銭湯から来た熱気によってワタシたちを包んでいた恐怖は消えた。
しかし黒いスライムの変化は見た目だけでは無いようで、通常攻撃にワープを混ぜてきたのだ。攻撃手段こそは凶悪性能の触手を振り回したり、その体を使って押し潰したりと少しアグレッシブになった程度だけど、ワープによるヒット&アウェイを繰り返されたらいくら防御力が低くても攻撃が当たらず負けてしまう。
だからワタシはワープの仕組みを解明するため戦闘を観察する。
「びゅんびゅん跳び回ってうらやましい~。」
「こっちに来なよ~。可愛がってやるからさ。」
「誘いかたのセンスが無いわよみちび鬼!ほら、私のファッションを見なさい!」
「キュピ~ン……(カオスだ……。)」
あまりの混戦具合に目がつかれる。触手を避けつつ近接攻撃したり妖術を放ったりと大忙し。しかも変化してからスライムに一回も攻撃を当てられていないから心労が見え始めている。
そしてとうとうバクロ婆が被弾してしまった。
「バ、バ……」
スライムの触手には攻撃した相手を自動的に取り憑くことができる。ワタシはバクロ婆のおはらいしつつ、スライムの動向を見る。
『ババーン!』『キュピ~ン』
スライムがバクロ婆とツチノコを声を模倣するが意味が込められているのか怪しい。理解しているなら厄介だけど支離滅裂な文構成だから怪しいところだ。ただ鸚鵡返しするだけじゃ……
「鸚鵡返し?いや返す?」
ワタシはスライムをよく見る。そうして理解した。ワープのメカニズムを!
ワタシはバクロ婆に耳打ちしてバクロ婆が大声を発する。スライムの行動は変わらない。
そしてその瞬間、ワタシたちの勝ちが確定した。
スライムがワープする。そしてその目の前には、攻撃の準備をしたみちび鬼がいた。
「ようこそ!」
みちび鬼はその大きな右手でスライムをぶん殴る。スライムは思わずたたらを踏み、またワープした。そしてその目の前に、今度は木魚バチを振りかぶったつづかな僧がいた。
「おまえの攻撃は二度とつづか~ん!」
木魚バチが脳天?に炸裂する。当たりどころがよかったのか、スライムはスタンして妖術で攻め込まれる。正気に戻ったスライムがワープすると、しゃれこ婦人が必殺技の構えをとって、またまた正面にいた。
「シャレオツ☆傘刺し!」
猛烈な貫きの連続攻撃がスライムを襲う。それに堪らずスライムがダウンすると各々得意な攻撃でスライムにダメージを与えた。
さて、ここまで全てワープのカウンターに成功した。その理由はただ一つ。
このスライムは敵の目の前にしかワープできないからだ。
単体でもワープの急接近でなす術もなく刈られ、隊列を組んで戦おうにも真ん中の目の前にワープすれば一気に崩せる。味方の死角を誰かが見てしまったらその目の前にワープし、回転攻撃等で一網打尽されるだろう。
しかしワタシたちはスライムの攻撃に抗う術を持ち、長期戦に耐えられるよう鍛えてきた。
対してスライムは奇襲に特化していて、種がバレればミツマタノヅチより弱い。
スライムの武器をことごとく封殺すればこうなるのは自明の理。あとはこのまま倒すだけ!
「スライムの言葉に惑わされないで!仕上げにいくわよ!」
ワタシの声にトモダチが応える。最早手札の無いスライムになす術なく、
「ババン、ババーン!(呆気ない幕引きさね、愛のビンタ!)」
スライムはトモダチの猛攻に倒れ伏し、異音をあげながら消滅した。
「ケータくん勝ったよ!……ウィスパー、ワタシは他のスライムの被害者の所に行くからケータくんを頼むね!」
ワタシはそう伝え、夜の団々坂を駆けるのだった。
◇◆◇
「オイオイ汗だらだらだぞ。いいかげん諦めたらどうだ?」
気温が高まり続ける銭湯、難攻不落の大型妖怪、それを崩そうと頑張るトモダチ達と、それを眺めているだけのオレ。体力の損耗を避けるために、声を潜め、体を動かさない。ただじっと、じっと大型妖怪との戦いを見つめていた。
「うわっ何ですかこれうわっあっつ!」
オレは声がした方向を見るとウィスパーがいた。ああそうか、フミちゃん勝ったんだ。ならオレも勝たないと、でもまだ足りない。勝利への道は見えている。でもあと一手、あと一手が欲しい。それがあればドミノ倒しで一気に勝負が決められる。でも届かない。
フミちゃんが居れば話は別だろうけど、外の妖気の主によって団々坂はいま大変な事になっているらしい。オレの事は気になるけど、オレが勝つと信じてそうした訳だ。なら勝たないと、オレが勝つんだ。
「あん?あの白いのか。ソイツが何かしてくれる……わけではなさそうだな。」
頑強な桶でオレのトモダチ達を打ち払う。それでも諦めずトモダチ達は大型妖怪に飛び込んでいく。何度も傷つけられた。痛い思いをした。それでも諦めず大型妖怪に飛び込んでいく。勝つために飛び込んでいく。しかし、大型妖怪はそれに付き合うほど暇ではなかった。
「フラストレーションが溜まるぜ、もう焼いてしまうか!」
大型妖怪の妖気が高まる。必殺技の合図だ。
「ビバ!ゆであがりですね!本来はのぼせトンマンが茹で上がった際にできるエネルギーを利用しますが、ぬるい攻めにキレたようですよ!」
マズいな。まだ作戦が決まってないのに。ガードが固いのぼせトンマンを突破するにはこれしかないのに!
