おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ、秘密の部屋編。
R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできています。



AVB、或いは静かなる丘と秘密の部屋 ⑲

 幕間

 

 やぁ、人気魔法使い作家の私だ!

 冒険家でありファッションリーダーと言ってもいいかな?

 このカリスマ溢れる私は、ホグワーツに招かれて人気教師としても活躍している!

 あぁ世界は私に光り輝けと言っているかのようだ!

 

「やぁセブルス!

 本とデートかい?

 私は、今朝も女子生徒にサインを求められちゃってさぁ☆

 ……あぁ、おはよう、姫君、今日も変わらずお美しい!」

 

 本ではなく美少女と連れ立っているので煽りにならずに終了。

 

「その黒ずくめ、流行ってるの?あ、違うか……“目立たない努力”ってやつ?ハハハ……?」

 

 どう見てもオサレなマグルファッションと気付いて撃沈。

 

「陰気な地下室より、私みたいに光の中に出てきたらどうだい?ま、眩しすぎるかな?」

 

 マウントを取ったつもりだが、やはりその傍らに光り輝く美少女が微笑んでいる。

 ぐぬぬ……。

 

「生徒に怖がられるって大変だねぇ。私は“抱かれたい先生ランキング”常連なんだけど!」

 

 急に吹き出すセブルス。

 葵の電波が届いたようだ(ゲイなの?抱かれたい?えっ?)

 

「あ、その目やめて?妬みはお肌に悪いよ、セブルス。モテないと人生ハードだよね〜?」

 

 ……。

 ……。

 ……。

 

「オーケーオーケー、負けたよ、セブルス。わかってるよ、君はスリザリンだ!」

 

 言ってから虚しくなるロックハート。

 どう見てもリア充に因縁つけてる感じになってる。

 内心、ちょっと凹んでいるのでマイルド仕様。

 

 セブルス

 バイオレンスアタックまで5秒前……

 

 ***

 

 ハロウィンでも授業はある。

 朝から仮装してる生徒もいるし、元々仮装みたいな先生もいる。

 いや、元から魔法使い、ファンタジーだもんなぁ。

 まぁそんなこんなでポケットにはキャンディを忍ばせている。

 

 イタズラしちゃうぞ!

 と、臆面もなく女の子を追いかけ回す男はいないけど、女子生徒は抜かり無くキャンディを持つようにとマクゴナガル先生からお達しが出ていた。

 よほど数年前の害虫がトラウマらしい。

 

 私はお気に入りの酸っぱいライムキャンディを大量にポーチに忍ばせているので大丈夫。

 更に言えば、拡張した中身にはお菓子が大量に詰まっている。

 爺ちゃんに、これにも時間停止と拡張をつけてもらった。

 ほぼお茶菓子専用である。

 飲み物も入れてあるよ。

 気分は孫に飴ちゃんをくばるオバアチャンである。

 女の子たちに介護されているので、あながち間違いでもない。

 

 今日もニフラー騒ぎの後で、お説教をもらう。

 ニフラーをお部屋に入れてはいけません。

 いっぴきでも見つけたら、先生に言いましょう。

 魔女の記憶では、何故か、魔法生物の周りが抜けている。

 なんつーか、人間関係と禁術ばっかりにしぼられてる気がする。

 危険情報?

 魔法生物も危険じゃねぇーのかよ!

 

 で、気がつく。

 昔々の魔女にとって、魔法生物なんて当たり前、眼の前を横切る猫ちゃんと同じ程度なのだろう。

 いちいちゴキブリとかの記憶を継承しないのかもしれない。

 ゴキブリならお家の外に放り投げたり、魔法で始末しちゃうわけだ。

 危険だとしても情報を精査して圧縮して渡すなら、人間が一番危険だしね。

 夢も希望もないというのは先祖代々変わらぬようである、絶望。

 

 んで、そんな悟りはいらぬので、今日はウキウキハロウィンである。

 ニフラーとも顔見知りになったし、後でヤバヤバについて語り合うのもやぶさかではない。

 呪われてそうな貢物の処理先にも良さそうだ。

 いらねぇ貴金属を売り払う訳にもいかず、ニフラーに荒らされましたっ!の言い訳のほうが穏便かもしれない。

 捨てたというよりは……まだね。

 

 そいでハロウィン用キャンディは、いつものである。

 別に浮き上がったり、体の色が変わったり、動物になったりはしない。

 酸っぱくて顔がクシャッとなるだけだ。

 当然、姿の見えない真・婚約者を探す。

 ワイのプリンスはどこにいるんじゃ?

