ここ最近多忙なので、時間が取りづらく、早めに投稿しなければと思って少し短めになってしまいました。
『トリニティ総合学園』と、『ゲヘナ学園』の確執は、歴史的なものである。
天使と悪魔。秩序と混沌。このような構図からしても、対立関係は明白だろう。
事実、キヴォトスにおいても、互いを嫌悪する
トリニティ生がゲヘナ生を「野蛮」だの「気持ち悪い角つき」だのと揶揄すれば、その逆は「三枚舌」だの「下品が貴族の真似事をしている」だのと、とても見てはいられない喧嘩が始まる。
要するに、原始的な差別である。
見た目が違う。考え方が違う。たったそれだけの「差異」。同じ人同士でありながら、明白な差異から生じた、生理的な嫌悪。
それが遺伝的に刻まれ、話し合いを通す前に争いを起こし、歴史という長い時間が、二度と融和を認めない物理的障壁となった。
聖園ミカもまた、ゲヘナに対して差別的感情を抱くものの一人である。
ただ、彼女は歴史の厚みを知っているわけでも、生まれてこの方ゲヘナ生に何かされたわけでもない。ただ、薄っすらと「角の生えてるアイツらってキモいよね」という、感覚的なもの。
いつそんな感覚が植え付けられたのか、はたまた、生まれつき
しかし、自身が抱いた嫌悪感に、そこに疑問を抱くことは、何人であれ難しいことだろう。
──もしも、本当に自分が嫌悪していたものと、相対することが無ければ。
〇
薄紅色の線が入った、二股の小さな角が二本。制服とスカートの隙間から伸びた、トカゲみたいな丸みを帯びた、短い尻尾。
少し噂になったから、知っていた。入学式で、嘔吐して倒れてしまった子だ。トリニティには珍しい、角付きの生徒。
「ゲロ子」なんて不名誉な名前を付けられてたけど、角つきなんかにあだ名を与えること自体が贅沢じゃない?
ただ、これはちょっと違うよね。
「み、ミカ様……? 何故──」
部屋の中にいた一人が狼狽えるけど、それを遮るように一人が前に出てくる。ゲロ子の頭を踏んでた子だった。そいつは、今度は背中を踏みながら私の前に出て、頭を下げてきた。
「お、お願いします! ミカ様、この通りです!」
「え?」
「「は???」」
誰だろうこの子。なんだか私のことを、よく知ってるような感じだけど。
「え、何? 慌てなくていいから、落ち着いて話して?」
その時は、あまりの相手の必死さと、突然のことで、自分も混乱していたんだと思う。
だから、話をほんの少し、聞いてみようと思った。
「自分は、ミカ様の同胞たるパテルの者です。ですから、ミカ様のために汚いゲヘナのスパイを下しておりました!」
──そこから、"ソレ"の言葉は耳に入らなかった。
気持ち悪い角つき。確かに、ゲヘナみたいな感じがして、目に入れるのも嫌なんだけど……目の前のソレは、そんな「角つき」よりも気持ち悪く見えた。
何か喋っているけど、全然聞こえない。多分、脳が処理を拒んだんだと思う。
他に、なんか自称サンクトゥス派の子が急にソレと取っ組み合いし出して、残ってた子たちもギャーギャー騒ぎ出す。
「ねぇ」
一応、私の前で喧嘩しないでほしいんだけど。
言っても聞いてないのか、止まらない。
仕舞いには銃を取り出し始めた。撃ち合いになると思ったら、取っ組み合いのせいで銃口をマトモに向けれてない。
……めんどくさ。
バララララッ!!
「っはぁ〜……」
とりあえずこの四人は黙らせておいて、面倒だから……よし、顔の写真は撮った。
あとはこれをパテル派の子たちに送って、テキトーに言っておこ。あ、退学まではさせなくていいからね。ちゃんと言っとかないと、何しでかすかわかんないし。
で、問題のこの子。
「いつまで寝てるの?」
「……っ」
ずっとうつ伏せで這いつくばってて、背中もさっきのいざこざで足跡まみれ。せっかくの制服が汚れちゃって、流石の私もかわいそうに思う。
けど、一部はアレの言う通りだとは思うけどなぁ。どうして、角なんて特徴を持って、トリニティに来たのやら。
どうして、セイアちゃんをあんな風に変えてみせたのか。
あなたが、どういう人物なのか。
「ねぇ」
「ひっ」
顔を覗き込んだら、瞳より大きな丸眼鏡に、涙がびちょびちょに付いていた。
野蛮で、下品で、混沌ばっかり呼ぶゲヘナの生徒……なんて思えないくらい、根暗で弱そうな、臆病さが垣間見えるかわいい顔つき。
私のことを知ってるのか。それともさっきの一撃で沈ませたので怯えているのか。被害者なのにカタカタ震えていて、今にも逃げたそうにしてる。
けどダメ。
「きっと知ってるよね。私のこと。だから、先にあなたのお名前を教えて?」
セイアちゃんには悪いけど、私も興味が湧いちゃった。
「ぁ、わ、わたしは──」
なんだろうなぁ。
角つきってところで、多分色眼鏡で見ちゃってるんだろうけど。
──
苗字だけど、セイアちゃんとおんなじ名前じゃん。
多分、電脳コイルを知ってる方なら漢字がすぐ分かるはず。