異世界でロードアウトを組んで生き残る~FPSゲーマーの転生記~ 作:眼鏡丸
さて、体感朝の9時ごろ。
ギルド前で装備を装着しいざゆかん。
ギルドといえば朝早いイメージがあるが、この時間での訪問で問題なさそうだ。
依頼の受付をしている冒険者や昨日よりも受付の人数も多く、賑わいを見せている。
依頼の数は多いのかもしれないな、これなら稼ぎ口に困ることはなさそうだ。
怪しい格好をしている自覚はあるが、みんな自分のことに集中しているのか、こちらに気を配られる気配はない。
そして空いている受付に向かい、試験の旨を伝える。
「どうも、ファイブと言うのだが、本日適性試験を受ける予定になっている」
「はい、ファイブさんですね。それでは受付左手の扉より演習場へお進みください。」
おお、演習場なんかもあるのか。
新武器とか手に入れたら調整にも使えそうだ。
言われた通り演習場に入ると、開放感のある屋内。
体育館くらいの広さに、下は地面、少しの草。
その中央には、これまたごついがベテランの風格を漂わせるおっさんが一人。
「おう、来たな。俺はランバート、今日の試験官だ。朝遅いナメた新人もいるんだが、お前さんはそのあたりは大丈夫そうだ。」
ええ、出社時間は9時だったからな。
ちょっと待ってろ、といいおっさんは書類を読み始める
「名前はファイブで、武器はナイフと…なんだ?遠距離魔道具?」
「まぁそのあたりは見てからということで。
弓矢の方もいるでしょうし、試験内容は同じで構いませんよ。」
「そうか。それでいいならいいや。あと、その話し方はやめるんだな。」
「話し方?」
「その商人みてぇな話し方だ。旅人らしいし、元居た場所ではどうだったか知らねぇが、こっちでは冒険者はナメられたらダメだ。メンツが大事ってやつだな。それに商人みてぇな話し方だと、なんか裏があるんじゃねぇかって思っちまう。これは俺だけかもしれんが。」
いきなり難題だ。
24年間日本人として染みついた敬語を取っ払えとな。
いや、ここは郷に入っては郷に従えだろう。
「わかった。生まれ育った環境ゆえ、簡単には抜けないがよろしくな」
「そうだ、それでいい。さっきみたいな話し方されると、背中がむず痒くてたまんねぇや。」
単にこのおっさんが敬語嫌いなだけでは?と思いつつも、試験官はこの人だ。
心証は悪くするまいと言葉遣いには気を付けることとする。
「それで、試験内容なんだが、まずはわかりやすくナイフからいく。解体用じゃなくて、戦闘用でいいんだよな?」
「一応はそうですね。メインは遠距離魔道具で、こちらは接近時の緊急扱いですが。」
「なるほど、なら模擬の武器を使った組手でいいか。普段使っているナイフに近いものをそこの模擬武器の中から選べ。」
そういって目を向けると、木製の武器がズラリとならんでいる。
槍やら剣やらハンマーまで。ハンマーは重さが武器だから木製でも模擬にならないんじゃ?と思うが、ここに並んでいるのなら模擬なのだろう。
その中で標準的な模擬ナイフを選ぶ。自分が持っているのも特に変哲のない、FPSの初期近接武器にあるような軍用ナイフ。大きさなどもそう大差ないだろう。
「じゃあ、これで。」
「よし、じゃあ組手だ。こっちは反撃はせず、受けたり流したりするから好きにかかってこい」
開始の合図はないらしい。
正直ナイフファイトなんてまったくやったことがない。
FPSゲームでもナイファーと呼ばれる近接しか使わないプレイスタイルの人たちはいたが、自分は実績解除のために触る程度。
どうしたものかと思いつつ集中すると、体が勝手に動く感覚。
ナイフを持っているのとは反対の手で相手の服を掴むが、強引にいなされる。
それならと背後に回りチョークスリーパーのような構えから首投げ。
体格差は十分以上にあるはずなのに、相手を投げ飛ばしたところで、背中に乗っかり起き上がれないように抑え込む。
そうして首元にナイフを突きつけて、相手の言葉を待つ。
実際自分が動いているのだが、こんな動作は今まで記憶にない。
自慢じゃないが平均的な日本人だ、荒事なんて小学生の時の喧嘩くらい。
銃の扱いもそうだが、どうやらキャラクター的な動きも転生特典(仮)としてあるらしいという仮設が確からしくなっていく。
まじでどうなってるんだこの体。
「おい、そろそろどいてくれんか。」
あ、忘れてた。
「あ、すまん。組手は終わりか?」
「全く…余裕って感じだな。相手を殺せる手前まで行うのは組手じゃないだろうが。というか体術も使えるなら受付の時に言っとけよな。」
ランバートさんが膝から土をはらい、ぶつぶつと言いながら立ち上がる。
「ハハハ…」
必殺奥義、苦笑いで誤魔化す発動!