 是非ともイタズラしたいので、お菓子ちょーだい!をする所存。

 

 ん?

 気にならないのか?

 きになるよーめっちゃきになるよー

 森の奥はどうなってるのか。

 そもそも森の浅い部分しかファング君と徘徊していない。

 

 そいで護符のペナルティが未回収の内は、さすがに自粛している。

 ダーリンのストレスレベルは現在マックス。

 後一押しでバイオレンスに分岐して、作家の横っ面をグーパンしかねない。

 

 これも世の不思議のひとつで、あの作家、何故かマイ・プリンスに絡みに行く。

 積極的に陰キャの傍に行って肩でも組みそうである。

 殺されたいんだろうか?

 自殺願望があるというより、著しい誤認がありそうだ。

 

「姫〜、これこれ、これ頭につけてぇ〜」

 

「俺達渾身の、動く獣耳〜。ケモケモキャンディーだとスネイプ教授に殺されるからさぁ。髪飾りにしてみたぁ〜つけてつけてぇ〜」

 

「ほら、変身キャンディもあるんだけど、先に教授に食わせたら地獄だろう?」

 

 ハロウィンの晩餐前、教授室か寮監の部屋に行こうかと、寮の外にでると双子が待っていた。

 

『兄ちゃん達、スリザリンの寮前で出待ちとか、減点されない?』

 

「大丈夫、大丈夫、教授の位置は把握してる。今、校長と大広間にいる。」

 

「俺達に抜かりはないのさぁ、ほい、何の耳が良い?」

 

 ウサギ、犬、猫?少し大きめで丸い耳もある。

 

「元々ある髪飾りだけど、俺達で改良したんだぁ、見てみて〜」

 

 で、兄ちゃん達の頭にあるマル耳と三角耳、ぴょこぴょこと動いているが、赤い毛並みだ。

 

「髪色に合わせて色が同化するんだ。違和感無し。もちろん、ピンクとかブルーとか色も変えられる。どうかなぁ売れるかなぁ〜」

 

『売れるんじゃね?別にハロウィンじゃなくても猫好きで猫のペットいたらお揃いにするんじゃないかなぁ』

 

 で、考えもせずに大きめの三角耳、フェネックみたいな耳を選ぶ。

 すぽっとな、どや?

 

「うぉ〜これなら売れる。めっちゃ売れる。

 ありがとー姫〜、姫にはあげるからね、気に入ったら時々つけてて〜」

 

『ハロウィン以外だと休みの日だけになるよ?』

 

 と、言ったけど、ありがてぇありがてぇと拝まれた。

 

「アンタら、散りなさいよ。何してんの?」

 

 寮からおめかしして出てきた女の子達に、兄ちゃんズがプレゼン。

 スリザリン寮生からの冷ややかな視線なんてへっちゃらのメンタルは称賛にあたいする。

 で、何だかんだと、女の子の頭にはケモミミが生えた。

 兄ちゃんズのプレゼンが、上手だったのもある。

 

 スリザリンは美人!

 美人は正義!

 俺達は美人が好き!

 だから美人からケモミミ生やしてもらったら、売れる!

 美人に可愛いが足されたら、女神!

 まじだぜ!

 そしてお前らも実はつけてもらいたいんだろう、よぅよぅスリザリンボーイどもよぅ!!

 

 結果、お嬢様方の自尊心と鼻がフフフンっと高くなってお買い上げ。

 

 可愛いのは本当だしね。

 で、大広間に向かえば、他の寮生も目にするわけで、可愛い可愛いと誰かが言えば、当然、私も私もとなる。

 そしてどんだけ双子は用意していたのか、大量のケモミミを売りさばくという学生の本分としては大分アウトな荒稼ぎをしてみせた。

 マクゴナガル先生、あれ、いいの?

 

「どうも将来の事業資金と……これは内緒ですが、弟妹の為に貯金をしているようです。事前に、稼いだお金の明細や材料費なども見せてもらっています。」

 

 採算がとれるのかという問題はクリア済みらしい。

 良き投資先になりそうである。

 

「……セブルスを探しているのですか?」

 

 でかいかぼちゃランタンやら飾り付けに奔走する教師や大きな人の所に、校長も彼もいなかった。

 私の頷きに、マクゴナガル先生がヒソヒソと続けた。

 

「少し遅れるでしょうが戻ってきます。」

 

 何かあったのかなぁ?

