おとぎ話の末裔   作:C&Y

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ハリー・ポッターな世界なはずなのに、何か不穏なモノがクロスオーバー。
寮監先生と人外生徒の明日はどっちだ。
ほぼ、寮監先生の苦行でできています。
だってまだ未成年だもの。


うろ覚え転生でデッド・オア・アライブ ⑧

 申し訳ないと心から思う。

 きっと夢いっぱいの女の子とか、健全な精神の持ち主で、ハリー・ポッターの世界を愛する人が注入されていれば、感動していたと思う。

 

 そびえる岩屋に建つ美しい城、灯り、わくわくドキドキの子供たち。

 だって魔女っ子魔法使いになれるんだぜ!! 

 でも、この促成栽培中の私に宿るのは、ちっとも可愛くない女と超攻撃的な女の子だ。

 テーマパークみたいだなぁとか、その程度だ。

 情緒がおかしいのは、これも能力の抑制が残っているからだろう。

 

 そして残念なお知らせ。

 何が起きても、私にはわからない。

 イベントの意味も、そもそもハリーいるの? 

 試合終了のお知らせはいつ? 

 

 崖下に入り込む舟、石の通路、階段を上がる。

 そして木の扉が開かれて、マクゴナガル先生が登場だ。

 玄関広間の大理石の階段。

 見慣れた景色である。

 まぁここで暮らしてた訳だしね。

 

 そうそう、フィルチ氏とは、ご挨拶した。

 喋れないこと、スクイブの叔母さんと仲良く暮らしてたこと。

 事件で離れ離れな事を理解してくれて、寮監先生が思うより、穏やかに交流できた。

 少なくともミセス・ノリスにご挨拶を許された。

 

 そんな事を考えている内に、先生は一年生に、大広間に向かう前に、寮を決めなければならないと語る。

 生徒たちを控えの間にいれ、これから過ごす寮の事、規則やその他の説明をし、最後に身なりを整えて待つようにと言った。

 まぁ晒し者ならぬ、組分け帽子の儀式があるからね。

 

 こう、感動は、ないよ。

 ワイ、スリザリンだし。

 これでグリフィンドールになったら、ワロス。

 寮監先生大勝利。

 

 けど、そうはならんだろうなぁ、帽子、自分の間違いを認めないタイプだから。

 まぁ校長先生は仕込んでそうだけど。

 あえて寮替えしそう。

 言い出しっぺだしね。

 

 子供たちは、どうやって組分けするんだろうとワチャワチャしている。かわぇぇ。

 そして静かに佇む貴族家らしい子供たち。

 うむ、かわえぇ。

 皆、かわぇぇ、という危ない目線になりつつ、一番うしろでぼへぇっと立ち尽くす。

 と、頭上を幽霊の一団が通り過ぎた。

 子供たちは飛び上がって驚いている。

 

 私? 

 正直にいうけど、幽霊、怖かったのは最初だけ。

 なんだろうね、幽霊は人間だった。

 得体のしれないナニカじゃない。

 子供たちと修道士の、寮付き幽霊が話している。

 順応が早いのか、楽しそうだ。まぁ怯えきってる子もいるけど。

 私がぼんやりと見つめていると、ハッフルパフの幽霊さんが、挨拶をしてくれた。

 胸に手を当てて、古風な挨拶だ。

 私も、こういう時は気取って挨拶を返す。

 

 寮付きのゴーストさん達は、カテーシで返すと喜ぶのだ。

 グリフィンドールとスリザリンのゴースト二人は、どうやら私に似た人を知っているらしい。

 多分、父方の女性なんだろうね。

 貴婦人の挨拶を返すと、孫を見るように微笑んで喜ぶ。

 ただ、二人の生きた年代は違うはずだし、イングランドのどこの誰かは、まぁ聞いていない。

 二人とも血なまぐさい状態だしね。

 

