寮監先生と人外生徒コンビの明日はどっちだ、賢者の石編。
R15と残酷描写は、予防措置と寮監先生の苦行成分でできています。
P・グレイブス氏なる人の、署名が入ったお手紙が届いた。
朝ごはんを食べていたら、梟がポトッと手紙を投げ捨てていく。
いや、お返事もそうだけど、梟さん、お礼のジャーキーぐらい受け取っていきなよ。
えっ、忙しいの?
遠き場所から来たし、上座の偉そうな魔法使いに痕跡辿られたくない?
やだ、どこから来たの?
と、謎梟さんと交信してたら、校長がヌルっと梟を捕まえた。
因みに、鳥類との念話ができるようになった! テレッテッテー
猫様とお話したいのにぃ。
どうやら人間以外だと、ヤバい能力は乗らずに、ふつうに意思疎通がなんとなくできるようだ。
動物ハーレムはつくらずにすんでいる。
でも、動物、それもそうとう意識、知性が高い子じゃないと、やっぱりお話は難しい。
魔法生物系の血が混じってる生き物だといける。
最近、ますます人間の規格から落ちていく気がする今日このごろである。
アップデートではないのは確かだ。
才能が怖いというより、自分、大丈夫なのか? である。
「ドヴワティーヌ嬢、安全の為に、手紙の検閲をしてもいいかね?」
いや、もうそれ、どう考えても拒否権無いやつじゃん。
なので、どーぞどーぞと身振り。
校長と寮監先生は、食事の途中だと言うのに大広間から消えた。
マクゴナガル先生、その他がワイを見る。
わかんないっす。まじわかんないっす。
お外に出てないので、わかんないっす。
わかりました。寮監先生を問い詰めますという、アイコンタクト。
そいで、ターバンの先生が何気にキモい。
防衛術の先生だが、何故か避けられてるのに観察されているという。
今度、マクゴナガル先生にチクろう。
寮監先生だと、シリアスになりそうだから、今のところ報告していない。
あぁマクゴナガル先生の方がヤバいか、保留保留。
「アンタ、何かしたの?」
安定のパンジーちゃんの不審な眼差しゲット。
してないよーって首を傾げたら、
「かわいこぶってんじゃないわよっ! この、このっくっっ」
「ブスって言えないジレンマ、わかるけど、やめなよ。
彼女をブスって言ったら、私達何になるのってブーメランよ。
ゴブリンとかガーゴイル?
笑えないわーまぁそもそも一年生に見えないし、もう、別枠なんだからいいじゃない」
で、スリザリンのテーブルの席は、いつもカワエェ女の子に囲まれている。
一度、少年たちが隣に座ろうとしたら、何だか、ぶっ飛ばされていた。
マルフォイ君は最初から一番遠くに座る。かなちぃ。
そしてグリフィンドールのハリー君&親友らしきウィーズリー弟君と、楽しそうに煽り散らしあう。
なんだろうお家芸なの?
スリザリンとグリフィンドールは、顔を見ると煽り散らし合わないとシンじゃうの?
そいでスリザリンのお嬢様でも、パンジーちゃんは特に沸点が低い。
ついでに私を構い倒してくれる。うれちぃ。
「やっぱ、アンタ、バカでしょ。あー、イライラするぅきぃぃ」
うんうん、かわえぇね。
「いつもいつも、笑わないでよ、バカにしてっ」
うんうん、元気でえぇねぇ。
「多分、バカにしてるのは当たってると思うけど、貴方の事、大好きじゃないの?」
うんうん、パンジーちゃんも好きだけど、ダフネちゃんも好き。女の子だいちゅき。
「オカシイでしょ、それとも私がオカシイの?」
たいした煽りではない。
そいでマルフォイ君とハリー君のじゃれ合いも、マグルのプライマリー経験者からすれば、お遊びだ。
へいへい、今日も元気してるぅ〜オレっちイケイケだぜ、負けねぇからなぁ〜!
