異世界でロードアウトを組んで生き残る~FPSゲーマーの転生記~   作:眼鏡丸

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拙い文章ではございますが、よろしくお願いいたします。



1-1 夢に入る系の映画って、だんだん話わからなくなるよね。

鼻孔をつく土と草の匂い。

髪を揺らすそよ風。

 

心地よく寝返りを打つと、草が頬にあたる。

 

……ん?…草?

 

目を開いてのっそりと上半身を起こせば、あたりは草原。

どうやら少し高い丘になっているようで、ほどなくすると森も見え、遠くには町のようなものも見える。

 

「なんだ、夢か。」

 

お決まりのセリフで二度寝しようとしたが、草やら土やらの触感がリアルで気持ち悪い。

とにかく体を起こしたところで異常に気付いた。

 

視界の左上になにやら灰色の四角いものが見える。

中心に白い三角形。よくゲームなどでみるミニマップのようなものだ。

 

確信した。これは間違いなく夢だ。

視界にミニマップが見えますなんて、ゲームのやりすぎでおかしくなったか、それこそクスリをキめているか。

もう社会人も2年やってて、大人としての自覚も芽生えてきたころ。

空想と現実の区別くらい、つく。

 

一応、思考を回してみよう。

名前は藤沢 愁吾、年齢は24歳。

中学生からFPSゲームが趣味で特別上手くもないが、社会人になってからも唯一のストレス発散として遊んでいる。

昨日も残業をちょっとして、近所のスーパーで割引された弁当を買って、1時間くらいゲームやって寝た。

 

よし、記憶もばっちり。ちょっとぼうっとしていた頭も冴えてきた。

このまま地べたに座っているのも気持ち悪いし、とりあえず歩いてみるか。

そのうち、アラームがなって起こされるだろう。

 

歩き出そうと、体についた草を払いながら立ち上がると、ふと、視界の端に「LOADOUT」という文字が浮かんでいる。

 

「ロードアウト、ねぇ」

 

夢だからって何でもありだな、てか頭悪すぎやしないか。

だがしかし、据え膳食わぬは男の恥。いや、使い方間違ってる自覚はある。

でも銃器が出てくるなら触らぬ理由がない。

自慢できるようなプレイイングではないとはいえ、こちとら10年くらいFPSゲームをやってるんだ。

 

どうやって起動するのかと、手を宙にさまよわせるとふと目の前にカテゴリ名が表示される。

なるほど、意識を向けるだけで操作できるらしい。ご都合主義すぎないか、俺の夢。

 

表示されている武器カテゴリはHG(ハンドガン)、SMG(サブマシンガン)、AR(アサルトライフル)、MR(マークスマンライフル)、LMG(ライトマシンガン)、SR(スナイパーライフル)と見慣れたものばかり。

HGカテゴリが青く光っていて、他カテゴリには南京錠のマークがついている。

 

「夢なのに、無制限じゃないのかよ…」

 

思わずぼやきながらHGのラインナップをチェックしていく。

おーおー、いいねぇ。ガバメントにデザートイーグルにニューナンブ、変わりどころだとデリンジャーまで。自動拳銃とリボルバーもそれぞれある感じだ。

 

その中で、目に留まったのがH&K P2000。

日本警察にも採用されているドイツのメーカー製の自動拳銃で、海外だと女性の手にも合うように設計されているとか、シンメトリーで左利きでも違和感ないとかなんとか。

FPSに登場する際にも、威力は高くないが取り回しがしやすいような印象。

やっぱり撃ちやすいのかな~なんて考えてると、目の前が青く光った。

そして唐突に目の前に現れるP2000。

落とさないよう慌てて手にとると、しっかりと重く固い。

 

それでも、日本人として平均より少し背が高い程度の人間には握りやすく、銃を握った感動と実際に射撃したい気持ちが同時に沸き起こる。

 

そして、今いる草原の目と鼻の先に森があることを思い出し、何か的になるものはないかと歩き出す。

森の入り口にある手ごろな木を的として設定し、20mほど距離をとる。

当てれるのかって?いや、近いと怖いじゃん、破片とか飛んできそうで。

 

木を狙うつもりで銃を構えようと、グリップを握りこみ、セーフティを外す。

電動ガンを数度撃ったことがあるだけだが、なんとなくの知識はあるのだ。

銃から木へと意識を向けた瞬間。また視界に異変が起きる。

いや、何かと言われれば知っている。

中心に点、上下左右に細い線。いわゆるクロスヘアと呼ばれるものだ。

それにしても昨晩はゲームやりすぎたかね、こんなに夢に影響してくるなんて。

 