 一人だけ、会った事がないのが、レイブンクローの灰色のレディ。

 私の力のせいなのかは不明だけど、彼女の姿は見たことは無い。

 そう、ホグワーツには幽霊がいっぱいだ。

 歴史のある古いお城だからね。

 他にも幽霊の教授もいるし、どこかのトイレには女の子の幽霊もいる。

 花子さん? かもしれないとちょっと期待してたが、どうやらホグワーツの学生さんのようだ。

 そりゃそうだ、妖怪じゃないんだもの。

 

 あと、ポルターガイストとも出会っていない。

 彼、彼女は、私を見ると逃げるのだ。

 何故かはわからない。

 フィルチさんが、ちょっと打ち解けてくれたのは、きっと彼に悪戯をしようとしていた場面で出くわしたから。

 彼の近くに物を落とそうとする何かがいた。

 別に私は驚きもしなかったし、声も出せない。

 単に出くわして、どうしたものかと見ただけだ。

 そうしたら、消えた。

 ぎゃーっていいながら。

 理由はわからない。

 もちろん消滅したわけじゃなくて、私が来ると場所を変える。

 意味がわからない。

 

 スリザリンの寮付きゴースト氏に聞いてもいいけど、なんとなく、寮監先生の眉間のシワが増える予感がして、今のところ聞いていない。

 そんな事を考えながら再び玄関ホールに戻り、列を組んで大広間へと向かう。

 いよいよ、組分けである。

 

 で、敗北。

 ハリー・ポッター君がいた。

 くせ毛の小柄な男の子だ。

 

 学校中がわく騒ぎ、生き残った男の子をゲットしたぜとグリフィンドールは大興奮。

 最後の頃になるとウィーズリーの双子の弟らしき子もグリフィンドールに呼ばれた。

 それぞれの寮に振り分けられた子たちが、それぞれに友達をつくらんと喋り、笑い、興奮している。

 

 良きことである。

 そんな事を考えながら、職員のテーブルを見やる。

 お初の教員がいる、大きな人もいる、そして寮監先生だ。

 昏い瞳は、グリフィンドールを見ている。

 そしてその隣が、新しい、彼より年下の教師だろうか。

 目が合う。

 

 薄い色の目。

 なんだかとても虚ろ。

 フッと、感じる。

 

 人々の歓声の中で、嗅ぎなれたニオイ。

 土とカビ、甘ったるい脂の臭い。

 

「皆さん、静粛に。

 では、最後の一人を呼びたいと思います。

 今年の新入生であり、ご家庭の事情にて入寮を早めていました、ドヴワティーヌ・葵、こちらへ。

 上級生の皆さんは、彼女を知っていますね。

 もちろん彼女がどの寮に組分けされたかも知っているのは当然です。

 この場をかりて、皆さんにお伝えしておきますが。

 彼女は、事故にあったため言葉に不自由をしています。

 ですが、皆さんの声は聞こえていますし、魔法を使う事に問題はありません。

 何か彼女に用がある場合は、彼女と同じ寮の者に先に声をかけるか、寮監を通してください。

 さて、本来ですと、入寮も果たされており、彼女に組分けは必要ありません。

 ですが、新入生としての経験は、誰しも一度きり。

 そこで改めて組分けをしたいと思います」

 

「やっぱりグリフィンドールに寮替えで!!」

 

 生徒からのリクエストに、マクゴナガル先生が反論した。

 素早く切り返したのは、同じような誂いを抑えるためだろうか。

 

「黙りなさい。

 組分け帽子が、選択を変えたとしても、それはそれ。

 止める事はありません。

 ですが誰も口出しすべきことではありません。

 彼女がどの寮になったとしても、心より歓迎してください」

 

 まぁ考えるまでもないんだけどね。

 

『そうかね? 

 君は、前回、間違いはあると言っていたではないか?』

 

 でも、帽子さんは間違ってなかったよ。

 そうでしょ? 

 

『そうだ』

 

 間違いじゃなくても、移す気ね? 

