おとぎ話の末裔   作:C&Y

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寮監先生&人外生徒の明日はどっちだ、秘密の部屋編。
R15と残酷描写タグは、予防処置と寮監先生の苦行成分でできています。


AVB、或いは静かなる丘と秘密の部屋 ⑳

幕間

 

ドビーは元のお家に戻る事にした。

お家に帰ると、別の屋敷しもべ妖精がいた。

可愛い女の子の妖精ちゃんだ。

 

「ここは、私がお仕えするの!」

「だいじょうぶ、ドビーはダメダメな主のお世話に帰ってきただけ!」

「ダメダメ?」

「そう、ダメダメ、彩りを与えるために戻ってきたので、その他の家の仕事には手を出さない」

「なら、いいかな。奥様ー」

「どうしたの、あら、お前、帰ってきたのね?」

「ダメダメな主に彩りを与えるために、ドビーは帰ってきましたっ!」

「そう、今度、いなくなる時は、必ず私に一言いいなさい。

 それからドラコのところは別の子がいるから顔をださなくていいわ」

「かしこまりましたでございます、奥様」

「引き続き、ルシウスで遊んであげなさい」

「はい、奥様」

……。

……。

 

「よろしいのですか?」

「えぇ、元から家の中の事はさせていないの。

それに屋敷しもべ妖精の貴方達が多くいる事こそが純血家のステイタスでもあるから。

あれはあれでいいのよ。

さぁ仕事にもどりなさい」

「はい、奥様」

……。

……。

 

「あの人の気晴らしにもなるし、ドラコに実害がなければいいわよね。」

 

マルフォイ家の先代、大旦那もドビーがちょっと苦手だった。

息子に譲り渡した時、喜んだのは内緒である。

でも、ルシウスからドラコには渡せないね。

ナルシッサママに怒られちゃうから。

 

「ドビー、一度聞いておきたかったけど、貴方、ルシウスがキライなのよね?

他の家に移ることもできるのよ?」

「奥様、そんな、ダメダメで、口が悪くて、意地の悪い旦那様ですが、ドビーめは誠心誠意仕えさせていただいておりますです!」

「わかったわ、えぇ。安心してドビー、ルシウスの世話は任せたわ。」

 

そんなナルシッサは夫を愛しています。

 

***

 

君は純血名家の末だ。

なのに魔法が使えない。

父も母も兄弟一族の中で、君の存在は無かったことにされた。

 

名前もなくし、全てをなくした君は、それでも魔法の世界を忘れることができなかった。

息をするように、寝ている間も、不思議な世界を諦めきれなかった。

だから、君は金が貯まると、少しでも魔法が使えるようにならないかと勉強をする。

子供用の教本を読み、売り払われ壊れた杖を買い求め、ひっそりと練習をする。

それが無駄だとわかっていても、君はどうしてもやめる事ができなかった。

 

その日も君は、何か出物は無いかと店に顔を出した。

するとカウンターには数冊の本。

どうやら売りに出された古書のようだ。

魔法の本が混じっていないかと手を伸ばすと店の主が君に言う。

 

「まとめ買いなら安くするよ。捨てるに捨てられねぇ曰く付きだからな。そうそう呪われても文句は言わないでくれ。」

「呪われてるのか?」

「知らん。処分したくて持ち込まれた本だ。中身を確認してねぇのよ。」

「何でだ?」

「知らねぇってのが良いこともあるからだよ」

「……今日、自由になるのはこれだけだ」

「あぁいいぜ、ただし、返品は受け付けねぇからな。呪われたら自分でどうにかしろよ」

 

君はイソイソと数冊の本を手に取ると、早速ねぐらに戻り開いた。

あぁ本当に不用心だね。

呪いの本だったら、君は死んでいたかもしれない。

まぁ死んでもいいやと思っていたものね。

 

それぞれ小難しい事が書かれた本だったけれど、特に魔法が使えるようになる内容ではない。

魔法が使える魔法族の為の本だった。

彼は少しがっかりしたが、いつもの事なので読み進めた。

三冊目を手に取ると、そうこの本を君は開き、中身が白紙であるのを見て取った。

あぁ君は、これが日記帳だとすぐにわかった。

中々に良い装丁だが、彼は日記を書くような人間ではない。

彼は枕元にそれを置くと、他の本へと手を伸ばした。

 

その晩、不思議な夢を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……。

やぁこんばんは、どうしたんだい、こっちだよ。

ほら、これを着て、もう、わすれちゃったのかい?