まぁ、クロスヘアが見えるのならそれはそれで便利でいい。

銃を構えようとすると、不思議と体が自然に動く。

きっちりと脇を締めて照準を固定し、目は自然と照門と照星を合わせる。

やったことなんてないはずの姿勢が、妙にしっくりくる。

視界の先でクロスヘアが徐々に収束していき、照星の一点と照準点が一つになった。

 

トリガーに指をかける。

引く。

発射。

着弾。

 

手に感じる反動。

初めて聞く銃声。

火薬の臭い。

 

すべてが初めての体験で、新鮮なものなのになぜか驚愕や恐怖はない。

体と目は自然に射撃前と同じ姿勢をとっている。

脳内では、銃声ってこんな大きいのか、硝煙の臭いってこれか、手しびれるかと思ったけど意外と大丈夫だな、などと取り留めのないことがループしている。

 

もう一発。

先ほどとほぼ変わらない位置に着弾する。

誤差は数mm程度。

 

なんとなく満足してセーフティをかけると、一気に思考が戻ってくる。

銃撃ったよ、今、俺。反動とかすげーリアル。

あれ、クロスヘア消えてる。

手に感じる衝撃とか半端ねぇ、こりゃ鍛えないかんかな。

いや、夢だしいいか。

 

しかも上手くね?夢の俺は射撃センスに溢れているらしい。

青いネコ型ロボットの隣にいるメガネの彼のように。

いいね、夢ってサイコー。

 

どうせなら色々と動いてみるかと、考えなしに森に踏み入れることとする。

先ほどよりは日陰が多く、少しじめっとした空気。

足元に気を付けながら、なんとなく草原から見えた集落の方向へ向かって進む。

 

足跡やフンの形跡など、動物がいるんだなぁとか家の周りで野生ってネズミくらいしか見ないよなーなどと呑気に考えていると、

 

「キャアアアアアッ!」

 

甲高い悲鳴が聞こえる。

人?夢の中なのに、いやにリアルな悲鳴。

悲鳴のほうに顔を向けると、ミニマップの範囲外に赤い帯と黄色の帯が反応する。

 

知っている。

これは少し離れた位置に敵や味方がいるときに出るものだ。

しかし、赤色は敵で味方は青色、PTは緑色だ。黄色は今までやったことあるゲームにはなかった。

 

とりあえず尋常ではない事態なことはわかる、表示の意味は後回しだ。

だが、夢の中だ。助ける必要はあるのか?

いや、夢だからこそここで助けなければ、最悪の目覚めになってしまう。

 

そう思い直し、反応のある方向へ一直線に走り出す。

なんとなく使える遮蔽物があればいいな、と考えながらセーフティを解除。

視界に現れるクロスヘア、そして右下に武器名、弾数が表示されていることに気づく。

 

H&K P2000 12/0

 

予備マガジンはないらしい、持ってないしな。

夢のくせにリアル志向であることよ。

 

走り出して数十秒、ミニマップの範囲内に赤い点が2つ、黄色い点が2つ。

ほどなく肉眼でもとらえられる。

周りは気に囲まれているが、森の中では少し開けた場所。

その中に、少女が2人とオオカミのような動物が2匹。

まだ子供と言って差し支えのない年齢の少女が、おそらく怪我をしていると思われるもう一人の少女を背にかばい、鋭いような怯えたような目でオオカミを睨んでいる。

 

音を立てるわけにはいかない。

歩調を落とし姿勢を低く、それでいて着実に目的地へ近づいていく。

某潜入ゲームを思い出しながら、木や草にまぎれて進んでいく。

 

開けた個所の全体像が見えてきたところで、思考を回しプランを立てる。

使用できるのはバニラ状態のハンドガン一丁で弾数も少なく、近接武器もない。

近づくにつれ、少女の反対側に体一つ隠せそうな岩があるのを発見する。

回り込める時間はあるか?いや、その間にオオカミが行動を起こせば終わりだ、却下。

決めた、1匹目は奇襲だ。

 