 

『移りたいのかね?』

 

 寮監先生は気にしないだろうけど、私が嫌よ。

 彼と念話が通じた意味がわからないんだもの。

 私、少しだけ思い出したの。

 

『愛ではないのかね?』

 

 寮監先生の言ったとおりね、帽子さんは間違えないけど、嘘つきだわ。

 愛、愛ねぇ。

 少しだけ思い出したのは、この力が愛じゃないってことだけよ。

 校長先生は、私をどっちに入れたいって言ってるの? 

 

『どうしてそう思ったのかね?』

 

 帽子さん、私、物語を知らなくてよかったわ。

 11歳のお誕生日の私は、選んだ。

 大切な家族を選んだ。

 それ以外、何も知らない。

 でも、きっと私の大切な事って同じだと思うの。

 帽子さんは言ったよね、望まなくても悪い事は勝手にやってくるって。

 なら、こう言うわ。

 

 最後は幸せになるお話が好きなの。

 だから、私を誰かの物語に巻き込まないで。

 

『間違いなく、君は』

 

 帽子を脱ぐと、何故か校長先生と目があった。

 彼はとても楽しそうだった。

 

 ***

 

 娘は優雅に膝を折った。

 校長にそうして挨拶をする。

 受けたダンブルドアは、片手で胸を押さえた。

 何をやりとりしたのか、堂々としたその姿は、貴族の姫君のようだった。

 確かに血筋はやんごとなかろう。

 彼女は、にっこりと微笑みスリザリンの席へと収まる。

 それまで猥雑に騒ぎ浮かれていた広間は、徐々に熱を落とした。

 生き残った少年の話題は未だに囁かれていたが、最後に組分けをした少女は、その熱を均した。

 

 美しさというのは、暴力だ。

 貴族が容姿の優れた者と縁を結ぶのは、好き嫌いではない。

 美しさは力であるからだ。

 もちろん、美しいとは、逆に負の感情をも引き出す。

 

 すでにスリザリンの新入生の女生徒達は、彼女の幻のような姿に敵意を見せていた。

 上級生たちが寛容だったのは、ある程度、彼女の出自が古い純血達から好評だったのもある。

 そう、彼女の父親の系列は、非常に古い人間に特別視されていた。

 美しさだけ、でだ。

 

 ダンブルドアが掘り返してきた家系図は、当の少女の内面とはかけ離れた陰惨極まりないものであった。

 彼女の血は、まさに昔話で言えば、ドラゴンに捧げられた生贄のような具合いだ。

 そして近年になればなるほど、よろしくない。

 が、ある意味、その迷信に助けられる部分もあった。

 

 彼女を自分たちの血に引き入れる事を、皆、古い者ほど恐れた。

 懐かしくも素晴らしいとしながらも、恐れた。

 美しさは力であるが、悲劇を呼ぶとわかっていれば、誰も手を伸ばさない。

 愚か者以外は。

 

 そしてマルフォイ家の惣領は、息子に言い聞かせているだろう。

 美しい姿だが、あれは人間ではない。

 友誼を結ぶのは良きことだが、妻や妾に選んではならないと。

 もちろん、戯れに恋人になど選んではならぬとまで。

 聞き分けの良い息子は、素直に納得しただろう。

 

 だが、そんな思惑は他の古き血以外の娘や息子、親にはわからない。

 古き血とは、大方が既に歴史のみとなった家々の者たちである。

 しかし、そうした者共の知恵や記憶を利用できるのは、やはり力ある純血の家だけだ。

 重要な、そして避けねばならぬ事柄に関しては、彼らの忠言は絶対だ。

 

 それでもだ、魔物は人の知恵など嘲笑い蹂躙していく。

 証拠に、父親の忠告に納得したであろう賢い息子は、言葉を失い、ちらちらと彼女の姿を眺めている。

 まぁそれは同じ寮の少年達も同じで、先に彼女と過ごし慣れた者でさえ、大した差はない。

 そして歳があがるほど、それが何を意味しているのかを自覚し、慎重に振る舞う。

 だが、雄であるかぎり、馬鹿をやらかす危険は常にある。

 