君の制服だよ。

うんうん、ほら、いつも通り、屋敷しもべ妖精の……がいるだろ?

あぁ名前、名前なんて無いだろう、ふふふ……

ほら、あの子

頼んでみようよ

 

忘れられた場所はみつけたよ

語る器も用意できた

あとは、錨だけさ

そう、僕はいつでも完璧さ!

 

そうそう

家族の写真をもらっておこうよ

そうだね、君もきっと家族のところへ戻れるさ

魔法?

 

ふふっ

ふふふ

君は特別だ!

選ばれたんだよ、きっと素晴らしい事がおきるよ!

耳を澄ませてごらんよ

ささやき声がきこえないかい?

 

ほら

 

「……返してほしかったら……を、写してくるんだ...どうして、どうしてだ?」

 

お母様にお土産だよ。

思い出したかい?

君のお母様だ

やさしい

やさしい

やさしい……

 

 

 

(なぜ、こんな……生き残ったのね)

 

……

……

……

 

君は、何が不思議だったか覚えていないが、奇妙に頭が冴えているような気がした。

買い取った本は、面白い内容だったが普通の本だった。

相変わらず魔法は使えないし、君は魔法の使えない純血の末のままだった。

 

それでも君は、真面目に働き、真面目に魔法の教本を読み込み、こっそりと杖を振る。

家族は疾うの昔に君を忘れているのにね。

君は家族を忘れていない。

 

そうそう日々変わらない生活の中で、ちょっとだけ君にも変化が訪れた。

枕元に放置していた日記の表面に、変な枝みたいな物が生えていた。

どうせ魔法界の本だ、多少変わっていても君は気にもせずに、魔法の練習をしていた。

さらに変化に気がついた。

時々、小さな蜘蛛が集まっていて、時々、ポロポロと落ちて死骸が転がっている。

そういえば、白紙のページを見て放置していたけど、何処かに何かが書かれているかもしれない。

君は蜘蛛の死骸を払い落とすと、本を開いた。

……

……

……

……

……

 

あなたは、えらばれました

 

……

……

……

……

 

すうこうな、しめいに、いきる

きょうだんいんになるべく

しれんをあなたに

あたえましょう

……

……

ぶじに、じゅうのしつもんに

こたえられれば

あなたは、とくべつな、しめいをはたす

きょうだんいんに

えらばれるでしょう!

 

……

……

……

……

 

いつの間にか眠っていた君は、朝になると仕事に行った。

そろそろ冬だものね。

冬の間の支度もしなければならない。

今日も君は真面目に働き、本を開き...

 

「特別な使命……」

 

君は考えた。

ずっと考えた。

仕事仲間と食事をしながら考えた。

どこか頭の隅で警告をする言葉が聞こえたようだけれど、君はすぐに忘れてしまった。

……

……

……

……

君は魔法が使えないけれど、君は働き食事ができる。

雨露をしのぐ場所だってあるし、このまま真面目に働けば、同じく魔法の使えない女性と結婚することだってできるだろう。

そう、君は稀な不幸を背負っているのではない。

何処にでもある、ちょっとした人生の苦悩を手にしているけれど、死ぬことはないのだ。

ねぇ、食われてしまった僕だけど、君には少し同情するよ。

僕も同じだったからね。

 

僕は特別だ!

