クマとカンチ、そしてマオくんとのサッカーをした次の日、オレたちはおおもり山の御神木に来ていた。
「さ~て、何が出てくるやら……。」
「うーん、相変わらず混濁とした妖気……。」
「ここでお二人と会ったのも懐かしいですね~。」
「チョコボーが出るニャンか?」
「ソフトクリームも出るズラか?」
「兄ちゃん、ケータとフミちゃんが欲しいのはそれじゃないズラよ。」
そう、オレたちは妖怪ガシャを回しに来たのだ。妖怪ガシャは多くの妖怪やアイテムが封印されており、専用のガシャコインを回すことでその封印から解放することができる奇妙な機械だ。
因みに100円玉が使えたのは妖怪が見えない人へのサービスみたいなもので、体質やウォッチを使う等で妖怪が見えるようになると使えなくなるらしい。
またガシャコインは妖怪が集める事ができるものの、それを使って人間界のガシャを回す事ができないようだ。まぁできたら妖怪ガシャに妖怪が並んでえいえんとガシャを回し、封印を全て解放するという事ができてしまうからね。
それに封印を長続きさせるため妖怪ガシャには1日に回す回数が制限されるそうだ。その回数はその日によって変わり、妖怪はその回数を把握することができるとのことだ。
「本日のガシャ回数は7回です!諸々の準備は済みましたか?」
「勿論!さっき神社でお参りしたし!」
「ここに来る前お札のお爺さんの悩み事解決したしで願掛け十分!」
オレたちはここに来る前に人事を尽くした。
「ズラ?運といえばツチノコは喚ばないズラか?」
「兄ちゃん、ツチノコの力は強力ズラ。でも使いすぎるとツチノコになってしまうズラよ。」
「もんげ~!?あれそんなにおっかないもんだったズラか!?」
尚ツチノコは除く。ツチノコになるって怖すぎる。ガシャは大切だけどそれに命をかけたくない。とにかくオレたちは人事を尽くした。後は天命を待つのみ!
「まずはこれから行こう!」
そう言ってオレは赤コインを取り出した。
ガシャコインの色と妖怪の種族には密接な関わりがあって、今使った赤コインにはイサマシ族の妖怪が出るようになっている。
コインの方からもイサマシき気配を出していて、これからイサマシ族の妖怪が出ますよとアピールしている。オレはコインをガシャマシンにセットして、回す。
そうして出てきたのは赤色のガシャ玉だ。
「ほほう、赤玉ですか。初めてにしては運が良い。」
「ニャ?レアニャンか?」
「赤玉のレアリティは上からも下からも数えて3番目、玉としては真ん中に属しますが、ピラミッド状にレアが少なくなっていく都合上、これの中身は福引きの3か4等くらいのレアですね。」
へぇーという感想がこの場を占めた。てことはこの中身は特別強い!というわけではないものの、そこそこの強さを持つ妖怪が居るかも……ということだ。
オレは早速このガシャ玉を開ける。前回開けてコツを掴んだからかすんなり開けることができた。そして中から出てきたのは……セミ忍刀というセミまる達セミ流忍者専用の刀だった。
「これ、セミまる喜んでくれるかな?」
「専用装備というのは貴重ですからね!ありがたく使わせてもらいましょう!」
オレは早速セミまるを喚んでこの刀を手渡す。するとセミまるは感激した様子で、
「この刀に恥じぬよう精進するミーン!」
と言って飛び去ってしまった。オレはそれを見送ってガシャの方へ振り替えると、フミちゃんが涙目になっていた。
何かあったのかとオレは近くに寄ると、フミちゃんの手元には身代わり人形が、足元にはウィスパーのガシャ玉と比べて上下ともに灰色のガシャ玉が転がっていた。あっ……と思ったオレはウィスパーの方を向く。するとウィスパーは頷いた。
「文花さんはオレンジコインでガシャを引きましたが、一番下のレアリティである灰色のガシャ玉を出して、その……結果はご覧の通りでうぃす……。」
「……まぁフミちゃん。そういう時もある───」
「もう一回引くっっ!!」