焼死
その単語がオレによぎる。オレはまだ倒れるわけにはいかない、負けるわけにはいかないと発破をかけようとした。あまりの熱で体を動かすのも苦労する。でもまだできることは……
「そんなもんねぇよ。じゃあな!」
妖気が高まりきった。トモダチ達はあまりの出来事に動きが固まる。走馬灯でも見ているのだろうか。オレもそれを見ることになるだろうか。そんなくだらない事を考えていると、
ウィスパーの後ろから強力な妖気が2つとんできた!
「ひとだま乱舞ズラ!」
「風来サンダーズラ!」
青白いひとだまと雷が大型妖怪を襲う。
オレは驚いて後ろを振り向くと、白に青いひとだまが生えている犬の妖怪と黄土色にこげ茶色のひとだまが生えた犬の妖怪がいた。
「オラはコマさん!こっちは弟のコマじろう!あんたを助けにきたズラ!」
「おっきい妖怪が態勢を崩しているズラ!攻めるなら今ズラよ!」
コマさんとコマじろうが大型妖怪の方を示す。
そこには必殺技がキャンセルされオーラの出が悪くなっていた大型妖怪がいた!
「「いまだ!」」
ぶようじん坊とかたのり小僧は力を合わせ、大型妖怪の肩を攻撃する。すると、大型妖怪の肩から鳴ってはいけない音が聞こえた。
「アイタァ!?」
大型妖怪の叫びをぶようじん坊とかたのり小僧は無視して、もう一つの肩を攻める!
「頼む!かたのり一族の維持を見せてくれ!」
「言わずともやってやらぁ!肩たたき拳!!」
ぶようじん坊の叫びに応えるようかたのり小僧の必殺技が大型妖怪のもう片方の肩に直撃する。すると、もう片方の肩からも鳴ってはいけない音が聞こえた。
「アイタァァ!?!」
そして大型妖怪のダウンが終わると異変が起きる。大型妖怪の腕が上がらず、弱点のへそが丸見えになったのだ!
そう、これがオレの作戦、へそのガードを崩せないなら、肩を壊してガードできなくすればいいじゃないだ。理想としてはのぼせトンマンのように頭をガードさせることだった。
しかしオーラで頭をガードされる以上それは難しい。なら肩こりさせて桶のガードを剥がせばへそに攻撃できるよねということだ。
それをするためにかたのり小僧と、途中からぶようじん坊に任せたけど、パワーが足りなさすぎてこんなに時間がかかってしまい、命の危険にさらしてしまった。トモダチたちにはあとで詫びようと思う。
「悪いなお前ら、無用心にするためここまでかかってしまったぜ。」
「いえ、よくやりました。これでまな板の上の豚です!」
「正直途中でドンヨリしてしまったけど、やれるって信じてたわジョバーン!」
「ほのぼのタイムまであと少しボーノ!」
「おいおいその祭りに至る最後の行程に混ぜてくれよ!まだやれるぜ!」
「さっさと終わらせて、オレっち達は寝るニャン!」
浴槽のマグマの熱気に負けないくらいトモダチたちは熱くなる。その瞳と背中からこう言っているようだった。ここで決めると!
「皆、やってしまえ!」
『オーーー!』
がら空きのへそに、肩を治すためかオーラが薄くなっている頭にトモダチたちの技がささる。その暴力の海に大型妖怪は声をあげる間もなく、
「ひゃくれつ肉球!!!」
その猛攻に倒れ、消滅するのだった。
◇◆◇
ひでぇ、ひでぇよあいつら……オレはただ風呂に入っていただけなのに、ここの銭湯で見つけたお気に入りの下着をつけて浸かってただけなのに!あの追い剥ぎども、オレの命を、奪いやがって……。
オレは人間に認識されないし、図体がでかいからわざわざ夜銭湯が閉じるときに入ってやってるていうのに、下着一つでこんな騒ぎを起こすか普通!?
ああ、でもあの力はよかったな。もっと高い風呂に入れるようになったし、簡単に風呂の湯加減をいじれるようになったんだ!追い剥ぎどもをぶっ殺したらいろんな所をオレ好みの湯加減に変えてやろうと思っていたけど、もう無理なんだな……。
妖怪ワールドの風呂を踏破したから人間界にきて、好みの湯加減があるところはあったけど、そこに浸かる人間は居なかった。それはそれで独占できるからいいけどよ。
願うなら、そうだな欲を言うなら、オレが見えなくても、声が聞こえなくても、同じ風呂に浸かる、人間のトモダチが欲しかったなぁ……。
ケータくんと一緒に行動するガシャ限Sランク妖怪[1体のみ!]
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オオクワノ神
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犬神
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百鬼姫
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心オバア
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虫歯伯爵
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ふじみ御前