 

捨てられた記憶はかわらない。

壊れた人生の現実もかわらない。

 

でもね、よく考えてみてよ、きっと君は真面目に生きてきた。

叶わぬ願いがあっても、君はきちんと生きてきた。

人生なんて特別じゃないんだ。

でも、生きるのに理由はいらないんだよ。

 

と、まぁ今の僕はこんなお為ごかしは言わないね。ごめんごめん。

続けようか……

……

……

……

……

さて……

君は夜、寝台に腰掛けると日記を開いた。

どうしても、そうしなければならないような気がしたからね。

 

「私は特別になりたい……」

 

開いたページに文字が浮かぶ。

……

……

……

 

じゅうのせんてい

 

だいいちもん

 

なんじは、まほうをうしなったおのれを「ふかんぜん」だとおもうか?

 

せんたくし

 

はい

いいえ

わからないが、くるしい

 

……

……

……

 

「……わからないが、苦しい」

 

……

きみは、ゆうきがある!

 

 

君は息苦しさに目が覚めた。

まだまだ夜が深い時間だ。

今日は冬支度を手伝っていたので、珍しく職場に泊まり込んでいた。

夜は屋内で過ごし、森に行ってはならないと言われていた。

でも、君は息が苦しい。

与えられた部屋から出ると、薪小屋を通り、森番にみつからぬようにと、急いで森に向かった。

広大な森だ。

たくさんの魔法植物、魔法生物、得体のしれない何か、そして森を知る大人達は言わないが、けっこうな数の人間や知性のある生き物が暮らしている。

だから、不用意に森に入ってはならない。

そんな事は知っている。けど……

 

君は選ばれた。

 

……

……

……

……

……

……

だいにもん

 

うまれながらに、あたえられたもの

あとから、さずけられるもの。

どちらが、ただしい?

 

……

……

……

 

「あとからだ」

 

……

……

きみは、まことのおんちょうを、えるいみをしっている

 

 

目覚めると君は寝台にいた。

きっとすべては夢だったのだろう。

現実なんて夢と大差無いのかもしれない。

君は真面目に働き、その日も食事をし、仲間とくだらない話をした。

そう、君はもう、魔法なんて探していない。

君は特別だからだ。

 

……

……

……

だい三問

 

もし、魔法を取り戻す方法が

まほうしゃ会では禁じられている方法だとしても

君は、学ぶかな?

 

……

 

「学ぶ」

……

……

君は、家族を取り戻したいんだね。

 

 

 

君と僕は痛みを感じた。

どうやら星は守りを固めているようだ。

もともとお母様もわかっている。

これは試金石にすぎない。

でも、君は良い息子だ。

だから、今日はひとつ、面白い遊びをしよう。

きっと面白い。

 

人間に鹿の角が生えていた?

ケンタウロスじゃないのかい?

違う?

あぁ君は森の奥の奥にいたからね

彼らは僕らさ

僕らは彼らさ

さぁ遊びに行こう

……

……

……

第四問

 

弱者が糧になるのは、自然の摂理。

そう弱いことは悪いこと、だと思うかい?

 

「……」

 

 

答えないけれど、それが君の答えでもある。

素晴らしい!

君は物事をきちんと考えられるようだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしたんだい?

いまさら怖くなったのかい?

君は特別になりたいんだろう?

 

森の奥に何があるか、知ってしまった君は、怖くなった。

小さな穴だ。

ほら、人間一人が落ちるぐらいの穴さ。

森の奥の奥

大きな生き物がいた場所さ。

でも、君が僕を運んで、いや君が運んだ僕の中身をぶちまけたおかげで、たくさんの僕がいるわけだ。

本当、人生ってままならないよね

僕は、ほら、けっきょく戻れないってことだね。

誰かを殺した瞬間から、僕はもう、落ちるだけさ。

ははは

怖いかい?

でも、君は覚えていないけど、誰かの人生を壊しているんだよ。

覚えていないけどね。

ほら、穴を覗き込んでご覧、君が選ばれた理由があるよ!

 

……。

 

第五問

君が犠牲を選ばず、かわりに名もなき存在が消えたとして、それは罪であろうか?