 それは傍らの不快な男も同じであるようで、しきりと彼女が何者かと聞いてくる。

 ならば校長に聞けというが、吃り弱気な風情なのに、中々にしつこかった。

 まぁ、この男のオカシサを、今、究明し糾弾する訳にもいかない。

 お好みの脚本というものがあるのだ。

 

 そう考えただけで、彼は全身が倦怠感につつまれる。

 あぁ最後までたどり着けるのかと、道化としてどれほど踊れるのかと。

 

 灰にも見える銀色の髪は、青みを帯びて光に滲む。

 瞳の色も独特であり、覗き込めば、やはり光りに滲むようだろう。

 裸眼を覗き込むたびに項が痺れるのを覚えている。

 なにもかも淡く滲むようで、すこし暗い色めの柔肌でさえ、人間離れしていた。

 

 毒だ。

 感覚を想起しただけで、体の熱が上がる。

 憎悪と狼狽を打ち消す為に、感覚を少し追う。

 人間は、所詮、獣だ。

 そうして意識を不快な現実から逃そうと、彼女の意味の無い微笑みを見る。

 

 あれは何も考えていない。

 忠実に彼の言葉を守っているようだ。

 言質を取られぬように、何もかも曖昧にやり過ごす。

 

 ほら、愛想笑いで世間知らずのお坊ちゃまが沈んだぞ。

 側近にもなれそうにない食い意地のはった少年達でさえ、なにやら挙動が可笑しい。

 そして笑える事に、彼女は彼らをまるで幼子のように思っているのだ。

 妖魔の血、魔法生物の血とは、なんと罪深いものだろうか。

 

 視線を戻す。

 件の少年を見やり、過去の痛みを探すが、見つけたのは断片ばかりだ。

 吹き出すような血の痛みはあれど、思うより、苦しみが減じている。

 閉じた心の隅で予想以上の効果を考える。

 

 過去の滲む血を舐め、考える。

 己の忌まわしさ、黒い記憶、憎しみしかない男と仲間の顔。

 いずれもが過去の自分も含めて打擲してくるはずなのに、凪いでいる。

 後悔の泥に沈んでいるのは変わらぬのにだ。

 

 魔物め。

 

 ふっと笑いが漏れる。

 嫌悪と憎しみを手にとり眺めた。

 乱れていた感情を整える為に。

 

 お前は塵だ。

 お前を裁く者が前で膝をつき、赦しを乞う事も出来ぬ塵だ。

 愛を殺したのは、お前自身だ。

 憎い男に似た欠片を拾い集め、怒り、この憎しみは正当であると、己にさえ嘘をつく。

 塵らしい卑怯で醜い有様だ。

 お前が下劣で卑怯なのは変わらない。

 

 お前を罰する者は天の門をくぐってしまった。

 美しいすべては去った。

 残された子は許しではない。

 常にお前を打つ鞭だ。

 己は赦しを得てはならない。

 怒りを見せて憎まれろ。

 

 ただし、憎しみという甘えに全てを落とし込んではならない。

 愚かにも人間らしい心を求めて間違いを繰り返すな。

 

 お前は塵にすぎず、獣であれ。

 常に鞭打たれ、己が内臓だけを腐らせろ。

 誰にも悟らせるな。

 闇に、愛する人の血を渡すな。

 美しい人の欠片も渡してはならない。

 誰にも、誰にも売り渡すな。

 

 そしてこの心の動きも見せてはならない。

 そう、今も見ているだろう相手には、表層の安い憎しみを見せておけ。

 

 閉心術に魔力抵抗、肉体の感覚を切り離す。

 彼女の力を、その籠絡の囁きを想起する。

 完璧な力の理論として。

 

 感覚を抑え込み、微細に侵食してくる魔力を、他人の魔力を操作する。

 彼女の真似をする。

 稚拙だが、実に見事な偽りを整える。

 魔力が見える相手や、開心術を多用する相手には有効だ。

 幾度となく娘に歌わせ侍らせた成果である。

 実際、厄介な能力とされているが、彼にとっては有用だった。

 