「はぁ…。じゃあ次は魔道具の試験だな。弓矢と一緒でいいってことだから、的あてだ。
すぐにこっちのラインから、近いの、中くらいの、遠いのって的があるだろ。あれに向かって当てればいい。弓矢なら10発ずつで命中率を見る感じだ。」
10発ずつかあ…今持ってる実弾の半分は持っていかれる計算だ。ペイント弾にしてもいいが100CP消費の上に、命中箇所がわかりにくくなる。
正直、実弾の消費は抑えたいが必要経費だな。
目測で凡そ10m、25m、50mの的。
50mはP2000の有効射程としてはギリギリだが、今までの射撃の感覚的に問題ないだろう。
ハンドガンだから必要以上のリコイル制御はいらないしな。
連射出来る武器でもないが、さすがに弓をつがえて狙いをつけるよりかは早いはず。
十分有用性は提示できるだろうと判断した。
「それでは、同じく10発ずつでやる。近いものから順に狙えば?」
「ああ、それでいい」
内容についての同意も得られたので、ポケットから出すふりをしてP2000を手にする。
セーフティを解除すると現れるクロスヘア。慣れてないはずなのに、なぜか体には馴染む。
構えてADSまで行ったところで、ランバートさんをちらっと見る。
ちなみにP2000と同時にナイフも構えている。
ハンドガンとナイフがあれば…某蛇スタイルになるよね。
「そんじゃ、始めるぞ」
ランバートさんから開始の合図。
ベテランの風格にたがわず、こちらが戦闘モードに切り替わったことは察知できるようだ。
ちなみに的はミニマップには映っていない。まぁ射撃訓練みたいなものだしな。
まずは10mに10発。どこを狙えば高得点かわからないので、とりあえず真ん中を狙う。
この距離はさすがにね、ほぼ同じ位置で正確に射抜いていく。
次に25mに10発。途中にリロードを挟むがそれでもスムーズにど真ん中を打ち抜いていく。この距離になると寸分たがわず、とはいかないだろう。
最後に50mに10発。こちらも特筆するべきことはない。
1発目のヒット時に、すこし弾が落ちたような気がしたのでほんの少し上を狙ったくらい。
リロードもスムーズに。
今思えば的の切り替え前にリロードすればよかったな。
まぁ実戦ではそんなこと言ってられないしいいだろう。
ちなみにサイレンサー装着とはいえ、音は多少は出る。
重心の変化は、あるのだろうがあまり感じなかった。これも不思議な力の効果かね。
ランバートさんを確認すると30発撃ったことはわかっているようだ、唖然としているが。
「終わったぞ。」
「お、おう。すげえな、その魔道具。弓矢なんかより断然はええ。しかも手前の的なんか貫通してやがる。」
当たり前田のクラッカー。てか全部貫通してると思いますよ。
弓矢想定の的が壊れなかったことに驚いてるくらいだ。
「一応30発撃ったことは音でわかるかと思うが。」
「あ、あぁ。ただ目に見てわかるもんじゃなかったから、一応的の確認はするぞ。
結果は後で伝えるから、受付のほうでちょっと待っててくれ
……参ったな、旅人っていうから多少はできるかと思ってたが、これほどとは。」
「わかった。」
向こうからすれば未知の武器だ。
そりゃ効果判定には慎重になるだろう。
ほんじゃ、受付でゆっくりしますかね。
とはいえ、特に椅子などもないので壁にもたれて水分補給する程度。
一応、偽装用に水筒は買ったんだよな。ペットボトルそのままよりマシかと思って。
こういう隙間時間ってマジでタバコ吸いたくなるな。
アイテム欄でみると50CPしたんだよなー。手持ちが370くらいってことを考えるとギリ買いたくないレベル。ショート〇ープみたいな安いのはないのかね。
ニコチンの禁断症状に内心悶えていると、受付嬢から声がかかる。
「ファイブさん、お待たせしました。」
「いや、それほどでも。早かったですね。」
「これでも普段よりはかかってるんですよ。」
聞けば、剣士などはその場でランクを言い渡されることもあるそうだ。
その場合はかなり下のランクだそうだが。
「ファイブさんのランクですが、ブロンズの3となります。」
ふむ?どんなもんなんだ?