 

「罪ではないと思いたい」

 

正直だ、そして君は正しい!

 

 

……。

 

 

君は随分前から、魔法の練習をしていない。

君を捨てた家族の仕送りを見ても、感謝もしていない。

名前も消されたというのに、ずっとずっと金を送って、衣服を届けているのが誰かも忘れているようだね。

まぁいいよ、まぁね。

君は君なりに人生に折り合いをつけて生きていける選択肢があった。

僕が僕なりに人生に折り合いをつけていけなかったようにね。

過去は過去、どうにもならないのが人生だ。

さて、君はもう戻れないと何処かでわかっている。

穴を覗いたら、君のせいで人生や命を失った者の顔が見えただろう。

声も聞こえたかい?

君はスクイブだから捨てられたと思いたかったんだね。

家族から名前を取り上げられた理由を、自分が魔法力が無いからだと考えた。

 

君が覗いた真実は、そんな無害な話だったかい?

……。

 

 

 

 

第六問

真理を知り平穏を失うか、無知のまま平穏を保つか。

どちらを選ぶ?

 

「真理を」

 

素晴らしい!

特別な者こそ、そうでなければ!

 

 

 

 

 

 

弁護の時間だ。

君が人を殺した事実はかわらない。

けれど君は子供で、事故だった。

たまたま打ち所が悪くて妹が死んだとしても、君に罪を問うのは間違いだ。

例え魔法使いの才能豊かな妹が、あっけなく大理石の床に叩きつけられて脳みそを撒き散らしたとしてもね。

さぁ、君は幸せにならなくてはいけない。

違うかね?

……。

 

 

 

第七問

汝に問う

人は知により形を作る世界にいるべきか。

人こそが知の及ばぬ世界に生きるケダモノか。

どちらが幸せだと思うかね?

 

「知の世界」

 

おぉそうだろう、そうだろう!

知識を求め、踏み越える者だね!

 

 

 

 

君は変わらず仕事をし、夜になれば森に入った。

週末は街に繰り出し、ちょっとばかり酒場で獲物を調達する。

面倒を無くす為に、生ける屍の水薬も用意してね。

君が穴を覗き込むと、

 

「いるかい?」

『お兄ちゃん?』

「あぁ、友達をつれてきたよ」

『ふふっ、ありがとう』

 

時々おしゃべりをしていると、たくさんの声が聞こえるようになった。

君は正しい道を歩んでいるからね。

 

『お兄ちゃん、こっちはね、とっても楽しいよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第八問

選ばれた者が、選ばれぬ者を導くのは

道理である。

傲慢である。

責務である。

 

「無意味だ」

 

素晴らしい!

隠された意味を理解できるとは!

 

 

 

 

 

「どうしたんだ、体調が悪いのか?」

「大丈夫ですよ、フィルチさん。冬はこんなもんで、不眠なんですよ」

「風邪のようなら、マダム・ポンフリーの所へ行ってこいよ」

「ありがとうございます。あぁ、今夜もこっちに泊まらせてもらっていいですかね。通いは体力的にしんどくて」

「あぁそうだったな、義足じゃぁつらかろう、最近は雨ばっかりだからな」

「すみません」

「食事も用意させるよう言っとく」

「ありがとうございます」

 

 

 

 

君は忘れてしまっているし、僕の声も今となっては届かない。僕自身も、もうすぐ消えるしね。

 

君の真実は簡単だ。

君は妹を守った。

君は妹を守って片足をちぎられて、魔法的な能力も失った。

そして守ろうとした妹も投げつけられて死んでしまった。

君たち家族は耐えられない悲しみと、魔法族同士の争いの末に離散しただけなんだ。

君は先天的に魔法が使えないのではない。

君は頭部にも損傷を負って記憶も曖昧だし、体も不自由だ。

だから、ダンブルドアは、君に仕事を与えている。

外の世界から君を守っていたんだよ。

身も不自由、魔法も失い、記憶も虫食いだ。

……。

そう、君は使えない魔力で溢れていた。

そうでもなければ、僕の日記を読めはしない。

あぁごめんよ、僕も不本意だ、僕もこんな終わりになるとは思っていなかったよ。

 