 

「事件ではありません。

 どうも魔法界全体の統計調査が行われるという知らせが来たのです」

 

 飾り付けを指揮しながら、私を側に寄せる。

 

「……貴女の事件が発端ですが、イギリス魔法界の世帯調査をするという話が出たのです。

 出生が確認されている魔女やスクイブも含め、魔法界の女性がどのような暮らしをしているのかを確認しようという話ですね。

 つまり、イギリス出身の魔法族だけでなく、イギリス魔法界在住のスクイブとマグルを含む存在調査です。

 大掛かりですし、犯罪者や不法な事に携わっている者にとっては、非常に厄介な調査となるでしょう。

 妨害も多い話ですので、校長の所へも話が持ち込まれたようです。」

 

 聞いて、逆の意味で驚く。

 

『してなかったんですか?』

 

 つまり国勢調査みたいなもんである。

 

「魔法族の歴史を考えてみなさい。

 迫害され、たどり着いた場所です。

 来るものを拒まず、同じく杖を持つ者は、迎え入れるというのが、魔法界です。

 罪さえ犯さなければ、居場所を与える場所ですからね。」

 

 ザルだった。

 

 そんな私の考えを表情から読み取った先生は、笑った。

 

「小さな社会ですよ。

 誰も彼も親戚知人。むしろ知らない人の方が少ない。

 調べるまでもなかったのですよ。」

 

 ある程度、社会が大きくなったって事かぁ。

 

「そうです。

 そして長生きな者ほど、忘れています。

 価値観のズレ。

 考え方のズレ。

 世代によって、魔法族は大きく時間が違っています。

 同じはずなのですが、違うと私は考えています。

 価値観も視えている世界も乖離している。

 言葉を交わす事ができていますが、立ち位置はまったく違っているという意味です。

 これはどうしようもない事で、お互いに世代の違いを理解しておく必要がある。

 純血の考え方、古い魔法族の考え方、今を生きる貴方達。

 どこかで妥協点を見出さなければ、いけない時期にいるのでしょう。

 そうしなければ、小さな食い違いから大きな社会の乱れになるでしょうから」

 

 以前のように。

 と、彼女は言葉にはしなかった。

 前の世代も私からすれば親の世代だ。

 そして近代、争いを他国も巻き込んで引き起こしたのはグリンデルバルドである。

 でも、爺ちゃんひとりで起こしたわけではない。

 賛同する魔法族がいたからだ。

 これを言うと、ヴォルデモートである、トム・リドルに賛同した魔法族も確かにいた、となる。

 テロ集団が出発点ではなかったからこそ、広がった。

 そして後悔する頃には身喰いをしあって、この有り様。

 

 魔法族は、大多数を占めるマグルからの迫害を恐れていた。

 この出発点を考えれば、合理的な魔法族人口の把握なんて、考えもつかないし管理される事こそが恐怖だ。

 古い世代ほどデータとして残したくない。

 けれど、それが今となっては穴となっている訳だ。

 

 価値観の譲り合いね。

 確かに、今までなら、正確な魔女の総数や居住地を記録しようなんて、誰も口にしないだろう。

 スクイブや純血の家庭に隠された子供とかね。

 マグルとの間に子供を作った者や、純血氏族から放逐、またはいないものとされた血筋。

 タブーである。

 マグル的価値観だとありえねぇって話だけどね。

 

「スクイブの女性の価値、嫌な話ですが、内々の考え方を改めて浮き彫りにしたのが、貴女の叔母上の事件です。スクイブの男性より女性を外に出さないという習慣がある事は知られています。

 

 魔法が使えなくとも、その子供は魔法力のある純血として産まれる可能性がある。暗黙の了解ですね。

 嫌な話ですが、表に出さずに家内にとどめて子供を産ませるという行いも普通にあるのです。

 しかし、それを良しとしない良識のある人もいます。

 外に出す事が必ずしも悪い話ではないということです。

 

 ですが、外に出すにしても、マグルとして生きる道を模索するにしても、ただ放逐するのは危険である。

 嫌な切っ掛けですが、貴女という有名な血筋によって証明された形になった。

 過去を崇める純血の古い者達を動揺させることができた。

 

