どうやらバクの姉妹はワタシたちを夢に出てきた怪物か何かと勘違いしているようだ。寝ぼけているのか、よっぽど怖かったのか、互いを守るために排除せんとワタシたちに襲いかかる!
「2人とも下がっているニャ!」
「キュピ~ン!(ボクらの出番だね!)」
バク達が大きな口でワタシとケータくんに噛みつこうとしたとき、ジバニャンとツチノコがインターセプトを決め、膠着状態に入る。ワタシたちはその内に距離を取り、2人が戦っている様子を見ることができる位置に移動する。ジバニャンとツチノコは十分に離れたことを確認すると、噛みつかれそうな状態から投げ飛ばした。
「「グェッ」」
「トモダチを傷つけようとしたお寝坊さんはオレっちがはっ倒してやるニャン!」
「キュピ~ン!(荒っぽいのは許してね!)」
この子達の悪夢を晴らすために、ミツマタノヅチを下した刺激的なアラームが今鳴り響く!
「ニャー!」
「キュピ~ン!」
ジバニャンとツチノコは二手に別れ、それぞれのバクに向かって攻撃する。ジバニャンは姉バクを殴り、ツチノコは妹バクに落石を浴びせた。
「ぐうぅ」
「思ったより痛くないねぇ」
しかし効果は薄い。丸い体が上手く衝撃を逃したのだろうか。そう観察しているとバク達が口を大きく開けて妖術を放つ。
「「それっ!」」
彼女たちが放った妖術が直撃し、ジバニャン達はふらつく。そして妖術を放ったバク達は回復していた。
「吸収系の術か!しかもあの威力ネガティブーンより強そうだぞ!」
ケータくんがバクの妖術を見て叫ぶ。
妖術には属性が有って妖怪にはそれの耐性や弱点が種によって異なる。
しかしそのルールに属さない妖術も存在する。
それが回復と吸収の術。例えるなら無属性の妖術で耐性や弱点が一切存在しない妖術なのだ。
その内吸収系の術は与えたダメージの一部を回復するという性質を持っている。
バクの姉妹が回復したのはジバニャンとツチノコのエネルギーを吸収したからだろう。
そしてこの妖術は体力を吸収する事に重きを置いているためか他の妖術と違って威力が少し低い代わりに発生が物凄く早い。
一応回避できるし、数が居るなら相殺もできるけど、今のメンバーじゃ回避も難しいし、さらに増援を喚ぼうにも、昨日の疲労がある状態で手伝ってくれるかどうか怪しく、喚べたとしても大人数を吸収されてしまったら元の子もないので、苦しいけどジバニャンとツチノコに頑張ってもらう。
「ニャー、上手く当たらない。昨日の疲れがこんなところで!」
「キュピ~ン。(対して相手は寝ぼけているから互いに本調子ではないけど、渡り合っている分素の戦闘力は高いね。)」
ジバニャンとツチノコの動きが変化し、動きのロスが少なくなる。余分に動いて体力を消耗しないための戦略だ。吸収の術の使い手が2人だから長期戦は避けられない。しかも疲労が溜まっているならガス欠まで当然短くなっている。
速攻できる時間と余力はない。ならば長く戦えるように戦法を切り替えるのはごく自然のことだ。
幸い相手は寝ぼけているため連携がほとんど取れない。そのためこの戦い方は刺さり、とりあえず大敗することはなくなった。少しずつダメージを与え、じわりと迫っていくジバニャン達。しかし、この状況を変えたのはバクの姉妹だった。
「来るな……来るな……こないでバク……」
「姉さんどこ……?もしかしてあいつらにくっ食われ……!」
悪夢の恐怖が限界に達したのかバクの姉妹が狂乱する。長い鼻をブンブン振り回し、所構わず妖術を放つ。先程まで攻撃が当たっても妖術で回復してきた簡易な要塞とは打って変わっての戦法、いや彼女たちの悲鳴だった。夢の中の怪物はこうでもしないと逃れられないと思うほど追い詰めていたのだろう。
しかし、ジバニャンとツチノコは先程と比べてイキイキしている。
「これはやりやすいニャン!」
「キュピ~ン!(暴走ミツマタノヅチと比べたら全然可愛いよ!)」
自我を失って色んな所を攻撃する?スミマセンそれもうやっているのよ。炎と吸収という術の違いはあるけど総合的にみてミツマタノヅチよりマシと判断したみたい。
まあワタシから見てもちょっと発生が早いだけで死にはしない攻撃が打たれまくるより、文字通り一撃必殺の炎を乱射される方がキツイよね。
そう思うとバクの姉妹が妖気を溜め始めた。あれは何度もみた必殺技の合図!
「バクの必殺技はネムケムリ!文字通り相手を眠らせてしまう煙を出します!しかも二体同時ですから範囲も相当なものになりますよ!」
つまり広範囲の睡眠付与ということ。そんなものが出されたら逆転負けされちゃう!ジバニャン達はそんなことをさせるかと地面を蹴るけど、ツチノコのパワーが疲労で足りなかったのか、暴走ミツマタノヅチのノーダメージの奇跡のつけが来たのか、ジバニャンがずっこけてしまった。
「ニャー!?」
「キュピ~ン!?」
ツチノコが落石を当てるけどチャージが止まる様子はない。このままだと必殺技が打たれちゃう!
ワタシはネムケムリを攻略する方法を考える。召喚、は間に合わない。ウィスパーを盾にする、間に合わない。色々浮かべる。でも時間が圧倒的に足りない。
敗北。
この言葉がワタシの脳裏によぎる。必死のバク達は加減を知らない。眠らされた後めちゃくちゃにされるだろう。その未来を想像して固まっていると、視界の端にそれは映った。
ケータくんが真っ先に、バク達に向かっているところを!
「っ!?ケータくん!!?!」
ケータくんはインターセプトしてバク達の目の前に立つ。
そしてネムケムリが発射されるであろう鼻や口をケータくん自身に向けた!
「「食らえネムケムリ!!」」
ワタシたちが声を発する間もなくネムケムリが鼻から放出される。ケータくんは自ら体を張ってネムケムリが広がらないようにした。これによってネムケムリがジバニャンとツチノコに当たる事は無かった。だけどケータくんは……
「やった。倒せた……!」
「勝てる、勝てるよ。あの怪物に……!」
寝ぼけているバク達は嬉しそうだ。今ワタシがどんな思いをしているのか知らないで……!
そう怒りを募らせているとケータくんから声が聞こえた。
「ジバ、ニャン……頼、む!」
ケータくんがそう言って倒れると、必殺技の構えを取ったジバニャンがバクの姉妹に突っ込んできた!!ジバニャンはケータくんの後ろで必殺技の準備をしていたのだ。
「オレっちのトモダチの思い、無駄にはしないニャン!!!」
「ひゃくれつ肉球!!!!」
ネムケムリを当てて安堵していたバク達に取っては寝耳に水。車を倒すために鍛えた肉球の連打ががら空きのボディに突き刺さる!
「「ああーー!?」」
「ここは悪夢の舞台じゃない、さっさと目覚めるニャン!」
そう言ってジバニャンはフィニッシュブローを決めるとバク達はひっくり返ったのだった。