で、時々、ジャブジャブで、お互いの家の事とか、ほんとうにしょーもない事をあげつらってじゃれ合っている。
マグルの下町だと、もっと野蛮で酷い。
カツアゲから始まるコミュニケーション。
靴のサイズ聞いて、俺にぴったりのサイズだぜ、ほら、脱げよぅ〜が標準。
「すごいのね、マグル。悪魔だわ」
「信じちゃ駄目よ、先生が言ってたでしょ、見た目に騙されちゃ」
ほら、ポケットの中身出せよぅ、ほら、飛んでみろよ、そこで、はねろよぅ!
へいへい、小銭を落とせよぅ、ちっちゃいお財布ちゃん!
って言われるかもしれない。
「嘘でしょ、なに、それ強盗じゃない?」
で、メモ書きを読み上げていたダフネちゃんが、顔を青くする。
「ポッター、そうなのか?」
それまで言い争っていたマルフォイ君が、マグルって悪魔なのか? と思わず聞く。
言い淀む、ハリー君。
まぁ下町の、ガラの悪い場所だとあるんで、嘘とも言い難い。
じょーくだよー
「アンタね、本当に質悪いわ」
で、ハリー君、困り顔のまま、どうしようって感じに。
マルフォイ君も、私渾身の真顔ジョークに引きつっている。
すまねぇ、ごめんね。
妙な空気になって、彼らの言い争いというかじゃれ合いは終了。
なんだろう、この空気。
「駄目よ、葵。
グリフィンドールに関わっちゃ。ほら、双子がまた、こっちに来たそうにしてるわ。
誘拐されないように、気をつけないと。
貴方達も、気に入らないことがあっても、無視しなさい。
あぁそれから、マーカスが、練習を見学したい場合は、先に言ってほしいそうよ。
一年生で、勝手にグラウンドに入ると、怪我しちゃう事もあるからって」
んで、数日校内オリエンテーションみたいな事が続いて、昨日から授業が始まってる。
授業カリキュラムとか寮生活のあれこれとか一年生への説明で終わる。
実はクィディッチなるスポーツに勤しむ生徒は、食事もそこそこに授業前の練習とか、用具のお手入れとかで忙しかったりする。
二年生から参加。
まぁ超人気スポーツだ。
マグルでいうフットボール、野球、バスケのように、プロスポーツ団体まである、メジャースポーツらしい。
箒に乗るスポーツ。
うん、私は応援だね。
高いところ嫌い。
そいで、でっかくて大柄な男の子のマーカス君がスリザリンの選手。
そして例の、私の能力の試験紙となったウッド少年はグリフィンドールの選手だ。
因みに、ホグワーツにもクラブ活動なるものがある。
梟使い同好会、ゴブレット同好会、スフィンクスクラブなどである。
ゴブレットはアーティファクト研究会かな。
スフィンクスは技量向上の自主学習会。
そして梟は、そのままだよ、鷹匠って感じ。
まぁこれは個人の解釈だよ。
で、他にも色々同好会やクラブがあって、先輩や友達から勧誘をうけるんだよ。
そして相変わらず、私は地雷、ボッチであった。
いや、まだ入学したばかりじゃん。
ちがうよね? 避けられてないよねー?
そんな若干のボッチ臭を漂わせながら、授業がはじまったわけだけど、四寮一年生の生徒数の関係で合同授業になる。
プラス面は、競争による向上心とか協調性を育てる。
マイナス面は、敵愾心と対抗意識をモリモリに育てる。
寮ごとに得点を競ってるから、そもそもバチバチだ。
まぁ混合で顔を合わせれば、同じ学年の誰が誰だというのがわかるようになるし、悪いことばかりではない。
他寮にも友達だってつくれるわけだしね。
ただ、険悪な雰囲気になる事もあるって話。
んで、スリザリン、グリフィンドールと絡むことが多いんだよね。
つまり主人公ハリー君との遭遇率が高い。
気の所為?