 皮肉ですけれど、例えスクイブであろうと貴女の血縁なれば、日頃スクイブ差別を平然とする輩のくせに、手のひらを返して大切に出迎えるのが想像できる。

 気分のよくない話ですが、この機会に粗雑に扱われてきた女性達、スクイブの子供たちが、少しでも報われてほしいものです。

 ただ、懸念もあります。

 ますます外に出されず、隠されてしまうという事もありえる。

 それも含めて、魔法族から誕生したすべての女性や子供を把握し、安全を確認する外部の力が必要ではないか、とね。

 そんな話になっているようです。

 たしかに、家庭内の方が、マグルの世界にいるスクイブよりも、よくない扱いが想像できますからね。」

 

『ダンブルドア校長は、スクイブの扱いを改善する提案をするでしょうか?』

 

「残念な事に、校長は口を出さないでしょう」

 

 爺ちゃんは正義の味方!!

 と、称賛すると思っていたので、思わず彼女の瞳を覗き込んでいた。

 彼女は、少し困ったように眉を下げている。

 

「魔法族達の考えを調整し、偏った施策にならぬようにと働きかけはするでしょう。

 ですが、魔女、スクイブの生活向上を主張する事はありません。

 魔法族達が自ら、そう願うことならば賛同する。

 彼らが自ら望まなければ、道を踏み外さぬように監視するだけですね。

 意思を尊重する。

 故に、間違った行いに忠告はしますが、止めないでしょう」

 

『なぜでしょうか?』

 

「選び取る意思を尊重しているから、でしょうか。

 口を出してしまえば、それが良くも悪くも決定してしまう。

 彼の言葉は決定権を持っているからです。

 願いであっても正しさ故に、反対意見が掻き消えてしまう。

 きっと異を唱える者を排除したくないと彼は考えるでしょう。

 

 大切なのは、皆で選び取ること。

 魔法族が選び取るならば、それを尊重する。

 もし、それで誰かが迫害されれば、校長は手を差し伸べもするでしょう。

 ならば、最初から迫害されないように阻止しないのか?

 学べという事ですね。

 

 そして先にも言いましたが、校長も理解している。

 今の貴方方が選ばずして、先は無い。

 今を生きている魔法族が選ばねばならず、先人としては結果を引き受ける他無いと。」

 

 ちょっと無責任に思える。

 つまり子供や孫にがんばってね〜って問題を投げつけてる。

 そうセウェルスが言っていた、問題の先送りね。

 

「それでも、今回は貴女の存在があります。

 無情な法が施行される事は無いと、私は考えていますよ。

 そもそも貴女の身内を虐げるような施策なぞ提案すれば、不興を買うのは分かりきっていますからね」

 

 やれやれとシリアスを振り落とすように、彼女は頭を振った。

 

「私の世代ぐらいから下は、貴女の家名にまつわる話を知らない者が多いようです。

 実際、私も知りませんでした。

 

 魔法族のサロンでも、誰もが知っている氏族、ヨーロッパの名家というぐらいの内容ですね。

 それも校長が言うには、大戦の混乱時に、貴女方一族の戸籍が改竄されたようですね。

 足跡をきれいに消し、流転の日々を過ごしていた。

 ただ、貴女のご両親が早逝した事で、貴女はイギリスに来た。

 貴女と叔母が唐突にイギリスに現れた感じですね。

 

 もしかすると、貴女の他にも一族の誰かがいて、イギリスに住む手配をしたのかもしれない。

 ホグワーツの生徒名簿に載ったのも、叔母君とイギリスに定住していたからでしょうし。

 そのイギリス暮らしも、貴女は家名ではなく叔母君の名で暮らしていたようです。

 十一迄、平穏な暮らしだった。

 

 つまり、それまで貴女の一族に関しては、他の古い家系と同じくいつの間にか滅んでいたという考えだったようです。

 なので今、熱狂している方々は、あらゆる意味で……普通ではないようです。

 久方ぶりの、家名を背負う娘の存在が明らかになり、更に事件もあってか、そうとう……」

 

 言い渋ってるけど、強火担のミイラみたいな爺様達が、祭り衣装で団扇とペンライト持ち出して旅に出る勢いになったのか。

 

