カフェ・オ・シャレンヌ。
ここさくら中央シティサンライズ通りにあるオシャレを極めしものが集うアルカディア。見た目は平凡、センスも平凡、フミちゃんが自慢できるよう意地と根性で学業と運動を頑張っているオレには程遠い場所だ。
だけどオレは死にかけた。屋敷で一回、銭湯で二回、そして今にいたるまでフミちゃんに迷惑をかけて幾星霜!オレのライフはマイナスのそれ!今更恐れることあるものか!行くぞ!!トツゲキぃいいぃいぃいい!!!
カランカラン♪
アカンもう心折れそう。
大きい黄色のタイルと小さい水色のタイルを組み合わせることで海辺の砂浜を連想させ、大きなガラス張りの壁が、西にあるサンセットモールからでる華やかさと東から見える海の穏やかさをうまいこと馴染ませている。
「やっぱりオ・シャレンヌいいね。ここでスイーツを食べたら特別な気分になれそう♪」
流石はクラスのマドンナフミちゃん。この環境でも一切動じていない。
「あれ?ケータくん……もしかして緊張している?」
いたずらっ子のような笑みを浮かべながらフミちゃんはオレの顔を見る。オレは思わずドキッと震え、フミちゃんは口に手を添えた。
「いろんなオシャレなとこに何れ行くことになるからこういう所で慣れなくちゃ。頼りにしているからね、旦那様♪」
タスケテオレの彼女が強すぎる。今日という日は罰としていじり倒す気だ。オレはフミちゃんに背中を押されカウンターに立つ。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
緑色のエプロンをつけ、メガネをかけた女性が話しかける。オレは上ずった声で特大ジャンボパフェを注文した。
「よくできました♪」
フミちゃんは耳元でそう囁いた後ニヨニヨした顔でオレを見る。今オレの心はフミちゃんにしきられている……!
注文を終えたオレたちは適当な席で向かい合うように座り、2人で話をする。そしてその内容は外でしたまじめな話と打って変わって趣味の話とか、友達の話とかとにかく沢山楽しい話をした。
なおオレは浮いた心はそのままだけど声は限りなく落ち着けるようにした。これ以上からからかわれると男の子のプライドが消滅する!
「今度クマとカンチ、後マオくんと一緒にサッカーするんだ。」
「へぇー!楽しそう!クマくんとカンチくんならわかるけど、マオくんも居るんだね。」
「うん、どうやらオレたちの影響でサッカーを始めたみたい。」──────────
「バクが夜家に来たじゃない?それで他のトモダチが遊びにいきたーいってウィスパーが言ってたよ。」
「うーん、オレは問題ないけどフミちゃん大丈夫?ポルターガイストとか起きたときオレに泣きついたことあるよね?」
「トモダチになった妖怪は見えるし、周りに迷惑をかけなければ大丈夫だよ。……懸念点があるとすればお菓子とか置いておいた方がいいかなと思って……。」
「あー、妖怪の好物とか考えると何千円も飛ぶもんね。妖怪は倒れると何故かお金を置いていくから、妖怪が落としたお金はできれば妖怪に使うようにしてるといっても、完全に満足とはいかないよね……。」
「そこら辺は小学生の限界だよね……でも皆が家に居るのは楽しいから、ワタシは頑張ろうと思うけど、ケータくんはどうする?」
「オレも同じだよフミちゃん、食べた後でもどうしようか考えよっか♪」─────────────
「お待たせしました、特大ジャンボパフェです♪」
他愛ない話をしていると遂にその時は来た。
まず目に引くのはパフェをパフェたらしめるチョコシロップのかかった特大ソフトクリーム。食べた人を陥落させる甘味の象徴が悠然と輝きを放つ。
そして色とりどりのアイスクリームが食べる者のワクワクを誘う。
そして付け合わせたイチゴや菓子類がクリーム達が持たない食感を与え、至福へ誘うために鎮座している。
そしてグラスの中も侮れない。数種類のベリーを掛け合わせたゼリーの層とそれと上手くマッチする甘さに仕上げたクリームの層、そしてそれらを絡め別の味わいへと変えるスポンジやフレークの層。
このパフェを構成する全てが甘さのPerfectへ至るための回答にしか見えない。
これが、その量と味によって一人で食べきれたものは居ないといわれている、カフェ・オ・シャレンヌの特大ジャンボパフェである!
