オレたちは妖怪ウォッチを使って町中を駆け回り妖怪を探している。それは紛れもない本当のことだ。
だけど毎日がそうというわけではない。妖怪の事を放っておいてクラスメイトと一緒に遊ぶことだってある。今日はそういう日。クマとカンチ、そしてマオくんとサッカーする日だ。
オレはサッカーボールを閉まっているクローゼットを開けようとすると、なぜか鍵がかかっていた。鍵かけたっけ?と思いながら鍵を開けようとすると、なぜか抵抗があって鍵を開けることができない。クローゼットの構造上内側から鍵をかけることはできない。しかし鍵をかけられ、それが抵抗されている。
「これって妖怪の仕業じゃん!」
オレはそう判断するとフミちゃんからウィスパーを譲り受け、解説を受ける。
「その現象、妖怪ヒキコウモリの仕業です!取り憑かれると引きこもりになる妖怪ですが、ご本人も引きこもりであります。どうやらケータくんのクローゼットに引きこもっているようですね。」
「え~~……クローゼットに興味のあるトモダチはいたけど、引きこもるのは初めてだよ……。」
「いやケータくん、これはワタシたちに予想ができないことよ。」
オレたちはそう話していると、クローゼットが開く。黒い頭に青い風呂敷のような羽をもつコウモリの妖怪ヒキコウモリだ。
「あの……すみません。近所迷惑です……。」
「あっ...…それはごめんなさい……って!そこオレのクローゼット!」
「オレの……?ここはどんな妖怪でも使えるユートピアのはずでは……?」
どこから来たんだそんな話。仮にトモダチ妖怪だとしても筋を通さず住んで良い理由にならないって。
「なるほど……ではトモダチになりましょう。それでここに住めますね。」
「いやいやいやいや!そんな簡単に妖怪とトモダチになっていい訳じゃないし、不当にクローゼットを占領する妖怪とトモダチになりたくないよ!」
「……あぁ、そういえばお金にがめついセミまる様とのトモダチ契約を断ったそうですね。つまり私もその類いだと?」
そう、オレたちは誰でもトモダチ契約を交わす訳ではない。誤解を恐れずにいうと、妖怪が持つ種の特性を抜いた上で、その個体の性格があまりにもオレたちに悪影響を与えるなら断っている。
明らかに危ない薬を薦めてくるグレるりんとか、元の職場の金を盗んだセミまるとか、同じグレるりんやセミまる等から見て、あいつは止めとけと言われた者達は全て、オレたちの方から断っているし、トモダチ妖怪達がオレとフミちゃんに近づかないようにブロックしている。
さて、ここまで話してヒキコウモリはどうだろうか。オレとフミちゃんの家に上がって寛いで良いのはトモダチ契約した妖怪だけだ。そうでも無いのに勝手に上がり込んで、オレの部屋の一部を私物化しようとしている。だからこれは……
「ヒキコウモリ、そこに引きこもる理由があるなら教えてくれる?」
だからまずはそこに居る理由を聞くことにした。だけどクローゼットに引きこもる理由が無ければお引き取りを願うしかない。
「……なんてことはありませんよ。縄張り争いに負けただけです。」
縄張り争い?とオレとフミちゃんが首を傾げる。するとヒキコウモリが話を続けた。
「私、ここさくらニュータウンではない何処か遠くの洞穴に引きこもってました。清潔な場所ではありませんが、それでも楽しく暮らしていました。しかしある日必要なものの買い出しに妖魔界に行ってて、洞穴を留守にしていました。その時、洞穴に強力な生物が住み着いてしまったのです!」
展開を察したオレたちは顔をしかめ、ヒキコウモリの話を聞く。
「私はその生物に敵わず、泣く泣く元の住みかから去ることにしました。仕方ないので他に引きこもれる場所を探していたのですが、拠点とするにはあまりにも隣人の方達が強大で、また住みかを奪われたらと考えたらと根付く事ができずに何度も放浪して数年が経過しました。その旅路は恐怖に満ちていて、ろくに眠れなかった記憶があります。やがて、このさくらニュータウンにたどり着き、おおもり山で生活していると、この家の事が耳に入り、今に至るというわけです。」
「……」
ヒキコウモリの話を聞いてオレは思案する。そして、この状態を突破し、双方良い関係に着地させる考えをヒキコウモリに伝えることにした。
「本来引きこもりたい君が住みかを奪われたなんて、とても辛かったよね。でも今ヒキコウモリがやっていることは、他の誰かが大切にしている何かを奪っているのと同じ、君の住みかを奪った生き物と同じことをしているよ。」