若干の涙声でフミちゃんは宣言すると箱から紫コインを出してガシャを回した。するとガシャマシンから青色の玉が出てきて、フミちゃんはそれを開ける。するとようじゅつ超百科というそれなりのお値段がする本が出てきた。
「ウィスパー、青玉のれありてぃはなんズラか?」
コマさんがウィスパーに質問する。少なくとも灰色より上というのは確定しているけど、赤よりどうなんだという話だ。
「文花さん、言いづらいですが青玉は赤より1個下のレアリティです……。」
ドサッ
「あー!?フミちゃんが倒れてしまったズラ!?」
あまりのショックでフミちゃんが倒れてしまった。
ガシャで出て欲しいものが出ない辛さは痛いほどわかる。しかもガシャコインは中々手に入らない。ある意味お金より貴重だ。その結果がこれならこうなるのも無理はない。
オレは黄色コインを取り出してガシャを回す。出てきたのはまた赤玉。中身は金のこけしで売るとかなりのお金になるアイテムだった。
しかし妖怪じゃない。焦りの気持ちを抱きつつ緑コインを回すと赤より1個下の青玉がでて、中から銀のこけしという金のこけしより少ない値段で売ることができるものが手に入った。
ガクンッ……!
オレは思わず項垂れる。妖怪が出ないことの事実に。ウィスパーのような新しい出会いが欲しいだけなのに、ガシャの運はここでもオレたちを嘲笑うのかとひたすらに呪った。
「ニャ~……。」
「「ズラ~……。」」
「ケータくん、ワタシこれにしようと思う。」
残り2回。フミちゃんが箱から取り出したのは水色のコインだった。ここまで連続してアイテムだけ。心が折れそうだ。でもフミちゃんは諦めていない。その思いは通用するかどうかさておいて、オレはそのコインを使う事に同意するとフミちゃんはガシャを回す。そうして出てきたガシャ玉の色は、ウィスパーと同じ黒色だった。
「き、キターーーーー!!!」
山彦となって響き渡る位ウィスパーが絶叫する。オレたちは堪らず耳を塞ぎ、ウィスパーに睨み付けると、ウィスパーは興奮した様子でこのガシャ玉を解説する。
「何でここまで興奮しているのか。それは単純明快、黒色のガシャ玉は妖怪ガシャの最高レアが入っているガシャ玉の色だからですっっ!!!」
『!??!?!!?』
ウィスパーの言葉にオレたちは動揺を隠せない。今回使ったのは水色コイン。つまりこの黒玉の中には……!
「ニョロロン族のSランク妖怪がこの中に……!」
オレたちはその黒玉から眼を離せずにいた。ウォッチランクDのオレたちにとってはSランク妖怪は雲の上の存在。Sランクのブランド力とでもいおうか、この黒玉がとてつもなく輝いて見えた。
「ケータくん!先にガシャ回しきって!これ一番最後に開けたい!」
興奮した様子でフミちゃんは提案する。確かに次のガシャの中身がショボいものならテンションが下がって終わってしまう。なら開ける順番を入れ替えてでもテンションが上がった状態で終わりたいよね!
「フミちゃん!それ採用!」
「ありがとうケータくん!ということで待っててね。必ず開けるから!」
そうしてオレは本日最後のガシャを回す。そうして出てきたのは、
また黒玉だった。
「「うそでしょ!??!!」」
「マジかよおい!!!?!」
「ニャニーー!!??!」
「「もんげーー!!!??」」
2回連続最高レア!??!!妖怪ガシャ黒玉連弾!!??!どんな確率をしているんだ!!??!ツチノコも顔面蒼白する幸運でしょこれ!!
「ケータくん!!色は!?色は何!!?」
フミちゃんがより興奮した声で、今使ったガシャコインの色を聞く。オレが今使ったのは……!
「桃色、てことはこれの中身はプリチー族のSランク妖怪……!」
「オレっち達と
「「ズラズラ~!!」」
プリチー族であるジバニャンとコマ兄弟は嬉しそうだ。
それにプリチー族なら陣形効果も見込める。その強さはこれまでの強敵が証明している。
敵が強制的に陣形を発動させるなら、こっちは本来の陣形で相手をするだけさ!
