ザアアアアア…………
「大丈夫大丈夫……あれから結構妖怪探しに歩いたし大丈夫……」
スッ……ギシッ……!
体重計<やぁ
「キャアアァァァア!!!」
◇◆◇
オレたちはオ・シャレンヌのデートをした次の日から新しい妖怪達を探しに回った。どの妖怪も個性に溢れていて話すだけでも非常に楽しい日々だった。
またバク姉妹の件から生まれたトモダチ妖怪が遊びに来たいという要望もウィスパーを介して承諾、今では毎日誰かは遊びに来ている。オレにはジバニャンが、フミちゃんにはコマ兄弟とツチノコが毎日来ているかな?後は気分次第で来ている。
そしてオレたちはトモダチを楽しませる為に探索を終えた帰りとかにお菓子とか貯めて家に置くことにした。それに合わせてトモダチ妖怪が何かしらプレゼントしてくるようになって……今オレたちのバッグの中はすんごい事になっている。
またオレたちが買ったお菓子やトモダチ妖怪のプレゼントを一緒に食べたりして、お腹が結構キツくなったりした。まぁそれはある意味幸せな事ということで、オレたちは今日もウォッチを使うのだ。
「ケータくんお待たせ!」
何時ものさんかく公園で待っているとフミちゃんが来た。
「なんか気合いが入っているね。新しい妖怪を探すのに夢中になっている感じ?」
「う、うん!そう!そんな感じ!イヤーいろんな所に妖怪が居て大変だなー!」
うん?確かに嘘は言ってはいないようだけど、なんか違うな……。
「ケータくん!行こうか!折角だからダッシュで行くよ!」
「あっちょっと待ってよフミちゃん!」
どこに行くか話し合わぬままフミちゃんは駆け出した。ウィスパーも焦っているようだし大丈夫かな……。
「出た!知ってる妖怪不祥事案件!解決するわよ!」
「Dランクの反応出た!見つけるから待ってなさい!」
「けいけんち玉見っけ♪……けいけんち玉ってどうやってできるんだろう?」
東奔西走。さくらニュータウン中を駆け巡って数時間。休む暇がなかった為オレの足はパンパンだ。ウィスパーも付いていくのに一杯で息を切らしている。オレとフミちゃんはスタミナムを定期的に飲んでいたから息は切れていないけどこれ体に悪いダッシュというかどこか間違っているというか……とにかくこのまま放置するのはマズいと思った。
「ねぇフミちゃん何かあった?」
「っ!な、何も無いよケータくん!」
フミちゃんはその身を抱きしめ、一瞬オレをみたあと目をそらした。その際視線の方向がフミちゃん自身のお腹に向いた。その時オレは察した。いや察してしまった。脳内で天を仰ぎながら言葉を探し、そしてフミちゃんに告げる。
「あの……フミちゃん、オレはね────────どんな状態でもいっぱい食べる君が好きだよ。」
「?!??!」
フミちゃんはオレの言葉に赤面し、両手で顔を隠す。
「ぁあ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ!!!ケータくんにバレたああぁぁぁああ!!!隠したかったのにぃいぃいいい!!─────────そうよ!太ったわよ!ここ最近の、お菓子とプレゼントのせいで!」
そう、フミちゃんは太ってしまった。いや見た目が変わるほどじゃないが体重が重くなる事自体がフミちゃんにとって堪えがたいことらしい。
オレもこの間計ったけどまぁいいかで済ませたし、妖怪を探していく内に落ち着くだろうと考えたから体重は気にしなかった。
でも女の子であるフミちゃんはその変化を許容できなかった。小学生だしこれから大きくなる過程じゃないのと聞くとフミちゃんはこう返した。
「世界一素敵なケータくんの側にいるワタシは理想的でなければならないの。そのために体重を疎かにできないわよ……。それにバレた暁にはこうやって今のワタシを肯定してくれるから、その優しさに甘えたくなくて……沁みるのが辛くて……。万が一体重が理由で、ケータくんが離れたら堪えられないし……もうぐちゃぐちゃになっちゃって……。」
「あのダッシュのように自分を追い込んじゃったわけか。」
コクンとフミちゃんが頷くとオレはフミちゃんを優しく抱きしめる。
「大丈夫だよフミちゃん。体重とかテストの点数とかでオレが離れるわけないじゃん。オレがフミちゃんを選び続けるのは変わらないし、変えさせないよ。」
「うぅ……ケータくん……。」
「フミちゃんが望み続ける限りオレは側にいる。小さいの頃からずっと変わらない。だから今はそれを信じて、一旦休も?ねっ?」
「うぅ……うわぁぁぁん!!ケータくん、迷惑かけてゴメンねぇ!!」
フミちゃんを落ち着かせる為オレたちは駄菓子屋の近くにある休憩所で休憩することにした。妖力茶をフミちゃんに差し出してオレも妖力茶の蓋をあける。夏の暑さにお茶の味が染みたのかフミちゃんは息を整え始める。
「ケータくん、ギューしてもいい……?」
フミちゃんは寂しくなったり不安になったりするとオレに抱きつく癖がある。小さい頃から妖怪と不完全に関わっていたから、その恐怖を抑える為の名残だ。ウォッチを手に入れた今と去年の今頃と比較したらその機会はめっきりと減ったが、今回の件は流石にダメだったようだ。
オレは両手を拡げると、フミちゃんはガバッと抱きつく。オレもフミちゃんの背に手を回し、背中を優しく擦る。
「えへへ~♪ケータくんしゅき~♪だいしゅき~♪」
「オレも大好きだよフミちゃん。ずっと、ず~っと一緒に居ようね。」
抱きしめる度に何度もフミちゃんに伝えた言葉。死が二人を別つまで。いつまでも、どこまでもと。保育園で誓い合ったときからずっと変わらない思いと言葉。その言葉を聞いたフミちゃんが抱きしめる腕を強くする。何度も感じた。何度も聞いた。フミちゃんからの返答。
「ワタシもだよ。ケータくんとず~~っと一緒に居るからね。」
お互い強く抱きしめ、互いの体温を、呼吸を、鼓動を感じとる。お互いが満足するまでずーっと続ける。この状態を強引に終わらせるとすれば授業が迫った時計や、ご飯の時間を伝える両親の声くらいだろう。
「ケータくん……。」
フミちゃんがトロンとした甘く蕩けた顔をしている。オレもきっと同じような顔をしているだろう。視界の端にいるウィスパーがまたかよと呆れるのが見えた。そうやってじわじわと互いの心身を癒していると、
「やってやる!わたしやってやるんだ!アイドルになってやるー!」
団々坂に響くと思える声が聞こえてきた。
「ケータくん、今の声って……。」
「うん。ノリちゃんだね。アイドルとか聞こえたけど……。」
しかもクラスメイトなら尚更耳にはいる。あまりの大きさと声の主にハグの体勢が解かれた。
「とりあえず行ってみようかケータくん。」
「そうだねフミちゃん。」
そしてオレたちはノリちゃんこと中島紀香の居る方へ向かった。