 トリガーが、男の本能だ。

 疑われずに使える。

 開心術の巧者を上回る者は、覗き見られる事をよしとする。

 よしとし、見られても良い記憶を並べる。

 頑なに閉じる事は、凡庸でもできよう。

 不意をつかれ崩れる程度の閉心は、凡愚の業だ。

 だが、巧者は見せてこそなのだ。

 

 相手が信じる事を見せる事。

 

 それこそが閉心術の極みだ。

 そして選んだのは、彼女の魅了を受けての、服従だ。

 彼女の魅了というスキルが狂気的魔力操作によるものだと分かって以来、ずっと考え続けていた。

 

 不自然でない閉心術を上回る隠蔽と偽装ができるのではないかと。

 閉じて隠すのではない。

 閉じたくても隠せなかったと思わせる感情を並べるのだ。

 そして不本意ながらも、混じらせた魔力の流れさえも利用できるとは皮肉である。

 

 己の醜さに反吐が出る。

 

 誰も疑わぬだろう。

 そもそもが、ろくでなしの評価だ。

 下劣な想像をさせれば勝手に見誤る。

 魔力の流れが見える者、相手の内側を見ようとする者ほど、魅了された獲物の姿だけが見えるのだ。

 前提として、彼女が生存し側に置かれる事になるのだけが問題だ。

 

 つまり巻き込むのが条件だが。

 だが、繰り返し慣れれば、いずれ別の女の魔力でも応用可能だろう。

 まだまだ修練が必要であり、傀儡の用意も必要である。

 その傀儡たる魔物を用意できるかは、はなはだ疑問だが。

 

 ともかく、彼女を側における間に、完全に馴染ませねばならない。

 意識無くとも、心を傾けているかのように。

 それも帝王からの支配の邪魔にもならぬ、干渉としてだ。

 残念だ。

 もっと早く、この方法を学べなかった事が。

 ただ、毒のない女など、そこらにいるわけもない。

 完全な毒婦であれば、そもそも考えもしなかった手段だ。

 幼く未熟だからこそ、とれる手段でもある。

 だからこそ時間を区切る必要がある。

 

 優しさから手放すのではない。

 毒婦になる前に、手放さねば面倒だからだ。

 それに彼女の代わりを作り上げるにも時間がかかるだろう。

 傀儡に選ぶ女の場合、そもそも魔力の相性から探さねばならぬ。

 ましてや不快を覚えぬ女、使い捨てる事が前提の女で、面倒がない者を探す、秘密が漏れぬように? 

 秘密とは、皆が知っている話である。

 そう、自分が血迷う信憑性も必要になるだろう。

 闇の者ならば、なんら気にもかけずにすむだろう。

 だが、不快極まりない者ばかりが頭に浮かぶ。

 

 と、実に、人でなしの考えに自嘲する。

 娘にも忠告をしたが、そうして利用するのは男であり、彼女の優しさや評判を顧みない酷い行いである。

 せめて彼女が為に、何かあればと動いてみるも、それも彼の偽装の糧にしかならなかった。

 そして己が役割を担いながら、魅了持ちの魔物、魔物のくせに健気な己を隠そうとする娘が、生贄の血にふさわしく、不穏な先が思いやられる。

 そう、娘を死に至らしめる行いをしたい訳では無い。

 

 できれば、今すぐにでも側から消え失せろとも思うのだ。

 美しさとは、痛ましい事なのだ。

 血も涙も無い男とて、美しい生き物を自らの手で殺すのは嫌だった。

 苦しめるのは厭わなくとも、だ。

 

 そう苦しめるのは厭わない。

 美しい生き物を苦しめる行為、それも己の手で苦しめる行いは喜びだ。

 塵のような男は、常に下劣なのだ。

 