「解っています。解っていますよ……!でも、でも……もう限界だったんです。藁にも縋る気持ちだったんです。早く何処か安全な所で、引きこもりたかった……!」
心身を追い詰められた者は正常な判断力を失う。ヒキコウモリは種の特性に反する行動を数年間続けてしまったことで、心身共に磨耗してしまったのだろう。どこかに引きこもりたいという思い1つでここまでの行動を起こしたヒキコウモリにオレは畏敬を感じたんだ。
「本当はあなた方のトモダチ妖怪の為に用意したものと知っていました。でも、私は引きこもり、他の方と会うことを好まない私があなた方とトモダチになるなんて───────────────」
「いや困っているなら力を貸すよ。」
「ヒキ?」
「流石に最初からオレたちの家というのは無いかもそれないけど、安全な場所を探すくらいならいくらでも手伝うよ。」
「ワタシもそうするよ。困っている妖怪は放っておけないし、この町で暮らすなら元気でいてほしいもん!」
「い、良いんですか?私は引きこもりですよ?他の方達と比べて貢献できることはたかが知れて──」
「うーん、最近思うけど妖怪達はワタシたちの事過大評価しすぎじゃない?ワタシたちは妖怪ウォッチがあるから妖怪が見えるだけの小学生だよ?」
「困っている人が居るから助けるのは普通の事で、妖怪が見えるようになったから、その輪に加えているだけの事だよ。」
ヒキコウモリの目が丸くなる。困っているなら助ける。妖怪が見えるようになったからその対象に入っているのも当然。オレたちにとって普通の事。でも妖怪達にとって普通じゃない事に驚きを隠せなかった。
「ヒキコウモリは目標の為ならエネルギッシュになる妖怪だ。その目標が自分が安心して引きこもれる環境を見つけるというものであって、熱量は他の妖怪とそう変わらない。」
「ただ、余裕が無くなったから枷が外れて、このような結果になってしまった。いうなら不幸な出会いだったというところね。」
どこかで出会えたら、こんな剣呑なやり取りをせずにすんだかもしれない。そんな思いが伝わったのか、ヒキコウモリが話し始める。
「私は、思い違いをしていました……。団々坂の件から、私ごときが救いを求めることは許されない大きな存在だと。ならば後ろ指を指されようと、あなた方の恩恵を啜るしかないと思っていました……。でも、あなた方はこんなに妖怪と寄り添って、暖かくしてくれるのですね。」
ヒキコウモリはそう言うとクローゼットから出て、オレに頭を下げる。
「クローゼットを勝手に使った件を謝罪します。一言でも断りを入れるべきでした。そして、厚かましいこと承知の上ですが、私はあの場所を気に入りました。ですからどうかココに住まわせてくれませんか?」
オレはその言葉を聞いて、頭に練った言葉をヒキコウモリに伝える。
「わかった。でも、この場所はトモダチ妖怪だけ使っていいと伝えているんだ。トモダチ妖怪じゃないヒキコウモリだけが特別待遇とはいかない。」
「ヒキ……。」
「だから、オレとトモダチになってよ!やり方が間違っていたとはいえ、ヒキコウモリの行動力はスゴいもん!」
「ワタシもお願い!大切な環境を手に入れるために、怖くて嫌いな事を続けられるなんて尊敬する!」
オレたちはヒキコウモリに手を差し出した。このトモダチ契約は間違っているかもしれない。でも互いの本心を伝えて、お互いが納得することができれば、こういうのも有りかと思ったんだ。
「ヒキ!……はい!よろしくお願いします……!」
ヒキコウモリは羽を差し出して、光を放つ。光は2つの円盤となり、オレたちの手に収まった。ヒキコウモリの妖怪メダルだ。
「ケータ様、フミカ様、これからはこの家でお世話になります。」
「「よろしくねヒキコウモリ!」」
オレたちはトモダチ契約を果たした後クローゼットからサッカーボールを取り出す。時間的に間に合いそうだ。
「あぁそうだ。迷惑をかけたお詫びと家賃代わりとしてこれをどうぞ。」
ヒキコウモリがそういうと箱を差し出した。オレはサッカーボールを脇に抱え、箱を開けると、
赤、黄、橙、桃、緑、青、紫、水色と全部で8色のコインが沢山入っていた。
「ここに来る旅路で手に入れた妖怪ガシャコインです。団々坂の話からあなた方はまだまだ試練が待ち受けている様子……。これを使って戦力を整えてはいかがですか?」
ヒキコウモリの提案にオレたちは息を呑むのだった。
ヒキコウモリ参戦です!この子が居ないと3で詰むので……(--;)
そして皆さんお待たせしました。次回ガシャのお時間です……!