ハンドガンはカタログスペックだと有効射程50mなどと書かれているが、実際人間が狙って撃てる距離なんてせいぜい5m-10m。しかも目標はゆっくりだが移動している。

奇襲は成功させなければ意味がない。

確実に音を殺して近づいていく、オオカミの横を突くような配置にはつけた。

近い方のオオカミとはだいたい8mほど。

 

しっかりと銃を構え、クロスヘアの収縮、ADSへの移行、射撃。

 

「ギャウッ」

「キャッ」

 

狙い通りヘッドショットだ。

オオカミは倒れて動かなくなる。

少女から悲鳴が漏れるが、そもそも銃声が大きいんだから奇襲はここまで。

もう一匹がこちらに気付くが想定内、エイムをスイッチングして射撃。

さすがに連続ヘッドショットとはいかず、胴体を掠める程度だったが十分に威嚇できたらしい。

さっきまでの威勢はどこへやら、キャウンと一鳴きし踵を返して去っていった。

 

さて、次は少女たちだ。

振り返ろうとすると視界の中央にバーが表示され、緑色のバーが伸びていきいっぱいになる。

そして「Level Up」の文字。そして「アイテムが解放されました」とも。

おいおい、そんなもんまであんのか。

 

改めて少女たちに向き直る。

 

「あー…その、大丈夫か?」

「私は大丈夫、でもレンが…」

 

こんな時なんて言えばいいかわからんなどと思っていたら、自分の想像よりずっと低い声が出た。いかんな、気を張ってしまっている。

それでも答えてくれた少女は、健気というべきか。

いや、これは新たに表れたアンノウンに警戒している、といった様子か。

 

一応は助けた人間として最低限の信用はあるらしい。

 

「大丈夫だよ、俺は敵じゃない。

悲鳴が聞こえたから、駆けつけてきたんだ。

とにかくそっちのケガをしている子を見せてくれ、治療できるかもしれない。」

 

簡潔にこちらの意思を述べる。

こういう時は無駄なことは言わないほうがいい、そして目的を述べた方がいい。社会人2年目でついたスキルとも呼べないもの。

それでも意図は伝わったのか、少し迷う素振りを見せながらも体をどけてレンと呼ばれた少女への動線を開けてくれる。

 

さて、先ほど解放されたアイテムだ。

視界の「ITEM」という文字へ意識を集中すると、また、目の前にカテゴリが現れる。

「Backpacks」「Armor」「Tactical Rigs」…

複数のカテゴリの中に、あった。「Medical」

なんかこっちのカテゴリ分けは随分雑だな、などと思いつつ開く。

 

レンという少女を見ると、太ももへの切り傷。

おそらくさっきのオオカミの爪か牙だろう。

捻挫もしていそうだ。足首が少し腫れている。

 

さて、選べるアイテムは「アイシングキット」、「簡易治療キット」、「簡易飲み薬セット」の3つ。ざっと見た感じ、アイシングと簡易治療でよさそうだ。

2つを選択するイメージをすると、目の前にまた青い光。

 

「キャッ」

 

あ、後ろで目つぶしを食らった方が一人。

さて、治療キットにはガーゼや消毒液、包帯、絆創膏や軟膏など。

 

「今から傷口を清潔にする。痛むぞ。」

 

一声かけてから、消毒液を掛けていく。

水も買っておけばよかったな。

軟膏はどうやら化膿止めの薬みたいだ。子供のころ自転車で転んでできたケガに処方されたことのある薬だった。

 

「薬を塗る。」

 

もう痛むことはわかるだろうから敢えて言わない。

薬を塗って、ガーゼを当てる。

消毒液の時からそうだが、声を出さない強い子だ。

 

その上から包帯を巻いて、ひとまず応急処置としてはこんなもんだろう。

なんか包帯とか無駄に巻きすぎた気もするが、ちゃんと結んだしオッケーということで。

 

次はアイシング。

入ってるのは柔らかい保冷剤的な何かとゴムチューブのようなもの。

あとは保冷剤を包む布。

なんか簡素だなこっち。

 

保冷剤を布でくるんで、足首にあててゴムチューブで縛る。

素人感満載だが何もしないよりましだろうと自分を納得させる。

 

「とりあえず応急処置は終わったが、早く落ち着ける場所で治療を受けたほうがいい。」

 

アイテム出現の発光時の悲鳴以外はおとなしくしていたもう一人の少女に声をかける。

 

「…ありがとう。ただ、レンは歩くの遅くなるし、さっきのオオカミが戻ってこないとも限らない。」

 