『知らないオジサンからの、変な宝石とか、ニフラーにあげていいですよね』

 

 って聞いたら、マクゴナガル先生が目元を覆った。

 

「ついうっかりは、誰にでも、えぇ、えぇ……ニフラーなら、自然災害みたいなものですからね。えぇ、えぇ」

 

 呻くように彼女は答えた。

 ごめんなさい、また、胃薬が必要っぽいな。

 

 ***

 

 天井に本物のコウモリ。

 コウモリに見えるけど、どうやら魔法生物らしい。

 じっと見つめると、微妙に視線を逸らす。

 屋内にコウモリ入れるとか、衛生観念はどーなってんねん。

 

 で、何をしてるか?

 

 徐々に大広間に生徒があつまり、ランタンは輝き、あまったるいデザートの香りが広がる。

 校長とダーリンは戻っていないが、一足先に小説家はファンサに励んでいる。

 女生徒にイタズラしてもいいですよ!と、ウィンクを飛ばし、男子生徒はそんな彼らを遠巻きに見ている。

 

 その中に、珍しくハー子さんがいない。

 よくよく見ると、ハリー君とウィーズリー弟君もいない。

 

「おぉ麗しの姫も、イタズラしてもいいですよ、どんと来いです、さぁどうぞ」

 

 何いってんだよ、小説家、チミもアラサーだろ?

 といっても面白くもない。

 なんて考えてると……

 

「トリック・オア・トリートっ!」

 

 うむ、マルフォイ君&クラッブ&ゴイル君である。

 なにやら焦った様子で、割り込んできた。

 まぁだいたい小説家に絡まれたら、ガードしとけよって親から言われたんだろうか。

 大丈夫やで、お姉ちゃんな、こういうアホ、キライじゃないねん。

 

『お菓子をあげるから並んでね』

 

 で、三人にポイポイとキャンディと、おまけにカットしたアップルパイを包んだ紙を渡す。

 

「大丈夫なのか?」

 

「おねーちゃん、ダイジョブ?」

 

「あいつ、きらい」

 

 だいじょうぶだよー

 害はないからね、ほら、スリザリンの席に行ってていいよ。

 

「パンジーを寄こすか?」

 

 パンジーちゃんのガンギマリした視線が痛いから、マルフォイ君はお席に行きなさい。

 ワイ、ダーリンを待ってるだけだから。

 

「ドラコ、大丈夫?」

 

「おなか、いたい?」

 

「だ、大丈夫だ、席に行くぞ……だーりん?母上に手紙を書こう……」

 

 パンジーちゃんに手を振る。

 ドラコをまきこまないでよねっ、猿!!

 

 聞こえた。

 ばっちり遠くなのに聞こえた。

 けど、小説家がキライなパンジーちゃんは、こっちに来ない。

 中指立てそうな彼女に手を振ると、振り返って小説家に群がる女の子、その中のチビッチャイコを手招く。

 

『誰か他にもお菓子が欲しい子はいるかな?もちろん、一年生限定』

 

 んで、並ぶ子供達。

 素直だにゃ〜

 飴ちゃんと一口クッキーとかも配るワイ、気分はオバアチャン。

 ついでに小説家もならぶ。

 なぜに?

 

 チミは、いろいろな素質があると思うよ。

 でもな、ほら、ファンの高学年女子の殺意がワイに……まぁいいか。

 喜ぶ小説家と一年生。

 飴ちゃんだからな。

 それも激烈に酸っぱいやつ。

 まぁハロウィンだから許せ。

 

 なんつーか、ワイ、こういうお調子者がキライではない。

 ペラペラと回る口を笑いながら眺めていたが、そろそろファンサに戻れよ、女の子達の機嫌が悪くなってんぞ。

 これ以上、おべんちゃら言うなら、現実をわからせちゃうぞ!なんてな。

 髪飾り外したら、チビリ散らすだろーなーやってみてぇ〜

 まぁ想像だけ。

 

 子供たちに身の危険が無いなら、ワイ、手出し口出ししないでござるよ。

 それこそ爺ちゃんの、考えもちょっとわかるんよ。

 爺ちゃんは神様じゃない。

 だから、賢くて最善の選択肢や答えを用意できたとしても、与える事はできないし、しない。

 

 爺ちゃんは人間だ。

 それ以上ではないのである。

 無償の優しさや善を求める相手ではないのだ。

 弁えているから、手出しをしない。

 

「誰をお待ちになっていらっしゃるのですか、姫君?」

 

 ニコニコしている小説家を見上げる。

 まぁ小説家、多分、ワイの資産情報をゲットしてるんだろうなぁ。

 投資対象としては、校長がチミを討伐するか否かの結果次第だよ。

 とか生ぬるい目で見ていると

 

「葵」

 

 おぉ、マイ・プリンス!

