パウロ転生 ー家族のために本気だすー   作:パウロ大好きマン

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第十四話「ミルボッツ帰郷」中②

 

 

 

「野郎どもォ!!やっちまええェッ!!」

『おおおおおおおォッ!!』

 

 船員たちの怒声と、骸骨たちの乾いた咆哮が、嵐の中に入り混じる。甲板は、あっという間に乱戦の渦に呑み込まれた。

 

 俺は剣の腹で、横薙ぎに骸骨の胴体を薙ぎ払う。骸骨には、斬撃よりも打撃で砕いた方が効果的だからだ。

 

「せぇい!」

 

 ごきん、と骨が砕ける鈍い音。隣では、シャンドルが戦杖を振るうたびに、二体、三体とまとめて吹き飛ばしていく。

 

「数は多いですが、個々の力はそれほどでもないですね」

「師匠、呑気ですね……!」

「こういう時こそ、落ち着くのが肝心ですよ」

 

 荒れ狂う嵐の中、船体が大きく傾ぐ。雨と風が容赦なく叩きつけ、まともに立っているだけでも一苦労だった。

 

「うわあああっ!助け、助けてくれえっ!」

 

 甲板の端で、足を滑らせた船員が、海へ投げ出されそうになっている。

 

「──っ」

 

 俺は骸骨の群れを蹴り飛ばしながら、甲板を駆け出した。荒れる甲板の上を、まるで平地を走るように自在に駆け抜ける。崖走りで培った脚力と平衡感覚は、揺れる船上でも崩れない。 

 

「っ、捕まれ!」

「は、はえぇ……!あ、ありがとな、坊主!」

「礼はあとで!まだ終わってないぞ!」

 

 海へ落ちかけた船員の腕を、すんでのところで掴む。船員を甲板の安全な場所へ放り投げると、俺はすぐに次の骸骨の群れへ向き直った。

 

 幸い、一体一体の強さはそれほどでもない。何体でも、叩き伏せることはできる。でも──

 

「……こいつら、全然減らないんだけど」

 

 砕いても砕いても、幽霊船の方から、次から次へと骸骨が湧いて出てくる。まるで、無限に供給される兵隊みたいだった。

 

 シャンドルが、骸骨の一体を叩き潰しながら、何かを考えるような顔をした。

 

「おそらく、あの幽霊船のどこかに、骸骨を召喚している存在──幽霊(レイス)のようなものがいるのでしょう」

 

「幽霊(レイス)……」

 

 なるほど、と思いながらも、頭の中で状況を整理する。水聖級の術者、骸骨を召喚する幽霊。このまま甲板で戦い続けていても、ジリ貧になるのは目に見えていた。

 

「……師匠、幽霊船に乗り込みませんか。本体を叩きに行きましょう」

 

 シャンドルは、少し意外そうな顔をしたあと、すぐに楽しげに頷いた。

 

「いいですね。では、行きましょうか」

 

 二人、同時に地を蹴る。

 激しく揺れる甲板から、隣に突き刺さった幽霊船の甲板へ、一気に飛び移った。

 

「っ!」

 

 赤く光る眼窩たちが、雨の中で不気味に輝いた。

 幽霊船の甲板には、こちらの船以上の数の骸骨がひしめいていた。俺たちが乗り込んだことで、周囲の骸骨たちが一斉にこちらへ向き直る。

 

 ──カタカタカタカタ

 

「はああァッ!!」

 

 幽霊船の中から、絶え間なく骸骨が湧き出してくる。それを蹴散らしながら、流れに逆らうようにして、船内へと突入していく。

 

 扉をくぐった瞬間、俺は思わず息を呑んだ。

 

「……え、広っ!?」

「おや、これは」

 

 外から見た幽霊船は、せいぜい普通の大型船程度の大きさだった。それなのに、船内に広がる空間は、その常識を明らかに超えていた。

 

 朽ちた廊下が、どこまでも奥へと続いている。曲がり角のたびに、また新しい通路が広がり、とても一隻の船に収まる広さではなかった。

 

