異世界でロードアウトを組んで生き残る~FPSゲーマーの転生記~ 作:眼鏡丸
翌朝。
天気は良好。
窓からの朝日が気持ちいい。
目覚めて体を起こし、ストレッチとも呼べない軽い伸びをする。
そして気づいた。タバコがねぇ。
目覚めてタバコが成人してからのルーティンだったのだが、これが断たれた。
非常にまずい。喫煙者にとってタバコとは、酸素の次に大事なものである。
昨晩の続きの水を飲み、口さみしさを誤魔化すとノックが聞こえる。
「起きてる?朝ごはん用意したから、よかったら食べてく?」
「ああ、ありがとう。すぐ行くよ。」
特に用意するものもなし。
装備類はインベントリにしまって、ドアを開ける。
「おはよう」
「おはよう」
「おはようございます。」
朝食は焼いたパンに目玉焼き。
ベーコンが無いのはさみしい気持ちが一瞬よぎるが、この二人にわがままは言えまい。
「すまんな、わざわざ。」
「いいのよ、これもお礼のうちってことで。」
「正直、薬もいただいてますし全然足りないですけど…」
「薬はいいんだよ、困ったときはお互い様だ。」
初心者ボーナスで出たであろう薬だしな。
昨日、アイテム欄でちらっと確認したら医療キット系は1500CPだった。
今の懐事情だと手が出ないが、けして高くもない。
「朝から暗い話してないで、冷めないうちにいただきましょう」
「別に暗い話でもないけどな、いただきます」
「いただきます」
朝ごはんを食べ進めていると、ユウから今日の予定について聞かれる。
「ファイブ、今日は何かあんの?」
「ん?今日はギルドで試験だな。そのあと依頼があれば受けて、日銭を稼ごうかと。」
「そういえば、門のところで旅人って仰ってましたね。」
「お、おう。それで路銀が心許なくてね。しばらくはこの町で冒険者として日銭と資金を貯めようかと考えてる。」
もちろん銃購入である。ロマンと実用半々だが。
「それなら…宿をとるのね。」
「まぁ、おそらくそうなるだろうな。貸家なんかが都合よくあればいいが、しばらくはその日暮らしになるだろうし。」
「提案なんだけど、よかったらこのままうちに住まない?」
Why?なぜ?
昨日は緊急事態だったから泊まらせてもらったが、さすがに住みこむのはお礼の範疇を超えている気がする。
「あの、私たち、まだきちんと働ける年齢ではなくて。
料理屋さんで見習いとして働いているのですが、家に2人っきりだと夜も不安で…」
「それに、なにもタダで住ませようってわけじゃないわ。きっちり宿代は貰うわよ。
その代わりご飯は用意するし、水浴び場は使っていい」
なるほど。護衛兼家賃収入か。
番犬みたいなもんだな。
「昼間は働きに出てるから、日が沈むまでに帰ってこれるなら、私たちとしても問題ないわ。家賃は銅貨3枚、破格よ?」
相場はわからないが、確かに破格なのだろう。
日本でも日雇い労働者の街で一泊500円のホテルとかも聞いたことがあるが、環境が段違いだ。
ただ、外聞がな…
警察とかいるのかわからないが、逮捕状まっしぐらである。
「お願いします…働いてるとはいえ余裕はないですし、もし物盗りなんかに襲われると…」
レンが少し目をうるつかせながらこちらを見てくる。
やめてくれ、その術は俺に効く。
というかこの子、昨日の謎の圧といい男心転がすの長けてやいないか。
将来が恐ろしいぜ。
「んぅ、そういうことなら…」
変な声が出たがしかたない。
正直二人は美少女といって差支えない。
髪型は二人ともショートカット、まだまだ子供だが、大人になったら絶対美人だろうなーとかこんな子クラスにいたら最高だなーって感じだ。
しかもこの世界の服装なのか、麻でできたような軽装で非常に目に良…悪い。
「じゃ、決まりね。今晩分まではお礼の範囲でいいわよ。水場は裏手にあるから好きに使ってちょうだい。終わったら声かけてくれるといいわ、あたしたちも使うから。」
「わかった。んじゃ先もらうわ、ごちそうさま。」
最初は遠慮しようかと思ったが、不慮の事故を考えると先に水浴びを済ませたほうがいいかもしれない。そういや風呂だともらうとかいただくとか言うが、この場合はよかったのか?
なにはともあれ朝食も食べ終えたし、さっさと浴びよう。朝の時間は貴重だ。
水場に向かい、アイテムのなかから10CPで売られていたタオルを取り出す。
なんか日用品というか、戦闘に関係ないものは安いな。
水場にあったのは井戸と桶。
さすがにシャワーは期待していない。
適当なところに服を置こうとして、インベントリにしまう。
こういうところから慣れていかないとな。
手早く全裸になると、適当に桶から水を浴びて、頭も流してタオルで拭いていく。
インベントリさん、パンツ(使用済み)はひどいんじゃないでしょうか色々。
なんとなく沈鬱な気分になったので、パンツとTシャツも新調する。
どっちも5CPとかだ。痛手の出費ではない。
そうしてさっぱりとしたところで、頭を拭きながら居間へもどる。
姉妹は朝食の片付けをしていた。
「水浴び終わったぞ、ってか悪いな片付けまで」
「いいんですよ、これくらい。いつも仕事でやってるので役割分担はっきりしてますし、このほうが早いですから。」
苦笑いをしながら机を拭いていたレンが答える。
ユウは皿洗い。なるほど、キッチンとホールね。
確かにレンのさっきの男心掌握術を思い出せば、対人系の仕事が向いているのかもしれない。
ユウがキッチンなのは意外だが、朝ごはんの調理はもしかしたらユウだったのだろうか。
「あら、さっぱりしたわね。」
「おかげさまで。そろそろ俺はギルドの方に行くよ」
「はーい。行ってらっしゃい。もしあたしたちより早く帰ってきそうだったら、その辺で時間つぶしてて。」
「早く帰るようにするので、すみません。行ってらっしゃい、ファイブさん」
「了解した、行ってきます。」
ドアをくぐって外にでる。
気持ちを試験に向けると、視界にミニマップやらHUDが表示される。
こんなもので1日の始まりを感じるようになるとは。