水色の竜のマフラーをつけた青年がオレたちを見つめている。どうやらミツマタノヅチの妖気を感じて此処に来たようだ。
「おまえ達、此処に妙な妖気が出ていたが何かしたか?」
青年が警戒の眼を向ける。いきなり手を出してこないあたり知性的な存在だ。
(それにかなり強い。暴走前のミツマタノヅチなら簡単に倒せるな……。)
フミちゃんの方を見ると同じことを思ったようで、オレたちは素直に答える。
「さっきまで変な妖気を出していた妖怪、ミツマタノヅチはオレたちが倒したよ。」
「……倒した?おまえ達が?」
青年が近づいてオレとフミちゃんを見つめる。それからどれ程時間が経ったのか分からないが青年は納得したように数歩下がる。
「嘘は言っていないようだな。」
そう言うと青年が姿を消した。
「アレ何だったんだろうね?」
「今回の事件は相当な被害が起きかけましたから、いろんな妖怪が見に来たのでしょう。」
フミちゃんの問いにウィスパーが答える。妖怪の領分を逸脱したと妖怪から言わしめた事件だから他の妖怪に目をつけられるのはある意味当然のことだった。
「今日はもう疲れたな……。家に帰って休みたい。」
「じゃあケータくんの家に行っていい?一緒にぐで~ってしようよ。」
「ありがとーフミちゃん。お母さんに言っておくからそっちは頼む。」
オレとフミちゃんのやり取りに呆れたのか、或いは疲れが限界に達したのか、トモダチ妖怪達は各々この場から去って行った。また呼んでねとトモダチと別れ、オレたちは帰路についたのだった。
◇◆◇
「あいつ、バッカじゃなイカ?」
ワガハイの配下、白い妖怪特製の通信術で配下にしたミツマタノヅチの様子を見ていたが、変な力に呑まれて勝手に童心に返りおって!
しかも、名前こそ出さなかったもののワガハイの事をあの人間どもと妖怪の誇りの無い屑どもに売りおったな!あの様子だと時間があればワガハイの名前を出そうとした始末、それほどまでにあの古き英雄がいいのか、このイカんともし難いやつめ!
これ程のイカらせた代償は重いぞミツマタノヅチよ。結界を解いたときおまえを助けてやるわけにはイカん!契約不履行で当然のこと。黄泉路で反省することだ!
さて、名を隠した英雄が動くとなればいい方向へ動くんじゃなイカ?なぜなら勝手に妖怪ウォッチ使いを追い込んでくれるからだ。この隙に計画を進めたり、漁夫の利で始末することも可能じゃなイカ。
ただ計画を練り直さないとイカん。あの戦闘で妖怪を暴走させる驚異と利益も、それを打破する人間どもの危険性を一気に学べた。これを反芻し、計画を完遂できれば、
「世界はこのワガハイ、イカカモネのものじゃなイカ!イカーカッカ!!」
◇◆◇
「とか甘いこと考えているでござるなきっと……」
雨が降りしきるおおもり山山頂、そこに雨具を見に纏う複数の妖怪が群がっていた。彼らから一仕事を終えた雰囲気を放ち、雨の中のんびりと過ごしている。
『イカカモネは正当な評価を受けさせる。妖怪大臣を冤罪でムゲン地獄に落とし、人間界を支配しようとしたのに、ただ働き100万年は軽い。』
「ゲソヒゲール様はあなたの忠臣ですからな。ようやくこの時が来たかと怒りを溜め込んでおりまする。」
『ストーリーをスムーズに進めるのと、俺の知識の管轄外な故にゲソヒゲールのムゲン地獄行きは避けられなかったが、冤罪の証拠と俺の力を見せることでゲソヒゲールは本来の姿を保つことができた。今では模範囚人のそれだ。』
この雨で誰も登ってこないうえ、開放的な空間だからか2人の口は何時もより軽い。最も機械から発せられる音はあの御神木の奇跡からずっとこの調子なのだが。
『しかし、本番は雨だったがお疲れ様だ
カイム
「またその話でござるか。拙者はその時たぞのへ赴いていたがゆえ、暑さで腐った飯を出した会合に参加していないと言っておろう。」
