ノリちゃんの声の元をたどったオレたちは銭湯に着いた。銭湯はリセットの力が働いたのか死合を繰り広げた場所とは思えない位元通りになっている。
そこには息を切らしている褐色肌に黄色と白地のキャップを被ったボーイッシュ系の女の子、クラスメイトのミカちゃんこと山口美佳がいた。
「ミカちゃん!ここで何があったの?」
「はぁ……はぁ……ん?あぁ!ケータとフミちゃんか!」
フミちゃんがミカちゃんに話しかけるとミカちゃんが興奮した様子を見せる。何とか落ち着かせるとミカちゃんが喋り始めた。
「実はノリちゃんがアイドルを目指すとか言ってムチャなダイエットを始めたんだ。あの様子だと体を壊さないか心配でさ……。」
その内容にフミちゃんが遠い目をする。さっきまでほぼ休みなしで走ることで体重を絞ろうとしていたからだ。
「う、うーん、それは放っておけないね……。」
「オレたちで良ければ手伝おうか?」
「おっ!それは助かるよ!ノリちゃんはさっき近くのコンビニに行ったんだ。」
ミカちゃんからノリちゃんの行き先を聞くと、オレたち2人はそこに向かった……。
◇◆◇
ワタシたちは団々坂のヨロズマートにたどり着くと、ガラスの向こうの食品を美味しそうに眺める巨漢の女の子ノリちゃんが居た。
「おにぎり……お菓子……おでん……。」
食品の名前を呟くその姿はまるでひも爺を思い出させた。人の振り見て我が振り直せとはこの事で、ワタシは如何に自分自身の身を傷つけかけたのかと己を恥じた。それが後押ししたのもあってワタシはノリちゃんに話しかける。
「あ、ケータくんとフミちゃんじゃん!」
「ノリちゃんこんにちは。話しに聞いたけどダイエットするって本当?」
「本当よ!試しに食事を抜いてみたけど結構辛いわね!おかげでコンビニの食べ物が眩しく見えるわ!」
ダメだ。これは放っておいたら取り返しがつかなくなる。ワタシは無理なダイエットをする必要は無いとノリちゃんに伝えると怒り出した。
「なによ!さてはミカから聞いたわね!誰が何と言おうとやめないんだから!」
どうやら聞き入ってはくれないらしい。先ほどダメなダイエットをしようとしたからか言葉を纏めることができなかった。ここら辺ケータくんがワタシに上手く伝えてくれたんだなと感心する。
「ノリちゃん、オレ思ったんだけどさ、どうしてダイエットしようと思ったの?」
ケータくんがノリちゃんに質問する。そうしたらパアッと顔を明るくして話し始めた。どうやらクラスメイトのメグちゃんがアイドルを目指す話をしたので私も目指す!とのことらしい。
「本当に目指すのよ!だからじゃましないでちょーだい!」
ノリちゃんは頑固だ。こうなった以上こちらの話をなかなか聞かない。
「こうなったらメグちゃんに協力して貰おう。こやぎ郵便に入っていくとこ見たから何か手がかりがあるかも。」
ケータくんの提案に頷き、ワタシたちはこやぎ郵便へ向かう。そこには親からのお使いからか封筒ののり付けを行うイチゴのヘアゴムを着けたツインテールの女の子、佐々木めぐみが居た。
「ここで活躍して好感度アップ。アイドルになるための一歩よ。」
メグちゃんはアイドルになるのが夢だからか計算高い側面がある。しかしそれを人前に出してしまうことがあるのがメグちゃんだ。ワタシはメグちゃんに話しかけ、ノリちゃんが無理なダイエットをしようとしていることを伝える。
「そっか、ノリちゃんが……。わかった。元は私が原因だし協力する!」
「ありがとうメグちゃん!」
「ボソッ……あとミカちゃんに嫌われたくないし。」
「「…………」」
メグちゃんの魂胆にワタシたちは呆れるとワタシたちは団々坂のヨロズマートに戻る。するとメグちゃんと銭湯から来たミカちゃんが説得していた。
「ノリちゃん、アイドルは楽な仕事じゃないの。」
「そうだぞ。嫌いなヤツに笑顔を向けないといけないし、ろくに睡眠時間が取れないかもしれないぞ。」
「そこは努力と気合いでカバーするわ!」
「あとノリちゃんお笑い好きだったよね?でもアイドルになるとそれを見る時間が少なくなるよ?」
「うぐ……が、我慢するわよ!」
ワタシたちは色んな事実でノリちゃんを説得した。しかし効果は薄くノリちゃんはダイエットを止める素振りを見せない。そしてメグちゃんの一言が説得を不可能にしてしまう。
「そもそもノリちゃんの体じゃアイドルなんてムリ……あっ」
「「「あっ」」」
「な、な、なんですってー!?」
メグちゃん!いくらなんでもそれはアウトだよ!今の状態で真っ向から否定されれば意固地になるって!
「私!ゼッタイダイエットをやめない!」
ほら宣言した!こうなったノリちゃんは誰にも止められない。ミカちゃんはどーすんのよとメグちゃんを見つめ、メグちゃんは俯いている。
「これは、もうダメだな。」
ケータくんはそう言うとメダルを取り出した。その時ワタシは思い出す。確かに人間にはこの状況を打開するのは困難だ。しかしあの妖怪なら……!
「オレのトモダチ!出てこいつづかな僧!妖怪メダル、セットオン!」
陽気な曲と黄色い魔方陣と共につづかな僧が現れる。
つづかな僧に取り憑かれるとあらゆることが続かなくなるのだ。この力を使えばノリちゃんのダイエットを続けなくなるはず。
「つ~づか~ない~つ~づか~ない~……つ~づか~ないったらつ~づか~ない~……」
念仏と共にノリちゃんの怒気が収まっていく。そして怒気が無くなるとミカちゃんの方向へ向いた。
「なんか……ミカから美味しそうな匂いがするわね。」
「え?ああっさっきタイヨー軒で食べてきたからかな。」
それを聞いたノリちゃんはミカちゃんを見つめ、やがて今までためた思いが爆発する。
「ぬわーーーー!やめよ!やめやめやめたーーー!お腹いっぱい食べたい!はらぺこはもういや!ダイエットやめるーーー!」
つづかな僧のおかげでノリちゃんはダイエットを止めることを宣言した。これでもう無理かダイエットをせずにすむだろう。
一件落着した後メグちゃんとノリちゃんはお互いに謝って、ノリちゃんの腹ごしらえにメグちゃんとミカちゃんは食べすぎもダメということでついていった。
「これで一件落着……なのかな?」
「また何か起きたらその時に考えよ。」
ワタシたちはいやしの天使ちゃんとまず~い漢方をバッグにしまい、日が暮れて来たので帰路に着く。
「屋敷と銭湯ことあるから余り言えないけど、フミちゃんもムチャしないでよ。」
「うぅ……バカァ……。」
「どうしても気になるなら、オレも付き合うから。正直オレも太ってきたしこのままどうしようかなと思ってたんだよね。」
「……じゃあ、一緒にやる?」
「もちろん。フミちゃんが言うならどこまでも。」
「……ふふっ♪じゃあ明日からおねがいね♪」
こうしてワタシから始まったダイエット騒動は幕を閉じた。
そこから無理の無い範囲で運動して、ワタシとケータくんは健康に体型を向上させることに成功した。ケータくん、付き合ってくれてありがとうね。