そうでもないと思うよ。
ハリー君、親友の少年少女とマルフォイ君&おつきの男の子二人が出会って、ファイ!!
を見かける事、数度。
もう数え切れないよぅって感じ。
まだ入学式からの最初の週だよ!
関わらないようにしなきゃね〜そいでどっちの味方をしないように、しなきゃね〜って、ワイ漂うわけよ。
で、本日の授業の位置取りを考える。
しょっぱなから、授業内容じゃなくて、位置取りな。
ワイ、高身長、前の席はアウト。
後ろの席とか通路側、だめだ、なぜかハリー君とかマルフォイ少年に近くなる。
取り巻きの位置関係と主役スポットな。
どーしよーもない!!
仕方がないので、教壇側入口近くの壁側に座る。
今日はドキドキ魔法薬学だっ!
隣に座るのはダフネちゃん。その隣がノット君。
穏やかな雰囲気の、無口な少年だ。
因みに変身学は、他の寮も混じっての合同だった。
できたのか?
できましたよ〜、マクゴナガル先生のお題をこなし、マッチ棒を針に変えるのはできた。
その後、杖がちょっと加熱して、もっと遊びたいのぅって感じになったのは内緒である。
呪文は歌、呟きとハミング混合が許容範囲なのである。
どこまでが歌混じりで呪文になるのか、微妙だったけどね。
ゆっくりとした曲調、ハミング、色々試して、呪文の正確なイントネーションが、どこまでの幅で許容範囲が設定されているかを、出題されるであろう呪文で試してみた。
もちろん、寮監先生の立ち会い、例の面談でだよ。
先生も、歌、言葉、発語の何が血の力を乗せる、魔力に影響を及ぼすかを記録したいとかいい出して、時間をとってくれた。
回数と時間減らすとか言ってたんだけどね。
実験は別らしい。
「君たち、薬学対策してきた?」
そのノット君がぼそっと言う。
私の世話担当という生贄になっているダフネちゃんが、肩をすくめた。
「教科書も読み込んだし、要点は記入済みよ」
「なら、いいや」
「あぁ、葵は彼に話しかけないで、彼にやっと組んでもらったんだから」
ひでぇ、どういう事?
「跡取りやマグル出身だと、問題がありすぎるから却下。
純血で残ったのが、俺だけ。まぁ、そういう事。
話しかけてもいいよ、どうせ、後で吊し上げだし」
「ごめんね」
何がどういう感じ?
「お達しが出ててね、半純血は駄目とか、跡取りは駄目とか、年寄りが煩くて。
俺のところはマルフォイ氏、父親の方ね、彼女が困らないようにって言われてるし。まぁいいかなって」
ごめんね、知らぬとは言え、貴族コエェヨ。
ワイの父方の先々代あたりに、強火の追っかけが多数ありらしい。こぇぇ。
「俺は、特に問題はない。
勉強の邪魔されなきゃね。
姫は頭も悪くなさそうだし、純血貴族の血でもある。
年寄りたちが騒ぐのも、君の先々代のファンみたいだし。こっちも利益がないわけじゃない。
勉強に差し障りがなければ、気にしないさ。
で、姫は、魔法薬学の準備は大丈夫?」
着席してればいーんじゃないの?
つーか姫プレイしてないしー?
「怒涛の質問が飛ぶし、今日の分の予習はすませてないと駄目だよ。それに実践授業だ。
姫、あぁ愛称?
何かさ、年寄りは姫? こっちの王系列の年寄りが言ってるから。いーんじゃない。
何か買ってもらえば?
