不可思議→出会い
さくらニュータウンこはる保育園。ここに新しいお友達がくるそうだ。
その子の名前は[
初めての環境に緊張しているのか、或いは彼女が持つ体質のせいなのか、後のクラスのマドンナとは思えないほどオロオロしている。あまりの狼狽えっぷりに同じグループとなる子達から「早く終わらないかなー」と雰囲気が発せられる。文花はそれを感じたのか急かされるように、
「アッ……こだま、フミカ、です……。」
と、とても遊び盛りの子供の声量とは思えない自己紹介を行った。保育士から「仲良くしてね。」と言われなければ彼女は孤立していただろう。子供の行動は大人の言動が指針となるのだから……
それから数日が過ぎて同所こはる保育園、文花は未だに馴染めていない。無論彼女は輪に入ろうとした。でも同じ年代の子に纏わり付く気配に文花は尻込みしてしまう。多感な時期においてそれは恐くて仕方がないだろう。火には触れなければ恐くない。夜の町は外に出なければ恐くない。対策がある、或いは守られるのであれば文花は本来の明るさを披露するのだ。事実家の中ではイキイキしている。最もこれは相対的なもので絶対値は日に日に落ちていっているが。ともかく、木霊文花は恐くて仕方ない。同い年の子を取り巻く気配に、そしてそれに一切対応できてない状況に絶望を覚え始めていた。そんな時不意に声がかかる。
「ねぇ。ぼくと一緒にあそぼうよ。」
その時、文花の目に今まで見たことがない世界が広がった。真っ白な光、穢れ無き純白な心。その声の主を中心として光が広がり、他の子を取り巻いていたおどろおどろしい気配が浄化された。気配自体はある。しかし文花はもうその気配を恐ろしく感じなくなっていた。
(スゴい……キレイ……!)
今までその気配に振り回される光景ばかり見ていたためこんなことが起きるのかと文花は強い関心を持った。そしてその声の主をよく見ると、いたってフツーな男の子だった。あっあれ?と文花は首をかしげる。あんな事を起こした人はどんなにスゴい人なのかと思ったら。毛先が3つ上を向いている特殊な髪型程度で雰囲気自体はフツーの男の子のそれだった。
[
◇◆◇
ワタシには生まれた時から[ナニカ]が見えたり聞こえたりする。ナニカの本当の名前は分からない。だからナニカと呼んでいる。ナニカにはいろんなところにいる。
ナニカに纏わりつかれるとどこかドンヨリしたり、ナニカが音を発するとその音を聞いた人は「もれそう!」と言いながらトイレに駆け込んだりする。
ナニカが行動をする度、いろんな人達がスイッチが入ったように行動するのだ。だから少し前、ナニカに聞いた。
「どうしてそんな事をするの?」と。
答えは帰って来なかった。いや、聞き取れなかったのかもしれない。ナニカの音はワタシ達の声じゃないから……。
そしてそれからワタシの周りにナニカで溢れるようになった。黒いモヤが見えたり、変な音が聞こえることが増えた。今までこんなこと無かったから原因はすぐにわかった。あの日、ナニカに声をかけたからだと。ナニカは時間が進む度どんどんどんどん多くなる。今では部屋がナニカに埋め尽くされているし、変な音がずっと聞こえてくる。
その時ワタシは思ったの。ナニカがワタシに手を出したらどうしようって。
ナニカの力にワタシ達は対応できない。そして1つのナニカで人の行動を変えることができる。ならこの大量のナニカが一斉にワタシに手を出したら?そう思うとナニカがとてつもなく恐くなった。火は触れなければ恐くない。夜の町は外に出なければ恐くない。でもナニカは違う。どうしようもない。だから恐いと思った。思えばその日から元気がなくなった。ナニカの気分が悪くなればワタシにヒドイことをするかもしれないと怯えるようになった。
そしてそんな日々は新しい保育園でも変わらなかった。お父さんのテンキンが理由でナニカが理由じゃないけど、ワタシはナニカで溢れたあの場所から離れたかった。友達のことは残念だけどそれよりナニカが恐かった。新しい場所ならナニカが居ないかもしれないと期待した。でも変わらなかった。それどころか今までと違っておぞましい気配を纏うナニカがソコにいた。ワタシはそれを見て、
(死にたくない!パパ、ママ、助けて!!)
