ウィスパーがフミちゃんの方へ向かい、オレはトモダチ妖怪を召喚する。ミツマタノヅチの時と同じように数の暴力とはいかない。そしてオレとフミちゃんを狙うやつらの横やりを考えてここは軽傷で突破する!
どうやらのぼせトンマンは桶でへそを隠している。あそこが弱点だと思うけど、あのガードを突破するのは難しそうだ。
「ならばまずは頭を狙うニャン!」
ジバニャンの掛け声にホノボーノを除いたトモダチが攻撃する。へそが弱点でも頭は急所だから効果はあるようだ。
「やるな……なら纏めてぶっ飛ばす!」
のぼせトンマンはジャンプしてヒップドロップする。あれほどの巨体なら衝撃でもそこそこのダメージを与えられるだろう。事実近接攻撃していた妖怪の3/4は食らってしまった。
しかし、種の特性上身軽だったかたのり小僧はのぼせトンマンの肩に取り付き、蹴りを食らわせる。
「ん?何だ軽いな。」
あっという間に払いのけられたかたのり小僧は苦い顔をする。かたのり小僧はその蹴りで肩こりを起こす妖怪だがあそこまで大きい妖怪だと効果が薄いようだ。
「チクショー!私が死ぬ思いをした攻撃を避けたのに、肝心の蹴りが効かないなんて、少しはガキに優しい世界になってくださいよ!」
ヒップドロップをもろに受けた妖怪じんめん犬が吠える。
トイプードルに眼鏡をかけたおっさんという一種のギャグのような見た目をしている妖怪だが、前世は妻子持ちのこともあって根っこは優しい妖怪だ。
……妖怪になった経緯が悲劇のそれだから多少自分本意になって言葉遣いが荒くなっているけど。
「やかましいな。滑ってろ。」
のぼせトンマンはじんめん犬に石鹸を投げる。また直撃したじんめん犬は投擲の威力と石鹸の滑りもあって部屋の端までふっとんでしまった。
「何で私ばかりー!」
じんめん犬の叫びがいい感じにヘイトを担ってくれたのか、他の妖怪達が頭に攻撃を重ねる。
「こいつを肩に食らわせられないのが、残念だ!」
かたのり小僧の蹴りがいつもより気持ちのいい音を鳴らす。どうやら良いところに入ったらしい。
「だぁ!痛い!頭を狙うな!!」
のぼせトンマンはたまらず桶で頭をガードする。しかしそれはのぼせトンマンの弱点をさらすことを意味していた。
「頭隠して尻隠さずならぬへそ隠さずだな!正に無用心!」
ヒップドロップの余波で思った以上のダメージを受けていたぶようじん坊がへそに狙いを定める。
赤いふんどしと鍋を被っただけの装いに身の丈はあるつまようじ1つで戦に赴く姿は無用心の体現者。
俗にブーメランと呼ばれる言動だが今ののぼせトンマンは正にそれ。
ぶようじん坊は躊躇わずツンツンようじを放ち、他の妖怪も攻撃する。
「ああーー!?へそは、へそはーーーーー!?!」
弱点をつかれてのぼせトンマンは完全にへたれてしまった。隙だらけの全身にトモダチ妖怪の目つきが変わる。
「おっさんかみマックス!ざまぁみやがれこの豚!!このままへそも頭も殴りまくるのだ!」
じんめん犬はハイになって言動はおかしくなっているが、のぼせトンマンの様子がおかしい。へそを攻撃する度に体が赤くなっているのだ。ジバニャンとドンヨリーヌは異変を察知したのか顔を攻撃する。
オレはその勘を信じ、ウォッチの機能で妖怪の攻撃を集中させるピンをのぼせトンマンの頭に射した。
「あのままへそに攻撃するとマズい事が起きる!頭を狙って!」
その言葉に3人はハッとしたのかのぼせトンマンをよく見る。
その姿は爆発寸前の爆弾のそれであり、あのままへそに攻撃していたらとてつもない攻撃がオレたちに襲っていたかもしれない。名采配だとトモダチがオレを褒めると頭に集中放下した。
「くそっ!茹で上がる前に冷めちまった!」
やはり体色の変化は一種のボルテージらしい。すっかり元の色に戻ったのぼせトンマンは元の体勢になってへそを隠す。
「頭へそ頭、頭へそ頭の順で攻撃するべきニャンね。」
「種がわかってしまえばこれ程無用心な事はないな!」
トモダチがギアを上げる。このまま押しきってしまえば勝てる!