「……どうなってるんですか、これ」

「……これは迷宮のようなものかもしれません。長い年月をかけて、普通の船が、迷宮化してしまったのではないかと」

 

 迷宮──魔力が長期間一箇所に滞留することで、空間そのものが歪み、内部が外側の物理法則から独立していく現象。

 迷宮の内部は複雑に入り組んでおり、強力な魔物や悪辣な罠があり、攻略には十分な準備と実力が求められる。

 自然に形成された洞窟が迷宮となる場合もあれば、古代の遺跡が迷宮化している場合もある。

 

「船が迷宮になるなんて、聞いたことないですよ」

「私もです。長く生きていますが、こういう事例は初めてですね」

 

 呑気な口調だったけど、その言葉で背筋が少し冷える。それでも、ここで立ち止まっているわけにはいかない。船員たちは、今も甲板で戦っている。時間をかければかけるほど、犠牲が増えていく。

 

「行きましょうか」

「はい」

 

 俺たちは、揺れ続ける船内を、猛スピードで進んでいった。

 襲いかかってくる骸骨を蹴散らしながら、迷路のような廊下を駆け抜ける。いくつもの部屋の扉を確認しては、通り過ぎていく。壁には、乾いて黒ずんだ染みがいくつも残っていた。血の跡だと、分かりたくもないのに分かってしまう。

 

「……本当は、もう少しゆっくり探索したかったんですけどね」

「……まあ、師匠の気持ちも分からなくはないですけど。今は、船員さんたちと船のために急ぎましょう」

「それもそうですね」

 

 進めば進むほど、骸骨たちの強さが上がっていった。骨は硬くなり、動きも速くなっていく。手にする武器も、最初は錆びた剣だったのが、次第に鎧や槍を身につけた、より洗練された装備へと変わっていった。

 

 それでも──問題なく倒せる。

 シャンドルの戦杖が唸るたびに、何体もの骸骨がまとめて砕け散る。俺の剣も、以前よりずっと鋭く、重く、相手を確実に仕留めていく。

 

 どれだけ進んだだろう。ようやく、俺たちは一つの大きな扉の前に辿り着いた。

 

 これまで見てきた、朽ちた船内の光景とはまるで違う、豪奢な装飾が施された扉だった。金細工の縁取りと、見たこともない紋様が刻まれている。

 

「……ここですね。十中八九、この先に迷宮の主がいるでしょう」

 

 シャンドルの声が、珍しく、どこか引き締まっていた。

 初めて挑む迷宮。しかも、動く迷宮という、前例のない代物。その最奥で待つ存在がどれほどのものか、想像するだけで自然と喉が渇いた。

 

 でも──退く理由はない。

 俺は、剣の柄を強く握り直した。

 

「行きます」

 

 ──ギィィィィ……

 

 扉に手をかけ、ゆっくりと押し開く。

 重い音を立てて開いていく扉の隙間から、冷たい、異質な気配が、静かに漏れ出してきた。

 

 

 

────

 

 

 

 扉の先に広がっていたのは、俺が想像していたのとは、まるで違う光景だった。

 

 壁には、年代物らしき絵画が何枚も飾られ、テーブルの上には、精巧な細工が施された壺が並んでいる。まるで貴族の屋敷の一室を、そのまま切り取ってきたような空間だった。

 

 その中央に、二つの人影──いや、二体の魔物が立っていた。海賊装束を纏った黄金色の骸骨。もう一体は、ローブを着た半透明の幽霊。

 

 俺たちが警戒を解かずにいると、海賊姿の骸骨が、カタカタと顎を鳴らした。

 

「ほう!鼠が二匹、俺様の船に入り込んだと思えば……。まさか、ここまで辿り着くとはな!」

 

「喋った!?」

 

「よく聞け、鼠ども!俺様の名はゴールデン! この海賊船を統べる船長にして、海の支配者よ! そして、こっちにいるのが──」

 

「副船長のシルバーだ」

 

 魔物に名前があり、さらに喋るとは想像にしていなかった。迷宮の主ってこんなものなのか?