 いつも通りの不景気で不機嫌なワイの王子様が来た。

 校長も教員テーブルに歩いていく。

 どうやらミーティングは終わったようだ。

 

「いい加減にしろ、スリザリンの席に行け」

「慈悲深い姫の施しですよ!そうそう嫉妬せずとも」

 

 あ〜すんげぇ顔。

 なのに、小説家の顔は笑顔だ。

 煽ってるんじゃないなぁ、これは。

 小説家の行動の裏が少しわかったぞい。

 投資家とその護衛。

 多分だが、案外、この小説家、アホンダラではない。

 でも致命的な勘違いもしてる。

 セウェルスと自分はご同輩、それも媚び方が下手くそな陰キャだと思ってる。

 いや、基本スペック隔絶してるの、どうしてわからんのだろう。

 

 顔か?

 いやいや、ヒゲもなさそうなツルツルが好きなの、ファンタジーだけだよ。

 アイドルはいいけどね。

 んでも、アイドル以外の男でツルツル?

 

 カメラの角度ねらってるようなナルシストが好きなの、どんな強者だよ。

 いるだろうけど、ここな、イギリス、民族的にツルツルはゲイだよ?(偏見です)

 

 外見が上回ってるとか勘違いしてんのかな?

 ハムスターと野生動物を比べるのか?

 それかお家で飼われてるハムちゃんと、野生の山猫を同列にできる?

 

 いやぁそこだけ、どうして危機管理能力がなくなってんねん。

 セウェルスは権力者に媚びているのではない。

 権力のある者を手段としている。

 そして私に媚びているのではない。

 自分の心にある大切な事の為に行動しているだけである。

 故に、お前と同じ小物ではないんだよ。

 お友達になれる!と、勘違いしちゃってる。

 どんなお友達かは謎だけど。

 損得のセンサーかよ。

 

 今までつかめなかった男の全体像が少しわかった。

 スポンサーを探す役者と同じである。

 男子生徒やハリー君に絡んでいく割に、こっちへの圧力が少し違うってのは、彼の中で純血や金持ちは別枠に置かれているんだろう。

 

 なるほどねぇ〜

 スッってフリットウィック先生が避けて、テーブルを回り込んで席に歩いていく。

 さすがデキる男。

 セウェルスのストレスがマックスだとわかっているようだ。

 危機管理が凄まじい。

 

「ハロウィンだ、ポルターガイストも許してあげなさい」

 

「……」

 

「なんと!ポルターガイストですと、そうですね、私が退治してあげましょう!!」

 

「それは素晴らしい、では是非とも乙女の塔にでも行くがよろしかろう。毒蛇がまだいるかもしれませんぞ」

 

 なんぞと言いつつ、こっちに来るダーリン。

 小説家は肩をすくめると、笑った。

 実は空気を読まないようで読んでいるんだよねぇ。

 なるほど、金になりそうな生徒だけど、純血が極まってるから近寄らずおべんちゃらか。

 

 ダーリン、乙女の塔っていろんな話がごっちゃになっているよね。

 

「ヘーローの話は、ギリシャ神話でダーダネルス海峡だ。

 イスタンブールの乙女の塔も、数種類の話があるが、よく知られているのは父と娘の話である。

 そして居もしない何かを探しに行くに、奴はふさわしかろう」

 

 うわっ、相変わらず辛口。

 

「ははは、お邪魔してしまったようですね!」

 

 ウィンクを飛ばして圧を弾き飛ばす小説家。

 ある意味すごい。

 ファン層に、適齢期女性がいない理由も理解。

 売り方を心得ているとか、何でホグワーツの仕事受けたんだよ……どう考えても経歴詐欺を疑われての試し雇用だろうが。

 まぁ虚栄心が突き抜けてて、わかってても罠に突っ込んでくんだろうなぁ。

 役者には向いてるんだけど、魔法界、芸能関係、あんまり発達してないからなぁ。

 で、目の前に立つ相手に意識を戻す。

 

「さっさと」

 

『トリック・オア・トリート、お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ?』

 

 魔法文字も慣れたものである。

 そいでポーズはハグの姿勢でドヤる。

 それまで不機嫌そうだった小説家ファンが慄く。

 チミたち、ワイのプリンスだけ別枠なの?