まったくねぇ、魔法族の子供がこんなにいるっていうのに、君を食い物にしたいっていうのさ。

まぁ邪神や魔神なんて、そんなものだろう。

それとも悪魔かな、まぁどうでもいいや。

影は昔から、どんな形にもなるからね。

さようなら、君、さようなら、僕。

まぁいいさ、向こうに行こうか。

ひとりじゃないし、もうひとりにはなれない……。

 

 

 

第九問

汝は門を開く鍵であり、門の先にあるのは世界の変革である。

開く。

閉じる。

 

「開く」

 

第十問

 

最後の問いだ。

汝は、名を呼ばれたいか?

汝は、名を呼ぶものになりたいか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本を閉じる。

睡魔に体が重い。

急に眠くなって、枕に頭を置く。

不思議だ。

いつもより楽に息ができている。

 

 

次の日、本を懐に入れて仕事に行った。

今日はとても気分がいいし、頭が冴えている。

仕事仲間の年配の男も、今日は珍しくにこやかだ。

よく働き、連れ立って冬支度のために地下室へと向かう。

 

(あぁ久方ぶりであるな)

 

歩いてくるモノを見る。

同僚が挨拶をするので、軽く頭を下げた。

やはり、魔法界は不思議だ。

今なら、できぬはずの魔法も使えそうだ。

 

(崇高な使命を果たす我らに不可能は無い)

 

銀の大きな生き物が通り過ぎる。

青い雷光を纏う生き物だ。

よくもまぁ仕事仲間は平気なものだ。

口からも燐を吐き、こちらを睨みおろしている。

 

(輝きは満ちた。

犠牲を払い続けた美しい姿だ。

実に実に主は喜ばれた。

あの女の醜さがわかるだろう、この美しき輝きを身代わりにし続けたのだ!

だが、借金は自ら返さねば、負債は残るものだ。

あの女から取り立てねばな。こうして従ったふりをするのを終わらせる為にも。

我らが祈りは主の為だけにあるのだから

母上に捧げねばならぬのだ)

 

そうだ馬鹿な奴らだ。

主は見ている。

私は、主に忠実である。

教団員は、常に崇高な使命により、外界の愚かしさに手をいれるのだ。

 

怯えたように獣の側にいた子の目が追ってくる。

何故か、責められているような気になった。

 

(気にすることは無い、兄弟。我らが主は理解している)

 

そうだな、

最近はすぐに物忘れしてしまう。

きぃきぃと喋っていたはずの屋敷しもべ妖精が、いまでは何かモソモソと口のなかだけで呟いている。

 

「まだ、道はできないのか」

 

(兄弟、古い鼬どもの巣を荒らすには、先に枯れ枝に火を放つ事だ。

気が付かれぬ事が肝要。

古い鼬は、母上様の邪魔をするだろうから。

だが、兄弟の献身と崇高な行いにより、穴は開いた。)

 

「穴は、もとからあった」

 

(魔女は、己が過ちを知らぬということだ)

 

「君は誰?」

 

(兄弟、君は僕だ。)

 

 

境界が薄くなるこの日を待ちわびていた。

時間を測り、方角も見た。

捧げる者も用意し、器もある。

 

「とてもきれいだね」

 

陽射しが降り注ぎ、何も無い岩肌が下にある。

そこには小さな窪みがあり、雨水が溜まっていた。

 

以前は

 

今は黒ぐろとした口を開いた穴がある。

耳を澄ませると囁きが聞こえ、問いかければ答えが返る。

懐かしい人の声が聞こえる。

大切で温かな記憶が蘇るような気がした。

 

忘れられた場所

語る器

錨

 

「これは……」

 

(考えてはいけないよ、君は特別なんだ。選ばれたんだよ、そしてね……帰れるんだ)

 