 

「まさか密航者の分際で、船長室にまで踏み込んでくるとはな!よほどの命知らずとみえる!」

 

「……は?いや、襲ってきたのはそっちだろ」

 

「………」

 

 隣で、シャンドルが何かを考え込むような表情をしている。普段の飄々とした態度とは、少し違う様子だった。

 

 それにしても──改めて、目の前の二体を観察する。

 

 ゴールデンは、見るからに海賊といった格好だ。腰には、使い込まれたサーベル。頭には羽根飾りのついた帽子。何より目を引くのは、骨だけの顔に、誇らしげに蓄えられた、立派な口髭だった。骨なのに、どうやって生やしているのか、純粋に謎だった。

 

 一方のシルバーは、落ち着いた青のローブを身にまとい、丸眼鏡をかけている。白髪を長く伸ばした、渋みのある風貌の幽霊だった。佇まいからして、理知的な印象を受ける。

 

「よしっ!貴様ら!俺様たちの仲間にならんか!」

「……なりません」

 

 ゴールデンは一瞬だけ黙り込むと、次の瞬間、腹の底から響くような笑い声を上げた。

 

「おお、そうか!断るか!ガハハハハハ!いいぞ、いいぞ!そのくらい気概がなくては、海賊など務まらん!」

 

「いやいや!だから、ならないって!」

 

「細かいことは気にするな!海賊とは自由なものよ!強ェ奴は何をしても良い!奪い、壊し、犯す!こんな楽しいことがあるか!?俺様と海賊をやろうぜ!!」

 

「……まったく、気に入った奴はすぐに勧誘する癖。何百年経っても、お前は変わらんな」

 

 シルバーが、やれやれといった様子で、口を開いた。呆れながらも、どこか楽しそうな響きがある。

 

「……」

 

 シャンドルは、相変わらず無言で、二体を見つめていた。

 

 あまりに友好的な態度に、俺はどう対応すればいいのか戸惑っていた。殺気立つわけでも、本気で襲ってくるわけでもない。拍子抜けするような空気だった。その時だった。ようやく、シャンドルが口を開いた。

 

「お二方。昔、私たちはお会いしたことはありませんでしたか?」

 

 ゴールデンが、ゆっくりとこちらへ顔を向ける。

 シルバーも眼鏡の奥の目を細め、シャンドルの顔をじっと見つめた。その直後──

 

「っ!」

 

 肌が、ぞくりと粟立つほどの、凄まじい殺気が放たれた。ゴールデンの眼窩の奥に、赤い光が、一段と強く灯る。

 

「その赤い瞳……その闘気……。まさか、貴様は……!北神カールマン二世ェェェ!!」

 

 先ほどまでの陽気な海賊とは、まるで別人だった。ゴールデンの全身から噴き出す殺意は、骨だけの身体であることを忘れさせるほど生々しい。

 

 隣のシルバーも、杖を握る手に力を込めていた。眼鏡の奥の目から、先ほどまでの穏やかさは消えている。

 

「その姿では、すぐには分かりませんでした。ですが、声を聞いてようやく思い出しましたよ」

 

「コイツらと知り合いなんですか!?」

 

「知り合いというか……まあ、話せば長くなりますが」

 

 シャンドルは、軽い口調で説明を始めた。

 

 この二人は、大昔にシャンドルが討伐した海賊らしい。

 当時、この海域はコイツらの縄張りだった。商船を襲い、積み荷を奪うだけでは飽き足らず、抵抗した船員や乗客を皆殺しにする。港町を襲撃しては、街を焼き払い、財宝を根こそぎ奪っていく……。その悪行は、数え上げればきりがないほど。

 

 当時Sランクの賞金首に指定され、数々の海賊団を従えたことで、海賊の王様と呼ばれた男。

 