 いっとくけど、キャイキャイしてる、そこの小説家と実は年齢それほど離れてないんだじょ?

 

「あれを?」

 

「どうやって?」

 

「媚を売る相手を間違えてない?」

 

「だから言ってるじゃない、彼女は違うのよ……」

 

 ヒソヒソヒソヒソ……。

 

 ひどくね?

 ワイ、そんな中身は悪女成分ゼロだよん!ねっ、ダーリン。

 と、言ったら、クソガキがって呟きが。

 今日、ハロウィンだよ?

 

 ……。

 

 ブリザード!

 睨み下ろされるワイ。

 

『よろしい!ならば戦争だっ!!』

 

 両手をワキワキしてみた!

 

 ……。

 

 ちなみに、ファンサしてた小説家は楽しそうに女子生徒とこっちを見てる。

 

 いや、見なくていーよって、ハリー君だ?

 ここって出入り口近くで、廊下が見えるんだ。

 ハリー君達が通り過ぎていく。

 どうやら、何処かに行くみたいだね。

 ハロウィンの晩餐は長めだけど、始まりぐらいは一緒に……どうするんだろう?

 ハー子さんが手を振ってくれた。

 

 ぐい

 ?

 口に突っ込まれる酸っぱい飴。

 

「席につけ」

 

『ちぇっ、いたずらできなかった!』

 

 ***

 

「よく持っていましたね」

 

 テーブルにつくとマクゴナガルが笑いながら話しかけてくる。

 

「実に羨ましい!本当に好かれていらっしゃるのですね!!」

 

 ロックハートの物言いに苛つきながらも、セブルスは聴こえないふりをした。

 この詐欺師をホグワーツに留め置く間に、経歴の洗い直しを行っている。

 証拠不十分としてきたが、強力な忘却術で関係者の記憶を操作している痕跡が発見できた。

 ある程度、裏取りができれば、処分の方向が決まるだろう。

 アズカバンか司法取引をさせて子飼いにするかだ。

 ダンブルドア的には、関係者の状況次第で温情を与えるともいっている。

 セブルスにはわからない思考だ。

 他人様の人生を盗み取るような輩は、同じ目に遭わせてやれば良いと思う。

 まぁこのホグワーツで同じ行為をした場合は、等価ペナルティではなく、人生が終わるだろうから口を挟む気はしない。

 

「それにしても、本物は違うのですねぇ」

 

「どういう意味です?」

 

 ロックハートの言葉に、マクゴナガルが顔を向けた。

 少し険しい表情に、男はヘラヘラと笑い、害意は無いという姿勢を見せる。

 

「マグルのおとぎ話に登場する一族。

 魔法界では、古い方々は美しい姿をしていらっしゃるが、彼女は別格。

 というかユニコーンを見るのと同じで、同じ人とは思えないという意味ですよ。」

 

「嫌な物言いだ。失礼でもあるぞ」

 

 セブルスがすかさず反論すると、まぁまぁという感じでロックハートは押さえる仕草をした。

 

「言いたいのは……故に、私は頭を垂れるだけという事ですよ、ナイト殿」

 

 真意がわからず、男を凝視していると、何故かフリットウィックが吹き出した。

 マクゴナガルに肩を叩かれる。

 

「心配しないでほしいと、彼は言っているんですよ。」

 

「それに私は、多くの愛を受け取る者ですからねっ!!」

 

「殴ってはダメですよ、セブルス」

 

「……。」

 

「それにしても可愛らしい仮装ですね!

 心の動きにあわせて耳が動くようにもなっている。

 エクセレント!!