 そしてダンブルドアの思惑も、崇高であっても所詮、男の考えだ。

 己のような獣を側に置く意味など考えるまでもない。

 魔力を繰り返し馴染ませ、拒絶しない意味も予想しているだろう。

 そのうえで、彼女を何に使おうとしているのか。

 

 闇の動きに餌とするのか。

 自分の出方を見るつもりか。

 まぁ何でもいいのだろう。

 

 あの男そっくりの少年を再び見ると、怯えたように視線を逸らされた。

 時は流れたのだと感じた。

 己が罪は未だあるのに。

 再び、彼女を見る。

 

 子供らしさは消えていた。

 セストラルが見えると言う。

 マグル界での出来事に、まだ何かあるのだろう。

 ああして成長したのも、恐れからだ。

 誰が、彼女と叔母を襲ったのか。

 まぁ己が役目に、彼女は含まれていない。

 

 ただ、魔法族がかかわっているなら、やはり調べねばならない。

 闇の者の誰が関わっているだろうか。

 厄介な事ばかりだ。

 だが、彼女が卒業するまで、この遊びは続けていたいものだ。

 

 まぁ叶わずというなら、それまでに逃がしてやれば良い。

 つまり、それまでは逃がしてやれないという外道の目算でもある。

 子供が信じる嘘に合わせるには、魔物の毒を食らわねば耐えられそうもなかったからだ。

 どちらにしろ、ろくでもないと彼は己を嗤った。

 

 ***

 

 なんか、また面倒くさい事、考えてそ~だなー。と、寮監先生と見つめ合う。

 

 わかってるよ、わかってる。

 まぁ何か別シナリオ開始しちゃってんでしょ? 

 うん、おとなしくしてる。

 

 同級生の女の子、キャワワ。

 同級生の男の子、キャワワ。

 

 とか、脳内アホにして過ごしてるよ。

 そいでいつも通り、自由な校長が自由に校歌を歌わせて終了。

 

 それぞれ監督生につれられて、寮へと向かう。

 とグリフィンドール生達の流れの方で、なにやら騒ぎが。

 スリザリンの寮付きゴーストを呼んでほしいとか? 

 子供たちの一番うしろにいた、私。

 

 何だろうと、まぁ何の気無しに振り返る。

 おぅ可愛くてちっちゃな一年生達、って私も一年だけど。

 等と脳内にツッコミをいれる。

 そしてハリー君とお友だちの集団に、なにやら襲いかかる物体。

 

 ん? 

 ポルターガイスト氏? 

 ん、なにしてる? 

 何してんの? 

 子供に? 

 なにしてんの? 

 

 無意識にグリフィンドールの集団に近寄る。

 

『ぎゃーこっちくんな、こっちくんなー!』

 

 男の子とも女の子ともつかない声がした。

 悲鳴である。

 

『こわい、こわい、こわいー』

 

「なんだかわからないが、ピーブスが騒いでる内に行くぞ」

 

 グリフィンドールの監督生らしい少年が、一年生を促す。

 ハリー君は不思議そうにしながらも、皆といっしょに流れていった。

 

 いや、双子、こっちみんなよ。

 わかってるって、私の所為らしいけど、心当たりねーから。

 教えろ? 

 やだ、寮監先生を通してアポイントしてくだされ。

 

 という意味な感じで手を振った。

 そして振り返ると後ろには黒い吾輩氏。

 

「何をしている、自分の寮へと向かえ。一人になるな」

 

 ポルターガイストがどうして逃げるのかと。

 ワイ、かなちぃ。

 

「男爵、お心あたりは?」

 

 フワッと白い影。

 独特のファッションに身を包んだスリザリンの寮付きゴースト氏が現れる。

 

『まぁ多分、修道士殿が忠告を』

 

「どのような事かお教え願えまいか? これの保護者として把握しておきたい」

 

 それに男爵はウムと頷き答える。

 

『古き東の国にあった話をば言い聞かせましたかな。

 瑞獣である女性に化ける獣がありて、それを怒らせた者は、生者死者とわず苦しみを与えられるとの話をばひとつ。

 他には、そうゴースト仲間でも覚えている者を集い語らい合いましたか。

 まぁ彼女の前である貴婦人たちもそうでありましたが、少しでも煩わしい事をすれば、冥府から蘇りし騎士が現れ相手を滅ぼすまで付き纏うと、覚えている限りの話を』

 

 寮監先生どういう事? 