 ──"海賊王"ゴールデン。

 

「……海賊王か。たしかに、すごい覇気を感じる……!」

 

「そうだ!俺様は海賊王ゴールデン!富、名声、力、この世の全てを手に入れた男よ!だが──」

 

「我々は、カールマン二世に敗れた。しかし、死してなお、我々は消えなかった。この船とともに長い年月を漂い続けるうちに、いつしか魔物へと変じていたのだ」

 

 ゴールデンとシルバーの声が、低く、恨みのこもった響きに変わっている。自分たちの変貌した手を見下ろした。

 

「……なるほど、そういうことでしたか。自業自得とはいえ、魔物になってしまうとは、少し哀れに感じますね」

 

「黙れェッ!!貴様に何が分かる!俺様が、どれほどの屈辱を味わってきたか!死んだ後も、この船に縛りつけられ、海を漂い続けるしかなかった苦しみが!」

 

「……もう俺、関係なくない?」

 

 ゴールデンは懐へ手を入れた。

 

 そして、取り出したのは奇妙な笛だった。

 黄金で作られた、細長い笛。表面には波を思わせる模様が刻まれ、吹き口には青い宝石が埋め込まれている。

 

「だが、ようやく機会が巡ってきた!北神カールマン二世!貴様をこの手で葬り去る機会がなァ!」

 

 そのまま、口元に当てて、強く吹き鳴らす。

 

 ──ピィイイイイイイイイイイイン!!

 

 耳をつんざくような高音が、辺り一帯に響き渡った。とんでもない音に、思わず耳を塞ぐ。

 

「ガハハ!これは、海竜を呼び、操ることができる秘宝よ!貴様には、正面から挑んでも勝てぬことは分かっている。ならば──これを使い、必ず仕留めてやろう!」

 

 海竜といえば、海に生息する最強の魔物だ。船を一隻丸ごと、容易く沈めるほどの力を持つ個体だっている。

 

「不死身のお前とて、海竜に喰われるか、海の底へ沈めてしまえば、死ぬだろう。まずは手始めに、お前たちが逃げられないよう、船を壊させてもらうか」

 

「……うわ、最悪だ。もう師匠の身柄だけで、勘弁してくれないかな」

 

 思わず、本音が漏れた。師匠の過去の因縁に巻き込まれて、こんなことになるとは。

 

『グオォォォ……!』

 

 遠くの海から。何かが応えるように、低い咆哮が響いた。俺が顔を引きつらせていると、シャンドルが静かに口を開いた。

 

「さて、私は船を守りに向かいます。あとは、お二人をお願いできますか」

 

「え!?師匠が相手にするんじゃないの?なんで俺に丸投げするんですか!」

 

「別に私でもいいですよ。では、その代わりに――」

 

 シャンドルは、にっこりと笑った。俺には悪魔の笑みに見えた。

 

「海の中で、海竜と戦いますか?」

「ここは俺に任せて、船をお願いします!!」

 

 考えるより先に、そう答えていた。海竜と師匠の因縁、どちらがマシかと言われれば、ここで海賊二人を相手にする方が安全だと思ったからだ。

 

 シャンドルは、背を向けて部屋の外へ走り出す。

 

「──そうはさせん!」

 

 シルバーが、その背中へ向けて、素早く魔術を放った。鋭く収束した氷の刃が、シャンドルを狙って飛ぶ。

 

 俺は、割り込むように剣を振るい、その一撃を斬り払った。剣を構え直しながら、俺は二体を見据える。

 

「お前らの相手は、弟子の俺がする」

 

「貴様は、北神の弟子だったのか……!ならば──まずは、その首を頂戴しようか!!」

 

 

 

────

 

 

 

 

「──行くぞ、鼠がァ!!」

 

 ゴールデンが、黄金のサーベルを構えて踏み込んでくる。俺は左右の剣を構え直し、それを迎え撃った。

 剣神流の鋭さに、北神流の変則的な動き。意外にも、こいつの剣筋は多彩だった。正面からの速い斬り込みかと思えば、次は低く沈んでの変則的な斬り上げ。

 

