「勝ったぞーーーー!!!」
「皆お疲れ様ーーー!!!」
「やったでうぃすー!!!」
『ワーーーーーーー!!!』
ミツマタノヅチとミツマタノヅチが変異した大型妖怪を倒したオレたちは心の底から喜び叫んだ。本当に、今までで一番強い妖怪だった。
ミツマタノヅチは割と数の暴力で押し潰せた。実際ミツマタノヅチも困っていたしね。
でもミツマタノヅチが変異してからはまさに急転直下。戦況は一気に劣勢へと追い込まれ、あまりの惨状に心が折れかけた。トモダチがいたから持ち直せたし、アイツも風前の灯だったから何とかなったけど、もしアイツが万全だったら今のオレたちじゃ絶対に勝てなかった。ほぼ止まることの無い一撃必殺の火炎放射を一切触れることなく突破せよだからね?アイツの動きがミツマタノヅチの時と同じように重く、火炎放射の都合上接近に弱いかつ胴体が脆くなったという複数の要素が絡み合ったからこそ得た勝利だと思う。
でも一番大きい理由は、トモダチが諦めなかったから。オレとフミちゃんの声に、全力で応えてくれたからこの結果にたどり着けたんだ。そうトモダチを労っているとあの大型妖怪から無機質な音声がまた流れる。
リセットプログラムを起動
お憑かれSummer!
鳴り終わった瞬間大型妖怪が光を放ち、当たり一面を白く染める。あまりの眩しさにオレたちは眼を瞑った。やがて光が収まると、ボロボロだった小学校が元に戻り、結界も張り直され、大型妖怪はミツマタノヅチへと姿を変えていた。妖怪達が元に戻った学校に驚いていると、オレとフミちゃんはミツマタノヅチへと真っ先に向かう。
暴れようとしたのは事実だけど、暴走の件は被害者だから、ある程度話せると思ったんだ。
◇◆◇
ワレはうんと昔、人を襲い、食らい、暴れ回った故に坊主に封印されたギョロ。それを悪いとは思ってないし反省する気はないギョロ。
なぜならそれがワレの存在意義。食うことで人間を恐怖で戒める為であるからギョロ。
まあ人間を美味しいと感じ、やり過ぎたから封印されたといわれたらぐうの音も出せんギョロが。
さて、こんなワレだが解放してくると言ってくださったお方がいるのだ。
そのお方の名は魔界議長イカカモネ・ソウカモネ。妖魔界を混乱させ人間界を乗っ取ろうとする悪い妖怪ギョロ。
でもワレが自由に動くためならワレは喜んで人間の敵になるギョロ。その方が人間を沢山食えそうってのもあるけど。
だがワレを貫き、一瞬でワレの心身を乗っ取ったフシギの塊。
アレには、心当たりがあるギョロ。
寧ろワレのような古い妖怪なら誰でも知っている、この桜町の妖怪に伝わる最強の妖怪。人間の知名度が低いからイマドキにカテゴライズされているし、60年前の平釜平原で起きた黒歴史以降消息不明ギョロだが、ワレは思い出したギョロ。
遠い昔ワレがまだ小さい蛇の妖怪だった頃、やつの口癖を聞いたギョロ。
「ウォッチ使いを増やす。その為にエンドコンテンツ級のボスに君臨する。」
当時は意味のわからない言葉だったギョロが、時代が進むとその意味がわかってきたギョロ。
膨大な時間をかけて育成し、その全てを懸けて倒せるかどうかの存在になって、初めて夢への挑戦権が得られると。
やつがそこまでして叶えたい夢、やつの活躍を銅像越しから聞くたびに叶ってほしいなと童同然に思ったギョロ。
でも黒歴史の再来からだんだん薄れて、ワレも誰も話さなくなって、もう思い出すこともない時にイカカモネと会ったギョロ……
でも、そうか。これがそうギョロか。この景色があなたが見たかった夢。桜町と遠い大陸の妖怪達を沸かせた英雄の王の夢。唯一無二のわがまま。あなたの事だ。きっと何処かで見ているギョロ?姿を消したのも策略の内ギョロね?だとしたらあの2人は不憫ギョロ。あなたは余りにも強すぎるから。
最期に1つ。願わくば、次、あなたが描く物語を、どうかのあなたのお膝元で……。
そう思っていると例の2人が近づいて来たギョロ。そうかこれがあなたがくれる最期の役割、任されたからにはやりとげて見せるギョロ。
「……なんか用ギョロか。」
「オレ、天野景太。この小学校に通っているフツーの5年生。」
「ワタシ木霊文花。ケータくんと同じクラスで恋人同士なの。」
何しれっと惚気いるギョロか。番のいないワレへの当て付けギョロか?
それにその名前、2つともあいつが口にしていた名前ギョロ。
「……銅像から見ていたから知っているギョロ。ワレはミツマタノヅチといわれている妖怪で、好きなものは……おでんギョロ。」
へぇーおでんかーと呑気な声が聞こえてくる。本当は人間だけど変に警戒させる必要はないギョロ。
「ミツマタノヅチ大丈夫?体が、その、大変な事になっているから。」
ケータと呼ばれる男がワレを心配する。そうか、遠くからじゃよく分からなかったギョロか。今のワレの体は虚空に抉られたように虫食い状態となっていて、傷口から妖気が漏れているのを止められない状態ギョロ。
このまま妖気が底をついてワレは消滅する。ミツマタノヅチという種族が消える訳じゃないが、この地域で暴れ回ったワレという個体は消えてなくなる。
その事を2人に伝えるととても悲しそうな顔をした。なぜだ?おまえ達はワレのせいで死にかけたというのに。
「だって、ミツマタノヅチは自由になりたかったんでしょ?結界が壊れるのを本当に望んでいたからなんでしょ?」
「やろうとしたことはとても許せないけど、あんな騒ぎを起こしてまで手に入れた自由が、オレたちの手と何者かの介入によって生死の境に立たされているというのだから、さっきまでの敵だったとはいえその事をオレたちは喜べないよ。」
お人好しギョロね。2人は回復できる術を使える妖怪をワレに向け、術をかけるが効果はない。いくらエネルギーを送られても、それを回復に回す体力がないギョロよ。
「そんなにワレを助けたいなら、最期に少し話そうギョロ。」
2人はワレの決断に納得していないものの、ワレの相談に乗ったギョロ。