それから魔法薬学は、何某かの成果物の提出と片付けまでが評価対象だよ。平気?」
うーん、実は、魔法薬学の教科書は読み終えている。
そしてそれに付随する書籍も読み終えている。
さらに言えば、素材の図鑑にも目を通している。
なんなら吾輩氏に言って、上の学年の教科書も借りた。
教科書間違ってやんのーって記載があるからなって、授業はきちんと受けろと言われている。
何しろ実践はまだだ。
そして私は薬を売って暮らすのが目標。
財産はあるけどね。
とか答えずに、微笑んでおく。
つーか見も知らぬ年寄りが強火担。うれしくない。
「これって肯定、否定?」
「気にしなくていいわ、気にすると負けよ」
そいで授業。
初っ端から、吾輩氏、ハリー少年を大人げなく煽り散らす&エキセントリックに罵倒する。
すげぇ。
何がすごいって、本気で憎いって風の感情があるのに、中身は静かだったから。
本音と嘘がわからない。
まぁ彼が言っていた通りだ。
人間って面白いなぁ。
それからグリフィンドールの雰囲気は見事に悪化。
対するスリザリンも、悪い方に高揚。
寮監先生の話術がマッハで光り輝く。
舞台であれば、私は立ち上がって拍手をしているところだ。
なぁいす、ひーるぷれい! ぶらぼーぶらぼー!!
喋り方とか、何あれ、ワロスワロス!
まぁ子供だと怖いだろうし、腹も立つよね。
これでワイが何かしたら、吾輩氏、速攻で私を片付けるだろう。
まぁ嫌味で沈めるより、保健室あたりに送り出されそうだ。
なので、お口チャック。
授業は受けたいしね。
これがさ、態度は大人げないのに内容はまともで、実は、煽りとかを抜かせば妥当な事を指示していたりするのである。
授業内容だけが真っ当とか、もうね。
わかってる少数、多分、先輩方とかに教えてもらってる子は、授業の内容だけに集中している。
魔法薬学の授業は癖があるぞっていうね。
吾輩氏ある程度、認知度があったりする。
そもそもね、ちょこっと大人目線だと、彼、超一流の魔法薬学教授だったりする。
子供相手だと溝泥評価でもだ。
んで、彼に注意しろ! とか、真面目にやれ! とか、教師の話を聞けってのは、妥当な事なんよ。
事故ってひとり医務室に行ったように、予習して先生の注意を聞き、記録した上で、集中して作らんとヤバいって事。
他の授業もだ?
それでもだよ、ちょっと冷静に考えればさ、他の授業より手間暇がかかった授業準備が必要な教科なの。
材料を消費してるんだよ。
それも先生が用意して準備した素材を使うのよ。
それをいい加減な事して、失敗すればゴミにするんだよ。
よくよく考えろよガキどもがって、先生の立場だと思うのさ。
真面目にやれよ、良く考えろってね。
危険な化学の実験で遊ぶんじゃねぇよ、気構えから間違ってんぞ。
これな、寮監先生のお言葉、嫌味と憎しみ風味を抜かすとね、間違ってねぇのよ。
まぁ嫌味と意地悪に誤魔化されて、子供は学ぶどころじゃないけど。
これじゃぁ薬学嫌いになるってのの見本。
つまり吾輩氏、思わず素で憎しみの感情を垂れ流した風だけど、目的は達している。
ハリー君は、彼を嫌いになった。
嫌われたい理由ってなんだろう?
それとも単に大人げないだけ?
まぁその可能性もあるだろう。
でもねー視界にある限り、感覚は微かでも、繋がっててね。
ちょっと苦笑、何だか胸が苦しくてね。
提出物が完成し授業が進むにつれて、更にヒールプレーが加速するんだよ。
相変わらず吾輩氏の捻くれっぷりに、ワイ、再びのスタンディングオベーションである。
ぶらぼぅーふぁんたすてぃっく えーんど えくせれんとぅ!!
心の中で拍手しながら、茶化す。
もう、シリアスでお腹いっぱいだぞ、いたずらしてぇ〜!
