国を追われた首無し王女……神になるってどういうこと!?   作:haku728

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荒野の彷徨

――ここは一体どこなのだろう……

 

ソフィーナは、馬車の去った方向に向かってトボトボと歩き続けていた。

 

 

しかしすぐに日が落ち、辺りは暗闇に閉ざされてしまった。

 

民家の明かりも街灯も全くない。

 

空を見上げると、時折雲間に三日月が姿を見せる。

 

耳を澄ませても寂しげな虫の鳴き声が響いてくるばかりである。

 

 

ソフィーナは途方に暮れた。

 

(どうしよう……夜が明けないと動けない)

 

 

彼女は仕方なく、首を抱えて草の上に横になった。

 

秋風が身にしみる。

 

 

(ディルク……どうして……私なんかを生き返らせたの?)

 

頬を涙が伝った。

 

なんの術かは分からない。

 

しかし、自分の体に流れる不思議な力に、なぜだかディルクの強い意志を感じてしまう。

 

 

――きっとあなたは……自分の命の力を犠牲にして……わたくしを……

 

 

――でも……あなたは……いなくなってしまった……

 

 

――そんなの、望んでいない……

 

 

――わたくし……いっそ……死んだままの方が……

 

 

――うう……

 

 

 

 

 

 

 

 

(うっ……眩しい!)

 

彼女は薄目を開けた。

 

朝日が彼女の顔を照らしている。

 

いつの間にか深い眠りに落ちてしまった彼女。

 

すっかり夜が明けていた。

 

 

立ち上がって辺りを見渡したが、やはり何も無い荒野が広がっている。

 

しかし一応人の往来はあるらしく、草原(くさはら)の中に一本の道を見つけた。

 

(とにかく……国に戻らなければ……)

 

彼女は日の出から判断して、エルサイムの方角である西に向かって歩き出した。

 

 

それにしても不思議な感覚であった。

 

首と胴体は離ればなれになっているのに、何かひとつの目に見えない大きな力で包まれている様な感じがする。

 

それで、生前の様に不自由なく体を動かせるのであった。

 

 

 

そして荒野を進んで数刻ほど経った時であった。

 

背後から地鳴りにも似た幾重にも重なる車輪の音と蹄の響きが聞こえてきた。

 

(何かしら?もしかして旅の馬車……お願いしたら乗せてもらえるかしら……)

 

彼女の表情に期待の色が浮かんだ。

 

「ホロロロロロ!」

「オロロロロロ!」

 

馬を操る声と共に接近してくる数台の幌馬車。

 

しかし、掲げられた旗に描かれた黒い車輪の紋章を見てソフィ―ナの顔色が変わった。

 

(いけない!ロマリアンだわ!)

 

彼女は慌てて踵を返して駆け出す。

 

必死に逃げながら、あの日のことが脳裏をよぎった。

 

 

 

彼女は以前、ラムゼンの郊外でロマリアンと遭遇した事がある。

 

馬を休ませるために路肩に停車中、すれ違った幌馬車が止まり、頭にタ―バンを巻き長い顎髭を伸ばした男達が降りて来た。

 

彼らはソフィ―ナの馬車にニヤニヤ笑いながら近付いてきた。

 

『立派な馬車だな。あんたら金持ちだろ。いくらか貸してくんねえか?』

 

『我らはこの国の王家の者だ!お前らに渡すものなど何もない。立ち去れ!』

 

『チッ!しけてやがるぜ!』

 

ディルクに一喝され、不満そうに幌馬車に引き返していく。

 

 

『ディルク、あの方々は?』

 

『あれはロマリアンです。国を持たない民族です』

 

『まあ……帰るべき故郷がないの?』

 

『ええ……大陸中を移動しながら暮らしています。流浪の民とも呼ばれています。ですが……あまり関わらない方が良いと思います』

 

『なぜ?』

 

『昔はほとんど盗賊と変わりませんでした。略奪や人身売買で生計を立てていた連中です。だいぶ大人しくなったらしいですが……。それでもいい噂は聞きません』

 

『そうなのですね……』

 

ソフィ―ナは、幌馬車に掲げられた旗を見た。

 

そこに描かれた黒い車輪の紋章が目に焼き付いて離れなかった。

 

 

 

 

必死に走るソフィ―ナ。

 

しかし幌馬車の列にたちまち追いつかれてしまう。

 

馬車から飛び降りたタ―バンを巻いた連中に、あっという間に取り囲まれてしまった。

 

「へへ、こいつは珍しいや!」

「何かと思いきや、首無しの女だぜ!」

 

一人の背の高い片腕の男がソフィ―ナに近付き、彼女の抱えている生首をむしり取った。

 

彼は彼女の頭髪を鷲掴みにしてぶら下げ、まじまじと眺めた。

 

ソフィ―ナは、風塵にまみれて日焼けしたその顔を睨み返した。

 

「へえ……なかなかの別嬪じゃねえか。しかも首無しで生きてやがる。こいつは高く売れるぜ!」

 

「わ、わたくしを売るつもりなの!嫌!返して!」

 

ソフィ―ナの胴体が首を取り返そうとした瞬間、わっと群がった数人に取り押さえられて、たちまち後ろ手を縛り上げられてしまった。

 

「よし!積み込め!」

 

片腕の男はそう指示すると、身をよじるソフィ―ナの胴体は担ぎ上げられて馬車に運ばれた。

 

彼もソフィ―ナの生首を持ったまま馬車に乗り込んだ。

 

そして幌馬車の列は砂塵を巻き上げながら、元来た道を引き返していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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