 やはり可愛らしいレディが増えるのは良いことです!!」

 

「……。」

 

「派手なことはしないかわりだそうです。あの程度なら問題は無いでしょう。」

 

「……。」

 

「貴方のお姫様の頭にも生えていましたね。さすが何を身に着けてもお美しい!」

 

「時々、思うのですが……。」

 

 マクゴナガルに言いかけて、セブルスは口をつぐんだ。

 相手には言葉にせずとも伝わったようである。

 何やら浮かれて喋りまくっている男に聞こえぬように、声を落として彼女は言った。

 

「預言者テイレシアースに占わせれば、彼が人を惑わす事はあっても、誰かが彼を手に入れる事はないと告げるでしょう。貴方とは自己への概念が違います。」

 

「では、吾輩は何だと?」

 

「己を鏡に映して見入る男は、己以外に興味がない。

 貴方が鏡を見るのはヒゲを剃る時だけでしょう。

 私は古い人間ですから、未熟者と男の違いは理解していますよ。」

 

 含まれる意味に、思わず片手で額を押さえる。

 

「褒められている気がしません」

 

「褒めていません。」

 

「でしょうな」

 

「だから彼には注意をしないのですよ。危険は無いのですから」

 

 つまり、自分は性欲のある男だから危険だと、こんな場所で言わなくても良いだろうと思わず呻く。

 そんなセブルスに再びフリットウィックが笑う。

 

「よかったじゃないかセブルス、私だったら喜ぶよ。さすがに役立たずだとは言われたくない。」

 

「冗談のつもりはありませんよ、フィリウス」

 

「でも、そういう意味だろう?」

 

 少女達に愛想を振りまく男は気がついていないが、酷い話題だ。

 

「本当に危険はないと?」

 

 そんなわけがなかろうと呟くと、マクゴナガルのかわりにフリットウィックが含み笑いながら答えた。

 

「よく、観察してご覧。

 慎重ではあるよ、非常に、慎重だ。

 お気に入りの子とも、一人では会わない。

 気が付かなかったとしたら、隠すのがうまいってことさ。

 彼の中では、選別が行われているのだろう。

 男の前ではボロを出さないようにしている。

 その点、不本意ながら私は男ではないのかもしれないね、やれやれ。

 本当に見境がなければ、もっとちょっかいをかけているさ。

 そしてそのターゲットは誰になる?」

 

 考えるまでもない。

 

「護符の所為では?」

 

「まぁそれもあるね。でも、攻略する事は可能だ。害意がなければ、純粋な好意なら違うだろう?」

 

「何の話ですか?愛の話ですか?それなら私にお任せあれっ!!何でも聞いて下さいっ!!」

 

 勘弁してほしいとセブルスは、ディナーが始まるのを待った。

 

 ほどなく校長の挨拶とともにハロウィンの晩餐が始まった。

 飾り付けは美しく、ランタンの灯りと蝋燭が温かみを広げていた。

 目立った混乱もなく、去年の騒動とはうってかわり穏やかに時間が流れていく。

 しかし、セブルスの内心は穏やかならず、他に気がついている者はいるだろうかと教師の顔を見回す。

 ダンブルドアに目を向け、首を振った。

 

 ハリー・ポッターは、今年も何かをやらかしているようだ。

 探しに行きたいが、校長が目で合図をしてくる。

 動くなという事らしい。

 

 かわりに視線を彼女に移す。

 確かに、誰が危険かと言えば、友人たちと姿をくらませている少年も心配ではあるが、彼女のほうが危険度が今は高い。

 校舎内の肖像画や屋敷しもべ妖精の目を使い校長が大丈夫と判断するなら、後で説教するだけである。

 それよりも問題は、呪詛の反応が校舎内を彷徨いているからだ。

 だが、反応のある場所に行ってみると、姿が無い。

 それを幾度か繰り返してから、校長が出した結論は。

 

 呪詛はきちんと役割を果たしている。

 そして効果は既に致死となり、つぎつぎと命を奪い続けている。

 相手は身代わりを用意したに違いない。

 

(たぶん、虫じゃな。本体への影響を肩代わりさせて日々、身代わりを死なせている。

 もちろん、虫では本来肩代わりなぞできぬ。

 虫としたのは、早いペースで反応が消え、移っていくからじゃの。

 小型の虫よりは重い、しかし家畜にしては軽い。

 そしてそもそも身代わりにできる生き物が、大量に用意できるわけもない。)

 

 何よりも正体がわからぬのが厄介である。

 小さく何処へでも入り込める生き物は厄介だ。

 

(じゃが、人間が介在している事もわかっておる。

 だが相手が何者であるかは、探らねばならぬ。

 魔女を狙う者達なのか、はたまた帝王帰還を信じている輩か。)

 

 

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