カイム射手と呼ばれた暗い水色の巻物が忍者の格好をしている妖怪が音の発生源、愛用のスナイパーライフルを指で弾く。その音が入ったのか通信先が生返事をすると、カイム射手が言葉を重ねた。
「拙者がここまでやれたのは結界破壊の妨害を拙者に任せてくださったのと、強力な助っ人と見届け人のお陰でござる。」
カイム射手は後ろを振り向く。そこには4体の妖怪がいた。
1人は白に橙の縁取りを施された和風甲冑を着た男性、
もう1人は望遠鏡の前を陣取り、側に画材を広げデッサンする男性、
残りはクーラーボックスの前を陣取るホワイトグレーの空迷彩柄パイロット服を着た男性と、
その妖怪を退かそうとする青い空迷彩の整備服を着た男性が言い争っていた。
「……」
「ここをこうして……いやこうすればもっと……」
「おい!そろそろ退きやがれ!オレはヨカコーラが飲みたいんだ!」
「そろそろ帰る時間だよ兄さん。こんな雨じゃ飲み物を楽しめないでしょ。」
『賑やかだなホント。俺を見習ってほしいぜ。』
「「「「「いやあんた御神木のとき発狂していたでしょ。」」」」」
「あの銭ゲバの通信が終わったあと両手にサイリウムを持って、おんぎゃあああああアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!!!!!!とかチピチピチャパチャパァァァァァ!!!!!!!等と叫びながら乱舞していたの忘れてないでござるよ?」
「踊りつかれたのかどこからかマイクを出して、」
「なぜか始まる約48時間ノンストップカラオケ。(美声)」
「歌いきったときに出たのは構成員全員に丸1日休暇と特大ボーナス。ご馳走さまですお陰で画材を買えました。」
「ただ、迷惑だった。あんたの嫁も子も困惑してたと余は思う。」
『その節はマジですみませんでした。』
スナイパーライフルにこの場に居る妖怪の視線が集まる。その結果お礼を述べやすくなったのかカイム射手は甲冑を着た妖怪と話し始める。
「そなたのお陰で拙者はここまでの射手になれたでござる。銃の取り扱いを知らなかった拙者がこの成果を上げれたのはそなたの教育があったからこそござるよ。」
「もはや卿の銃は余が教えたそれとは異なる。善し悪しは言わん。ただその道を行け。」
甲冑着た妖怪が語ると画家の妖怪が続いた。
「私が設計した銃の使い心地はどうかな?」
「最高でござる。拙者のステルスにここまでついてくる武器は手裏剣以外無いでござるよ。」
カイム射手は銃の感想を述べると兄弟の妖怪に視線を向ける。
「ミツマタノヅチの時の補佐本当にかたじけない。拙者1人ではあの命中精度は出せなかった。」
「町中駆け回っていかなる場所でも君1人で射てるようになったし、最近の結界破壊の妨害はここから狙撃していたけど、本番で失敗したくないの分かるからさ~。」
「君1人なら弾速を上げることしかできないしな。でもオレ達ニョロロン族がサポートすることでホーミング弾さながらの命中精度になるなんて不思議な技術だ……。」
その時雨が止み一瞬光が射す。その光にカイム射手の鉢巻きにある金具が光を反射した。
時同じくして甲冑妖怪が身に付けている刀の鍔、画家の妖怪の画材バッグのボタン、兄弟の妖怪の左胸にある、
「うぉ眩し。」
「ハハ、ヨカコーラをがめるからだバカ。」
「さて、あいつも新作出したしもうちょっと描くか……」
「……眠い。」
「拙者はそうだな、虫取りでもするでござる。」
『やっぱ元気だなお前ら。』
おおもり山山頂ではしゃぐ妖怪達……彼らと子供たちがぶつかるのはまだ先の話……。
妖怪ウォッチ2か3を持っている人はおおもり山山頂の展望台を調べてみてください……
小学校のグラウンドならがっつり狙えます。
次回妖怪ウォッチ1第4章