オレたちは百鬼姫をガシャ玉から出すと百鬼姫は我が儘をオレたちに言った。それはこの町を案内すること。今まで封印されていたから知識を擦り合わせたいとのことだ。
「ガシャ玉の外から話を聞いていたとはいえ、実際はどうなのか知りたいのじゃ。百聞一見というものじゃな。」
「わかった!一緒に行こう!どこか行きたいところとかある?」
オレは百鬼姫と、影オロチに行きたい所を聞いた。いずれはさくらニュータウンの全てを回るつもりだけど、その順番位は本人が決めるべきだと思ったからだ。
「……気遣い感謝する。我は後でいい。百鬼姫よ、行き先はそなたに任せる。」
「ふむ……そうじゃな。今はこの山を登りたい気分じゃ!山頂まで連れていけい!」
と、いうわけでオレたちはおおもり山を登ることになった。今回はどんこ池を通らず、大滝を一望出来る橋を通って登山道へ赴くことにした。
影オロチは草木を満喫しているのか辺りを見渡しながらついていってる。
対して百鬼姫は山頂以外興味がないのか、オレたちが進む方向を真っ直ぐ見ていた。
そしてオレたちは大滝の橋にたどり着いた。滝を見下ろせるところに橋がかかっているためかなりの高さがある。
「オレたちが初めて渡った時は2人して足がすくんで動けなかったっけ。」
「そうだねぇ~。滝を見たい一心で中央にたどり着いたのはいいけど、戻ろうとしたとき恐怖心が沸いてきて、ケータくんと抱きあったのよね。」
それを見たオレのお父さんがゆっくりと橋を進んで、オレたちを陸地に戻してくれたんだ。当然心配されたよ。今は渡れるけど、妖怪達はどうかな?
「オレっちはネコニャンよ?これくらいの高さはへっちゃらニャン!」
「おら達の田舎もこんな高いところがあったから慣れているズラ!」
「ズラズラ!」
「そもそも私は浮いているので落下という概念はござーせん!高さにビビる反応を出せなくて非常に残念です!」
……まぁウィスパーは例外として3人の反応は楽しみだったよ。でも心配になる位ビビることが無くて良かったとも思うからどっこいどっこいさ。それはそれとして、ウィスパー後で覚悟しておけよ?さて、ある程度橋を渡ったけど、影オロチと百鬼姫はどうだ?
「……悪くないな。」
「同感じゃ。ほれもう十分じゃ。早よ進めい。」
どうやら2人は満足したようだ。そして百鬼姫から急かされたのでオレたちは橋を渡りきり、登山道の入口にたどり着く。このまま山頂へ……といきたいけど、おおもり山の山道は妖怪達のたまり場なんだよね……。
小さい頃、フミちゃんが妖怪が見えなくても何かを感じていた時、この山を登ることをスゴく嫌っていたんだ。その理由が山道に集まっていた妖怪というわけで、八方睨みされている感覚にフミちゃんはずっと怯えていた記憶がある。
妖怪ウォッチを手に入れて妖怪が見えるようになっても、今度は山道の妖怪達が襲いかかってくる。いわばRPGにおけるダンジョン。オレたちにとっては一切油断のできない場所というわけだ。
「ニャ、そういえば思ったニャンけど……。今おまえ達の強さってどんなものニャン?」
確かに、ここから先は沢山の妖怪が彷徨いているダンジョンだ。新戦力を把握しておくことに越したことはない。オレたちは2人に今の強さを聞いた。
「……気の毒だが封印によって多くの力を失っている。」
「私も同じじゃな。」
え"っ?とオレたちは困惑した。百鬼姫の願いを叶えるにはダンジョンを通らなければならない。もしかしたら封印から出てきたばかりで力を出せず、直ぐやられてしまうかもしれない。オレたちがそう思っていると、それが顔に出ていたのか百鬼姫が笑い出した。
「くふふ……あーはっはっは!お主ら一丁前に私らを心配しているのか!?」
百鬼姫がそう言い切ると、Sランク妖怪達から圧が発せられる。
「お主らは私らSランク妖怪を舐めすぎじゃ。像は赤ん坊でもアリを踏み潰せるようにランクというのは隔絶した差が存在する。生半可なレベルではランクを覆せんよ。」
「……だが心配するのも納得だ。そしてそれが徒労であることをこれから証明しよう。」
そうして2人は登山道に入る。オレたちは慌てて登ると、既に妖怪に取り囲まれていた!