顔に出ていたのか、受付嬢さんーフィオナさんらしいーがランクについての説明をしてくれる。
「ランクの等級ですが、一番下から、アイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、クリムゾンとなっております。」
「なるほど。後ろの3というのは?」
「それは各ランクの位を表しております。1が最も低く、2、3と上がり、その次がランクアップとなります。」
なるほど、ブロンズ3の次はシルバー1といった塩梅か。
この辺りは色んなゲームであったシステムだから、特に疑問はない。
「理解した。上がる基準は依頼の達成数とかか?」
「はい、達成数や達成率。また、クエストごとに評価度合いも異なります。
プラチナへはギルト副長以上の推薦、クリムゾンへはギルド議会の承認が必要となります。」
なるほど、高ランクほど、なるのはややこしいようだ。
大企業の出世コースみたいだな。
「ま、その辺はまだまだ先さ。地道にランクをあげていくよ」
「そうですね。ちなみにですが試験評価自体は非常に高いものでした。
ただし、ナイフ戦闘の面において対人に長けている可能性が高いとのことと、過去に冒険者としての実績は見られないとのことで、まずはブロンズ帯からのスタートとなっております。」
そういえば昨日の申し込み時にはそんな話もしたっけ。
だが、こちらとしてはありがたい。
まだ24時間程度しか過ごしていないこちらの世界に対しては、冒険者としてどころか平時の常識すら危ういのだ。
人間慣れる生き物だが、時間はかかる。
「了解した、結果に不服はないよ。」
「ありがとうございます。ぶっちゃけ、ここでごねられる方も一定数いらっしゃいますので…」
おお、一応そんな感じなんだな、冒険者。
昨日と今日のイメージでは、わかりやすい荒くれものみたいなのはいなかった印象だったが。
逆に安心するような、面倒くさいことに巻き込まれそうな気がするような。
「それでは、こちらがギルドカードになります。
身分証としても使用できますので、必ずなくさないようにお願いいたします。
再発行は受け付けておりますが、再発行料として金貨10枚となっております」
金貨の価値はわからんが、それでもこうして注意されるということは、高価なのだろう。
「ありがとう。」
受け取り、ポケットに入れるふりをしつつインベントリへ。
「…それでは、登録手続きはこれで完了でございます。本日は依頼を受けていかれますか?」
「ああ、なんかめぼしいものはあるか?」
「そうですね…今残っているものだと薬草採取か、ボアラビットの毛皮採取でございます。」
ふむ、毛皮採取とな?
「あー、悪いが解体の心得はないんだが。」
「こちらに死体を持ち込みいただければ解体いたしますよ。ブロンズランク以上の方は、依頼対象の解体に限り無料で行っております。その分、報酬はそれほど高くありませんが。」
なるほど、討伐だと持ち込みあれば+α、素材採取だと持ち込み前提か。
「わかった。なら、一旦薬草採取から受けよう。」
ま、この手の依頼もテンプレだよな。
2つの依頼は今から受ける余裕はないだろうし。
「かしこまりました。薬草採取については10本で銅貨2枚となります。また、持ち込み数が規定数より多い場合は5本ごとに銅貨1枚が追加報酬として支払われます。」
「了解した、それでは。」
「お待ちください、依頼を登録いたしますので、先ほどのギルドカードをお渡しいただけますか?」
「あ、ああ、すまない。」
これはかなり非常識ムーブをしてしまったのではないだろうか。
いやまぁ、旅人設定だしなんとかなるだろ。
ギルドカードを渡すと、フィオナさんが手元の機械に起き、依頼用紙をその上に置く。
これは本物の魔道具かな。ギルドカードが薄く発行している。
どうやら依頼が登録されたらしい。
「お返しいたします。」
「どうも。それじゃ、改めてありがとう。」
「いえ、職務ですので。」
フィオナさん、なんかつっけんどんなんだよなぁ。
いや、多数の冒険者を相手にしていると、ああいう対応が正解なのかもしれない。
個人的にはコミュニケーションの取りづらい会社の同僚を思い出して苦手だ。
さて、370CP程度ではなにも食えないので、昼抜きとなるがまぁ問題ない。
薬草を採取して戻ってくれば、多少の金になるだろう。
家賃のため、せめて15本は回収しなければ。
消費した弾薬やらの補給を考えると日に30本あれば1週間後には討伐系にいけるかな?