とか考えていると、その当人が隣りにいた。
「黙っていろ」
まぁいいですけどね。
で、提出物の薬瓶を渡す。
因みに成績評価は、優・良・可までが合格。
不可と落第は言うまでもないけどね。
頭文字でいうとOutstandingのOが優・Exceeds expectationsのEが良・AcceptableのAが可だ。
で、優らしい。
でも評価を声に出してはくれない。
口パクだけだ。
褒めてもいいのよ。
さみちぃ。
「黙れ」
去っていく吾輩氏。
ふつーさー点数くれたり、評価したりー、煽り散らしたりーしないのー?
「貴方も今、気がついたでしょ?」
「俺、何も言ってないけど」
「私ね、正直、どう受け止めていいか迷ってるの」
「俺は聞きたくないなー」
「それじゃぁあっちに混ざる?」
と、マルフォイ君&可愛いマグル出身の女の子に、ギスギス参戦グリフィンドールの男の子、ハリー君の友達である双子の弟君だ。
ハリー君の友達だよね。
そこにまた吾輩氏、絡みに行ってる。うわぁ〜
「いやーあっちに混ざるの嫌だから、こっちに来たんだけどね」
ダフネちゃんとノット君が、作成時の反応の記録をカキカキしながら、ブツブツ言っている。
ワイも集中、美しき文字をば羊皮紙チャレンジ。
「会話、してる感じなのよ」
「ノーコメント」
「時々、無言で見つめ合ってるの」
「ノーコメント」
「目で語り合うって、その不安になるじゃない?」
「察してるだけじゃね」
「パンジーが無口になるのよ。彼女も考えたくないみたいで」
「俺も知りたくないんだけどな」
「気がつくとね、もーだめ」
「止めとけよ。俺たち1年生」
「先輩に聞いたら」
「俺は聞こえない。
書き終わった? 姫の分もくれ、提出する。
つーか、姫、とっくに終わってるし。
ぽやーっとしてるから、何もできないかと思ってた」
提出する羊皮紙に、いつもやってた吾輩氏謹製の宿題と同じフォーマットで書いてみた。
きっちり、くっきり纏めて、結論提示。
そこに至る過程も簡潔に書く。
ダラダラまとまらない長文とか、読みにくい文字だと苛つくらしい。
「参考にして、次からは俺もそうするよ。
先生の癖って先輩達もなかなか把握できないってさ。
まぁ後片付けとかきちんとするのは当然なんだけど」
「本当は、上級生なんでしょ。留年したとか」
ひでぇ。
努力しただけですぅ。
「やめて、膨れても可愛いとか殴りたい」
ダフネちゃんは、けっこうおもろい子だった。
そいで授業終了。
グリフィンドールは減点され、依怙贔屓マシマシでスリザリンは加点。
一年生の2つの寮は見事に険悪になった。
さすが吾輩氏、見事な手腕である。
根拠?
別に2つの寮の関係を悪化させるだけなら、もっと巧妙にできる。
裏工作だってなんだってね。
彼が表立って、嫌悪や不快、憎しみを表にさらけ出す必要なんて無いのである。
本音も含まれてそうだけどね。
落ち込むハリー君。
慰める少年少女。
ちんまい少年少女がしょんもりしてると、胸がシクシクする。
けれど、ワイ、背景。
そして関わっちゃならんし、まぁ何となく、前世な私からすると、少し悲しくて笑えた。
悲しくて生きてて、ここは物語の中じゃないと感じられる。
生きてるんだよ。
11歳の世界だと苦しいけどね。
寮監先生も苦しい。
子供たちも苦しい。
一生懸命だ。
この世界の人も、一生懸命生きている。
自分の信じる事の為にね。
「出るわよ、って、あぁわかった」
スリザリンの皆に手を振る。
朝の手紙の事で、先生に話があるよーって説明。
まぁ嘘じゃない。
グリフィンドールの子らも出ていく。
授業後の後片付けをする寮監先生。
ハリー君は、納得できないけど、友達に手を引かれて出ていく。
と、その時、ハリー君を慰めてた女の子と目があった。
怒ってるぅ。
何か言いたそうだね。
と、思ったから、なぁに? って首を傾げてみせた。
でも、何か言いかけただけで、彼女は友達の後を追って走っていった。
ずるいかな、酷いかな、まぁそんな感じの言葉かな。
スリザリンはずるい。
先生は酷い。
で、無言の先生に声をかける。
誰もいないし、静かで、私の声は先生だけにしか聞こえない。
「用事は何だ?」
手紙の内容は?
