大人としての責任からだ。
それを犬と他人から言われるのは、わざとそう演技してきたとは言え、ちょっち違う。
吾輩(ホグワーツ教授)の不快がどこから来たのか理解。
「落としどころが狂っている。
許容範囲が犬らしい。
吾輩が断れば、更におぞましいことに犬志願の愚か者がホグワーツに押しかけるだろう。」
すごい失礼だなぁ。
その感想に彼は少し笑った。
「ダンブルドアが言うには、善意でもあるそうだ。
君に危険があるならば、多くの犬をとな。
そして愚か者どもから、吾輩は良き犬と認められたそうだ……ゴミどもが……」
最後が本音、怒ってるなぁ。
***
ハロウィンである。
朝食前に寮から通路に出て考える。
階段登って直ぐの外ぐらいならセーフかな?ってね。
まだまだ早朝、誰も起きてない。
雨も止んでるし、ちょっくらリフレッシュ。
寮監先生の部屋からも近いから、何かあっても大丈夫なはず。
深呼吸して柔軟体操して、早朝の爽やかさを吸収。
朝陽は昇ってないけど、薄明るいよ。
特段、昨日の話でダメージはない。
ストーカーの不審死の話も、それなりに予想してる。
魔法界の強火担が何かした。
これは可能性としては無いと思ってる。
それよりも私達を襲った何かが口封じ。
つまり加害者と繋がっていた。もしくは私達の足取りを追うために片っ端から関係者を襲ってる。
つまり魔法族だけど、ホグワーツ関係には遠い輩が加担してる。
それかホグワーツには手を出せない。
ホグワーツに私がいることは、ある程度知られているはずだもの。
そうなるとホグワーツでの出来事は、別件の可能性も出てくる。
それはそれで怖い話だ。
うーん、と、考えても、私としては今までどおりだ。
ストーカーが呪い殺されたからといって、それが強火担の犯行だろうとなんだろうと、どうしようも無いのである。
唯一のとばっちりは、ダーリンがマイ・ラブに進化したことぐらいだ。
すまねぇすまねぇ……。
本音を彼には言わなかったが、誰かが保護者としてあてがわれたら、存分に反抗していたと思う。
制度としての保護者役、つまり後見人ならば許容範囲。
婚約者、養子縁組?
それを言い出した奴らを片っ端から屈服させてやるってぐらい暴れたかも。
でも、利用するぐらいの弱々しい演技も選択肢としてはある。
まぁそんな心休まらない演技は前世だけで十分だ。
爺ちゃんは、いちおうそこは理解していたようだ。
私にこそ選択肢があり、私をどうこうしようとするなら、どんな目にあうかをね。
そしてセウェルスをあてがう所が策士だ。
私が子供のうちだけだと先に言ってるのに。
恩義を感じてるんだと伝えた途端、この仕打ち。
まぁ売り渡された本人は、それこそどう考えているのやら。
本音?
嬉しいよ、だって安心できるもの。
でもね、私はエゴイストだから、彼も嬉しいとか楽しいとか、感じて欲しいんだよ。
そうこれが本音。
笑えるでしょ?
いつもいつも心の中で、こうして忘れてしまったマーガレットに話しかける。
これがね、落ち着くんだよ。
試してみるといいよ、心のお友達を作っておくのさ。
早朝のホグワーツの景色をながめる。
ほら南側、いつものベンチ方向だよ。
外には出てない。
回廊の段差に腰掛けて、秋の景色を眺めてる。
少し肌寒いけど、まぁまぁ許容範囲。
足を伸ばしてぼんやりする。
今日の靴は、少し可愛いやつだ。
学生用って感じじゃない小さなキラキラビーズがついてる。女の子って感じの靴だよ。
動き回る授業がない日だからね。
それも午前中だけだし。
午後は仮装をする子や、いたずらしちゃると張り切ってるグリフィンドール達で大騒ぎだろう。
頑張れダーリン、風紀を乱してるとかいいつつカップルを物陰から叩き出すのも風物詩らしい。
それってコント?
でもワイのせいで、淫行罪疑惑の教師に指摘されたくないとか反撃されそう。
まぁそんなハロウィン。
仮装はどうしようかな~?
そう言えば、変身術、アニメーガスという魔法があって動物に変身できるんだよ。
中々に難易度が高めの魔法で、魔法省に登録も必要になる。
動物の姿に変身するってロマンだけど、問題もあったりする。
まず、前提として人間向けの魔法ってこと。
混血、他のヒューマン型の血が混じってるとできない。
私のような魔法生物や妖魔の血がそれね。
だから私は変身できない。
そして登録が必要なのはさ……皆勘違いしてるけど、多分、本当に危険な魔法だからだよ。
犯罪へのハードルが低くなるって意味のほうじゃないよ。
大抵の人は、動物になって犯罪を犯すからさ!って考えてるけど、アニメーガスの話を聞いて、私が感じたヤバさは違う。
恐怖、だよ。
登録は本人の魔力と個人情報。
犯罪を犯せばバレるし、事故で行方不明の時は、登録内容で探す事になる。
つまり世間的には、犯罪防止の為に登録制。
まぁそれも理由だろうしメインの制度成立理由だろう。
けどね、ワタシ的には違うって考えてる。
あれね、自我の線引き、確固たる枠を意識できないと、動物になるんだよね。
わかる?