……だからこそオレたちは気がつかなかった。小さい排水口からこちらを覗いている銃口を……
◇◆◇
ワタシは夜の団々坂を走り回っていた。銭湯の外から感じた不穏な妖気を見つけるためだ。みちび鬼を喚ぼうとしたけど、肝心のターゲットはテレポートしているから導けないと拒否された。それでもワタシは霊感と霊媒体質があるから割とすぐに見つかると思っていた。しかしあの気配以降テレポートに加え隠すのが上手いのか全然見つからない。
ワタシはスタミナの管理を失敗して息を切らしているとウィスパーが飛んできた。
どうやらケータくんはのぼせトンマンという妖怪と戦っており、チョーシ堂の店主の勝負下着はこの妖怪が持ってたらしい。返してもらおうとしたら逆ギレして襲いかかってきたとか。
とりあえずケータくんの現状はわかったので、ワタシは奥の手を発動させる。意識を集中させて妖気を把握する技。この技は下手をすると妖怪の感情や力に当てられてワタシが壊れてしまう可能性があるから1人では絶対に使わないって皆と決めた。しかしウィスパーが来たからそれを解禁する。そしてワタシが感じたのは、
おびただしい数の悲鳴、痛み、困惑、助けを求める声だった。
『痛い!痛くて死んじゃうよー!』
『お父さん!お母さん!死なないで!』
『仲間が皆……!お前のせいでグギャアアアアアア!!』
『彼氏が、彼氏があいつに食われ……!いや、来ないでイヤーー!!』
『まるで瞬間移動だ!団々坂の全てがヤツのテリトリ、グワァァァァァァァ!!!』
『あの怪物が現れて何時間経った……6時間!?一帯どれ程の被害、あれ?前がみえな』
「ぁぁぁぁあああああ!?うぷ……オエッ……!」
団々坂中の妖怪が感じた全ての情報がワタシに叩き込まれる。致命傷を受けて死の運命に恐怖する妖怪。目の前で身内が殺された妖怪。仇討しようにも返り討ちにあい殺された妖怪。恋人と同じ末路を向かえた妖怪。訳もわからず殺された妖怪。目の前に現れ、死んだことに気がつかなかった妖怪。数多の情景、匂いや音、その時に得た主観的な感情全てがワタシの脳に注がれた。
その濃さと量に耐えきれず、ワタシは吐いた。乙女としてみっともない姿をさらしてしまった。ケータくんがココに居なくて良かったと思う。ウィスパーがどこからかティッシュを取り出し吐瀉物を拭き取る。ワタシはそれを確認するともう一度霊感をフル稼動させる。正気ですか!?とウィスパーの声が聞こえるけど気にしない。だって妖怪達が泣いているもの。ワタシもケータくんも、そういうのは放っておけないから!
『兄ちゃん!死んじゃダメズラ!……
「見つ……けた!」
億万の悲鳴を掻き分けてついに不穏な妖気の主を見つける。瞬間移動か何かで今まで捉えきれなかったけど、兄を傷つけられて怒った妖怪が上手いこと引き止めてくれたお陰で特定できた。もう瞬間移動しても逃すことはない。
ワタシはその方向へ全力疾走する。記憶を見た限り兄の妖怪はまだ助かるからだ。他の妖怪は一撃で葬られていたり、ワタシがつく頃には事切れていると確信するほど重傷だったりと助かる見込みがない子達だけど、あの子なら助かる。かなりギリギリだけど助かるなら足を止める理由はなかった。
そうしてワタシは団々坂の団地に、血だらけでうずくまっている白い犬の妖怪と稲妻を出している黄土色の犬の妖怪に、無数の触手が生えた黒いスライムが稲妻を払い除けている所を見つけた。
「ワタシのトモダチ!皆出てきて!!」
ワタシはトモダチを呼んで、白い妖怪の治療をする。バクロ婆のいやしの術により傷は塞がり、白い妖怪は健やかな寝息をたてた。
「っ!?人間!?どうしてココに。」
「ワタシは文花。ウォッチ使いよ!ここからワタシたちがあのスライムの相手をするわ。こんなの放っておけるわけ無いじゃない!」
ワタシがそう黄土色の妖怪にいうと黒いスライムは見定める様に触手をこちらに向けた。ワタシの霊感を知っているのか、あるいは本能が危険と判断したのか、逃げる素振りは見せない。
ワタシは戦闘体勢を整えようとした瞬間、黒いスライムがバクロ婆の目の前にワープし、その触手を振り下ろすのだった。
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ケータくんと一緒に行動するガシャ限Sランク妖怪[1体のみ!]
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オオクワノ神
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犬神
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百鬼姫
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心オバア
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虫歯伯爵
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ふじみ御前