抱えていた日記帳から枝が伸び、腕の肉に潜り込む。

懐かしい、縋る手を思い出す。

暗い穴を覗き込み…

 

「兄ちゃんも、そっちに行くからな」

 

『まってる』

 

 

***

 

「ダンブルドア校長、ちっといいですかい?」

「どうしたね、ハグリッド」

「森で挨拶を受けました。こんな時期に移動するみたいです」

「挨拶、何の話かの?」

「ケンタウロスの群れが移動するみてぇです」

「わざわざ挨拶をしに来たのかね?」

「黙ってこっちを見てから、春まで戻らねぇみたいな小難しい言い回しで、自分ではぁわからねぇ言葉を並べられて。

すまねぇですが、ちぃっとも分からんで、ただ、群れは去るってことだけ」

「星の話をしていたかね?」

「あぁ、言ってました、よくねぇ風が喋りだした、星に霧がどうのって」

「ありがとう、ハグリッド。

森を少し見て回ることになるかもしれん。その時は頼むことになろう。

それから子供たちが森に入らぬように注意をお願いする。寒くなるだろうしね」

「わかりましたでさぁ」

 

***

 

 

『チミ、誰?』

 

固まる変な顔の屋敷しもべ妖精君。

ギョロ目で何だか魚みたいなお顔。

知ってる気配……。

 

「お星さま、お星さま、どちらの卵が割れても結果は同じ。

そろそろツケは支払うべきだと、主は考えておられる。

故にお星さま、安全、安心で御座います。」

 

『んと、どう見てもホラーキャラのチミ。どういう事?』

 

「ドビーめは、主様の取り立ての御用を承っているのです。

お星さま、運命の潮目がかわり、星回りは最大の幸運と成りました!」

 

『えっと?』

 

「ドビーの主様は寛大です、そろそろ元の主人の家に戻れと囁かれた。

しばらくは取り立ての仕事は無いと申される。

そう、穴に落ちるのは、借り入ればかりしていた魔女の方にございますれば!」

 

『なんかよーわからんが、大変そうだね。クッキーあげるよ、大丈夫?』

 

んで、クッキーをあげたら恭しく受け取った。

キョドってたのが、ここでようやくワイの顔を見てニヤリって。

ホラー!!

でもお星さまのクッキーでございますっ!

お星さま、やさしー!!!とか絶叫。

コワ、こわいけど、オモロ、どんなキャラだよチミ!

 

『ちなみに、チミの、その元のお家って家出してたの?ハリー君とかつけ回してたよね』

 

くるくる踊る魚面の妖精ちゃん。

変な格好でクッキー捧げ持ったまま、止まる。

そいでクッキーを懐にいれると、妖精ちゃんはペやっと口をひらいた。

ホラーなんだよなぁ外見。

 

「ハリー・ポッターは安全!借りを返さぬ魔女が問題!と偉大なる主様に教えていただきました!

そして暫くは控えろと…仕方がないのでドビーは帰ります。

元の駄目な主のお世話をするのです。

こうして、ひっそりとハリー・ポッターに、お別れを。

ドビーはちょっとふまんなので、元の主の枕カバーに焼きめを……ドビーは悪い子!!」

 

ぽかぽかと自分の頭を殴ってから、何かに拝礼してるみたいに五体投地。

なにこれ、ちょびっとオモロ追加点。

 

『元の駄目なって、契約ってそういうフリーダムが許されるの?』

 

「元の主は、とてもとても手のかかるお方!人生に彩りをドビーは与えるのです!」

 

『そっかー彩りかぁ。まぁハリー君から離れるのならいいかな』

 

「お星さま、ドビーの偉大な方の主様は、借りは返すべきと考えるお方です」

 

『なるほど』

 

「お星さまはキラキラ輝くのですよ!では」

 

すちゃっと手を上げて去る妖精ちゃん。

ホラーな感じなのに、中身がオモロすぎてワロス!