 

「年寄りどもの昔話、君の家系の因縁話を時間の許す限り、愚か者に話し続けたのだろう。

 あまりにも無惨な結末ばかりを聞かされて、君の姿を見るだけで恐ろしくなるのだ。

 まぁ気にする程の事ではない。

 煩わしい事がひとつ減っただけだ。

 男爵殿に礼を述べるといい」

 

 ありがとうございました? 

 

『礼などいらぬ。礼儀を知る騎士、紳士ならば麗しき貴婦人をお守りする事は当たり前である』

 

 で、どういう事? 

 

 去っていくゴースト氏を見送り、いつの間にか人けの失せた通路を歩みながら寮監先生に聞く。

 今頃、寮のお部屋の割り振りとかで盛り上がっているんだろうねぇ。

 私? ぼっちですが何か? 

 

「父方の血筋もそうだが、母方の血筋が強力であると知ったのだろう。

 最初にその血の恐ろしさを昔話にして、イタズラ者に聞かせたのだ。

 そして父方の親族を知るゴーストを仲間に加えて、君になにかをしたら、八つ裂きにしてくれると脅した。

 そういう訳だ」

 

 あーそれは。

 幽霊にお礼って何がいいんですかね。

 

「時々、気にかけて微笑み、年寄りと同じく長話に付き合ってやれば良い。

 抜け出せぬ時は、例の笛を吹けば、ナニカが来るだろう」

 

 校長先生とか? 

 出した先例に、寮監先生の眉間にシワが寄る。

 

「ともかく、同じ学年の者と行動しろ」

 

 そうして寮に押し込まれた。

 談話室にいるメンツ、先輩方は慣れたもので、寮監先生に挨拶をする。

 新入生の子たちは、不思議そうだった。

 

「副校長も言ったように、彼女は発語に問題がある。

 意思疎通には筆談、聞き取りは問題ない。

 同じ授業の時は、一人にしないように気にしてやってほしい。

 特に、グリフィンドールは彼女を誘拐したがる。

 声を出せない分、何があっても中々気づかれない」

 

 と、言う説明に、一年生が慄く。

 どうして慄いたのかわかる。

 

 寮監先生、それだとすごい犯罪な感じに聞こえる。

 

 それがどうした? 

 と、いう顔を見上げて、思わず頭を振る。

 

 カキカキ。

 意地悪じゃなくて、遊びに誘ってくれる。

 入学後は無いと思う。

 あまり気にしなくても大丈夫。

 

「大丈夫じゃないでしょう! 

 寮替えとか言っていたのは、そういう意味なんですか? 

 やだ、先生、彼女、駄目な人ですか?」

 

 と、カワワな女の子が、ぎゃーって感じで言った。

 怒ってるの? なんで。

 

「これが普通の反応だ。

 グリーングラス、この見た目はフェイクだ。

 中身は残念極まりない。

 事情を理解している上級生に問題があればすぐに報告を、皆もいつも通り、問題があれば、どの教師でも構わぬ、報告をお願いする」

 

 と、言って去っていく吾輩氏。

 取り残され、お姉さん方に頭を撫でられる。

 

「彼女は、寮監の預かりよ。

 問題があれば教授に申し送りしてね。

 寮生徒は問題を起こす事は無いと信じているわ。

 しかし他の、特に最近のグリフィンドールは乱暴な子が多いの。

 彼女は叫ぶ事はできるけど、それでもね」

 

 と、いつもお世話になってるファーレイさんにギュってしてもらう。

 そんな監督生の言葉に、カワワな新入生の女の子の一人が、嫌そうに言った。

 