んん?こんな怪しいやつとはここでお別れ的なことを予想していたんだが…

実際目の色から警戒は抜けていない。

 

「あなた、冒険者よね。お願い、ここから町まで護衛して。

口約束になるけど、依頼よ。

色々聞きたいことはあるけど、この依頼を受けてくれるなら何も聞かない。

ちゃんと報酬も出す。

お願い…私たちだけじゃ…」

 

おおう、どうやら冒険者とやらと勘違いされたらしい。

依頼ねぇ…。支払い能力があるかどうかも正直わからん。

服は着ているが高級そうなものではなさそう。

理性はメリットが無いと主張するが、ここで見捨てるはさすがに。

片足突っ込んだようなもんだし、町にいくまで見届けるくらいは大人の責任だろう。

そう自分に納得をつけ、返事をする。

 

「わかった。だが、俺はこのあたりの地理に疎いから道案内は任せるよ。」

 

考えたい、いや考えたくないが考えなければいけないこともあるしな。

 

「本当に?ありがとう!

私はユウ、あなたがケガを治療してくれたのが妹のレンよ」

 

「俺は…」

 

参った、なんて名乗ろうか。

愁吾?いきなり本名ってのもなんとなく伝えがたい。

個人情報って守りたくなるよね、現代人。

 

そうして頭にぱっと浮かんだ名前が口からでてしまう。

 

「俺は、ファイブだ」

 

え、24歳でファイブ恥ずかしくね?

やばくね?イタくね?

いや、うん。14歳から使ってるゲーム内でのハンドルネームだよ。

愁吾の吾に五って入ってるし数字ってかっこいいよねくらいのテンションで付けた名前。

心内赤面蒸気爆発を勝手に起こしていたが、ユウの言葉で現実に引き戻される

 

「ファイブね、よろしく。」

 

あぁぁぁぁぁ呼び返さないでぇぇぇぇ、と魂の叫びがまろび出そうになるのを、いや名乗ったのは自分だから恥の上塗りになるだけだ、幸い普通に受け入れられていると、無理やりぐっとこらえる。

なんなら舌噛んでるかもしれん。痛い。

 

「ああ。レンのことはどうする、おぶっていこうか?」

 

「いや、私がおぶっていくわ。ファイブには万全に動けるようにしてもらいたいの。」

 

「わかった。辛かったら言えよ?」

 

そうは言ったが、自分より10は若いであろう少女たちだ。体力はむしろ俺よりあるかもしれん。

ふと、視界のミニマップで、ユウとレンに位置するマーカーが青色になっていることに気づく。味方判定、ね。

一先ず思考の奥底に追いやり、ユウがレンを背負うのを手伝う。

 

「お姉ちゃん、ごめんね。」

 

「ううん、レン。私こそ、あいつらに気づけてたら…」

 

姉妹愛のなんと美しきかな。

素晴らしいがさっさと離脱するべきだろう。

 

「出発しよう。反省も命あってのものだ。」

 

「わかってるわよ」

 

「ファイブさん、ありがとうございます。そしてご迷惑おかけしてすみません。」

 

「なに、構わんよ。君はまず体力を温存するように、どこか痛んだり異変を感じたらすぐにいうように。」

 

優しくしようとするとジジ臭い言い方になってしまう。

まだ24なんだけどな。

 

「とにかく出発しよう。日が落ちるまではまだあるが、余裕ってほどでもないだろう。」

 

「そうね、行きましょう。」

 

「よろしくお願いします。」

 

ユウの案内で進み始めようとしたところ、オオカミの死体の上に何かが表示される。

 

レッサーウルフの死体 ×1

拾う

 

いや拾うって…バトロワの武器じゃないんだから…

意識を向けると青い光とともに死体が消える。

アイテムを確認すると、インベントリに追加されていた。

 

ユウもレンもこちら側を凝視していたが、何も言わない。

ユウが依頼条件で何も聞かないと言った以上、気になることは聞けないといった感じか。

正直助かる、まだ整理がついてないからな。

 

再度一声かけて歩き始めるが、話題はなく気まずい。

間違いなく原因は俺なのだが、ここは黙秘を貫く。

その気まずさをおしてでも考えなければならないことがあるからだ。

 

そう、この夢について。

 




読んでいただきありがとうございます。
週に2~3くらいのペースで投稿していけたらと思っておりますので、もしよければ感想・評価など頂けますと幸いです。
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