何か、しんぱしーを感じる。

人生楽しんでそうだ。

 

『ばいばーい、変わった妖精ちゃんだったなぁ。元の主の名前は聞けなかったなぁ。まぁいいかな』

 

 

ハロウィン当日、ハリー君たちは幽霊のパーティーに行ってたんだって。

帰ってきたところを、ダーリンが待ち構えていて、しこたま怒られてた。

ハー子さんだけ、翻訳機能が働いてたから、あ〜心配したのねってわかったらしくて。

ダーリン、ご飯も寮に運ばせてたみたい。

基本、子供にご飯抜きの制裁だけはしない。

成長期だもんね。

それも理解したハー子さんが、ちょっとシニカケてた。

 

遠目でそれを眺めてたら、これね。

お魚ちゃんみたいな、なんかホラーな妖精ちゃんと出会っての会話。

ストーキングはやめるみたいだし、いいかな、報告しなくても。

 

「報告は基本だ。

少し容貌が変化したようだが、あれはマルフォイのところの屋敷しもべ妖精だ。

もともと妙な屋敷しもべであった。

ルシウスと相性が悪くてな」

 

刺々しく妖精ちゃんをイジメてたとか?ほら、お貴族ムーブで?

 

それにダーリンは肩をすくめた。

 

「どうも、その、子供の頃から不気味に思っていたらしく、夜に奴と鉢合わせしたくないなぞと、まぁそういう感じだ」

 

さすが、マルフォイパパである。

お笑いのセンスがあるね。

 

彩りをそえる為にお家に帰るって、揶揄われてそうだね。

 

「夏頃から、いなくなったと喜んでいたが、ポッターに絡んでいたか。理由はなんだと?」

 

エキセントリックムーブで楽しそうだったけど、何を言ってるのか不明。

マルフォイパパがハリー君を探ってた?

 

「それはない。そもそも屋敷しもべの管理は奥方に丸投げしていた。嫌がって……。」

 

それ、普通なの?

 

「まぁ普通ではないな。

ポッターについて回っていたようだが、何をしたかったのか。

調べるにしてもルシウスの……管理下ともいえん。奥方に確認しておこう」

 

やだ、どうしよう。

あの顔で屋敷しもべ妖精ちゃんが怖いとか言ってたらワロエル!!

 

「そろそろ寮に戻るぞ……。」

 

今夜も夜回り?そろそろ小説家にも役割を振ったら?

 

鼻で笑ったよ。

まぁあんなの徘徊させても、役にはたたないか。

 

さて、再びのトリック・オア・トリート!

 

「さっき飴をやったろう?」

 

いたずらしたい!

 

で、地下の教授室に入ったところで、くるりとセウェルスが振り返った。

すんげぇゴミを見るような目!

 

「君は馬鹿だろう?」

 

わぁどストレート!

 

「君は子供であるから、気持ちはわかる。

護符もあろうし、魔力操作も上達した。

だが、よく考えなさい」

 

普通にハロウィンしてるだけだもーん!

 

「……。」

 

んで、彼はどっかりとソファーに腰を下ろした。

疲れたのか呆れたのか

 

「いたずらしてみたまえ、何が面白いのか知らんが」

 

そう言うと顔を仰向けにした。

わーい!

 

で、己のフェネック耳をすぽっと取り去り、すちゃっと彼に着けてみた。

 

すげぇ黒い大きなお耳になったぞい!

猫?

猫に見える!

ふてぶてしい野良猫!

ボス?

ボスって呼んでいい?

 

耳が、イカ耳に!

わー!

 

「護符は、私と校長は除外されている。

決して私に、いたずらしたい等と言ってはならん。

仕置きをするぞ。

今はまだ、子供であるから大目に見るが……そうだな十五を過ぎてもこんな馬鹿げた事をしたら」

 

2人きりならいーでしょ!

 

「……確かにミネルバは、正しい。」

 

へへへ……お仕置きなんか怖くないもんねー!

 

「……」

 

なんで、そんなにどんよりするかなー?

 

「……」

 

写メ撮りたーい!

ちなみに、自撮りに護符は?