「見ない顔だな……新入りか?」
「ここにきたからには俺らのルールにしたがってもらう!」
「まずは身ぐるみ置いていけ!」
数はそれなりにいる。経験上2人では苦戦する数だ加勢がいると判断したオレたちは2人に近づこうとした瞬間、2人はそこで見てろとオーラを発した。取り囲んでいた妖怪達もその迫力に怖じ気づく。
「何じゃ。威勢のいい事を言っていた割に随分と府抜けておる。」
「だが、ウォームアップには最適だろう。これ以上のサンドバッグはいない。」
「さ、サンドバッグだとぉ!?」
「ふざけたことを抜かん済んじゃねぇ!」
「お前ら、やっちまえ!」
『オオオーー!!!』
サンドバッグ発言にキレたのか妖怪達が2人に襲いかかる。上から攻めるのか幾つかの妖怪が飛び上がって、最高点に達する。そこから放物線上に落ちる瞬間、
何かに食いちぎられる音と共にその妖怪達を初めとした一番槍達は消滅した。
『はっ?』
オレたちと相手の妖怪達の声が重なる。ほんの一瞬で10人程度の妖怪がやられたのだ。呆気にとられるのも無理はない。
「おい影オロチ、私の獲物まで刈り取る気はないだろうな?」
「……敵のやる気を考えて、これくらいはと思っただけだ。」
倒した際の音と2人の会話からして影オロチがやったらしい。百鬼姫は影オロチの行いに対して出番を取るなと告げる。
「く、くそ。何が起きたんだいったい。」
「お、おい!一発目が失敗したくらいで怯むな!続け!」
その声に登山道の妖怪達がまた襲いかかる。それを見た百鬼姫は影オロチの前に出た。
「今度は私の番じゃな。───凍れ。」
百鬼姫はそう言いながら両の掌を妖怪達に向けると、黒い塊が妖怪達を包み込んだ。そしてそれから出たオーラが後ろの妖怪達に纏わり付くと、妖怪の体の至るところから黒い結晶が張り付く。
「な、何じゃこりゃあ?!!つ、冷てぇ!!」
「く、黒い氷だと!!?そんなもん、鬼族の令嬢が学ぶ妖術の一つじゃねぇか!」
「ほう、博識じゃな。その知識に免じて仲間を解放してやろう。」
百鬼姫は指を鳴らすと黒い氷はくだけ散った。当然その中にいた妖怪ごとくだけ散っている。解放というのは冷気からの解放という事らしい。
「まてよ、俺たちの手に負えない鬼の妖術を扱う、格式ある黒い浴衣の女、こいつ百鬼姫か!?!」
「はっ!?!百鬼姫!??!!妖魔界の一種、地獄のどこかにあるという鬼の小国のお姫様じゃねぇか!」
『お姫様(ニャン/ズラ)!??!!』
百鬼姫、マジのお姫様だった。
いや、人間界を狙う妖怪と戦うという都合上、いつか妖怪ワールドである程度の権力を持っている妖怪と知り合うことになるとは思っていたけど、それがトモダチ契約できる妖怪とは思わなかった。
「わかりやすい説明感謝するぞ。お陰で後ろの童どもに私の偉大さが伝わった。」
百鬼姫はオレたちの方へ顔を向け、獰猛な笑みを浮かべる。その迫力にオレたちはゴクンと息をのんだ。
「なぁ、俺思い出したんだけどさ、あの黒マフラーの妖怪、影オロチじゃね?」
「はっ?影オロチ……影オロチ!?その姿を見たものはいないという妖魔界屈指の暗殺者!!!」
「……ネタばらしには早すぎるだろう。子供たちが怯えるじゃないか。」
影オロチは頭をかいて相手の妖怪達に圧を向ける。暗殺者。妖怪ワールドは楽園なのではない。政治とかちゃんとしているもう一つの現実世界だ。そんな世界には当然暗殺とかの需要が存在するわけで、影オロチはそのトップ層にいる妖怪らしい。
「地獄のお姫様に妖怪ワールドの暗殺者……ワタシたちとんでもないものを解放しちゃった……!」
Sランク妖怪のプロフィールにフミちゃんは動揺している。オレはフミちゃんに寄り添ってじっと2人を見つめた。
「軽い運動のつもりじゃったが、気が変わった!童どものためとことん相手にしてやろう!」
「我の事を暴露した罪は重い。その命を持って償ってもらおうか。」
2人は更なる妖気を発し、臨戦態勢を取る。その様子を見た相手の妖怪達は恐怖のどん底に叩き落とされた。
「ま、まて、俺達が悪かった!見逃してくれ!」
「お、おい!何を言うんだ!見逃してもらうのは僕の方だぞ!」
「嫌だ…!死にたくない!死にたくなーい!!」
「「参る!」」
登山道の妖怪達の嘆願に耳を傾けず、Sランク妖怪の2人は猛攻を開始した。そこから先は圧倒的だった。百鬼姫が出した黒い氷によって動きが鈍くなったところを影オロチによる神速のマフラー捌きによって敵は次々に撃ち取られていく。
対抗しようにも黒い氷による冷気と呪い、そして猛攻による恐怖によって動きが散漫になった登山道の妖怪達の攻撃は、2人の体に一切当たることはなく、
いつの間にか登山道の妖怪達は2人の手によって全滅していた。