「差出人に心当たりは?」
ありません。
誕生日当日の記憶は読み取ってもらいましたけど、それ以前の事柄は具体的に思い出せてないです。
過去に知っていたとしても、今の私には心当たりというか、この世界に知己はいません。
「この世界、か」
何もかも見えない。
私はどこにも繋がっていない。
艀はしけも、見えない。
霧の中で漂ってる小さな舟に座ってる感じですよ。
「自由ではあるな」
その通り。
でも、私は一人は嫌です。
で、どんな内容ですか?
「招待状だ」
どこですか?
「オーストリアの監獄だ」
流石に驚く。
内容を、詳しく。
「今年は無理だ」
無理って?
「ホグワーツからは、離れられない」
まってまって、どういう話?
招かれるのは必須という事ですか?
「あぁ」
先生は一緒に行ってくれる?
「あぁ」
今年は、無理、間に合う?
誰なんです?
私は何に呼び出されたんですか?
叔母がいたんですか?
「何も今のところは不明だ。
招待されただけだ。
校長が調べているが、こちらも動くことは無い」
まずいこと?
「そこまでではない」
今年は動けない。何かあるの?
何も浮かばぬ顔。
眺めているのは、別の世界。
また、寮監先生は、ひとりきりだ。
今日はどこにいるの?
孤島、林の中、雨が降る丘?
これが最後の授業?
時間があれば、歌を聴いてよ。
「あぁ」
リクエストは無いけど、バラードが浮かぶ。
一方通行の重苦しい愛をうたってる、男性ボーカルのね。
遠く離れてしまって落ち込んでる。
君が眠る場所が俺の本当の居場所だって。
そんな歌だけど、先生の孤島に、歌は聴こえているかな?
まぁ聴こえてなくてもいいよ。
歌いたいから、歌うのさ。
三曲目になった時、教室に誰かがやってきた。
見ると、医務室に行った子だ。
そっと扉をあけて、固まっている。
先生は気がついてるけど、声をかけない。
まぁそういう人だ。
私は笑うと、手招いた。
これぐらいは干渉してもいいだろう。
気を遣う子だろう、怖気づいているというより、相手の感情を優先しているタイプだ。
来なよと手招くも、もう駄目だよって表情を浮かべている。
そりゃそうだ。
大人に罵られるなんて怖いもの。
それもハリー君に対するように、されたら凹んじゃう。
先生、ほら、授業受けなかった分の課題をあげなよ。
「いつまでそこにいるつもりだ。入ってきなさい」
治療はできてるね。
よかったよかった。
と、眺めていると、彼は私の方を見て困惑している。
あぁそうか。
カキカキ
発語の練習で歌ってたの。
大丈夫、ほら、先生と話して。
で、納得したらしく、先生の前に立つ。
いやぁ、見下されたら迫力だよね。
「黙ってろ」
ほら、私じゃなくて、その子、気絶しそう。
「ネビル・ロングボトム。
今回の調剤中の事故について、何が問題であったのか、その問題点及び改善するべき点をレポートに纏めて提出すること。
それが一つ。
今回の調薬すべき薬剤の正しい手順を書き出すことが一つ。
これは今回、授業中に示された注意部分を同じ授業を受けたであろうグリフィンドール生から聞き取り書き出す事も含む。
また、次回の調薬予定の魔法薬について、その手順を書き出して提出する事の3つを、今回の授業のペナルティとする。
提出は次回、薬学の授業の前日までとする。自力での解決が困難な場合は、吾輩のところへと質問に来るようにしなさい。
以上だ。理解したかね」
素晴らしい、嫌味なしのワンブレスだ。
で、ロングボトム君に、メモ書きを渡す。
問題点と改善点を書き出す。
今日のお薬の手順を書き出す。(先生の注意書きも)
次回のお薬の手順と気になったことを書き出す。
この三枚のレポートを次の授業の前の日までに提出すること。
「ドヴワティーヌ嬢、余計な事をするな」
緊張しすぎて吐きそうになってる子供に、余裕なんて無いよ。
いいじゃん、先生の手間が省けるよ。
彼はハリー君じゃないもんねー。
「...下がっていい」
はーい。
「君ではない。戻れ、ネビル・ロングボトム」
ガクガクしながら彼は出ていった。
「誰にも肩入れするな」
誰にも?