「うわぁスゴい!」
「本当にスゴイ量だ!特大ジャンボと言うだけはある。」
普通のパフェの2倍はあると思える特大ジャンボパフェはその分テーブルを占領している。オレたちはその姿をしっかりと焼き付けた。
「「いただきます。」」
オレはスプーンを取り、どこを食べようか選ぶ。そしてオレは特大ソフトクリームに向けてスプーンを運んだ。そして一瞬の抵抗の後スプーンは白い塊の一部をいただく。そしてオレはそれを口に運んだ。
「~~~~~~!!」
超濃厚なコクと、牛乳本来の味の深さによる、純然たるミルクの力!そこにチョコレートシロップによるほろ苦い香りが鼻腔を突き抜ける!
「ん~!!美味しい!」
フミちゃんは頬に手を当てて美味しそうにしている。スプーンの跡からしてアイスクリームとイチゴを一緒にいただいたようだ。フレーバーによる多彩な味とイチゴの酸味がマッチしてさぞお口の中が幸せなことになっているだろう。
オレは次に抹茶フレーバーのアイスをその下にあるクリーム層と一緒に口にする。チョコシロップとは違う苦味と抹茶の渋みがアイスクリームの甘さを際立たせ、それをクリーム層を絡めることでソフトクリームとは違う方向の柔らかさが、舌に甘さを届けている!もうこれで満足しそうな味わいだ!
「つ、ぎ、は~、チョコミントにようかな~!」
どうやらフミちゃんは次にチョコミントアイスクリームを食べるらしい。ミントの清涼感がチョコとアイスクリームの甘さを押し出すのが特徴のフレーバーだ。
オレはチョコレートアイスクリームをイチゴと一緒にいただく。チョコシロップとは比べ物にならないカカオの香りと苦味がミルクのまろやかさと綺麗に折り重なり、それがイチゴの甘酸っぱさとプチプチとした食感が渾然一体となり五感を楽しませる!
オレはその興奮が抑えられぬままストロベリーアイスクリームに手をつけようとした。その時である。
カキンッ……
「「あっ……」」
オレのスプーンとフミちゃんのスプーンが宙でぶつかった。どうやらフミちゃんもストロベリーアイスクリームを食べたかったらしい。
気まずくなってオレが固まっていると、フミちゃんが何か思い付いたような顔をした。そしてストロベリーアイスクリームをスプーンで掬ったあと、なんとオレに差し出してきた!