SAN値と啓蒙の話と同じだよ。
我は人間なり!ね。
あれ、変身した動物と同じになっちゃうんだよ、自我とか人間の自意識をきちんと保てない人だと、結果が恐怖。
マクゴナガル先生は、猫になりたいんじゃない。
猫の着ぐるみを手に入れた先生なんだよ。
だから彼女はアニメーガスになっても平気。
子供だと意識侵食に耐えられなくて、戻れない可能性だってある。
自分は大丈夫?
ある程度高い知性の生き物の姿になれるなら、まだ大丈夫だろうけど、それが小動物だったら危険度倍増。
我は人間なり!
って意識を持つことって、そもそも楽しさに比重を置いてるとわからなくなると思うんだ。
私、猫ちゃんになってる!
猫最高!
……変身した先の生き物に意識が溶けたらどうなると思う?
戻ることを忘れちゃうんだよ。
遊びで変身してるうちにね、その動物に似てくるし、変身してる間は意識が動物に近くなるんだ。
本人は分からないけどね。
もとに戻る必要性を感じなくなったら終わる。
そして治療もできない。
人間の枠が外れちゃって本人は猫だと思ってるからね。
アニメーガスを手段として理解できる人なら大丈夫。
それがドウブツでいることに幸せを感じてるなら、止めたほうがいい魔法だね。
そして最悪なのが、長時間の魔法使用によって固着しちゃうことがあるんだ。
アニメーガス、魔法的には低燃費というか自然体内魔力の回復値ぐらいで継続可能。
死んで死体が人間に戻るかもしれないけど、気絶や睡眠だけなら、そのままなんだよね。
戻れないし、動物になっちゃうんだよー。
姿は戻れる場合もあるけど、性格や行動が動物になってることもあるらしい。
社会復帰無理じゃん……。
もちろん、教科書とかには書かれてないよ。
でも注意事項をみると、そういう話だ。
学生に許可がなかなかおりないし、登録しろって言われるのは、事故が起きた時の事も考えてるからさ。
犯罪をするために動物になる?
どうぞどうぞ、いずれ人間にもどれなくなるよ。
……怖いねぇ。
なんて考えてたら、右足に感触が。
鋭い爪をした子犬ぐらいのモコモコ。
靴のビーズを一生懸命外そうとしてる。
ちょこっとミニカモノハシみたいな顔つき。
魔法界の魔法生物だよね。
なんだろう、これ?
チミ、何してんの?
靴のビーズはとれないと思うよ。それ、魔法界のシューズメイカーだから。
じゃぁ靴よこせ?
すごいなぁ。
うん、腕輪、キラキラ?
欲しいって、だめだめ、これプレゼント。
なんぞと言ってたら、モコモコが肩に登り髪飾りに手を……。
もう、魔法界の魔法生物は同じ事するんかい!
で、お約束。
髪飾りを手に持ったまま、その焦げ茶色のモフモフはひっくり返った。
死んだふり?
よくわからんが、手の中に転がり落ちるモフモフ。
それでも髪飾りを離さぬこいつは、中々にガッツがあるね。
「アオイ、それ、だめ、寮に入れたら、だめ!」
で、抱えて戻ったら、談話室がパニックになった。
死んだふりするモフモフ。
「すまねぇなぁ、そいつあぁ森の際に巣をつくってるニフラーだ。
こっち側にはこさせねぇようにしちょったんだが、どうやら若い雌のようだ。
ほら、悪さするんじゃねぇ。
お嬢さんの髪飾りを、ほら、返しな。他にも何か溜め込んでそうだな。」
と、呼ばれて来た森番の大きな人が、モフモフをひっくり返して無造作に振った。
するとお腹のあたりから、バラバラと様々な金属が落ちる。
どう見ても、鍵とか取っ手とか、キラキラ光る誰かの持ち物っぽい。
「持ち主を探すことになりそうだぁ。ほら、城の中はだめだって言っただろう」
しょんぼりするモフモフ。
涙目だ。
それを見て、ワイは閃いた!
きゅぴーん!
(あいやしばし、待たれよっ!)
んで、強火担からのいらぬ貢物箱からひとつかみ。
もちろん手袋してるよ。
呪いチェックの後だけど、キモチワルイから。
「いやいや、こいつらにはドアノブぐらいで大丈夫、お嬢、いやお姫さんの財宝はいかん!」
(財宝じゃなくて、ゴミ。
見ず知らずのオジサンからのプレゼント、キモチワルイ。)
「おっ、おう、そうか……そりゃぁ気味悪いわなぁ。
じゃぁお前、もらっとけ。
悪党にみつからんように隠せよ?」
で、モフモフお腹にササッとキラキラを隠す。
うむ、撫でて良い?
そいで大きな人に掴まれたままのニフラーをコショコショ。
うん、うん。
また来る?
いや、だめだから。
お外に出られるようになったら、会いに行くよ。
うん、うん、うん?
……。
……。
……。
……まじ?
変な人が増えたから、森には来ないほうがいいよ?
「さて、ハロウィンの準備があるからこれで、ありがとうなぁお嬢さん。
こいつを一匹城の中で見かけたら、フィルチが発狂するからな。
ほぃお前も礼をいえよ、皮を剥がれて吊るされるところだったんだからな。
失礼したなぁ、ハロウィンを楽しんでくれや!よっこらしょっ」