 

「どこまでが良いのか子供では判断つかなかろうと一律写してはならぬとは言ったが、君自身を含めて仲間内友人ならば反応はすまい。

グレンジャーあたりと楽しむ。

学校行事にて写すぐらいは、実は問題にならん。

あくまでも害意と知らぬ者に反応する。

拡散する、売ろうとする者など。

構築術の基礎部分が呪詛だ。

細かな指定ができるのだ。

ただ、どこまでと実際には確かめてもおらぬ。

写さぬがよかろうという話だ。」

 

じゃぁ2人で写真は大丈夫?

 

「……話を聞いていたか?」

 

ケモミミがへにょっと倒れた。

かわいー!

すごいなぁ。

これ、個人で違うだろう自然魔力の放出分とか利用してるんでしょ?

 

「市販のものに手を入れているが、よくできているな。

本来は個人の髪色に反応するような芸の細かなモノではない。幼児用品が元だろう。

……トリック・オア・トリート」

 

わ~い!

イタズラしていーぞー!

 

「そうじゃない」

 

って、更にどんよりして耳が再びイカ耳に。

ひゃぁ、かわいー!

で、イタズラ?

 

「飴をくれ、喉が痛い。

馬鹿の説教に疲れた。

ハロウィンに死者の宴に参加するとは、どれほど無知かを晒すものだ」

 

残念!

で、いつものキャンディを口に押し込む。

酸っぱかろう!

くしゃってなれ。

ならないんだよねー無表情。

んで休戦。

 

このケモミミ、幼児用ってつまり機嫌がわかるママアイテムか!

それはさておき、ハリー君達は、やっぱりマグル育ちだね。

こっちの常識を教育したほうがいいよ。

まぁそれが本来は防衛術の範囲でもあるんだけどね。

マグル出身の生徒にも、少し魔法界のお約束を教えておかないと。

ハロウィンに死者と交流するなんて、ホグワーツじゃなかったら危険だってね。

ホグワーツでの体験が、すべて現実の魔法界で通用するわけじゃないでしょ?

 

「そうだな」

 

お菓子を渡して去ってくれる幽霊ばかりじゃない。

ディナーやパーティーに呼んでくれる楽しい幽霊なんて稀。

ホグワーツと誓約を交わしたゴーストなんて備品でしょ?

 

「他寮は知らぬ子供ばかりか」

 

そんな感じだと思うよ。

スリザリンが特殊なんじゃない?

まぁ楽しく遊べるのは学生の特権だけどね。

魔法界をマグルの感覚で見るとエライことになるのは、理解しているよ。

すぽっとケモミミを彼の頭から取り外し、自分の頭部に装着。

ほれ、撫でるが良いのだー!!

 

「いたずら者め、いつか仕置きをしてやろう」

 

知ってるかい?

スリザリンの寮監先生は、梟用のおやつを常備してるんだぜ。

そしてね、小動物が怪我してると薬を分けてくれるのだ。

何だかんだ言いながら、魔法生物とか薬くれっていうと調合してくれちゃう。

猫をじーっと見ているのも、ワイ的には知っていたりする。

つまりケモミミカチューシャをつけると対応が優しくなるのだっ!!

……。

……元からアニマル扱いだったな、スンッって後でなった。

 

なんぞと笑えるハロウィンは終わったが、園丁の一人がホグワーツで行方不明となった。

森に足を踏み入れたようで、少し身が不自由な人だったので、早急に捜索する事となった。

森番の大きな人、魔法生物学のケルトバーン先生、そして魔法薬学教授である。

 

私も行くぞー!

動物とコミュニケーションとれるぞー!

って申し出たら、却下。

でも爺ちゃんが昼間だけならって許可をした。

週末まで見つからなかったら、授業のない日に同行すること。

セウェルスと離れないこと。

そして大人の言う事は聞くこと。

を、約束させられた。

 

ワイ、いつも素直じゃ~ん!

 

で、久しぶりに拳骨をもらう。

結局、園丁さんは見つからず、週末となった。

 

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