「はいケータくん。あーん♪」
理性の城が砂のように崩れそうな気がした。しかしあーん自体は小さいの頃から何回かやっているのでかろうじて堪えることができる。問題はこの店の中でやるには結構ハードな事だ。あまりの出来事にオレは一瞬放心した。その時結構ざわめきが聞こえていたが聞かなかったことにしつつ、半ばなげやりでそのストロベリーアイスクリームを頬張る。
最初からイチゴがクリームに溶け込んでいるからかバニラより甘酸っぱくイチゴの香りが濃い。しかし普段よりミルクとイチゴの甘さを感じるのはフミちゃんがあーんしてくれたからだろうか。
オレはアイスクリームを飲み込んだあと、お返しとして残り少ないストロベリーアイスクリームを掬い、フミちゃんに差し出す。するとフミちゃんはためらい無く口にして、美味しそうに頬に手を当てる。
「ふふ、甘~い♪」
その感想はアイスクリームの味に対してか、オレの魂胆に対して言っているのかわからなかった。考えをリセットするためにバニラアイスクリームを中心にいくつものフレーバーの残りとクリーム層を一緒くたにして混濁とした甘味の濁流に溺れたあと、クリーム層の下にあるベリーのゼリーを食べる。
プルプルとした感触にベリーの甘酸っぱさが飛び込んできて、掬う際に混ざったクリームがいい感じのアクセントとなって脳を蕩けさせる。
そしてパフェを食べ進めスポンジとフレークの層にたどり着きふわふわとした食感と小麦の香りが突き抜けるスポンジと、ザクザクとしたフレークを楽しんだ。
また上の層に残ったものを絡め、スポンジの香りにアイスのフレーバーの味を加えたり、フレークをクリームで柔らかくして違う食感を楽しんだ。
1人で組み合わせを考えて食べたり、それをフミちゃんに渡したり、フミちゃんから何回もあーんしてもらったりしてオレたちは特大ジャンボパフェを食べきった。
「フゥ~、食べた~!」
「大満足だよ~♪」
オレたちは会計を済ませ店を出る。この後はさざなみ公園で海を軽く見ながらしおかぜトンネルを通り、ひょうたん池を眺めて家に帰る予定だ。当然その間に何か買うことはあるだろうけど、オレはしばらく甘いものはいいかなと思いつつ海を目指すのだった。
◇◆◇
私達はなやま高校に通う今をときめくJK!現在夏休みENJOY中!とゆーわけで仲良しの2人と一緒にカフェ・オ・シャレンヌにやって来ました!ここのスイーツスゴく美味しいから時間と金に余裕がある時に来るんだよねー!
で、今頼んだケーキを片手に絶賛談笑中!そのテーマは理想の結婚生活!!私は仕事に行く旦那様に何時もいってきますのチューをするのがいい!愛は不滅だと伝えたいもん!他には料理をしている時に後ろからハグされたり、ショッピングの時手を繋ぐのをずっと続けたいというのがあったわ!
でもね、そんな思いすらしょっぱいと思わせるとんでもないものを今日見せつけられたの……。
「ケータくん、あーん♪」
「フミちゃん……それ何回目?」
「えー?何回目かなー?フミにはわかりませ~~~ん?」
「ああ、もう。アム!」
「えっへへ~~。ケータくんやっさし~~。」
「むぅ~~お返しだ。このゼリー&ミックスフレーバーを受けてみろ!」
「は~い♪」
「ヒソヒソ……またやっているわあの2人……羞恥心は無いのかしら。」
「ヒソヒソ……あれは女の子が率先してやってるわ。この子を渡さないと牽制しているのよ。」
「ヒソヒソ……最近の小学生は進んでいるのね……。」
そう、この店にやってきたあの小学生カップルである!注文の時のやり取りから始まり、席に着いた後の楽しそうな会話。そしてあの特大ジャンボパフェを食べる時に見せる幸せそうな顔!スイーツに匹敵する糖度がこの空間を満たしている!お陰で何時もよりケーキが甘いんですけど!!
「まっ眩しい!これが勝者の姿!?」
「アタシ達が夢見る景色とはクオリティが違う!?はっ!まさかあれこそ真実の愛……!」
ほら私の友達も陥落したじゃん!これテロよテロ!尊みのテロよ!訴訟もじさないわ!
罪状はそのイチャイチャでケーキの甘さをより甘くした罪!求刑は末永く結ばれろで決定よ!
そんなこんなでラブラブタイフーンを巻き起こした2人は特大ジャンボパフェを食べきって去っていった。そして私達が思った事はたった一つ。
「「「羨ましい~~~!!彼氏欲しくなる~~~!!結婚した~~~~い!!!」」」
縁結びの神様、どうかあの子達と私達に微笑んで下さい。……おおもり神社は縁結神社でもあるから行こうかな?そんなことを思いながら私達はケーキを食べきったのだった。