差し出された手に、大丈夫かと見返す。
「ある程度、耐性がついた」
なるほど。
手袋越しだしね。
で、手を取られ椅子から立ち上がる。
「何も聞かないのか?」
何を聞くの?
じゃぁ寮監先生、晩御飯食べれそう?
お茶もしないと。
顔色も相変わらずだし。
で、私に何をしてもらいたいの?
言ってみて。
「何も」
綺麗な拒絶だ。
先生は調薬の時は、専用の手袋をしている。
素材によって変えてもいる。
今は素手だ。
女性のように爪を染めてはいない。
けど、薬草や薬剤によって爪の色が変わっている。
おしゃれしてないのに、おしゃれだ。
「何の話だ?」
つまり接触している方が思念、念話が通るみたい。
「確かに」
先生は私の声だけが聞こえる?
声じゃなくて、感情も伝わってるでしょ?
「なんとなくだが」
触れると、多分、私も先生の気分がいつもより伝わる感じがする。
「どんなふうだ?」
多分、疲労感だけね。
あとは何も。
伝えたくないって感じ。
「ほぅ」
うん、あまり長く触れていないほうがいいよ。
「見られたくないか?」
逆。
距離がある時は、気分だけ。
こうやって触れると、深い部分が見えてしまいそう。
「閉心術を破れると?」
術を使っているんだね。
でも、もともと何となくは、ずっと伝わってるよ。
と、伝えると、彼は私の手袋を剥ぎ取った。
そして最初の頃のように触れ、指を握りしめた。
「どうだ? 何が見える」
ストンと感覚が切られた事がわかる。
彼が言う閉心術より強力だ。
私の感覚だけがある。
私の手の温かさだけだ。
これはどういう術だろう。
顔を上げ、相手の瞳を見る。
で、失敗。
眼鏡が砕けだ。
「どんな風に感じた?」
目を閉じる。
粉々になった眼鏡が顔から落ち、ツルが取り払われる。
考える。
感覚が戻る。
私の顔から残骸を取り払う、相手の瞳を見る。
「力がのっている、目を閉じていろ」
再び閉じる。
「何を感じ、思った?」
先生が何か術を弄した途端、繋がっていたはずのパスが切れた。
私だけになった。
私の感覚だけ。
で、先生の瞳を見ると、切り落とされたんじゃなくて、全部が私の魔力に見える。
錯覚だ。
でも似ているけど違うから、やっぱり念を断たれた感じ。
ちょっと怖かった。
艀が見えなくとも。あると分かっていれば怖くない。
待っていられる。
きっと来てくれるって。
でも、見捨てられたって感じたら、私だって怖い。
寮監先生を探して、セブルス・スネイプという命に、越えて触れようとした...ら、パーン!
「成功とは言えないか」
何をしたの?
「偽装だ。私の魔力を君と同化させたように見せかけた。
混ぜずに、君の魔力の方を変化させようと働きかけた。
君の魔力は、粒子として細かく広がっている為、干渉しやすいかと考えた。
だが、君の魔力に働きかけた所、君の魔力が先に変化した」
つまり断ち切った?