と本気で思った。保育園ではそのナニカから目を離さなかった。目を外した瞬間殺されるかもしれないと本気で思ったから。家に帰ったらパパとママにこの事を伝えた。でも2人は……
「初めてのことだから緊張している」
「フミなら仲良くなれる」と言った。
たしかに前のナニカ達は仲良くなれるかもしれない。でもあれはだめだ。今までとは違う。その気になれば人を殺す凄みがある。あまりの衝撃にワタシの恐怖は限界を迎えた。
(助けて……誰か助けて……!)
ワタシは友達を増やしたい。でもナニカに手を出せば殺される。そういう日々を送ってた時、ワタシに声をかけてくれた子がいた。
ケータくん。いたってフツーな男の子。でもワタシが見たフツーじゃない光景を起こした子。
あの光をナニカが浴びたとき、ナニカの体が糸をほぐすように溶けていって今まで見たナニカへとなった。見たことがスゴすぎて遊んだ内容はよく覚えていないけど、とても充実していたと思う。家に帰ったときパパとママから
「いいことあった?うれしそうな顔をしている。」
と言われた。そんな顔をしていたのかな?だとしたら原因はケータくんだ。ワタシはその事を頭に浮かべながら眠りについた。
次の日、保育園とケータくんをよく見た。まず保育園はナニカにとっていい場所なのか前の保育園よりナニカの数が多い。こんなに数が多いならとても生活が上手くいかないと思うけど、ケータくんから出てくる目に優しい光がナニカを落ち着かせているのだ。ケータくんはナニカに対して特別な事をしていない。なぜならケータくんはナニカが見えているとは思えないくらいフツーに過ごしているから。
いやきっと見えてないのだろう。ナニカが見えていたら何かしらの反応があるから。でも見えないのにナニカとって特別というものもあるのかもしれない。ケータくんをもっと知るため今日もケータくんと遊ぶことにした。
◇◆◇
ぼくが通っている保育園に新しい子が来た。キレイな女の子でこだまフミカっていうらしい。初めてだからかオドオドしているけど、同じ女の子から遊びに誘われたらすぐに馴染んでいるように見えた。でもその笑顔がどこか苦しそうに見えた。遊んでいるようで遊んでいない。向いている方向に何かがあるのかソコから顔を動かさないのだ。ご飯の時とかで何かが気になるのかソワソワが止まらない。
そんなことが数日続いたら変に思うのは当然のことだ。見た目のこともあって女の子から恐いことが聞こえるし、男の子からももっと仲良くなるという願いがだだ漏れていた。
多分だけどフミちゃん(本人公認の愛称)はそういったものに敏感なんだと思う。実際、そういった声が大きくなればなるほどフミちゃんは体を震わせて、笑顔がどんどん曇っていくんだ。このままじゃいけないとぼくは思う。でも何か特別なモノがないぼくにできることは……って考えると、どこからか声が聞こえたんだ。
「大丈夫。君に必要なのは勇気のある一歩。君のその思いが、あの子の光を取り戻すよ。」
不思議と力の出る声だった。君ならできるという強い力。あの声が何なのか分からないけど、ぼくはその声に背中を押されて、フミちゃんを何とかできると信じて声をかけたんだ。
その時から保育園にあった重い空気が無くなった。フミちゃんも楽しそうに遊んでいるし、友達がたくさんできたようだった。でもどういうわけかぼくとは毎日遊んでいる。その度に他の男の子からスゴい目で見られるけど……フミちゃんが楽しそうなら問題ないかな。そう思っているとフミちゃんからこう言われた。
「ワタシとケータくん、2人だけで話したい大事な話があるの。」
ぼくこの後どうなるんだろう?
今作の天野景太
無意識でフウ2の能力を周囲にばらまく。これは人間には効かず妖怪特効である。これによって彼の周りに妖怪不祥事案件は中々起こらない。
今作の木霊文花
元々霊感は有ったものの、妖怪とコンタクトを取ったことで若干の霊媒体質に。妖怪の声も姿も正しく認識できないため、あのような感じになった。
こはる保育園の何かの妖怪未満
木霊文花に対しての小さな悪意が積もりに積もってできた妖怪のなりそこない。あのまま放置していたら木霊文花特効のバケモノとなっていた。
ケータにかけた声の主
オリジナル妖怪 現時点ではそれ以上も以下もない