そう考えていると、妖怪ガシャが消えた。1日の使用回数に達し、下手に中身に触れさせないようにするためだろう。こうしてオレたちは初めてのガシャを回しきったのだった─────────────
「じゃ、開けるね?」
ガシャの消滅を確認し、色々話した後、フミちゃんから開ける事にした。そうしてフミちゃんが黒玉を握りしめる。水色コインでフミちゃんが引き当てた黒玉だ。ガシャ玉の境界線は硬いのかフミちゃんは苦戦している。
「これ、さっきより力を使う……!」
同じ色から出たウィスパーの時より苦戦していそうだ。これがSランクの重みというのか、境界線が変化する様子は無い。
「あなたがここから出たとき、全部ワタシたちに尽くす必要は無いわ。あなたがしたいことを思いっきりするの。でも、その様子を少しだけでも、ワタシたちに見せてくれる?」
フミちゃんは黒玉に話しかけるとガシャ玉の境界線が歪む。それを感じとったフミちゃんは一気にガシャ玉を開ききる!
「「来た!」」
ガシャ玉から白い大きな光とニョロロン族を示す水色の魔方陣が出る。
そして魔方陣の光が弱まった瞬間、中央の白い光が黒く染まった。そして黒い塊がとぐろを解くようにほどけ、2つの竜のマフラーのようになると、シルエットはあのミツマタノヅチと鬼時間であった青年と瓜二つ。しかしマフラーと顔、そして格好が黒い青年が大地に降り立った。
「そなたらの活躍、聞こえていたぞ。
我が名は影オロチ。出してくれて感謝する。」
影オロチと名乗った妖怪はオレたちを見つめる。ただオレたちを見つめているだけなのに圧がスゴい……!これがSランク妖怪の気迫なのか?
「ふむ。良い眼をしている。強き心の持ち主にしか宿らぬ眼光。最初のガシャを引いた時に聞いた誓いは本物のようだ。」
どうやら影オロチはオレたちを気に入ったようだ。しかしどこか思うところがあるのかメダルを出す様子はない。
「詳しい話は後にしよう。先にケータのガシャ玉を開封せねば。」
そう言って影オロチはオレたちから離れる。そうしてある程度のスペースができるとオレはそこに行き、ガシャ玉を開ける。ガシャ玉が硬いことに変わらないものの、ウィスパーと合わせて2回目の黒玉だからフミちゃんの時よりスムーズに進む。
やがてガシャ玉が開くと白い大きな光とプリチー族を象徴する桃色の魔方陣が登る。
「私を外に出した愚か者どもはお主らか?」
どこからか声が聞こえると白い光から真っ黒なオーラが吹きすさび、光を打ち払う。そうして出てきたのは紫色の髪に黒い浴衣を着た、まるで一国のお姫様のように綺麗な出で立ちをした女性だった。
「私の名は百鬼姫。この私を外に出して、只で済むと思うでないぞ?」
紫色の瞳をぎらつかせ、口角を上げて青白い肌の面積を減らし、オレたちを威圧する。影オロチと打って変わってバリバリに危険なオーラが迸っている!
Sランク妖怪は強さと同時に危険な存在と示すことをこれでもかと示していた。
「さて早速じゃが私の我が儘に付き合ってもらおうかの。」
これ、マズい妖怪を出したんじゃ?とオレたちは思った。条件次第では交戦もあり得る。そうしてどんなものが来るかと身構えた。
「1つ目の我が儘じゃ。お主らこの町を案内せい!」
思わずずっこけた。影オロチを含めて愉快なパーティーになりそうだ。
アンケートの結果百鬼姫になりました!
そして影オロチも参戦です!
アンケートの結果は筆者の予想通りでしたが、そこに至るまでの過程が面白かったです!オオクワノ神と百鬼姫が並んだ時はどうなるんだ!?と思いながら見てました。
改めてアンケートのご協力ありがとうございました!