「いや、切ったというよりも硬化し動きを一時的に止めた。
その反応は素早く、君の魔力の流れは干渉に対して過敏。
一息に干渉元である私を攻略しようとし、自由な眼に力が集中した、秒もかからずだ」
レンズが耐えられなかった?
「誤算は、繋がりを戻したが、刺激を与えた為に、魔眼が解放したまま圧を撒き散らしている。
目を閉じていろ」
という言葉と共に、手袋をつけてくれる。
私の手は彼の腕に置かれた。
「予備は寮か?」
シャウトして歌っていい?
Audioslaveとか、ヒット曲、歌いたい。
「止めろ。歌にも今は力がのっているだろう。
幸い、ここから寮は近い。人目も無い。
大方、今の時間帯なら出払っているだろうからな」
さすがに目を閉じて石の階段は怖いよ。
「案ずるな、運ぶ。繋がりは断たない。艀はある」
また、ふよふよかぁ。
***
「ネビル、大丈夫だった?」
「うん、ハリーこそ、ごめんね。僕のせいで怒られたって聞いたよ」
「いいんだ。それ宿題?」
「うん、ほら、授業途中で抜けちゃったから、その分。彼、どうしたの? すごい、うん、変な顔してるけど」
「あぁ、ハグリットのところでお茶したんだ」
「あぁ森番の人だね。何かあったの?」
「いや、ケーキは硬かったけど、まぁいろいろ勉強になったよ。ただ、帰りに」
「帰りに?」
「そのちょっとすごいの見ちゃってね。ほら、スリザリンの」
「うん」
「あいつが運んでたんだよ、びっくりさ。信じられないよ、女の子をさ」
「ロンが言いたいのは、背の高い子がさ」
「誰?」
「...すごく変わってるスリザリンの、ほら」
「ドヴワティーヌさん?」
「うん、難しい名前の、その」
「医務室の帰りに、スネイプ先生のところで、言葉の練習で歌ってた。一人じゃなくてホッとしたよ」
「そうなんだ。歌?」
「すごい、上手だったよ、歌。
先生も課題だけで許してくれたし、怒ってなかったし、助かった」
「喋れるの?」
「歌を聴いただけだよ、練習だってさ。で、彼女がどうしたの?」
「僕はどうでもいいんだけど」
「スネイプが運んでた!」
「えっと?」
「わからないけど、抱えて運ばれてたのを見たんだ」
「それが?」
「ロンが言いたいのは、ほら、彼女を大切そうに抱えてて、その、お姫様をお姫様のように、こう」
「気持ち悪いだろ? スネイプだぞ!!」
「調子悪くなって運んでたのかもしれないよ」
「ありえないよー」
「だってスリザリンの子だし、先生が面倒見るのふつう」
「ありえないよー」
「...陰険で嫌味な先生が、運んでたのが嫌だって話みたいだよ。
僕が驚いたのは、あんな先生と仲がいいんだなってさ」
「...羨ましいって話? えっと」
「ありえないよー」
「これ言うとハーマイオニーが怒るから言わないけど、美人だから先生も贔屓するの、当然かなって」
「ハリー、先生の考えは知らないけど、悪口に聞こえるから止めなよ」
「あっうん」
「いつも僕たちとスリザリンの1年が揉めると、うやむやにしてくれるの彼女だよ。
君こそ。気がついてるだろ。
僕も今日、頭が真っ白になってたの助けてもらったし。これ」
「これは?」
「先生に言われたこと、覚えられなくて慌ててたら、くれた。
ロンだって、スリザリンでも彼女なら、嫌なことをしてこないって分かる。
だから、スネイプ先生と仲良さそうで嫌なんでしょ。先生が何を考えてるかはわからないけどね」
「フレッド達が言ってたとおりだよ。何でスリザリンなんだよー」
「あら、帰ってきてたの?」
「ハリー、ロン、その話は終わり。ハグリットのところに行って来たんでしょ?」
「ねぇ、何の話?」
「ありえないよー」
「ふぅ、ハリーごめん。僕じゃ揉め事の芽は摘めないや」