「私達、関係ないじゃないですか。迷惑なんですけど」

 

 おう、キツめの可愛い頂きました。

 どんとこいですわ、どんどん罵って。

 そんな邪念がわかったかのように、彼女が指さして言う。

 

「特別扱いとか、何様のつもり? ちょっと美人だからっていい気にならないでよね!」

 

 ビシッと指を突きつけられる、ワイ。

 なんだろう、ちびっこい女の子のきぃーっって可愛いわー。

 

「スリザリンは仲間同士助け合うんだ。

 それに彼女はイギリス魔法界の純血ではないが、古い血筋に変わりない。

 証拠に彼女の親族は、純血貴族のいずれかに入っている。それもあらゆる古い血筋にだ。

 たどれば純血貴族の殆どが親族と言ってもいい。

 何様と言われれば、他の寮生から姫様と呼ばれ揶揄われているが、あながち間違いでもない。

 マルフォイ家の方々なら、何か言われているんじゃないかい?」

 

 と、言葉を返す監督生男子。

 それにマルフォイと呼ばれた少年は頷いた。

 

「敬意を払えと」

 

「そういう事だ。

 それに言うほど、彼女は面倒をかけないだろう。

 むしろ君たち一年生にちょっかいをかけてくる輩を振り払ってくれるだろう」

 

「どういう意味ですか?」

 

「まぁ一緒に行動していればわかる。では、それぞれ自室にて明日の準備をし就寝するように、解散」

 

 んで、一応、女の子たちと挨拶。

 メモに女の子達のお名前をもらう。

 ぷりぷりツンツンしてる子達だったけど、その後のマルフォイ君の態度で少し軟化した。

 

 少年は、私との距離を一定に保ち、まぁほどほどに仲良くしようと告げてきた。

 友達ぐらいだったら許容範囲、あと、僕に近寄らないでね、ヨロって感じ。

 あれは、ナマハゲと子供の距離だった。

 それか野生動物どうしがファイトする距離感。

 近寄らずぐるぐる、一定の距離をあけて歩き回る感じだ。

 

 ひでぇ、危険物かよ、ワイ。

 まぁおっかけて泣きべそをかかせたくなったが、寮監先生にお説教されたくないので、我慢。

 

 子供らしさって何? 

 ワイ、そんなに恐ろしげなん? 

 って迷走する事暫しである。

 だもんで、ワイの本性と言うか、性格が何ともショッペェ事実は自然に漏れるわけで。

 女の子の見る目に、哀れみが混じるのも早かった。

 

「アンタ、馬鹿でしょ?」

 

 ツンツンしているパーキンソン嬢が言う。

 因みに、どの女の子もカワワで美人だった。

 そいで11歳少女なのに、徒党を組んでマルフォイ君狙いでグループを組んだ。

 

 もちろん、ワイは種別が違う。

 一週間と経たずに、ワイだけ、本当に別の生き物扱いに。

 解せぬ。

 

 と、ボヤいてメモ書きを投げる。

 その内容を見たグリーングラス嬢が、馬鹿にしたようにメモ書きを投げて返してきた。

 

「教授と並んで違和感の無い貴女と、私達を同じ生き物にされたくないわ。

 教授は私達の親でも良い年齢よ」

 

 いや、寮監先生、実はあれでも三十になったばかりっすよ。

 という心の声は出さない。

 老けてるっていわれてもーこれ、しょうもないしーみためはー十代をキープしてる所存。

 

「ともかく、パンジー達も納得したんだから、余計なチョッカイをあの集団にするのはやめてよね。

 マルフォイ君の目が、スネイプ先生と同じにシヌから」

 

 と、こんな感じで寮内での女子派閥に一応馴染めたが、一部グループからはハブられた。

 かなちぃ。

 何を納得したのか、なぜ、別種扱いに落ち着いたのかは謎だ。

 

 そして寮監先生といえば絶好調らしく、オラオラでハリー君とも揉めていた。

 たぶん、今週末はお歌をうたってあげようと思う。

 

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