 でも──技術では、こっちが上だ。

 

「遅い!」

 

 左の剣で受け流し、右の剣で斬り返す。何合か打ち合ううちに、ゴールデンの太刀筋が、徐々に崩れ始めているのが分かった。

 

「くっ、小癪な……!」

「もらった!光の太刀!」

 

 右腕に、全身の闘気を集中させる。

 光速の一閃が、ゴールデンの腹部を正確に捉えた。でも──

 

「……っ!?」

 

 刃が、通らない。

 確かな手応えとともに、黄金の体表に浅い傷を刻んだだけで、斬撃はそこで止まっていた。

 

「ガハハハハ!俺様は、ただの骸骨ではないぞ!復活の時に、俺様が集めた金銀財宝──それを己の骨へと取り込んだのだ!この防御力、並の威力では傷一つつけられん!」

 

 ゴールデンが、愉快そうに笑い声を上げる。堂々と胸を張って、挑発するようにサーベルを振る。

 

「さあ、どうした!もっと来い!」

「くそ……!」

 

 連続で斬撃を叩き込む。何度も、何度も。でも、火花が散るばかりで、致命的な傷にはならない。

 

「勇壮なる氷剣にて 彼の者に断罪を──氷霜刃(アイシクルエッジ)」

 

 背後から、冷ややかな声が響いた。

 振り返ると同時に、鋭い氷の刃が、俺の背中を狙って飛んでくる。

 

「っ!」

 

 咄嗟に剣を振るい、それを砕いた。でも、意識をそちらへ向けた一瞬の隙に、黄金の残像が目の前を駆け抜ける。

 

「食らえ、光の太刀ィ!!」

「くっ……!」

 

 俺は咄嗟に二本の剣を交差させた。

 不意を突かれ、完全には躱しきれない。辛うじて剣で受け止めるが、重い衝撃に体勢が崩れた。

 

「天より舞い降りし蒼き女神よ その錫杖を振るいて世界を凍りつかせん──氷結領域(アイシクルフィールド)」

 

 シルバーの詠唱が、さらに続く。

 

 正面から、瞬く間に冷気が襲いかかってくる。

 肌を刺すような冷気が、全身を這い回る。体の自由が、急速に奪われていく。

 

 ──まずい。

 

 腕を咄嗟に顔の前にかざし、せめて口と鼻だけは凍らせまいとする。

 

 震える唇を、必死に動かす。

 

「汝の求める所に大いなる炎の加護あらん 勇猛なる灯火の熱さを今ここに──火球弾(ファイアボール)」

 

 目の前に浮かんだ火球が弾け、俺の体を包む氷を溶かしていく。凍りついた腕が動いた。俺は氷を振り払い、体を無理やり動かして後方へ飛び退く。

 

「ふぅ……。厄介だな……」

 

 改めて、二体の厄介さを実感する。

 ゴールデンには、生半可な斬撃は通らない。黄金の骨は、並の剣では表面を傷つけることしかできない。

 シルバーは、半透明の霊体だ。剣で斬りつけたところで、そもそも実体を捉えられているのか怪しい。

 

 ──破壊力。

 

 頭に浮かんだのは、シャンドルから教わった、あの流派だった。斬ることじゃなく、砕くこと。貫くことじゃなく、消し飛ばすこと。

 

 シャンドルは、こうも言っていた。不治瑕北神流は、実体のない幽霊にも同じように通じると。

 

 奥義「破断」までは、まだ無理だ。この一ヶ月で覚えたのは、ほんの入り口に過ぎない。

 

 それでも──コツくらいは、掴んでみせる。

 俺は、二刀のうち一本を鞘に収め、残る一振りを、上段に構え直した。心臓の奥に、ゆっくりと魔力を集中させていく感覚。

 

「"北聖"パウロ・ノトス・グレイラット、参る!」

 

 

 

 

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